2007年12月21日

Visage/Visage

Visage/Visage

今日は、前回のウルトラヴォックス [ Ultravox ] に続いて、1980年発表のヴィサージ [ Visage ] の1stアルバム『Visage(邦題:フェイド・トゥ・グレイ)』を紹介します。

ヴィサージとは、当時ニューウェーヴ系のクラブでDJやオーガナイザーとして人気を集めていたスティーヴ・ストレンジ [ Steve Strange ] を中心とするプロジェクト・グループ。

サウンド面では、この後ウルトラヴォックス [ Ultravox ] でフロントマンとなる元リッチ・キッズ [ Rich Kids ] のミッジ・ユーロ [ Midge Ure ] が中心となり、ウルトラヴォックスのビリー・カーリー [ Billy Currie ] 、元リッチ・キッズのラスティ・イーガン [ Rusty Egan ] 、元マガジン [ Magazine ] で後にスージー&ザ・バンシーズ [ Siouxsie & The Banshees ] に加入するジョン・マクガフ [ John McGeoch ] 、同じく元マガジンのデイヴ・フォーミュラ [ Dave Formula ] とバリー・アダムソン [ Barry Adamson ] らが脇を固めるという、なんとも贅沢なデビュー・アルバムです。

噂によると、スティーヴ・ストレンジはビリー・アイドル [ Billy Idol ] と同級生だったそうで、高校卒業後、彼に誘われて、故郷ウェールズからロンドンに上京しています。

ビリー・アイドルと言えば、スージー&ザ・バンシーズのスージー・スー [ Siouxsie Sioux ] らと共にセックス・ピストルズ [ Sex Pistols ] の親衛隊だったことでも有名ですが、スティーヴもやはり彼らと同じようにパンクの洗礼を受け、自らのバンドを結成したそうです。

とはいえ、バンド活動は性に合わなかったのでしょう。
何度か形を変えてバンドを結成し直すものの、どれも長続きはしなかったようです。

しかし、この頃から始めたクラブDJの方は順調だったようで、ここで、同じくDJを努めていた元リッチ・キッズのラスティ・イーガンと出会っています。

2人がコンビを組んでイベントを行ったのは、当時ロンドンで人気の "ビリーズ" というクラブで、それまで主流であったブラック系のディスコ・ミュージックに逆らって、あくまでも "ノン・ブラック" にこだわり、デヴィッド・ボウイ [ David Bowie ] ロキシー・ミュージック [ Roxy Music ] ニナ・ハーゲン [ Nina Hagen ] 、クラフトワーク [ Kraftwerk ] あたりのニューウェイヴの元祖的存在のアーチストの曲を流すDJとして名が売れたようです。

ちなみに、この後、スティーヴの主催する「ボウイ・ナイト」にデヴィッド・ボウイ本人が訪れたことがきっかけとなり、ボウイのプロモ・ビデオ『Ashes To Ashes』に出演、このことがDJ、オーガナイザーとしての人気にさらに拍車をかけました。

そんなDJ活動を続けるうちに、ポスト・パンクの時代が到来、ウルトラヴォックスやゲイリー・ニューマン [ Gary Numan ] などが電子楽器をメインに据えた曲作りをするようになり、それに連れて彼らの選曲も変化、徐々に同世代のエレクトリック・ポップの先駆者的なアーチストの曲をかけるようになったようです。

なお、後にイギリスはもとより、アメリカでも人気を博すことになるカルチャー・クラブ [ Culture Club ] やデュラン・デュラン [ Duran Duran ] など、後にチャートを賑わすそうそうたるバンドのメンバーがビリーズの常連だったそうで、YMOの1stアルバムをロンドンのクラブでいち早く流したのもスティーヴらしいです。

つまり、言い換えれば、これらの有名アーチストが駆け出しの頃に、スティーヴとイーガンがDJとしていろんな面白い曲を聴かせたことで第2次ブリティッシュ・インベンションの基盤が確立されたと言っても過言ではないわけです。

何だか「風が吹けば桶屋が儲かる」的な話ではありますが(笑)、もちろん、ロキシー・ミュージックやデヴィッド・ボウイ、クラフトワーク、そして我らのYMOのからの影響も少なからずあったというわけですね。

この後、”ビリーズ” から ”ブリッツ” や ”ヘル” に場所を移したスティーヴとイーガンのイベントは、噂が噂を呼んでさらに規模を拡大、いつしか当時のスティーヴを真似た中世風のグラマラスなファッションに奇抜なメイクで踊るというスタイルが定着しました。

しかし、パンク・ファッションがそうであったのと同じく、安い古着をアレンジして自分たちなりのスタイルを完成させていましたので、決して高価な衣装に身を包んでいたわけではありません。

