2006年08月11日

Brilliant Trees/David Sylvian

Brilliant Trees/David Sylvian

ジャパン解散後2年を経て、1984年に発表したデヴィッド・シルヴィアンのソロ第一段がこの「Brilliant Trees」です。

ジャパン解散間際になってシングル「Ghosts」がヒットしたため人気も絶頂の時期であり、ソロ第一段という期待感もあってか、シルヴィアンの作品としてはジャパン時代も含めて英チャートで最高位の4位を記録しています。

このジャケットは発表当時のものと違うので、少し残念な気もしますが、デジタルリマスターものなので、音質の方は多少良くなっていると思われます。

「Brilliant Trees」は、シルヴィアンのソロアルバムの中では最もポップな作品で、ジャパン時代の常にチャートを意識していた時代と、その後のよりアート志向な作品との間に制作されているため、シングルとなり得るようなわかりやすい構成の曲が多いのが特徴です。

しかし、わかりやすいとはいえ、フリージャズ的に参加ミュージシャンの個性を重視し、有機的な構築の仕方をしているようで、ヒットチャートを賑わすようなパターン認識で作られている曲とは趣が違います。

ジャパンの作品と比べると、エレクトロニクスは多用しているもののアコースティックなウッドベースやブラスなどを使い、ジャズ/アートロック寄りなアプローチをしているのでオーガニックなイメージの残るアルバムです。

よく聴けばわかるのですが、ジャパン時代のシルヴィアンの特徴でもあったファルセットを要所要所に織り交ぜて歌う、ある意味セクシーな歌唱法は、解散後の作品では一切聴かれず、良い意味で枯れた感のあるストレートな歌唱法に変わっています。

参加ミュージシャンはかなり豪華で、元ジャパンで実弟のスティーヴ・ジャンセン、リチャード・バルビエリの他、坂本龍一、元カンのホルガー・シューカイ、独特のトランペット音で有名なジョン・ハッセルや、映画音楽なども手掛けるマーク・アイシャム、フリューゲルホーンのケニー・ウィーラー等、個性的な音を出す面子をシルヴィアンが上手くまとめあげているのが実に見事です。

アルバム「Brilliant Trees」のレコーディング風景

1曲目「Pulling Punches」は力強いリフで、手法的にはジャパンの「The Art of Parties」的な雰囲気があり、第1弾シングルに予定されていたものの、ジャパンの延長線上に置かれるという誤解を招かないよう先送りされ、第2弾シングルとなった曲です。

「Pulling Punches」のプロモ映像

2曲目「The ink in the Well(邦題:詩人の血)」は、いきなりジャズライクなアプローチで、ウッドベースとブラシワークのドラムが印象に残る叙情的な名曲で、第3弾シングルとなりました。
プロモーションビデオはシルヴィアンらしさの良く出たモノクロの繊細なもので、ソロ作品のなかでは個人的に一番好きなPV映像です。

「The Ink in the Well」のプロモ映像

3曲目「Nostalgia」はアンドレイ・タルコフスキー監督の映画「ノスタルジア」にインスパイアされて作った曲らしく、静寂感のある重たい暗闇の中に滴る水滴のようにも感じるギターのフレーズが美しい曲で、このアルバムの中では最もアート色が強く感じます。

4曲間の「Red Guitar」は第1弾シングルに選ばれた曲で、スティーヴらしいテクニカルなドラムと、間奏におけるインプロっぽい坂本龍一のピアノが見事な曲で、ヴァージンのコンピなどにも収録されるほどで、シルヴィアンの作品の中では最も有名な曲となりました。
アントン・コービンが監督を務めた意味ありげなモノクロのプロモーション・ビデオも印象に残る、まさしく第一段シングルにふさわしい曲です。
なお、ビデオに登場するおじいさんは、アンガス・マクベインという1930〜40年代に活躍したシュールな肖像を撮る写真家で、彼の作品の中にフローラ・ロブソンという女優を胸まで土に埋めて撮影した写真があったらしく、それをモチーフにしてこのプロモは製作されています。
決して「戦メリ」のデヴィッド・ボウイを意識した訳ではないのです。

「Red Guitar」のプロモ映像

5曲目「Weathered Wall(邦題:嘆きの壁)」は、ジョン・ハッセルの作品に近いアンビエント感あふれる作品で、実におちついた雰囲気の曲です。
間奏部分での国籍不明のボイスは、恐らくホルガー・シューカイのラジオワーク的なもので、ジョン・ハッセルのペット音と非常に良くなじませてあります。
もちろん歌詞的にはかなり宗教色の強い作品となっております。

TV番組での「Weathered Wall」のライヴ映像

6曲目「Backwater(邦題:よどみの中に)」は、このアルバムでは一番実験的なもので、シンセベースの短いインダストリアル系のフレーズが延々に繰り返される中、バックのパッド系の音が徐々に変化するという、いわゆるミニマル・ミュージックの基本的な楽しみ方ができる曲です。

7曲目の「Brilliant Trees(邦題:輝ける樹木)」は、少々大袈裟な言い方かも知れませんが、私が41年生きてきた中で最も好きな落ち着く曲で、私のお葬式にはこの曲で出棺して欲しいと嫁に伝えているほどの曲なんです。
キリスト教的な教会音楽にも聴こえるこの曲は、自問自答するシルヴィアンの宗教的な意味合いの強い歌詞を含み、パイプオルガンのフレーズにもありそうなキーボードをバックに、シルヴィアンのボーカルと、ジョン・ハッセルの国籍不明の不思議な音のメロディーとが掛け合いながら光を見いだしていく様は、私にとっての究極の癒しなのです。
また、ジョン・ハッセルはスタジオ入りすると、まず、あぐらをかいて瞑想をするらしく、そういうイメージからもある種のメディテーション・ミュージックといった趣のある曲です。
歌が終わってからエンディングにかけてのパーカッションは雅楽に使われるもののような音色で実に気持ちの良い音を奏でています。
この曲を聴くと心拍数が徐々に落ち着いて行くような気がするのもわかっていただけるかと思います。

初期ジャパンで作り上げられてしまった「ミーハーお化粧バンド的なイメージ」は、すでにこの時点でどこにもありません。
/BLマスター

uknw80 at 13:54│Comments(2)TrackBack(0) - David Sylvian 

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この記事へのコメント

1. Posted by のほほん   2006年08月12日 02:27
「Brilliant Trees」ですね♪
このアルバム、デビッド作品の中でも一番良く聴いていました。
私のはカセットテープだったので、
もうかなりガタガタになるまで聴きまくりましたよぅ。
楽曲的には「Nostalgia」が一番好きです。
タルコフスキーの映画の方も好きでした。
デビット作品において私は、
モノクロームな静寂感が出ているものが、
楽曲・PV・ジャケ写共に一番好きなんです。
「このジャケ写のデビシル、素敵!」
と、当時中3にして萌ゆるのほほんなのでありました。。。
2. Posted by BLマスター   2006年08月12日 16:48
のほほんさん、まいどです。
実は私、このアルバムは5枚も持っているんですよ。(アホでしょ〜っ)
輸入盤LP、日本盤LP、日本盤CD、ボックスセット「Weather Box」の中の1枚、リイシューCD。
12inchシングルもすべてコンプリートしてます。
浪速のシルヴィアンこと、BLマスターは全曲歌詞を見ずに歌えるほど覚えていたりするほど本格派のシルヴィアン・バカなんです。

最近のデビのバンド「NINE HORSES」も良い感じですよ。
よかったらぜひまた聴いてあげて下さいね。

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