ABC

2010年07月31日

The Lexicon Of Love : Deluxe Edition 2CD Set/ABC☆

The Lexicon Of Love Deluxe


今日紹介するのは、ABC☆のデビュー・アルバム『The Lexicon Of Love(邦題:ルック・オブ・ラブ)』(1982年)に当時の未発表曲、デモ・トラック、ライヴ音源などを追加、さらに32ページのブックレットを封入した豪華な2枚組の『The Lexicon Of Love : Deluxe Edition 2CD Set』(2004年発売)です。

なお、この記事を書いている時点でアマゾンの商品リンクに紹介されている写真がモノクロになっていますが、実際のジャケットはオリジナル盤に忠実な色調の4面デジパックに「DELUXE Edition」と印刷された透明のカバーがついています。

この商品ページから私が購入したCDの写真を載せておきますので、興味を持たれた方は下記の写真をクリックして拡大の上ご覧ください。

The Lexicon Of Love Deluxe 2

さて、ABC☆について詳しいことは以前書いた記事(左サイドバーにある Artists Categories のABCをクリックすればご覧になれます)をご覧いただくとして、早速、本作に収録された曲の紹介からさせていただきます。

まず、本作は下記のような5つのセクションの分かれています。

☆DISC1

 PART ONE : THE ORIGINAL ALBUM
 ・オリジナルの『The Lexicon Of Love』をまるごと収録したセクション。

 PART TWO : THE ORIGINAL SINGLES
 ・シングルとして発表された音源とB面曲を収録したセクション。

 PART THREE : AN OUT-TAKE AND AN ODDITY
 ・『The Lexicon Of Love』の未発表曲を収録したセクション。

☆DISC2

 PART FOUR : THE ROUTE TO THE LEXICON
  ・デビュー前のデモ・トラックを収録したセクション。

 PART FIVE : THE LEXICON OF LOVE
 LIVE AT HAMMERSMITH ODEON,NOVEMBER 1982
  ・1982年にハマースミス・オデオンで行われたライヴを収録したセクション。


◆DISC1のPART ONE(M-1〜M-10)は基本的にオリジナルの『The Lexicon Of Love』と同じ内容なので個々の曲の解説は省かせていただきますが、旧盤に比べると(時代の流れで)録音レベルが大きくなっているためか、音圧が上がって迫力が増しているように感じました。

ちなみに、うちのカーナビについているオーディオは、ライヴ音源やメドレー曲など、切れ目なく録音された音源の途中にチャプターがふられている場合に限りわずかな空白(無音部分)が生じるのですが、残念ながら本作も旧盤CDと全く同じく、DISC 1の4曲目「Tears Are Not Enough」の頭に3曲目の「Meny Happy Return」の最後の残音が残っています(全く同じ箇所)。

つまり、切れ目の生じない一般的なCDプレーヤーでも「Meny Happy Return」だけを聴こうとすると前曲の残音から始まるわけですね。

元々が意図的に曲間を詰めてメドレー風に仕上げてあるため、曲の頭ピッタリでチャプターをふるのが難しかったのかも知れませんが、どうせリマスタリングをするなら、ついでにこういった箇所も修正していただきたかったところです。

あと、10曲目の「The Look Of Love(Part 4)」(オリジナル盤の最後の曲)のエンディングが微妙にフェードアウトしているのが気になります。

いや、間違いなく最後の一音まで収録されてはいるんですが、最後の最後で微かににボリュームが下がるんですよ。

ひょっとすると何か意図があったのかも知れませんが、レコードや旧盤CDに慣れた耳には違和感が残るところです。

これは旧盤にはなかった問題なので、旧盤と比較して欠点を指摘するとすればこの部分でしょうか。

ま、それでも全体的な出音としては旧盤よりヌケが良く気持ちいい音色になっているように思います。


◆続いては、シングルとそのB面曲で構成されたセクションPART TWO(M-11〜M-15)を紹介しましょう。

なお、このセクションは本作からのシングルを全て網羅しているわけではなく、「Overture」「Tears Are Not Enough 7"」「Alphabet Soup 12"」「Theme From "Man Trap"」「Poison Arrow Jazz Mix」という5曲を選んで収録しています。

ちなみに、アルバム・バージョンとほぼ同内容のシングル「Poison Arrow」「All Of My Heart」、日本でのみシングルカットされた「Valentines Day」、また、12inchシングル「The Look Of Love」に収録されていた「The Look Of Love Part 2」「The Look OF Love Part 3」、1999年に発表された「The Look Of Love 1999Mix」は省かれています。

M-11「Overture」
「All Of My Heart」のB面に収録されていた楽曲で、言わば『The Lexicon Of Love』のオーケストラ版メドレー曲。
ところどころにマーティンの声も入ってはいますが、基本的にはインスト曲で、初来日公演ではタイトル通り前奏として幕が開く前にこの音源が流され、開幕後の「Show Me」のイントロ部分の生ストリングスに引き継がれるというタメの利いた演出がなされました。
なお、DISC 2に収録されているロンドン・ハマースミス公演では生オケ+ピアノで演奏されています。

