2008年03月08日

Weatherbox/David Sylvian

Weatherbox/David Sylvian

一昔前、活動歴の長いアーチストのアルバムを数枚1パックにした、いわゆる「限定ボックス・セット」をリリースするのが流行りましたよね。

当時の「ボックス・セット」というのは、LPレコードが全盛だった時代の作品をCD化して、何らかのオマケをつけてセット売りしたものがほとんどなので、言ってみれば、コレクターズ・アイテム的なものだったわけなんですが、それでも熱狂的なファンにしてみれば嬉しいリリースでした(金銭的には問題ですが…笑)。

恐らく、こういったセットを購入するファンの方(私も含めて)は、レコードで既に持っている作品も、CD化された時に買い直していることが多いため、音源としてダブらせてしまっていると思うのですが、自分の大好きなアーチストの作品だけは特別ですよね。
ファンというのは、たった数曲の未発表曲やパッケージ違い、予約特典のポスターやブックレットなどに心を奪われてしまうものですから…(笑)。

そのアーチストに興味のない方からすれば、なんという無駄遣い…と、あきれてしまうことでしょうが、ファン心理ってそんなものなんですよね。


今日紹介するのは、私の崇拝するデヴィッド・シルヴィアン [ David Sylvian ] の1989年発表のボックス・セット『Weatherbox(邦題:ウェザーボックス)』です。

内容的には、それまでのシルヴィアンのソロ名義の音源、『Brilliant Trees』(1984年)、『Alchemy: An Index of Possibilities(邦題:錬金術)』(1985年)、『Gone To Earth(当時の邦題:遙かなる大地へ)[ 2枚組 ] 』(1986年)、『Secrets Of The Beehive』(1987年)という作品を5枚のCDに収め、58ページからなるスペシャル・ブックレットと共に豪華なボックスに封入したもの。

ウェザーボックス3

特に目新しい楽曲やバージョン違いが追加されているわけでもないので、音源的には魅力はなかったのですが、『Alchemy: An Index of Possibilities』に関してはこれが初CD化でした。

本作が発表されるまで『Alchemy: An Index of Possibilities』は限定カセットか、12inchシングルでしか聴くことができませんでしたので、初めてノイズのないクリアな音質で聴くことができたことが嬉しかったのを覚えています。

ただし、本作に含まれる『Alchemy』には、シングルのみで発表された「POP SONG」(1989年)のカップリング曲だった前衛っぽいアンビエント作品「The Stigma Of Childhood (Kin)」と「A Brief Conversation Ending In Divorce」が追加されていますので、現在アマゾンで購入できる『Alchemy: An Index of Possibilities』や、カセットのみで限定発売された時とは内容が異なっています。

しかし、それ以外のディスクに関しては発表年のオリジナル盤と全く同じ内容で、追加曲はおろか、リマスタリングやリアレンジなども一切施されていないようです。


では、何が魅力なのでしょう。

まず、1枚づつ別の柄がCDケース自体にシルク・スクリーン印刷されており、トータルなアート作品となっていること。

ウェザーボックス1ウェザーボックス2

ちなみに、このボックス・セットのデザインは、シルヴィアンとのインスタレーションを行ったことでも知られるラッセル・ミルズ [ Rusell Mils ] とデイヴ・コッペンホール [ Dave Coppenhall ] によるもので、シルク印刷やボックスの組み立てを見る限り、恐らく、かなりの手作業が必要だったことが想像できます。

また、スペシャル・ブックレットに関しては、各楽曲のクレジットが一度に確認できると共に、この年までのソロワークの全てを記したカタログ的なページが付属しており、ラッセル・ミルズのアートと一緒に楽しめます。

ただし、写真に関してはモノクロのが2枚だけですし、歌詞も一切載っていませんので、このあたりを重視される方にはおすすめできません。

ブックレットに挟まっているポスターのようなものも、ラッセル・ミルズらしいデザインは施されているものの、シルヴィアン作品の年表的なものなので、飾って楽しむようなものではありません。

つまり、外見上はデヴィッド・シルヴィアンとのコラボレーションによるラッセル・ミルズの立体作品的なものと考えていただいたら良いかと思うのです。

そして、中身に関しては、最もレコード(もしくはカセット)のミックスに近い状態で楽しめるCDと言うことができるでしょう。

シルヴィアンの意図していないボーナス・トラックが含まれていない分、本来あるべき形の一つの作品として聴くことができるのです。

ファン心理としては微妙なところですが(笑)、シルヴィアン自身のオフィシャル・アルバムには本来収録されていないはずの「Forbidden Colours(邦題:禁じられた色彩)」(戦場のメリー・クリスマスのテーマのボーカル入りバージョン)などが追加されているのはレコード会社側の売るための仕掛け的なものであり、作品としては蛇足ですからね。

