2007年05月30日

Greatest Hits/HEAVEN 17

Greatest Hits/HEAVEN 17

ヘヴン17 [ Heaven 17 ] は、ヒューマン・リーグ [ The Human League ] の創設者であり、初期の音楽的中枢を担っていたマーティン・ウェア [ Martyn Were ] とイアン・グレイグ・マーシュ [ Ian Craig Marsh ] が、同バンドを脱退後、1981年に B.E.F (British Electric Foundation) というプロダクション・チームを設立、その中で、グレン・グレゴリー [ Glenn Gregory ] をボーカルに迎えて結成した3人組のユニットです。

ちなみに、グレン・グレゴリーはヒューマン・リーグ結成時にフィル・オーキーと共に、ボーカリストとして候補に挙がっていた人物で、B.E.F.名義の作品においてもボーカリストとして参加しています。

マーティンとイアンはヒューマン・リーグの音楽的中枢だったとは書きましたが、『DARE!』発表時のフィル・オーキー [ Philip Oakey ] のインタビューで「ヒューマン・リーグにも初めて和音の弾けるキーボーディストが加わったので、音楽的な幅が一気に広がったんだ」というような発言を自慢げに話していることから、彼らの演奏技術が特に優れていたわけではないことは理解できます。

しかし、演奏技術だけで良い音楽が生まれるわけではありません。

特に、電子楽器がメインとなるニューウェーヴ・グループにおいては、演奏技術よりも電子楽器の操作技術やセンスがものを言う世界であり、実際、有名なグループでも指1本でシンセサイザーを演奏していたアーチストが大勢います。

ま、逆に言えば、彼らのデビュー当時、ポリフォニック・シンセ(和音の出せるシンセ)はまだまだ超高級品だったため、一部のお金持ちバンドしか使えず、若手バンドの中ではモノフォニック・シンセ(単音しか出せないシンセ)が主流だったわけなんですが・・・。

こういった、演奏技術を重視するのではなく、出音やアイデアで勝負する様式こそが、パンク以降に生まれたニューウェーヴの特色で、この頃から既存のジャンルを混合させるミクスチャー的発想を持ったグループが増え始めたように思います。

もちろん、ヘヴン17もその中の一つで、60〜70年代のソウルやファンクを、当時の電子楽器を用いてエレクトロ・ポップ的要素を強め、新たなダンス・ミュージックとして再構築していたわけです。

言わば、新生ヒューマン・リーグがクラフトワーク的な、無機質で非人間的なアプローチの新しいダンス・ミュージックであるのに対し、ヘヴン17は有機的なソウルやファンクを一旦解体し、無機質な電子楽器で再構築したダンス・ミュージックだったのです。

そういう意味では、いわゆる「ブルー・アイド・ソウル」とは別の流れであり、どちらかと言えば、ヤズー [ Yazoo ] に代表される「エレクトリック・ソウル」に近い風合いを感じますし、出音やコンセプトこそ違うものの、往年の名曲をエレクトロ・ポップに再構築したタコ [ TACO ] との共通点も見いだすことができます。

初期の彼らのサウンドは、エレクトリック色が非常に強いのですが、次第に生楽器を使う割合が増えて行き、メイン・ストリーム的なサウンドに変化してしまったのが個人的には残念に思います。

しかし、電子楽器の進化により、生楽器との差がなくなってしまったことや、彼ら自身の音楽的な成熟の過程、また、メイン・ストリームの音楽的進化を考えれば、それも当然のことなのかも知れません。

いずれにせよ、シンプルで格好の良いサウンドを展開していることには変わりなく、「クール」や「モダン」といった表現で語られることが多かった彼らですが、これは、1st『Penthouse and Pavement』(1981) のジャケットの絵に見られるやり手のビジネスマン的なイメージも手伝っているような気もします。

きっと、彼らのことですから、そういったイメージ戦略までも、B.E.F.設立の時点で練られていたのでしょうね。

本作は、昨年発表された、そんな彼らのベスト盤で、貴重なデモ・バージョンなど含む全19曲収録のCDと、15曲のプロモーション・ビデオを収録したDVDの2枚組です。
(DVDの方はリージョン・フリーですので、どんな再生環境でも問題なく観れますよ。)

「Temptation」のプロモ映像
「Temptation REMIX1992」のプロモ映像
「Let Me Go」のプロモ映像

最近の彼らの動向ですが、ヘヴン17としての活動は不定期ながら現在も行われており、今年3月にはビリー・マッケンジーのトリビュート・ライヴで演奏もしているようです。

今年3月の「Let Me Go」のライヴ映像
(随分、おじさんになりましたが、声は変わっていませんね。

また、ボーカルのグレン・グレゴリーは85年にZTTレーベルから、プロパガンダ [ Propaganda ] のクラウディア・ブルッケン [ Claudia Brucken ] と共同名義でシングル「When Your Hear Runs Out Of Time」を発表したり、アグリー [ Ugly ] というユニットでも活動、また、ソロ・プロジェクトとなってしまったABCの『Skyscraping』(1997) ではマーティン・フライ [ Martin Fry ] の新しい右腕としても活躍しています。

なお、プロダクション・チーム B.E.F.としては、ヘヴン17の活動と並行して『Music For Storeway』『Music for Listening To』『Music of Quality and Distinction(邦題:ポップス黄金狂時代)』などの作品を発表しており、ティナ・ターナーやアソシエイツのビリー・マッケンジー、チャカ・カーン、レイラ・ハサウェイ、リヴィング・イン・ア・ボックスのリチャード・ダービーシェア、テレンス・トレント・ダービー、ニック・プリタス [ Nick Plytas ] などを迎えた豪華なオムニバスのような内容となっています。。