恐らく、ファッションの面では、これがニューロマンティック・ムーブメントのきっかけとなっているわけですね。

この人気に気を良くしたスティーヴとイーガンは、既存のレコードをかけるだけでは飽き足らず、自ら、このムーブメントに即したダンス・ミュージックを制作することを決意します。

イーガンは、早速、リッチ・キッズ時代の仲間であったミッジ・ユーロに声をかけ3人でデモテープを制作、これをイベントで流し好評を得ます(以前紹介したベスト盤に収録)。

続いて、このプロジェクトを本格的に始動させるため、スティーヴ、ミッジの広い交友関係からビリー、ジョン、デイヴ、バリーらのサポート・メンバーを集めたのです。

これがヴィサージの始まりです。

ちなみに、ヴィサージというプロジェクト名は、[ Visual ] (独特なスタイルの服を着る人たちがフォローする)、[ Visa ] (音楽の世界へのヴィザになる)、[ Age ] (80年代のエイジのためのダンス・ミュージックになる)の3つの言葉からなる造語だとのこと。

こうして完成した本作は、エレクトリック・ポップ的なアプローチを全面に散りばめた当時最先端のダンス・ミュージックであったと言えるでしょう。

ヨーロピアン・ムード漂う曲調はもちろんのこと、1.2.3.、6.7.8.がノンストップでメドレー風に繋がっていたりするところは、いかにもニューロマンティック・イベントのダンスフロアに持ってこいな雰囲気です。

また、サウンド・コラージュ的なイントロやエンディングの技、電子楽器と生楽器の違和感のないミキシング・テクニック、浮遊感のあるシンセサイザーの音色などは、今聴いても勉強になる見事な職人芸と言えましょう。

これでスティーヴの歌がもう少し上手ければ、もっとすばらしいアルバムになったようにも感じるのですが、おかげで、歌を引き立てるための伴奏になり下がることなく、演奏自体をしっかり楽しめる作品になっているのですから、これはこれで "味" としてとらえるのが正しいのかも知れません(笑)。


最後に、LPレコードのライナーに載っていたスティーヴのインタビューに収録曲の解説がありましたので、簡単に紹介させていただきます。

「Visage」は、スタイル、ファッションを新旧かかわらず、服にクリエイトしていくこと、「Blocks on Blocks」は、ベルリンの壁のことを歌った曲、「The Dancer」は、誰かがボクにダンスをしてみせてくれるというイメージ、「Tar」は、タバコがクセになるという忠告、「Fade To Grey」は、ベルリンの壁から老人を見た時に、長生きすべきなのかどうなのかということを考え、それを曲にしたもの。
「Marpaso Man」は、クリント・イーストウッドの映画マルパソを曲名に使い、彼に対する称賛みたいなものを曲にした。
「Mind of Toy」は、新しいおもちゃを欲しがってはすぐに飽きてしまう男の子と女の子のことを曲にしたもので、成長していく2人の恋愛問題について書いた。
「Moon Over The Moscow」は、ロシアのことを感じて曲にしたんだけれど、モスクワ・オリンピックの時に作ったので、それらしき音も聴けると思う。
「Visa-Age」は、何かに滅入った時とか、ロンドンにいるのに飽きた時、どこかに誰かと、あるいは一人で数日間離れて、気分を一新させるということ。
「The Steps」は、フィルムのテーマ・ミュージックのようなもの。
…とのことです。

「Visage」のプロモ映像
「The Dancer」のプロモ映像
「Fade To Grey」のプロモ映像
「Mind Of A Toy」のプロモ映像

TV番組での「Fade To Grey」のライヴ映像「(口パク)
テレビ番組での「Mind Of A Toy」のライヴ映像(口パク)
2005年のTV番組での「Fade To Grey」のライヴ映像

このアルバムの発表当時、スティーヴは21歳。
この次の年には、”パレス” (通称:カムデン・パレス)という自らの城(クラブ)を作り、時代の寵児となったわけですが、それにしても活気と自信に満ちあふれていますよね。

時代を象徴する派手な出で立ちであっただけに、ヴィサージをイロモノ扱いされる方も大勢いらっしゃると思うのですが、このアルバムをしっかり聴けばそんなイメージは吹き飛んでしまうことでしょう。

実に良く出来たアルバムです。

作品としての完成度の高さを堪能したいという方は本作を、代表作をまとめてお聴きになりたい方は、以前紹介したベスト盤をチョイスされると良いでしょう。

ちょうど現在もブラック・ミュージックから影響を受けた音楽が全盛の時代ですから、こういった "ノン・ブラック" のダンス・ミュージックをウリにする作品を聴くことで、何か新しいものが発見できるかも知れません。

