kikuzakaのblog

ブログには下記の三つのシリーズがあります。 ①「スマイルカーブ」:スマイルカーブと言う簡単なツールを使って、物事を解説しています。 ②「コラム」:私が都市銀行の常務を退いた後、社長を3年間務めたIT会社で、社内コラムに書いたものを一般用にアレンジしたものです。 ③「経営ワンポイント・レッスン」:経営のワンポイント・レッスン的な事柄を書き綴ったものです。

東京都文京区菊坂(現本郷4丁目)出身なので、ブログ名をkikuzakaとしました。

 

初めての方で、ブログの概要を知りたい方はKikuzakaのBlogを、スマイルカーブについて知りたい方はこちらをご覧下さい。

  

 米国と中国の貿易戦争が続いていますが、これをスマイルカーブで読み解くと、その中長期的な影響がくっきりと見えて来ます。本年(2019)3月初めが交渉の一区切りですが、この動きによっては世界的影響が拡大してしまいますので、その辺を読み解いて行きます。

 

国連貿易開発会議(UNCTAD)の報告

国連貿易開発会議(UNCTAD)は米中貿易戦争で両国の貿易がどのように動くかの報告をまとめました。これをCNNはネットで,米中が互いに科している関税のために、「米中の二国間貿易は減少し、他国からの貿易に取って代わられるだろう」と(UNCTAD)予想。米国でも中国でも、関税は国内企業を助ける役にはほとんど立たないと述べ、たとえ他国の貿易に恩恵をもたらすことがあったとしても、世界的な悪影響を及ぼす恐れがあると指摘した。』と配信しています(201926)。同報告に関しては、日本経済新聞でも『追加関税の対象である中国から米国への2500億ドル相当の輸出品は、82%が第三国に調達先が変更される。12%は中国からの輸出が続き、米企業が代替できるのは6%にすぎない。一方、米国から中国への追加関税対象の850億ドル相当の輸出品は85%が第三国に輸出を代替される。米国が輸出を続けるのは10%弱で、中国企業の代替は5%程度にとどまる。』と同日に伝えています(以上茶色の文章が引用部分)

 

図解による解釈

さて、ここからはブログ記事になりますが、上記新聞記事の数字を使って、年間のインパクト推計を図示したのが図1です。金額は分析開始当日(201926)のレートである1ドル110円で換算して、単位は兆円ですが、図解すると、その構造がビジュアルに見て取れます。図中、上部の1.が中国から米国への輸出、2.が米国から中国の輸出で、白い右矢印の先が双方ともUNCTADの推計による状況です。

スライド1

これから特徴付けられることは、

米中当事国間の貿易は大幅に減少すること、

米中ともに輸入減少分を国内供給で賄える比率が極めて少ないことで、これは上図の赤い矢印で表現していますが、その規模の小ささが分かります、

両国間の輸入減少分を代替するのが第3国で、EU,メキシコ、日本、カナダ等の輸出が大幅に増えること、です。

ここで見えて来るのは、当事者間での貿易が大幅縮小しても必要なものは必要で、国内では賄えない分はどこからか輸入しなければならないという姿です。まずは、この推計が100%実現するとの前提で、話を進めて行きます。

 

影響分析  

当然のことながら、この貿易構造の変化は、当事国を始め世界各国の経済構造に大きな影響を与えます。その影響をフローに分解したのが、下記図2で、こうしてみると事情が分かり易くなります。フローは上流工程(調達、4M変更)→中流工程(エコシステム)→下流工程(売上、ビジネス不確実性)としていて、各工程で本件によって大きく影響を受けると思われる項目を選択したものです。以下の分析の対象となっている諸影響は瞬時に起きるものだけではなく、時間を掛けて出てくるものもあります。

スライド2


米国の状況  

まずは当事国のうち米国の事情を読み解くことにして、最初に上流工程の状況を考察します。追加関税の対象を見ると、米国の輸入には半導体・ルーター等の電子機器、ストーレッジ等の機械類、PC部品等の電子部品、アルミホイール等の自動車部品が多いようですが、これらの調達先が変わることになります。輸入品が携帯電話等の最終製品であればまだ良いのですが、製造業の資材調達先変更になりますと、これまで太平洋を跨いで構築してきた大規模なサプライチェーンが大打撃をうけます。グローバルな調達・生産・物流の情報を一元的に管理して全体最適を図ってきた構図が崩れることは、関連する企業にとって大打撃です。また、そうしたことによって、資材メーカーの変更や、資材不足の場合には資材グレードの変更が生じて、4M(1)変更という生産や仕様にとっての大課題に繋がるリスクがあります。