つまり、音的な意味では、本作が、シルヴィアン自身の意図していた形の音源といえるわけです。


ところで、本作に付属のブックレットの表紙に「Tree」「Stone」「Earth」「Water」「Light」という5つの意味深なワードが書かれています。

それぞれのディスクのケースにシルク印刷された図柄と照らし合わせてみると、「Brilliant Trees=Tree」「Alchemy=Stone」「Gone To Earth=Earth」「Gone To Earth instrumental=Water」「Secrets Of The Beehive=Light」と解釈することができるのですが、このコンセプトが後付けでないとすれば「Brilliant Trees」制作までの間に、すでにここまでの作品の構想は完成していたことになります。

確かに、これらをテーマとして各アルバムを制作していたとしても何ら不思議ではないのですが、そうなるとカセットや2枚組などの変則的な発表の仕方をとったのはおかしいですよね。

そこで、私なりに考えてみたのですが、それぞれの作品自体は発表ごとに完結、しかし、それらの作品をひとつにまとめる際に、5枚で一つの作品として楽しめるようそれぞれのディスクにサブ・テーマを作り、全体に『Weatherbox』という名称をつけた。

映画に置き換えれば、それぞれ監督、出演者の違う一話完結のショート・ムービーをまとめたオムニバス映画に、別の大テーマがあるようなもので、すべてを見終わった後に初めて大テーマを解釈できるような構造になっているのかも知れません。

そう考えると…、いやはや、壮大な作品です。



最後に、アマゾンでは紹介されていませんでしたので、全ての収録曲を紹介しておきます。

なお、曲タイトルにアンダーラインの入ったものは、いつものようにYouTube映像(イメージ映像を含む)をリンクしてありますので、よろしければご一緒にご覧くださいませ。


Disc 1 『Brilliant Trees』
1. Pulling Punches (5:01)
2. Ink In The Well (4:29)
3. Nostalgia (5:39)
4. Red Guitar (5:07)
5. Weathered Wall (5:40)
6. Backwaters (4:49)
7. Brilliant Trees (8:35)

Disc 2 『Alchemy』
1. Words With The Shaman (Songs From The Tree Tops) Pt. 1 Ancient Evening (5:14)
2. Words With The Shaman (Songs From The Tree Tops) Pt. 2 Incantation (3:28)
3. Words With The Shaman (Songs From The Tree Tops) Pt. 3 Awakening (5:16)
4. The Stigma Of Childhood (Kin) (8:28)
5. A Brief Conversation Ending In Divorce (3:28)
6. Steel Cathedrals (3:28)

Disc 3 『Gone To Earth』
1. Taking The Veil (4:40)
2. Laughter And Forgetting (2:40)
3. Before The Bullfight (9:45)
4. Gone To Earth (3:01)
5. Wave (9:13)
6. Riverman (4:53)
7. Silver Moon (6:07)

Disc 4 『Gone To Earth instrumental』
1. The Healing Place (5:27)
2. Answered Prayers (3:09)
3. Where The Railroad Meets The Sea (2:51)
4. The Wooden Cross (4:59)
5. Silver Moon Over Sleeping Steeples (2:21)
6. Camp Fire: Coyote Country (3:50)
7. A Bird Of Prey Vanishes Into A Bright Blue Cloudless Sky (3:15)
8. Home (4:30)
9. Sunlight Seen Through Towering Trees (2:59)
10. Upon This Earth (6:24)

Disc 5 『Secrets Of The Beehive』
1. September (1:17)
2. The Boy With The Gun (5:18)
3. Maria (2:50)
4. Orpheus (4:48)
5. The Devil's Own (3:11)
6. When Poets Dreamed Of Angels (4:45)
7. Mother And Child (3:12)
8. Let The Happiness In (5:33)
9. Waterfront (3:22)

なお、本作の日本盤は、ヴァージンU.K.で発表された作品に日本でシールを貼付けただけですので、内容的には輸入盤であり、シールと予約特典だったポスター以外、何ら違いはなく、日本語解説やライナーノーツなども追加されていませんでした(U.S.盤も同じのはずです)。

そんなわけで、初めてデヴィッド・シルヴィアンを聴こうという方や、ベスト盤的な作品をお探しの方には向かない作品ですが、よりシルヴィアンを理解したい方や、熱狂的なファンの方にはおすすめします。
/BLマスター

uknw80 at 17:00│Comments(2)TrackBack(0) - David Sylvian 

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この記事へのコメント

1. Posted by 英文10秒毎日チャージ!   2008年03月13日 08:04
5 おはようございます。

デヴィッド・シルヴィアンは繊細なアーティストという感じを受けました。
孤高の人というかナイーブさが強調されているみたいな感じですが・・・

愛沙の「英文10秒毎日チャージ!」
英検もTOEFLもTOEIも恐れるに足らず!
十字架を背負った女「マドンナ」がロックの殿堂入り!
こちらにもお越しください。
2. Posted by BLマスター   2008年03月13日 22:09
英文10秒毎日チャージ!さん、初めまして。
コメントありがとうございます。

おっしゃる通りですね。
そんな繊細でナイーブなシルヴィアンが大好きです。
いや、好きを超えて崇拝しています(笑)。

よろしければ、じっくり聴いてみてくださいね。

ところで、ブログを拝見させていただいて気がついたのですが、シルヴィアンとマドンナは同世代(シルヴィアンが一つお兄さん)なんですね(笑)。

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