M-12「Tears Are Not Enough 7"」
アルバム『The Lexicon Of Love』に先駆けて発表された7inchのデビュー・シングルに収録されたバージョンで、ドラムにキツめのコンプが掛けられている反面、ZTTっぽいゴージャスな空間処理がなされていないせいか、アルバム・バージョンとは明らかに雰囲気の違うミックスになっています。
言わば、ZTTレーベルのプロトタイプといったところでしょうか。
アルバム・バージョンが完成形だとすれば、まだまだ粗い部分を感じますが、これはこれでホーン・セクションがより引き立ってファンク色が強く感じられるのでカッコ良くもあります。

M-13「Alphabet Soup 12"」
彼らのデビュー作となった12inchシングル「Tears Are Not Enough 」のB面曲で、かなりファンク色の強い楽曲です。
アルバム『The Lexicon Of Love』とは少々毛色の異なる楽曲ですが、トレヴァー・ホーン[ Torevor Horn ] がプロデュースする前のABC☆はこういうファンクっぽい曲を演るバンドだったのだろうと想像させてくれます。
この曲は、恐らく、スタジオ・ライヴの一発録りなのでしょう、少なめの観客の歓声の中、マーティン・フライ [ Martin Fry ] のシャウトと各楽器の掛け合いが楽しめる臨場感たっぷりの録音で、ライヴ時のノリノリの雰囲気を感じ取ることができます。
ちなみに、来日公演時、3幕目の最初にこの曲が演奏されているのですが、恥ずかしながら、つい最近までこの音源を聴いたことがなかったため、ライヴ用に制作されたメンバー紹介用の楽曲だと思っていました。

M-14「Theme From "Mantrap"」
ABC☆のビデオ作品『MANTRAP』のテーマとして使われた楽曲で、簡単に言えば「Poison Arrow」のしっとりとしたジャズ・バージョン、もしくはラウンジ・シーケンス・バージョンです。
実はこの曲、昔から疑問に感じていることがあって、12inchシングルに限らず、これまでに収録された盤全てに、イントロの4小節目の最後あたりに”ジリッ”という短いノイズが入っているんですよ。
最初は12inchシングルで聴いたので、レコードの盤面のキズだろうと思っていたんですが、その後、何度かCD化された時にも全て同じ箇所に同じノイズが入っていたので、マスターテープの時点から混入しているのだと思われます。
しかし、ボーカル・パートを抜いただけの同曲インスト・バージョンにはこのノイズが入っていません。
つまり、問題のノイズはボーカル・トラックに混じってしまったと考えられるわけなんですが、ボーカルが始まる前のイントロ部分なのですから、トラックごとミュートして消すこともできたのではないかと思うのですが…。
曲自体がムチャクチャ渋くてカッコいいだけにもったいないところですが、一瞬のことですので目をつぶってやってください(笑)。
ちなみに、来日公演では、2幕目の最初にこの曲が演奏されました。
未聴の方にはぜひ聴いていただきたいクールなアレンジの「Poison Arrow」です。

「Theme From "Mantrap"」のYouTube映像

M-15「Poison Arrow Jazz Mix」
ロング・バージョンの「Poison Arrow」に別メロの管楽器(フルートかな?)と少々細かな技の入ったピアノとギターがミックスされた1985年発表のジャズ・ミックス。
個人的には初めて聴くバージョンだったんですが、ブックレットの表記を見る限り、1985年にリリースされている既出の音源のようです。
なお、Jazz Mixということで、M-14の「Theme From "Man Trap"」と勘違いされることも多いのですが、こちらは通常バージョンの「Poison Arrow」に手を加えたリミックスっぽい作りの曲で、原曲のファンクっぽい要素はしっかりと残っています。

「Poison Arrow Jazz Mix」のYouTube映像


◆続いては、DISC1の最後となるPART THREE(M-16〜M-17) は『The Lexicon Of Love』のアウトテイク曲(未発表曲)を収録したセクションです。

M-16「Into The Valley Of The Heathen Go」
この曲は1stアルバムの頃のABC☆とはちょっと違った印象のヘビーな曲です。
さすがにアウトテイクですので、私も本作で初めて耳にした曲なのですが、いかにもデモテープっぽく、フェードインで始まり、尻切れとんぼなカットアウトで終わるという珍しいミックスが施されています(笑)。
ま、良く言えばパワフル、悪く言えば雑な印象ですが、それなりに手を施せば2ndアルバム『Beauty Stab』に収録されていても違和感はないかも知れません。

M-17「Alphabet Soup - BBC Swanpshop Version. 29/11/81」
こちらは基本的に M-13の「Alphabet Soup 12"」と同じ曲ですが、録音場所が違うのか、各楽器のアレンジ、バランスが微妙に異なっています。
13と17をじっくり聴き比べてみると確かに違うことはわかりますが、さらっと聴き流す分には同じ曲が2回収録されているようにも感じますので、個人的には少々蛇足な気もします。