(1)製造業で使われる言葉で、人(Man)、機械(Machine)、材料(Material)、製造方法(Method)が4Mです。私の製造業における短い経験からも、品質や生産に問題が生じるのは4Mが変更になった場合が多く、本記事で採り上げているのは材料(Material)で、その内訳としては、①材料そのものの変更、②材料メーカーの変更、③材料グレードの変更等があります。

 次は中流工程におけるエコシステムの毀損・損失です。今までの輸出実績(=生産)が大きく落ちるのですから、大幅な減産を強いられることになります。こうなると、規模の経済性(2)が損なわれ、さらには資材調達先、人材、協力会社、物流会社、倉庫会社等との関係を切るか絞ることになり、エコシステムが劣化してしまいます。これではせっかくこれまで築いて来た連結の経済性も損なわれてしまいます。

(2)規模の経済性」とは、規模が大きいことにより得られるメリットで、いわゆるスケールメリットです。この経済性は単一企業に於けるコストに係わるものですが、「連結の経済性」は、異なる企業間における経済性で、コスト面に加えシナジー効果やラーニング効果といったアウトプットにも経済性が生じます。情報・ノウハウを核に異なる企業が結合して、情報・ノウハウ・技術の共同利用等によって経済性を高めます。
ちなみに、この二つ以外にも本記事の最後に登場する「範囲の経済性」があって、これは企業内で、ある事業の生産要素(ノウハウ、情報を含む)を他の事業へゼロコストもしくは低コストで転用することによる経済性です。書籍のネット販売という生産要素を活かして、他のジャンルへ販売を拡張したAmazonは範囲の経済性を活かした代表例です。詳しくは三つの経済性とスマイルカーブをご覧下さい。

そして、下流工程においては、中国への輸出が減少するのですから、当然のことながら関連売り上げの大幅減少があります。これが企業収益を直撃するのは自明の理ですし、販路についても輸出・輸入業者等との関係が希薄化する虞があります。何よりも、下流工程における製造業のビジネスに関する不確実性が出て来て設備・在庫の投資活動や雇用・仕入れに大きな影を投げ掛けます。これらは、デフレ圧力を強めつつ、国民間の格差をさらに拡大し、より一層の社会的不安定を助長してしまいます。

 

中国の状況  

 次に中国ですが、まず上流工程に関しては、主な対象輸入品目は大豆、集積回路、自動車関連のようです。大豆等食料は米国以外の国からの輸入に頼れば大きな問題は生じないでしょうが、国民の生活に直結しますので、その安定確保が課題となって来ます。しかし、品目が工業製品となると、米国同様の4M問題が浮上して来ます。また、米国と供にサプライチェーンを構成して来たわけで、これが大打撃を受ける場合は米国と同様、関連する企業に悪影響があります。

そして、中流工程の生産が大きく減少すれば、生産に必要な部品等はアジアを始めとする業者から仕入れているため、エコシステムに大きな影響があります。特に中国の場合、米国への輸出品の製造元は台湾系EMSが多く、エコシステムの中核企業(EMS)が生産をベトナム、タイ等へシフトさせるとか、最悪の場合はEMS自身が海外移転するリスクさえ出てきます。こうなると中国の雇用にとっても大問題になります。

最後の下流工程における不確実性は、中国にも米国と同様のことが言えて、このことは成長率低下、金融バブル、高齢化等で悩んでいる中国に、さらなる問題を投げ掛けることになります。

 

漁夫の利を得る第3国  

 一方、漁夫の利を得ることになる第3国ですが、まずは輸出の大幅増となりますので、当然のことながら売上も大幅増になります。これ自体は、規模の経済性を享受できるので良いことなのですが、将来に向けた企業経営にとって良いことばかりとは限りません。なぜならば、米中関係の帰趨によって、ビジネスの動向が大きく揺れ動き、漁夫の利とも言える売上増に関しては不確実性が極めて大きいのは明らかです。この観点からフローを見て行きましょう。

