2008年06月13日

Closer/Joy Division

Closer/Joy Division

先月5月18日は、ジョイ・ディヴィジョン [ Joy Division ] のボーカリスト、イアン・カーティス [ Ian Curtis ] の28回目の命日でした。

その命日にちなんでか、先月半ばから、ジョイ・ディヴィジョンとイアン・カーティスの死をテーマにしたグラント・ジー [ Grant Gee ] 監督のドキュメンタリー映画『JOY DIVISION』が公開されています。

映画『JOY DIVISION』の日本版トレーラー映像
映画『JOY DIVISION』HP

今日は、遅ればせながら、この映画の公開に合わせて、イアン・カーティスの遺作となったジョイ・ディヴィジョンの2ndアルバム『Closer(邦題:クローサー)』(コレクターズ・エディション)を紹介したいと思います。


ジョイ・ディヴィジョンといえば、大ヒットした「Love Will Tear Us Apart(邦題:ラヴ・ウィル・テア・アス・アパート)」というシングルが有名ですが、ボーカリストのイアン・カーティスのドラマティックな死のせいか、他の曲を聴いたことがない人や、リアルタイムで曲を聴いたことがない若年層の音楽ファンにも名前だけは浸透しているようです。

「Love Will Tear Us Apart」のプロモ映像

もちろん、ニュー・オーダー [ New Order ] の前身バンドとして興味を持ったという人も多いことでしょうが、わずか2枚のオリジナル・アルバムしか発表していない30年近く前のグループのドキュメンタリー映画が、今頃になって新たに編集、公開されるというのは、彼らが以降の音楽シーンに大きな影響を与えている証拠と言えましょう。

ジョイ・ディヴィジョンの結成は、バーナード・アルブレクト [ Bernard Albrecht ] とピーター・フック [ Peter Hook ] 1976年6月4日に行われたセックス・ピストルズ [ Sex Pistols ] のライヴに衝撃を受けたことがきっかけになっているのだとか(ちなみに、バーナード・アルブレクトは、後のバーナード・サムナー [ Bernard Sumner ] のことで、アルブレクトはナチスにまつわる芸名とのこと)。

余談ですが、ウィキによれば、この日のピストルズのライヴの観客数はわずか42人だったそうで、彼らの他に、ジョイ・ディヴィジョンの所属したファクトリー・レコード [ Factory Records ] の設立者トニー・ウィルソン [ Tony Wilson ] 、ジョイ・ディヴィジョンや初期のU2等をプロデュースしたマーティン・ハネット [ Martin Hannett ] 、ザ・スミス [ The Smiths ] のモリッシー [ Morrissey ] 、シンプリー・レッド [ Simply Red ] のミック・ハックネル [ Mick Hucknall ] 、ザ・フォール [ The Fall ] のマーク・E・スミス [ Mark E. Smith ] などがいたそうです。

このライヴでサポートを努めたバズコックス [ Buzzcocks ] のピート・シェリー [ Pete Shelley ] とハワード・デヴォート [ Howard Devoto ] も含め、後のポストパンク世代を牽引する蒼々たるメンツが顔を揃えていたわけですよね。

その後、バーナードとピーターはメンバー募集によってイアン・カーティス、スティーヴン・モリス [ Stephen Morris ] と出会い、1977年4月、ジョイ・ディヴィジョンの前身となるバンド、スティッフ・キトゥンズ [ Stiff Kittens ] を結成、一旦、デヴィッド・ボウイ [ David Bowie ] の『Low』収録曲からその名をとったワルシャワ [ Warsaw ] というグループ名に変更するものの、似たようなグループ名のバンドがあることを知り、混同を避けるために、イアン発案のジョイ・ディヴィジョンへと変更、1977年暮れにマンチェスターのインディーズ・レーベル、エニグマ [ Enigma ] と契約を交わし、4曲入りEP『An Ideal For Living』でデビューしました。

ちなみに、ジョイ・ディヴィジョンを直訳すれば「喜び事業部」というような意味になるんですが、これは、第二次世界大戦時、ナチス将校の慰安用に女性を強制収容していた施設の通称なんだそうで、どこか、某国の「喜び組」にも通じるところがありますね。