◆続いて、DISC 2の最初に収録されるPART FOUR(M-1〜M-3)は、彼らのデビュー前のデモ用に録音された3曲です。

M-1「Tears Are Not Enough」
この曲に関しては、デモの段階でほとんど完成されていたのか、アレンジに関してシングル・バージョンと大きな違いはありません。
アルバム・バージョンの間奏で聴かれるバロックっぽいハープシコードのフレーズや全編に流れるヴィブラホン風の音色など、ZTTの面々によるゴージャスな飾り付けが施されていないためかファンク色が引き立っています。
やはり、完成形がアルバム・バージョンだとすれば、デモはデモでしかないのでしょうが、それでも若さを感じさせるマーティンの歌声は魅力的です。

M-2「Show Me」
これは面白い音源です。
確かにあの「Show Me」ではあるのですが、ベースラインが全く異なっており、歌詞やメロディーラインもサビの♪ショウミーショウミーショウミザッツ〜の部分以外は別モノになっており、もちろん、イントロ部分のストリングスはありません。
簡単に言えば、ファンク色が強くてメロディーにキャッチーさがない「Show Me」なのですが、これがZTTの手に掛かるとあの「Show Me」になることを考えると、整形手術の術前と術後を比較した写真を見ているようで、ある意味、超貴重な音源ではあります。
アルバム・バージョンは前奏のストリングスありきのアレンジですが、ライヴの途中にこの曲を演るのならこういったアレンジも良いかも知れません。
しかし、この音源のステファン・シングルトン[ Stephen Singleton ] のサックス・ソロは素人耳で聴いてもかなりヘタクソです(笑)。

M-3「Surrender」
この曲はひょっとするといわゆる未発表曲なんでしょうか、私は初めて聴きました。
正直言ってあまり印象に残らない曲ですが、きっちりZTTがミックスを施した後であれば『The Lexicon Of Love』の中に収録されていても違和感のない佳曲にはなったことでしょう。
音痴なシンセのフレーズが若干気になりはしますが、それなりにファンキーで無難な楽曲ですから、B面曲にも使えたと思います。



◆そして、最後は本作の目玉とも言えるPART FIVE(M-4〜M-14)、ABC☆が1982年に英国ハマースミス・オデオンで行ったライヴの超貴重な音源です。

MANTRAP彼らのライヴ音源は、オフィシャルでは1982〜1983年のワールドツアーの映像にストーリーを加味しサスペンス映画仕立てにしたジュリアン・テンプル監督のビデオ作品『MANTRAP』(現在廃盤、現在のところDVD化の予定はないようです)と、1997年のロンドン公演の模様を収めたCD『Lexicon of Live』のみ。

しかも『Lexicon Of Live』の方はほとんどマーティンのソロ的ライヴなである上、黄金期といえる『The Lexicon Of Love』からの曲は5曲だけ…、もちろん、このライヴはライヴで1997年までの活動を総括した興味深い音源ではあるのですが、どちらも品薄で入手困難となっていますからこのライヴ音源のCD化はまさに涙もの、特に、1984年の日本公演をご覧になった方なら当時の感動が再びよみがえってくることでしょう。

さて、肝心の内容ですが、個々の楽曲は、尺を長くしたりフレーズをいじってみたりと、それなりにライヴ用のアレンジは施されていますが、基本的にはアルバム『The Lexicon Of Love』に忠実な演奏でZTTらしいゴージャスな雰囲気が活かされています。

録音状態も非常に良く音質はクリア、ちゃんとしたオーディオで聴けば各楽器の定位までわかるバランスの良いミックスです。

曲目は以下の通り。
いつものようにYouTube映像(ビデオ作品『MAN TRAP』からの映像、本作からの音のみのものも含む)をリンクしておきましたので、興味を持たれた方はタイトルをクリックしてご覧になってみて下さい。

4. Overture
5. Show Me
6. Many Happy Returns
7. Tears Are Not Enough
8. Date Stamp
9. The Look Of Love
10. All Of My Heart
11. Valentine's Day
12. 4 Ever 2 Gether
13. Alphabet Soup
14. Poison Arrow (Encore)


蛇足ですが、日本公演はこのライヴの一年半後だったので、恐らく、ほとんどメンツやセットは同じだと思うのですが、本作のM-4「Overture」は日本公演とは違って生ストリングス+ピアノで演奏されており、そこから「Show Me」のイントロのストリングス部分をカットしてM-5の本編へと突入しています。

M-4からM-5の間で幕が開いたのかどうかはわかりませんが、個人的には日本公演バージョンの「Overture(テープ音源)」〜開幕〜生ストリングスによる「Show Me」のイントロ〜「Show Me」の方が気に入っています。

あと、日本公演ではいちいち幕が閉まる3部構成となっており、第2部ではセンターにピアノが移動してマーティンと2人で「Theme From "Man Trap"」を聴かせてくれたのですが、残念ながら本作にはこの曲のライヴ音源は収録されていません。

そういえば、ちょうどABC☆の来日公演と前後して、彼らのルーツとも言えるロキシー・ミュージック [ Roxy Music ] の来日公演があったのですが、この時点でスタジオ・アルバムだけでも8枚も発表しているロキシーがアンコール込みで1時間半の演奏だったのに対し、まだアルバム1枚しか出していないABC☆が2時間強のショーを見せてくれたんですよ。