まずは上流工程の資材・部材等の調達ですが、増産分を既存調達先で賄えれば良いのですが、増産が大幅な場合は新規調達先の確保を迫られます。ここで調達のボトルネックが生じると、製造が出来ないとかコストアップに直面するとかのリスクが十分に考えられます。そして、資材・部材の新規調達となれば、前述のとおり4M変更になる可能性があって、品質確保の観点から上流工程の見直しまでもが必要になることもあります。

さらに、中流工程では調達先を始め協力工場や人材確保、物流・倉庫の手配等の良好なビジネスリレーションの構築、すなわち新たなエコシステムの構築が必要になってきますが、これには長い時間とコストが掛かり、米中関係の動向によってはせっかく築いたものが無駄になる虞もあるのです。

下流工程では、これもエコシステムの範疇とも言えますが、輸出のための新たな販路の開拓も必要です。

さらには、下流工程には、ビジネスの大きな不確実性があるわけで、簡単には設備投資をするとか、在庫を積み増すということも出来ない事態です。このため状況によっては、グローバルな供給力不足が生じて、サプライチェーンが世界的に支障を来すリスクあります。

 

当事国にとって何も良いことはない

 以上が当事国と第3国の影響の比較ですが、ここで、先程の図2を冷静に見ると、第3国には、そうは言っても輸出増のメリットがありますが、当事国は、このままでは大きな輸出減になりますし、調達先変更とそれに伴う4M変更対応、エコシステムの毀損・喪失、輸出ルート消失等、大きなリスクがあって経済の観点からは、何も良いことはありません。特に中国ではエコシステムの喪失リスクは大きく、長期戦は当事国にとってボディーブローのようにじわじわと効いて、いつしかサプライチェーンから本格的に外れてしまう部分が出て来てしまいます。

 

全工程におけるカーブの低下

このように、世界的な経済構造をフローでみると、その全工程で影の部分が見えて来ます。具体的には、サプライチェーンの途絶やコストアップ、4M変更対応、設備・在庫投資リスク、エコシステム構築リスク等があり、これらによって、図3のとおり、スマイルカーブ下にある国でもアングリーカーブの下にある国でも、全工程においてカーブの低下につながってしまいます。これが現実のものとなれば、全世界の経済に広範囲な悪影響を及ぼすことになります。つまり、米中間の貿易戦争の影響は、当事国や第3以外の国々にも当然に及んで、企業倒産、コストアップ、物資不足と言ったことから金融危機まで惹起し、思わぬ社会不安に至るリスクがあることも忘れてはならないでしょう。

スライド0003


世界全体の貿易量の減少も

 さて、ここまではUNCTADの報告に基づいて、その予測金額を所与のものとして議論を進めて来ましたが、もうすでに指摘しているように、貿易戦争が続けば、不確実性が拡がりデフレ圧力が働くことになります。加えて、第3国が当事者間の貿易減少を補完すると言っても、それには時間が掛かることをも勘案すれば、UNCTADの予測する貿易シフトがその規模を保ったまま実現するのは難しく、さらには世界の全体の貿易量が減少する虞も大です。すなわち、米中戦争が招く貿易の大混乱、それにより惹き起こされる減産、投資の手控、不安心理等により世界的なデフレ圧力が惹起され、世界景気に悪影響を与える蓋然性が高くなって行きます。これにBrexitの影響が加わることも大きな懸念材料です。

 

もちろん、この貿易戦争は経済面からの見地だけで米国が仕掛けている訳ではなく、安全保障上の懸念が背景にあることは承知していますので、経済にだけ気を取られてはいけないことは言うまでもありません。従って、米中貿易戦争が、いつまでどのように続くのかを予想するのは難しい状況です。本記事を書いてから2週間後(201931)に終わるかもしれませんが、長引くのであれば、繰り返しになりますが、グローバルな経済、社会、政治、金融の不安が惹起されることを想定しておかなければなりません。
 最後に視点を変えましょう。もし、貿易戦争が長期化するのであれば、時間は掛かりますが、米国の製造業国内回帰や日本・台湾経済のステップアップ等世界的な経済構造の再構成に繋がる可能性もあります。丁度その時期は第4次産業革命の真っ最中ですので、新たな環境に適合したグローバルなエコシステムを造り上げる方向性が、国としても経済界としても不可欠です。ブログ記事「エコシステムで相互作用する三つの経済性」で書いたように、連結の経済性を核に規模の経済性と範囲の経済性(前出注2)を、大混乱の最中でも獲得して行くことが、その方向性となってきます。つまり、
世界のパワーバランスに大きな変化がなければ、この大波がチャンスとなる国々も出て来そうだということです。