ここからの彼らは、ものすごいスピードで知名度を上げていくことになります。

まず、78年にマンチェスターのクラブ、エレクトリック・サーカスの閉店を記念して作られた10inch盤のライヴ・アルバム『Short Circuit Live: at the Electric Circus』にバズコックスやザ・フォールらと共に参加、同年、トニー・ウィルソン企画のテレビ番組に出演したのがきっかけで、設立されて間もないファクトリー・レコードに移籍、さらに翌年、ファクトリー・レコードのサンプラー的な2枚組オムニバスEP『A Factory Sample』にキャバレー・ヴォルテール [ Cabaret Voltaire ] や、ドゥルッティ・コラム [ The Durutti Column ] などと共に参加、その際にプロデュースを担当していたマーティン・ハネットと出会い、彼のプロデュースでシングル「Transmission」と1stアルバム『Unknown Pleasures(邦題:アンノウン・プレジャーズ)』を発表。

このアルバムが、設立して間もないレーベルの新人バンドとしては驚異的なセールスを記録し、英国の音楽誌の評論家の絶賛を受けます。

「Transmission」のプロモ映像

恥ずかしながらスティッフ・キトゥンズやワルシャワ時代の曲を聴いたことがないので、あまり偉そうなことは言えないのですが、それまでの彼らのサウンドは、ピストルズの影響を受けたありがちなパンク・ロックだったとか(現在、ワルシャワ名義の過去のアルバム『Warsaw』がCD化されていますので、興味を持たれた方は聴いてみて下さい)。

しかし、徐々にイアンの作る絶望や孤独を感じさせる重い歌詞が表面化、また、この時代に徐々にバンド・アンサンブルの中に導入され始めたシンセサイザーの効果や、マーティンのプロデュースの腕も一役買って、一般的なパンクとはひと味違った独自の音楽性を持つようになったそうです。

この1stアルバムからも、確かにパンクの流れを汲む荒っぽさは感じるのですが、ドアーズ [ The Doors ] のジム・モリソン [ Jim Morrison ] を思わせるイアンの陰鬱なボーカルや、マーティン・ハネットの計算し尽くした綿密なアレンジのおかげで、他のポストパンク系のグループとは一線を画す存在感を感じます。

決して演奏が上手いわけではありませんし、歌が上手いわけでもないのですが、この退廃的、かつ哲学的な楽曲は、一度ハマってしまうと病み付きになってしまう何かを持っているのです。

個人的には、初期のパンクがストレートに社会への不満をぶちまけたアクティブな表現であったのに対し、ジョイ・ディヴィジョンは内省的な葛藤を哲学的に音楽で表現したようなイメージを持っています。

そんな詩を書いていたイアンは、精神的に追いつめられたのでしょうか、いや、逆に、精神的に追いつめられていたからそんな詩が書けたのでしょうか、初のアメリカ・ツアーを3日後に控えた1980年5月18日、マンチェスターの自宅で首つり自殺してしまうのです。


本作『Closer』は、イアンの死から4ヶ月後に発表された2ndアルバムなのですが、録音自体は生前すでに完成していたそうです。

つまり、アーチストの死後すぐに発表されたアルバムにありがちな「アウトテイクの寄せ集め」もしくは、「レコード会社選曲のおざなりなベスト盤」的な作品ではなく、れっきとしたジョイ・ディヴィジョンの2ndアルバムなのです。

しかし、イアンの死をニューアルバムの宣伝材料にしたくない、というファクトリー側の意向から4ヶ月もの期間があけられたそうで、利益主義のメジャー・レーベルとは違う所属アーチストへの心遣いをひしひしと感じさせてくれます。

内容の方は、自殺者の生前最後の作品だけあって、陰鬱で重たい空気が漂っています。

ひょっとすると、本作の歌詞自体が、イアンの遺書だったのかも知れません。
この病的なまでの緊張感はなかなか他のアルバムでは感じることができないでしょう。

もちろん、自殺を肯定するわけではありませんが、自ら死を決意した人間の魂から生まれる強烈なメッセージが、単なる流行の音楽ではなく、永遠不滅の芸術作品として、我々の心のなかに鋭い爪痕を残すのです。

そういう意味では、本作のジャケット・デザインは見事です。


なお、本作の中に「Love Will Tear Us Apart」ほどキャッチーな楽曲は収録されていません。
ポップな楽曲がないわけではないのですが、メロディー・ライン的な意味でキャッチーさを感じないのです。

しかし、方法論で聴く現代音楽のような小難しい楽曲が収録されているわけでもありません。
あくまでも、ロック〜ポップスをベースにした楽曲ではあるのですが、どこか退廃的で哲学めいたイメージを感じさせるのです。