しかも、ロキシーのシンプルなセットに対してABC☆のセットは超ゴージャス、内容を比較してもABC☆の方がトータルイメージが統一されており、仕掛けや見せ場が盛り込まれたショーはかなり満足のいく仕上がりでした。

ちなみに、ABC☆の方は3部構成でいちいち幕が閉まったため、そのたびごとにアンコールを求める拍手がわき上がり、本当のエンディングには誰もアンコールを求めなくなってしまいました(笑)。

ひょっとすると日本公演でもアンコール用の曲が用意されていたのかも知れませんが、だとしても3部目が終わった時点でショー全体の流れは完結していたので、あれはあれで正解だったように思います。

ま、いずれにせよ、私の観たライヴの中ではかなり上位にランキングされるライヴで、今でも脳裏に鮮明に焼き付いております。

もし、このライヴの映像が残っているのであれば、ぜひDVD化をお願いしたいところです。


そんなわけで、今回もまた話が長くなってしまいましたが、本作は80年代を代表する名盤の一つであり、80年代を象徴するZTTレーベルのルーツ的な意味でも重要な作品です。

彼らのファンの方はもちろんのこと、ZTTレーベルやトレヴァー・ホーンが大好きな方にも聴いていただきたいと思います。

/BLマスター

uknw80 at 18:57|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2008年12月31日

Beauty Stab/ABC☆

Beauty Stab/ABC☆

ABCのデビューアルバム『The Lexicon Of Love(邦題:ルック・オブ・ラヴ)』(1982年発表)は、個人的に80年代のアルバムの中でベストテン入りするほどの名盤でした。

『The Lexicon Of Love』をフルでお聴きになっておられない方からすれば、大ヒットしたシングル「The Look Of Love」の印象が強く、少々ミーハーなイメージを持っておられる方もおられるかも知れませんが、当時最先端の電子楽器を使って一曲ごとに丁寧に作り込まれた、どれをシングルカットしてもおかしくないファンキーかつゴージャスな音作りと、それらをコンセプチュアル・アルバムのようにまとめ上げた見事なまでの編集技術はお世辞抜きにすばらしいと思います。

トレヴァー・ホーン [ Torevor Horn ] の斬新なプロデュース、アン・ダッドレー [ Anne Dudley ] のゴージャスなオーケストラ・アレンジ、ニック・プリタス [ Nick Plytas ] のイカしたキーボードのおかげと言えばそれまでですが、当時、新人だったマーティン・フライ [ Martin Fry ] の並外れた才能をしっかり感じ取ることができる、まさしく80年代を代表するポップスの名盤の1枚と言えるでしょう。

今日紹介するアルバム『Beauty Stab(邦題:ビューティー・スタッブ)』は、そんなデビュー・アルバム『The Lexicon Of Love』発表の翌年に発表された2ndアルバムで、前作のストリングスをフィーチャーしたゴージャスなファンク・ロックから大幅に方向転換し、ソリッドなギターが際立つロックテイストたっぷりの作品です。

とはいえ、いわゆるロックなアルバムではなく、70年代のアート・ロック的な意味合いのロックで、前作に比べればギターが前面に出てはいるものの、電子楽器を使用していないというわけではありません。

重くクラシカルなストリングスをバックに歌い上げる「By Default by Design」あたりで微かに前作のイメージが残っているものの、シングル第一弾となったパワフルな「That was then but this is now(邦題:そして今は…)」や、8ビートのリズムから突然3拍子に変化するギミックが取り入れられた「Love's A Dangerous Language」、チープなリズムボックスとピアノ、シンセサイザーで叙情的なエレポップ風に仕上げられた「S.O.S」、ピアノをバックにしっとりと歌い上げられた「United Kingdom」など、固定のジャンルに収まりきらないバラエティーに富んだ楽曲が収録されています。

「That Was Then But This Is Now」のプロモ映像
「S.O.S.」のプロモ映像
「Unzip」の映像(音のみ)

しかし、大ヒットした前作の印象が強かったためかセールス的には伸び悩み、当時の音楽誌でもあまり良いレビューは書かれていなかったように記憶しています。

実際、前作にハマった私は、発表されたばかりの本作『Beauty Stab』がどうも好きになれず、当時、アルバム1枚を通して聴くことはほとんどなかったように思います。

また、LPレコード時代に手に入れた『The Lexicon Of Love』『How To Be A Millionaire』『Alphabet City』はCDで買い直したというのに、本作だけは最近まで買い直す気になれなかったのです。

しかし、ABCというグループの作品をほぼ全て聴き、その幅広い音楽性を理解した後に本作を聴き返してみると、実に味のあるアルバムなんですよね。

結局、今更ながらCDで買い直したんですが、発表当時に聴き込んでいなかったためか、妙に新鮮な感覚でじっくりとアルバム全体の流れを楽しむことができました。

私の感覚的には初期〜中期のロキシー・ミュージック [ Roxy Music ] の楽曲をタイトにしたような曲を、ソリッドなギターと80年代のシンセサイザーやサンプリング・ストリングスなどで味付けしたアート・ロック的なイメージを持っています。

『The Lexicon Of Love』は、ファンキーなレパートリーの中にもどこか後期のロキシー・ミュージックを感じさせるジェントリーさがあったので、そういう意味では、時代を逆行したようなアルバムと言えるかも知れません。