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 電子書籍「スマイルカーブ入門」を出版しました。

 

 長年温めていたスマイルカーブの体系化に挑んだ書です。私の知る限りでは、スマイルカーブを主役として体系化した類書は存在していないと認識していますので、かなりユニークな本に仕上がったと感じています。本ブログを愛読して頂いている読者の方にとっても、体系的な説明はお役に立つものと思っています。1月25日午前0時から3日間、無料キャンペーンを実施しますが、時刻は米国太平洋標準時なので、日本標準時では25日午後5時スタートですので、ご留意下さい。

本書のサイトについては、ここをご覧ください。スマホ版Kindle(無料)をダウンロードすれば読めます。

カバー

 内容的には、本ブログ記事の中でも人気のある「アップルのビジネスモデル転換」、「三つの経済性」、「Whyから入るマーケティング」そして日本経済と世界経済のスマイルカーブ分析を骨子に今日的に加筆修正を施しつつ編集しました。


 本の構成は、まず第1章でスマイルカーブ、アングリーカーブ、そしてフラットラインの三つのツールを説明します。続く第2章では、スマイルカーブ等を使って分析する際、大活躍をする三つの経済性を解説します。第3章から第6章では、スマイルカーブ等を実際に企業やマーケティング、そして日本および世界経済に応用したケース分析をします。そして、最後の第7章でスマイルカーブ等の作り方と活用の仕方を「スマイルカーブの方法論」として載せてあります。


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初めての方で、ブログの概要を知りたい方はKikuzakaのBlogをご覧下さい。今回はブログ記事(フィンテック銀行)の補足との位置付けですが、本記事単独でもご覧頂けます。

1.銀行とキャッシュレス化

 

QRコード決済、暗号資産(従来の暗号通貨を以下では暗号資産と表記)等のキャッシュレス化が話題になっています。とりわけ昨今ではQRコード決済が話題の主役に躍り出ているのですが、日本で浸透して行くには時間が掛かりそうです。これに関しては、日本の銀行界にはデビットカードという優れたインフラが既にありますので、それをベースにQRコード決済業務に入ることが合理的だと思われます。一方、社会的問題を引き起こしたビットコイン等の暗号資産ですが、今回はここへの銀行の進出からスタートして情報資産()の戦略的活用を考察します。なお、今回はスマイルカーブを援用しません。

 

()単なる情報の集まりを加工し、解析し、活用可能な知識のレベルにまでしたものを情報資産と呼んでいます。土地,労働,資本に次ぐ第4の生産要素との位置づけです。⇒ 私の著書(第四次産業革命の底流: 三つの経済性と情報資産 )では情報資産を詳しく解説しています。

 

2.銀行と暗号資産

 

まず、結論から言うと、銀行が、単独でビットコインのような暗号資産分野に進出しても、これからの競争状況を勘案すると得られる手数料はあまり期待できません。後述しますが、むしろ大切な観点は情報で、例えばビットコインの例を取るならば、そこから得られる情報はビット・コイン・アドレス間の取引情報で個人戦略上有益な情報資産は殆ど得られないと考えています。

ただし、クローズド型の暗号資産であれば、今後中央銀行や民間金融機関等との取引等に活用される可能性もありますので、インフラとしての位置付で取り組むことは必要であると思います。

 

3.従来からあるキャッシュレス

 

キャッシュレス化で銀行の決済業務が一部侵食されることは間違いないでしょうが、肝心なのはそのインパクトの定性・定量面を的確に想定して、対応を決定することです。

意外に思われるかもしれませんが、従来から銀行は大規模なキャッシュレス決済を提供して来ているのです。銀行が提供する主な決済手段には現金払出し、送金、口座振替、手形・小切手等があります。とりわけ、口座振替は世界に類を見ない規模でキャッシュレスを古くから実現しています()