本作は、アマゾンでほとんどの曲を試聴可能ですので、未聴の方は、ぜひ一度お聴きになってみて下さい。
今聴いても、充分カッコよさをご理解いただけると思います。
/BLマスター

uknw80 at 17:25│Comments(10)TrackBack(0)The Human League | ☆英国のその他のアーチスト

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この記事へのコメント

1. Posted by hasebon   2007年05月30日 21:45
5 HEAVEN 17 ありがとうございます。輸入版のファーストとセカンド買ったのですが、バンドの事が良くわからなくて困ってました。メンバーがマーティンのskyscrapingのときのパートナーだったとは、驚きです。じつはABCの「UP」のCDが傷ついていて、近所の古本屋に3年前(!)「UP」のCDあったの思い出して、今日行きましたよ。まさかとは思いましたがありました(泣)検品H15・9となっておりました・・・・500円でした・・・夜、車で聞くのにマッチしますよね「UP」て。僕だけ?ヒットしなかったのがわかりません地味なジャケットのせい?
2. Posted by 華龍   2007年05月30日 21:59
きゃ〜懐かしい〜。
あ、( ̄. ̄)ノ”こんばんわぁ〜♪
ヘヴン17、好きでしたねぇ。好きだったけど、なぜか、このアルバムしか憶えてないです。今もやっているって事に驚きました(* ̄- ̄)
3. Posted by BLマスター   2007年05月31日 21:57
hasebonさん、まいどです。
こちらこそ、リクエストありがとうございました。
ABCの「UP」ですが、私も世間の反応と同じく、評価は決して高くはありません。
きっと、1stをリアルタイムで聴いた人間にとっては、ハウス仕様になってしまったABCをABCだと認めたくないんでしょうね。
恐らく、同じ作品をABCではなく、新人バンドが発表したのであれば、もう少し評価は高かったように思います。
決して悪くはない作品ですからね。
4. Posted by BLマスター   2007年05月31日 22:03
華龍さん、まいどです。
実は、私もこの記事を書くにあたっていろいろ調べてみて、初めてまだやっていることを知ったんですよ。
恥ずかしながら、驚きました。
日本では、ヒューマン・リーグの陰に隠れて、いまいちパッとしませんでしたが、本国では違うんでしょうね。
しかし、今の方がルックスとサウンドが合っているような気がします。
5. Posted by チンシャ猫   2007年06月02日 00:41
初めまして。
先日何かを検索してるときにここへたどり着きました。
Heaven17はTemptationで知って、レコードを借りた記憶があります。
あの太い声がなにげに新鮮で好きでした。
数年前に輸入盤のベストCDを買ったら、ほかにもいろいろ覚えのある曲が入ってました。

このブログの記事タイトルを見てると懐かしい名前が出てきますね。
どうやら私も同年代のようです。
6. Posted by TY   2007年06月04日 11:54
すいません、記事とは関係ないのですが、HASYMOの発表できる新情報を、ちょっと前に発表になった細野さんが音楽を担当する、士郎正宗原作の『アップルシード』の続編のフルCGアニメ、『エクスマキナ/EX MACHINA』の主題曲に「RESCUE」が決定。タイトルのスペルもこちらで決定です。今度出るシングルはそのRMX。映画のプロデュースはジョン・ウーです。
夏のYMOが参加するライヴにマイケル・ナイマンの参加も決定みたいですね。
7. Posted by BLマスター   2007年06月04日 18:26
チンシャ猫さん、初めまして。
コメントありがとうございます。
同年代の方とは、嬉しい限りです。
彼らは、日本ではイマイチ認知度が低いようですが、本国ではかなりの人気だったようですね。
個性的な声はフィル・オーキーに負けず劣らずで、印象に残ります。

これからもよろしくお願い致します。
また、よろしければコメント下さいね。
8. Posted by BLマスター   2007年06月04日 18:34
TYさん、まいどです。
あらら、ジョン・ウーがCGアニメのプロデュースとは意外ですね。
また、ナイマンの参加するライヴも興味深いところです。
いったい、どんな曲をどんな形式で演奏するんでしょう?
恐らく、オーケストラではないでしょうから、ピアノ1台ってところでしょうか。

そうそう、息子が見ているNHK教育の『バーディー』というフルCGアニメも細野さんですよね。
しかも、エンディングで歌うのはあのやきこさん。
我々世代には嬉しいところです。
9. Posted by さばとら   2008年05月06日 00:33
こんばんは。
3件目のコメントになります。

HEAVEN17 めちゃくちゃ懐かしいです!!

Penthouse and Pavementよく聴きました!!

最近のLive映像、カッコイイです♪
また聴きたくなりましたよ。
アマゾンで注文しちゃうかも・・・
10. Posted by BLマスター   2008年05月14日 20:53
さばとらさん、まいどです。
個人的には、Heaven17と言えばポップなイメージが浮かんできますが、B.E.F.と言えば、とたんにクールなイメージに変わってしまいます。
これって「Penthouse and Pavement」のジャケットのイメージなのかも知れません。
いずれにせよ、かっこいい音を出すグループですから、現在でも通用するんでしょうね。
いや〜、それにしてもかっこいいです。

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