もちろん、初期のロキシーにあった良い意味での不協和音的な煩雑さはありませんが、実は、本作のクレジットをみると面白い共通点を見いだすことが出来るんですよ。

まず、ドラムのアンディ・ニューマーク [ Andy Newmark ] とベースのアラン・スペナー [ Alan Spenner ] は後期ロキシーで活躍したことで知られるセッション・プレイヤーです。

さらに、本作に至るまでにベースのマーク・リックレイ [ Mark Lickley ] 、ドラムのデヴィッド・パーマー[ David Palmer ] が脱退したことで、正式メンバーはボーカルのマーティン・フライ [ Martin Fry ]、ギターのマーク・ホワイト [ Mark White ] 、サックスのステファン・シングルトン [ Stephen Singleton ] の3人となっています。

つまり、本作におけるオリジナル・メンバーは、後期ロキシーがフェリー、マンザネラ、マッケイであるのと同じく、ボーカル、ギター、サックスというトリオ編成で、そこにアンディ・ニューマークとアラン・スペナーという後期ロキシーのリズム・セクションが加わっているというわけです。

さすがに、メンバー構成を同じにするためにリックレイとパーマーの首を切ることはないでしょうが、偶然というにはあまりにも出来すぎた話です(笑)。

余談ですが、当時「音楽専科」という雑誌に連載されていた志摩あつこさんの漫画『8ビートギャグ』で「熱血!マーティン先生」というお話があったのですが、マーティン・フライ先生の頭の上がらない上司がブライアン・フェリー教頭という設定でしたから(笑)、私同様、マーティンが ロキシーのフォロアー的なイメージを持っておられる方は大勢おられるのかも知れません。

よく聴けば、インストものの「Beauty Stab」や「Hey Citizen」のサックスの絡み方は初期ロキシーのそれを感じさせますし、「King Money」や「Unzip」などは中期のロキシーのフェリーが歌っていても違和感はないように感じます。

ま、恐らく、ロキシーのファンであろうABCのメンバーと本家ロキシーのゲスト・プレイヤーで制作されたアルバムなのですから、ロキシーっぽさが出たとしても不思議はありませんよね。

そういう意味では、マーティンの音楽的なルーツが露呈した作品ですし、当時、マーティンが一番やりたかったことを具体化した作品であると言えるでしょう。


ところで、発表当時、この大幅な方向変換について、マーティンは次のようにインタビューに答えています。
「たくさんのグループがかごの中の鳥のようなことをやっている。でも、我々は変わってゆくポップ・ミュージックをクリエイトしていきたい。もし、ストリングスでコーティングした音楽と金ラメ・スーツの音楽を求めている人がいるなら、スパンダー・バレエのレコードを買えばいいよ。」

う〜ん、どうやら「かごの中の鳥」とはトレヴァー・ホーンによって行われた過剰プロデュースのことを差していることは間違いないようです。

スパンダー・バレエ [ Spandau Ballet ] が金ラメ・スーツを着ているところまではさすがに想像できませんでしたが(笑)、なんと、面白いことに、スパンダー・バレエも過去に一度だけトレヴァーがプロデュースを担当しており、ABCと同じように決裂しているんですよ(詳しくはこちら

大ヒットとなった『True』発表前の82年のシングル「Instinction」がそれなのですが、アルバム『Diamond』に収録されたバージョンとはかなり印象が違い、よりポップでキャッチーなアレンジが施されているように感じます。

私は、1人のリスナーとしてトレヴァーのプロデュース作品が大好きで、当時の彼の関与した作品にストリングスでコーティングした派手なサウンドを求めていたのは確かですが、もし、自分自身のバンドがプロデューサーの「かごの中の鳥」になってしまったとしたら、たとえ、オリコンチャート1位になれるとしても、いずれ不満は爆発することでしょう。

もちろん、プロデューサーは売れる音楽を作ることも仕事であるわけですから、そういう意味ではトレヴァーの仕事は一流であったと評価をすることができます。

とはいえ、アーチストとしては、自分たちのサウンドを世間に認めてもらった上で売れたいわけで、舵の利かない舟に乗ってまで売れたくはないというのも理解できます。

ま、現実は、案外、性格の不一致的な部分だったのかも知れませんが…。

なお、本作のプロデュースは、前作『The Lexicon Of Love』でエンジニアを努めたゲイリー・ランガン [ Gary Langan ] とABCの共同名義。

ゲイリーは、この後すぐトレヴァー・ホーンの主催するZTTレーベルアート・オブ・ノイズ [ The Art Of Noise ] のメンバーとして活躍するのですが、メンバーの素顔を公開する前の87年に脱退しています。

その後は、エンジニアやプロデューサーとしてザ・ザ [ The The ] やスパンダー・バレエ、ヒュー・コーンウェル [ Hugh Cornwell ] などを手がけ、最近では、今年発表されたABCの新作『Traffic』 のプロデュースも担当。

2004年のトレヴァー・ホーンの音楽歴25周年記念コンサート(プリンス・トラスト)にABCとして参加しているくらいですから、もう一度大ヒットを狙ってトレヴァーを起用してもよさそうなものですが、マーティン的にはゲイリー・ランガンのプロデュースがよほど気に入ったのでしょうね。