ここでは莫大な情報が生み出されていますが、はたして銀行はこれを戦略的に活用出来ているのかは疑問です。全国展開をしているメガバンクの情報量はとりわけ大きいはずですが、敢えて言えばGAFA(Google, Amazon, Facebook, Apple)のようには戦略的活用が出来ていないように見受けます。もちろん、Webシステムとレガシー・システムの違いや法規制等の違いは承知の上ですが、GAFAは提供するサービスの対価である情報を情報資産にして莫大な付加価値を産んでいるのです。これを銀行に当てはめるなら、従来からあるキャッシュレス化で産まれ出されているビッグデータの活用を図るべきでしょう。今からでも遅くありません。

 

()私が留学していた1980年頃、米国で公共料金やクレジットカード代金を支払う場合、各会社から請求書が郵送されて来て、その金額の小切手を返送していました。しばらくすると、銀行から支払い済みの小切手の束が送られてきて、小切手帳の控えと照合するのです。なんとも手間が掛かって、紙を消費する社会だなと感じつつ、日本の口座振替システムは凄いなと再認識しました。ちなみに、金融調査研究会のキャッシュレス社会の進展と金融制度のあり方(20183)によると「わが国において2016年に行われた振込/口座振替による決済の件数 および金額は、16億件、2,905兆円とされている 」ようです。GDP500兆円程度であることを考えると、すごい取扱高ですね。

 

4.大切なのは情報流

 

さて、銀行が決済手段の提供から得られる直接的対価は、「手数料」とゼロ金利の下で縮小している「預金収支」ですが、ハッキリ言って、キャッシュレス化の進展に伴って、この一部を侵食されても、直接的影響は思うほど大きくはないはずです。それより、決済機能の一部流出によって失う情報流(商流、物流、資金流の情報)の喪失の方が戦略的には影響が大きいでしょう。それを失えば、延いては金融仲介機能にまでも影響が及んで来る虞もあるのです。従って、銀行が追及して行くべきは情報流だということです。

ちなみに、私が銀行のリテールバンキングの部長をしていた時に、銀行で得られる決済・取引情報(「貯める・増やす」、「借りる」、「支払う」、「利用する」)以外の情報としてクレジットカード等の決済情報を入手出来れば良いなと考えていました。クレジットカードは現在もキャッシュレス決済の代表ですが、当時は店頭におけるキャッシュレス決済をほぼ独占していました。この決済・取引情報を含めて顧客ごとにそれらを統合出来ればリテール戦略を構築し易いと思っていたのですが、結果として、システム予算や技術の制約で、その希望は叶いませんでした。

 

5.どうすべきか?

 

それでは、今後どうして行けば良いのかと言うと、2点あります。一つ目は、現在の決済・取引業務から得られるビッグデータを有機的に統合して、法人戦略、個人戦略、コンサルティング機能強化等へ活用することを考えるべきです。ここで、自グループだけの情報で不十分であると判断するならば、フィンテックへの参入や戦略的連携が主要な選択肢となって来ます。だた、この際にもビッグデータの戦略的活用の観点から遂行すべきで、今銀行に求められる(システムを始めとする)投資の一つはこれでしょう。

二つ目は、暗号資産のベースであるブロックチェーン技術は今後重要な存在になって来ると想定しますので、銀行界として追及すべき分野と位置付けています。なぜならば、現在のメインフレーム・コンピュータを中心とする巨大システムから分散型台帳(Distributed Ledger)システム移行への突破口になる蓋然性が高いと考えるからです。当該技術の必要性は第2項でも触れましたが、この観点からも暗号資産を手掛けるのには大きな意義があるかも知れません。

 

6.キャッシュレス化に向って本質的なこと

 

キャッシュレス化に向って本質的なことは、銀行の基本に立ち戻ってお客さまの「貯める・増やす」、「借りる」、「支払う」、「利用する」「相続する」等の決済・取引情報等を情報資産として、顧客接点を充実し、サービス対価に見合った付加価値を創造して行くことです。極端な例を挙げれば、外国では銀行の例はなさそうですが、今後大発展が予想されているMaasのハブ企業となる位の発想の大転換があっても良い気がします。そこまでは行かないとしても、当面資金需要の盛り上りを期待できない時代にあっては、銀行もGAFAのような情報資産領域に入っていく必要がある時代を迎えています。結局は、そうして行くことが顧客の立場に立った金融サービスとなり、それこそが銀行にとってのキャッシュレス化ではないでしょうか。

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