2009年11月16日

Between Tides/Roger Eno

Between Tides/Roger Eno

今日紹介するのは、ロジャー・イーノ [ Roger Eno ] のソロ2作目となる1988年発表の『Between Tides』。

ロジャー・イーノはご存知アンビエント・ミュージックの巨匠ブライアン・イーノ [ Brian Eno ] の実弟で、自称「非音楽家」の兄とは対照的にクラシックを基礎からしっかりと学んでいる「音楽家」です。

彼の名前がクレジットされた作品は、私の知る限り、1983年に発表されたブライアン・イーノ&ダニエル・ラノワ [ Daniel Lanois ] の『Apollo』が最初ですが、それ以前はクラブなどでピアニストとして活動していたそうで、知人の紹介で精神病院で音楽治療の仕事に携わったことを機に自身の作品を制作するようになったのだとか。

ソロ一作目となった前作『Voices』は精神病患者のための音響治療を目的に制作された作品で、作曲と演奏はすべてロジャー1人によるもの。

エリック・サティ [ Erik Satie ] の提唱した「家具の音楽」を思わせるシンプルでおだやかなピアノに、兄ブライアンの影響を感じさせる浮遊感のあるパッド系のシンセサイザーが加わることで、聴感上はニューエイジ系のアンビエントものに仕上がっていました。

わかりやすく説明するなら、サティの「3つのジムノペディ」的な音数の少ないピアノに、深いエコーのかかったフワ〜っと系のシンセサイザー音色が重なっている感じでしょうか、作り自体は非常にシンプルながら、心地よい浮遊感を感じられる実に味わい深いアルバムです。

『Voices』「A Paler Sky」を使った映像
『Voices』「Voices」の映像(音のみ)

ま、『Voices』に関しては以前書いた記事をご覧いただくとして、今回紹介する『Between Tides』は、聴感上、前作とは違ったアプローチで制作されています。

ロジャーのピアノに、ヴァイオリン×2、ヴィオラ、チェロの弦楽四重奏、さらにクラリネット、フルート、パーカッションを加えた室内楽的なサウンドの作品で、前作ほど深めの空間処理は行われておらず、また、特徴的な電子楽器の音も聴こえてきません。

それゆえ、さらっと聞くと真っ当な室内楽のアルバムのように感じるのですが、じっくり聴けば、それぞれの曲の中に起承転結や抑揚といった要素が少なく、ニューエイジやアンビエントでいうところのミニマル・ミュージック的なアプローチが施されていることがわかります。

よせてはかえす海の波のように、短めの旋律が延々と繰り返される…、そしてそこに、一日の中に満ち潮と引き潮があるように、もしくは日が昇り沈みするように、長めのスパンで旋律の変化が訪れる…、少々大袈裟な表現かも知れませんが、それぞれ短い一曲(2分から7分で13曲収録)の中にそんな緩やかな変化を感じられる曲調です。

つまり、聴感上はクラシック的な響きを持っているのですが、『Voices』と同様にブライアン・イーノのアンビエント・ミュージック的な発想で制作されており、メディテーション・ミュージック、もしくはヒーリング・ミュージックな要素を持っている、そんなアルバムが『Between Tides』なのです。

そういう意味では「アンプラグド『Voices』」的なアルバムと言っても良いかも知れません。
さすがにメイン・ストリーム系のサウンドがお好きな方には退屈な作品かもしれませんが、アンビエント・ミュージック系のサウンドがお好きな方やヒーリング・ミュージックがお好きな方、また、クラシックがお好きな方や電子楽器の音に嫌悪感を持っておられる方にも楽しんでいただけると思います。

余談ですが、私の友人が院長をやっている歯科医院では待合室のBGMに使うCDのライブラリーに本作が含まれているそうで、今でも2〜3日に一度くらいのペースで流しているのだとか。

残念ながらamazonでもYouTubeでも音源が立ち上げられておりませんでしたので試聴していただくことはできませんが、私の友人のように個人病院の待合室やマッサージサロンのBGMに使うのもよし、サティの提唱した「家具の音楽」のような聴き方で生活に溶け込ませて無意識に聴くのもよし、ヘッドホンでじっくり聴き込んで瞑想するもよし、睡眠誘発剤、もしくは睡眠改善薬代わりににベッドに入って聴くもよし、いずれにしても、ゆったりとしたひと時を演出してくれる心地よい1枚です。


なお、本作のプロデュースは前作のダニエル・ラノワに代わって、デヴィッド・シルヴィアン [ David Sylvian ] やキング・クリムゾン関係の作品やライヴでトリッキーなギター・プレイを聴かせてくれたマイケル・ブルック [ Michael Brook ] が担当(※演奏には参加していないようです)。

前作ではトリートメントという名目でクレジットされていたブライアン・イーノは本作に参加しておらず、代わりに空間的な処理を、ある意味エフェクトにかけては専門家といえるマイケル・ブルックに依頼、マイケルは作品の趣旨を理解し、できるだけナチュラルな処理でアルバム全体をプロデュースした…、そんなところでしょうか。

ちなみに、録音は13曲中9曲がビートルズでおなじみのアビー・ロード・スタジオ、3曲がウッドブリッジのセント・ジョーンズ・チャーチ、1曲がロンドン・クイーン・エリザベス・ホールで行われており、じっくり聴き込めば、それぞれの空間が持つ独特の響きも感じ取れるかも知れません。

最後になりましたが、カバー・アートは前回とりあげた『Ember Glance』ラッセル・ミルズ [ Russell Mills ] が担当、生楽器を使ったニューエイジ系のサウンドとナチュラルな素材を現代アート風に仕上げたジャケットが見事に調和しています。

興味を持たれた方は、ぜひご一聴下さい。

恐らくヘヴィー・ローテーションになることはないと思いますが(笑)、いろんなシーンで聴き込んだり聴き流せたりできる息の長いアルバムですよ。

/BLマスター

uknw80 at 18:44│Comments(2)TrackBack(0)Roger Eno 

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この記事へのコメント

1. Posted by 音楽人気ランキング娯楽部   2009年11月22日 03:20
今晩はー
リンクさせていただきました
もしよろしかったら相互リンクおねがいします
ご検討のほどよろしくお願いいたします

音楽人気ランキング娯楽部
http://269g.2-d.jp/06music/
2. Posted by Takeuchi   2009年12月02日 01:46
是非お聞き頂きたくコメントさせて頂きました。

異才作曲家.未知瑠MICHIRUによる、 渾身の1stアルバム 12/5リリース!

*国境を越えて、4名の女性ボーカリストが参加。
Julia Marcell http://www.myspace.com/juliamarcell
寺尾紗穂 http://www.tblegs.com/terao/win/home.html
岡北有由 http://www.myspace.com/ayuokakita
大塚茉莉子

*12/5日本先行発売、2010年全世界リリース。
※MySpace で全曲試聴する事が出来ます
http://www.myspace.com/michiru.jp

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