おかげで『Traffic』はどこか本作に似た臭いを感じ取ることのできるなかなかの傑作に仕上がりました。
機会があれば、ぜひこの新作も聴いてみて下さい。


そんなわけで、本作はABCのアルバムの中では比較的知名度の低いアルバムですが、内容的には決して駄作などではありません。

大ヒット作直後の方向変換による前作とのギャップがファンに受け入れられなかっただけのことで、あえて流行の音ではなくギターサウンドを中心に置いた本作のサウンドは、今聴いても古くささを感じさせないよく出来たアルバムです。

今、聴くのならば、懐かしさで聴く『The Lexicon of Love』よりも、本作の方が聴きやすいような気もします。

また、これまでアルバムごとに音楽性を変化させてきたABCの歴史から見れば、ここでの変化はエレポップ化した3rd『How To Be〜』の時ほど大きなものではありません。

ひょっとすると、ヒットチャートを賑わす流行の音から身を引くことで、本作のように長く楽しめるアルバムを完成させることが出来たのかも知れません。

レコードラックに本作を長く眠らせておられる方は、久しぶりに引っぱり出して聴いてみられてはいかがでしょうか。

きっと新しいABCの魅力を見つけることが出来ると思いますよ。


なお、今回紹介しているCDはデジタル・リマスタリングが施された98年発売のリイシュー盤で、ボーナストラックとしてシングル「That Was Then But This Is Now」のB 面に収録されていた「Vertigo」という曲が追加されています。

アルバムの流れからすると蛇足ではありますが、レア・トラックがCD化されることは喜ばしいことです。

ただし、アルバム単位でお聴きになるときは、あくまでもボーナス・トラックであることをご理解の上聴いてやってくださいまし。



そんなわけで、この記事が今年最後のレビューとなってしまいました。

ここのところ、本業の方が何かと忙しく更新ペースが落ちていたんですが、来年はもう少し頑張って、最低でも月2回くらいは更新したいと思っておりますので、これからもよろしくお願い致します。

それでは、みなさん、良いお年を…。
/BLマスター

uknw80 at 00:38|PermalinkComments(3)TrackBack(0)

2007年04月05日

Never More Than Now [Best of] /ABC

Never More Than Now [Best of] /ABC

なぜか、今月末になってのABCの新しいベスト盤が発表されるようです。
しかも2枚組で38曲も収録して 1,899円と格安でかなりのお買い得盤です。

ABCと言えば、1981年にシングル「Tears Are Not Enough(邦題:涙まだまだ)」でデビューし、トレヴァー・ホーンのプロデュースにより翌年発表された1stアルバム『The Lexicon of Love(邦題:ルック・オブ・ラヴ)』は発売と同時にいきなり全英チャート1位に輝くという華々しいデビューを飾ったイギリス・シェフィールド出身のバンドです。

デビュー当時のメンバーは、マーティン・フライ[ Martin Fry ](V)、マーク・ホワイト[ Mark White ](G)、デヴィッド・パーマー[ David Palmer ](D)、ステファン・シングルトン[ Stephen Singleton ](Sax) 、マーク・リックレイ [ Mark Lickley ](B) の5人なのですが、1stアルバムの発売までにマーク・リックレイが脱退しているため、4人編成のイメージは強いようです。

しかし、この4人編成の時代がABCの黄金期(当時のトレード・マークだった金ラメスーツもこの頃ですね)、その後も2nd『Beauty Stab』(1983)ではデヴィッド・パーマーが、3rd『How to Be A...Zillionaire!』(1985)ではステファン・シングルトンが抜け、以降はマーティンとマークが中心となり変則的にメンバーを入れ替える形で、4th『Alphabet City』(1987)、5th『Up』(1989)、6th『Abracadabra』(1991)と発表、7thアルバム『Skyscraping』(1997)ではついにマーク・ホワイトまでもが脱退し、マーティンのソロプロジェクトと化してしまいます。

このアルバム以降はベスト盤やリイシューもの以外発表されていませんが、それでもライヴだけは行われていたようで、脱退後、YMOやザ・ザ [ The The ] などに一時的に参加していたデヴィッド・パーマーが2004年になって復帰しています。(なぜか、「Ocean Blue」のプロモにはドラマーとしてちらっと顔を出しているのですが。)

本作の収録曲は、この記事を書いている時点ではまだアマゾンでは明記されていませんでしたが、調べてみたところ下記のような楽曲が収録されていることがわかりました。

ちなみに、下線の入っている楽曲はYouTubeで見つけたプロモをリンクしてありますのでよろしければ合わせてご覧下さいませ。

ディスク 1
1.Tears Are Not Enough (12" mix)
2.Alphabet Soup (12" mix)
3.Poison Arrow
4.Theme (mantrap)
5.Valentine's Day
6.Look Of Love (part 3)
7.All Of My Heart (live from Boston)
8.That Was Then But This Is Now
9.By Default By Design
10.Power Of Persuasion
11.Hey Citizen
12.United Kingdom
13.S.O.S.
14.How To Be A Millionaire
15.Be Near Me
16.15 Storey Halo
17.Tower Of London
18.Ocean Blue
19.Between You And Me