ニューロマンティック・ムーブメントの源流の一つである本作は、「80's UK New Wave」を語る上で、決して外すことはできない偉大な傑作です。
/BLマスター

uknw80 at 21:20│Comments(10)TrackBack(0)ULTRAVOX | ☆英国のその他のアーチスト

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この記事へのコメント

1. Posted by Anthony   2007年12月22日 14:03
「Steve Strange & Visage Mark 2」として、今でも活動して新曲も出してますね。

POCHい
2. Posted by ピザ味   2007年12月23日 22:44
BLマスターさん初めまして!
本当はULTRAVOXの時にコメントしようかと思ったのですが好きなバンドの各メンバーが集結しているVisageにさせて頂きました。
なんて贅沢なプロジェクトだったのかと改めて思いますね。しかも結果としてミッジ・ユーロをフロントに立てた新生Ultravoxが誕生するきっかけとなったプロジェクトだった訳ですから後々のUKの音楽的歴史からも見ても大変に大きな収穫?(笑)だった気がします。今でもメンバーの現在の音を追ったりしているのですが、唯一残念なのが好きなギターリストだったジョン・マクガフが既に故人で有る事ですね。結構、リスペクトされていたギターリストだっただけに今でも存在していたら様々なバンドを渡り歩きながら彼ならではの格好いいギターサウンドを聞かせていたに違い有りません。そんな彼が関わった1stをレコードで久々に聴こうと思います。
3. Posted by BLマスター   2007年12月25日 22:02
Anthonyさん、まいどです。
そして、ポチッ、ありがとうございます。
実は私、最近になって知ったのですが、どうやらそのようですね。
しかも「Fade To Grey」は、最新バージョンに形を変え、今でも演っているそうで…。
怖いもの見たさで、見たいような気もするのですが、間違いなく来日公演はあり得ないでしょうね(笑)。

4. Posted by BLマスター   2007年12月25日 22:10
ピザ味さん、初めまして。
コメントありがとうございます。
う〜ん、確かにジョン・マクガフはカッコいいギターを弾きますよね。
残念です。
ちょうど、次回、ジョン・マクガフ繋がりで、スジバンの「Juju」を紹介しようと思っていたのですが、彼が加入しことで一気に音が変わりましたものね。
キャラ的にはそんなに目立たない人でしたが、もっと評価されても良いギタリストだと思います。

そんなわけで、また次回もコメントお待ちしておりますので、よろしくお願い致します(笑)。
5. Posted by Anthony   2007年12月28日 00:57
スティーヴ・ストレンジ先生といえば、テレタビーズ人形を万引きして逮捕された時は、笑いましたが...

やっぱり、ミュージック・シーンを語る上では重要人物ですね。

Pochi
6. Posted by BLマスター   2007年12月30日 22:58
Anthonyさん、まいどです。
ありましたよね〜っ、そんな事件(爆)。
確か、化粧品と一緒に万引きしたように憶えているのですが、まだ普段から濃い化粧してロンドンを歩いているんでしょうか(笑)。
やはり、偉大な業績を残した人物には変人が多いようで…(笑)。

7. Posted by しお加減   2008年01月03日 21:34
改めて、BLマスターさんの知識に惚れ惚れ♪ です。
当時のあのへんの人達の交流関係とか、、そういえば、そんな記事読んだ事あったなぁ。。って、、懐かしい思いで一杯。。
8. Posted by MATCHY   2008年01月17日 02:33
はじめまして。VISAGEでネットサーフィンしたらここに辿り着きました。よろしくです。スティーブストレンジ先生は今もご活躍だそうでよかったです。万引き事件のときは、もうだめか〜、落ちぶれたなと落胆したのですが...。またこうして活動しているとは...。ところで、ビートボーイ以降のアルバム、”ストレンジ・クルーズ”の情報ありませんか?彼の兄と組んだことまではわかっているのですが...。
9. Posted by BLマスター   2008年01月19日 14:42
しお加減さん、まいどです。
お褒めの言葉、ありがとうございます。

しかし、よくよく考えてみると、面白い交流なんですよね。
元アイドルグループのメンバーと遊び人風クラブDJ、そして、パンク流れのメンツ…。
う〜ん、普通ではありません(笑)。
きっと、ニューウェイヴの原点って、そういうところから出てきた人たちがごちゃ混ぜになって生まれたのかも知れませんね。
10. Posted by BLマスター   2008年01月19日 14:54
MATCHYさん、初めまして。
コメントありがとうございます。

最近のヴィサージに関しては情報が少ないのですが、MY SPACEの『Steve Strange & Visage Mk II』で、「Fade To Grey 2005」がフルサイズで聴けたり、ちょっとした情報を得ることができますよ。

 ↓ こちらです。
http://www.myspace.com/visageofficial

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