わかりやすく説明すれば、初期のバウハウス [ Bauhaus ] のバッキングにニューオーダー的な電子楽器の要素をプラス、それらをバックに少々音痴気味のジム・モリソンが歌っているところを想像していただければ良いかも知れません。

曲によってはヒステリックなギターの音が入っていないため、バウハウス的なイメージとは違うことがありますが、全体的な印象としてはまんざら的外れではないと思います。

本作をまだお聴きになったことがない方は、とりあえず下のYouTubeのリンクで音を聴いてみて下さい。
プロモ映像ではないものの、本作の収録曲を全て見つけることができました(収録順に並んでいます)。

「Atrocity Exhibition」(音のみ)
「Isolation」の映像
「Passover」(音のみ)
「Colony」のライヴ映像
「Means to an End」の映像
「Heart and Soul」の映像
「Twenty Four Hours」(音のみ)
「The Eternal」を使った映像作品
「Decades」の映像

いかがでしたか?
はっきり言って、演奏も歌も上手いわけではないのですが、ここまで強烈な印象を残す作品はなかなかないでしょう。

私のように英語の意味を理解できない方は、できれば日本盤を手に入れて、歌詞対訳を追いながら聴かれることをおすすめします。

なお、上で紹介している盤は、昨年10月に発表された2枚組の日本盤リミテッド・エディションで、DISC1は、オリジナル盤の初リマスター音源、DISC2は、1980年2月8日にロンドン・ユニオン大学で行われた貴重な未発表のライヴ音源です。

DISK2は必要ないという方は、今のところ中古盤しかありませんが『Closer』を、ベスト盤をお探しの方は、先月発売されたばかりの日本盤2枚組ベスト『ザ・ベスト・オブ・ジョイ・ディヴィジョン』をどうぞ。
/BLマスター

uknw80 at 20:03│Comments(4)TrackBack(1)NEW ORDER 

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この記事へのトラックバック

1. 時が過ぎるのは早いもので・・・  [ 歌詞の秘密 ]   2008年06月14日 01:57
... ライブ映像まで見れたりして でもそのなかでも特に坂井泉水さん 直筆の歌詞...

この記事へのコメント

1. Posted by まさ   2008年06月15日 22:51
5 初めまして。
最近ここを知りました

大変懐かしい&勉強に成ってますよ


今回のアルバムは当時日本盤で購入しました〜New orderを聴いて前のバンドをと買いました!

当時は学校終わると新宿の輸入盤屋さんのハシゴでしたね。

今でも当時のバカ高いLPは大切に保管して有ります。

ちなみに、Depeche Mode命でしてね(((^_^;)

年を取ったせいか…最近はネオアコなんかも聴いてます。
ブログ頑張ってね下さい。
2. Posted by BLマスター   2008年07月08日 20:22
まささん、初めまして。
コメントありがとうございます。
お返事が遅くなって申し訳ありません。

そうそう、当時のUK盤LPは妙に高価でしたよね。
US盤のLPが出ていれば、日本盤より安かったんですが…(笑)。
今ではパソコン上で楽に探すことができる上、当時の半値近くで購入できるんですから、良い時代になったものです。
おまけに音質も向上してますからね。
難を言えば、ジャケットが小さくなったくらいでしょうか(笑)。

ちなみに、私の元相方もDepeche Mode命です。

よろしければ、またちょくちょく遊びにいらして下さいね。

3. Posted by Madchester   2008年07月29日 21:32
初めて寄らせて頂いています。

いつも誤解されそうな言葉ですけど、Joy Divisionいいですよね。
最近いっぱいコンピやベストが出て、必要ないのについつい、ついて行ってしまします。

リンク先も含めて1度で読みきれませんでしたので(笑)、また寄らせていただきます。
4. Posted by T.F.   2008年12月03日 17:33
■JOY DIVISIONの真実に迫る
■■ドキュメンタリー映画『JOY DIVISION』
■■■超豪華特典封入でいよいよ12月19日(金)発売!!
■■■■http://www.myspace.com/joydivisionfilm

『JOY DIVISION』プレミアム・パック(特別BOX仕様)TMSS-112 ¥9,975(税込)
*特典映像(計78分)収録 *特製アウターBOX入りデジパック仕様 *封入特典:オリジナルTシャツ、特製台紙入り映画フィルムコマ、ステッカー、パンフレット など

『JOY DIVISION』デラックス・エディション(通常仕様)TMSS-113 ¥4,935(税込)

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突然失礼いたしました!
どうぞ宜しくお願いします!!

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