ディスク 2
1.When Smokey Sings
2.Night You Murdered Love
3.24 Carat Plastic
4.King Without A Crown
5.Rage And Then Regret
6.One Day
7.Minneapolis
8.Chicago (part 1)
9.Ocean Blue
10.Real Thing
11.North
12.I'm In Love With You
13.Never More Than Now (Kraushaar mix)
14.Paper Thin
15.Blame
16.Peace And Tranquility
17.How To Be A Millionaire (Bond Street mix)
18.Be Near Me (Munich disco mix)
19.When Smokey Sings (edit)

この曲目を見る限り、6th『Abracadabra』と7th『Skyscraping』からの曲は収録されていないようですので、マーキュリー・レコードに在籍した時代のベストということになるのでしょう。

『Skyscraping』に収録の第一段シングルだった「Stranger Things」のプロモ映像

1-4「Theme (mantrap)」という曲は、ジュリアン・テンプル監督によりABCの83年のワールド・ツアーの模様をストーリー仕立てで映画にした「MANTRAP」というフィルムのテーマになった曲で、「Poison Arrow」のジャズ・アレンジ・バージョンです。
他のシングルでは「Theme From 'Man Trap'」となっているのですが、これは傑作中の傑作です。

『Mantrap』の冒頭シーン
『Mantrap』中の「Poson Arrow」のライヴシーン(噂の金ラメスーツです)

1-6「Look Of Love (part 3)」は、恐らく少々長いオーケストラ・バージョンの後、パート1がくっつくというロングバージョンで、80年代にFM大阪の1日の始まりに流されていた曲だと思います。

また、2-15.「Blame」と、2-16.「Peace And Tranquility」は、2002年発表されたベスト盤『Look of Love: The Very Best of ABC』に収録するために作られた新曲で、他のアルバムに収録されるのは始めてのことです。

しかし、全アルバムと数枚の12inch、ベスト盤などを持っている私からしても不明な曲が数曲入っているのです。
1-2.「Alphabet Soup 」2-3.「24 Carat Plastic」がその不明な曲なのですが、曲の並びがほぼ発表年の順になっていることを考えると当時の未発表曲である可能性もありますね。

あと、残念なことは1stの一曲目「Show Me」3rdのシングルカット曲「Vanity Kills」4thのバラード曲「Bad Blood」、そして、シングルでのみ発表されたハウスアレンジの「The Look Of Love 1990 Mix」が収録されていないことですが、ま、これは私の趣味の世界なのかも知れません。

「Vanity Kills(USA Version)」のプロモ映像

とにかく、かなり充実した内容でこの価格ですから超オススメの1枚です。

発売は4月30日(予定)で、現在予約受付中ですよ。
すぐに無くなることはないと思いますが、80年代にハマった方はぜひ手に入れて下さいね。
/BLマスター

uknw80 at 15:16|PermalinkComments(16)TrackBack(0)

2006年12月14日

How to Be A...Zillionaire!/ABC☆

How to Be A...Zillionaire! ABC

今作は、1985年に発表されたABCの通算3枚目のアルバムです。

トレバー・ホーンのプロデュースによる1st『The Lexincon of Love(邦題:ルック・オブ・ラブ)』の、ゴージャスできらびやかなホワイト・ファンク系のサウンドでいきなりの大ヒットを飛ばした後、何を血迷ったのか2nd『Beauty Stab』では、闘牛をテーマにしたロック指向の強いギター中心のサウンドに転身して人気ががた落ち、そして今作では、またしてもエレクトリック・ポップ指向の強いカラフルでキャッチーなサウンドに大胆な軌道修正をし、その変幻自在ぶりを見せつけました。

もちろん、こういった軌道修正を「節操がない」と見ることもできるわけですが、アルバム1枚ごとにコンセプトを決め、衣装や曲調、そしてメンバーまでも入れ替えてしまうほど凝りまくっていると考えれば、マーティン・フライの完璧主義ぶりにも感動すら覚えてしまいます。

ただ、このワンマンぶりに他のメンバーはついて行けなかったようで、アルバムを発表するたびにメンバーが抜けていきました。
1stの制作途中でまず「Poison Arrow」のプロモには出演しているバカテクのベーシスト、マーク・リックレイ [ Mark Lickley ] が抜け、1st発表後にはドラマーのデヴィッド・パーマー [ David Palmer ] が脱退、そして2nd発表後にはサックスのステファン・シングルトン [ Stephen Singleton ] がバンドを去り、本作の時点でオリジナルメンバーはフロントマンでボーカルのマーティン・フライ[Martin Fry]と、ギターのマーク・ホワイト[Mark White]のみとなってしまいました。

しかし、今作のキャッチーでカラフルなサウンドを表現するにはさすがにこの2人だけでは無理だと悟ったのでしょう、スキンヘッズで童顔の少年デヴィッド・ヤリトゥ [ David Yarritu ](実は立派な大人だったりします)をメカオタク少年系のキャラで、初の女性メンバー、イーディン(フィオナ・ラッセル・パウエル)[ Eden (Fiona Russell-Powell) ] を金髪のエロいお姉さん系キャラで新メンバーとして迎え、アメコミ調の衣装に身を包んだ第3期ABCが誕生したのです。

このABCの転身ぶりに英アルバム・チャートは敏感に反応していて、1st が1位、2ndは1stの期待からか12位、そして今作3rdでは2ndの不評をひきずってか28位と落ち込んでいるのですが、逆にアメリカでは今作の方がウケが良くアルバム、シングル共にトップテン入りしています。
まあ、アメリカのマーケットを意識した作りになっているので、その辺りは当然と言えば当然なのですが・・・。

また、イギリスでは不調だったアルバムセールスですが、それでもシングルカットされた「Be Near Me」は、英チャートでも20位以内に入ると言う健闘を見せ、シングルに関しては前作の「That Was Then But This Is Now」よりも売れているのが面白いところです。

「Be Near Me」のプロモ映像

ちなみに、このアルバムからは他にも、アメコミ調のアニメでプロモが制作された「How To Be A...Zillionaire!」、ポップなバージョンと、ゴージャスなバージョンの2バージョンのプロモがある「Vanity Kills」(曲もまったくアレンジが違います)、シックで落ち着いたバラード曲「Ocean Blue」がシングルカットされ、それなりに売れています。

「How To Be A Millionaire」のプロモ映像
ポップな「Vanity Kills (U.K. Version)」のプロモ映像
ゴージャスな「Vanity Kills (US Version)」のプロモ映像
今年のライヴでの「How to be Millonaier」の映像
TV番組での「15 Story Halo」のライヴ映像(口パク?)

特に「Ocean Blue」のシングル・バージョンでは、1stで一度脱退しYMOの散開ツアーにも参加したデヴィッド・パーマーがドラマーとして一時的に復帰しプロモにもチラっと出演、さらに同曲では、1stでトレバー・ホーンの右腕としてオーケストラ・アレンジを担当したアート・オブ・ノイズのアン・ダッドレーがまたしても彩りを添えており、見事な楽曲となりました。
本当に、この曲のシングル・バージョンは名曲ですので、ぜひ聴いて頂きたいと思います。

「Ocean Blue」のプロモ映像

このアルバムはエレクトリック・ポップ寄りに制作されているため、ギタリストのマークはイミュレーターやフェアライト、その他、シンセサイザーを担当し、デヴィッドはボイス、イーディンはボーカルとレコードのスクラッチを担当、プロデュースはマーティンとマークの二人で行っています。

コンセプトやメンバー、雰囲気は変わっても、マーティン・フライのレンジが広く、伸びやかで滑舌の良い声は健在で、1stのイメージさえ捨てきれてしまえば、なかなかの名盤です。

個人的には、最近の作品まで全作品を聴いた上で、1st『The Lexioncon of Love』、4th『Alphabet City』そして、本作『How to Be A...Zillionaire!』の順で気に入っております。

なお、紹介しているアルバムは昨年発売されたリマスターもので、オリジナル盤に7曲ものボーナストラックを追加したお買い得盤で、当然、先述の「Ocean Blue (Single Mix)」や、ゴージャスなプロモ・バージョンの「Vanity Kills (US Remix)」も収録されています。

1stが大好きで、2ndで興味を失ってしまった方には4th『Alphabet City』と合わせてぜひ聴いて頂きたい作品ですね。
/BLマスター

uknw80 at 17:03|PermalinkComments(5)TrackBack(2)

2006年08月24日

Alphabet City/ABC☆

ABC Alphabet City

ABCというバンドは実に多彩な顔を持っています。
悪く言えば、ポリシーがないのかと思えるほどアルバムごとの雰囲気が違うのです。

82年発表の1st「The Lexicon of Love (邦題:ルック・オブ・ラヴ)」では、ロキシー・ミュージックの後期にファンク色とオーケストラを足したようなサウンドに、キンキラキンのスーツでゴージャスな世界を演じ、一躍スターダムに登り詰めたというのに、翌年発表の2nd「Beauty Stab」ではファンの期待を見事に裏切り、闘牛がテーマのギターがメインのロックバンドに転身。
さらに85年発表の3rd「How to be a Zillionaire!」では金髪のエロいお姉ちゃんとメカオタクのインテリキッズをメンバーに加え、アメコミのようにカラフルなエレクトリック・ポップに転身し、またしても期待を裏切りました。

「How To Be A Millionaire」のプロモ映像
「Be Near Me」のプロモ映像

はっきり言って、ニューアルバムを出すたびにセールスは落ちる一方で、マーティンのワンマンぶりについて行けなくなったのか、毎回メンバーが抜けていきます。
まず、1stが出るまでに「Poison Arrow」のプロモには顔を出しているバカテクのベーシスト、マーク・リックレイ [Mark Lickley] が抜け、2ndの前にはドラマーのデヴィッド・パーマー [David Palmer] が脱退、3rdの前にはサックスのステファン・シングルトン [Stephen Singleton] がマーティンの元を去って行きました。

マーティン・フライ的に反省があったのか、今日紹介する87年発表の4thアルバム「Alphabet City」では、ABCのロゴも元に戻り、右腕化しているマーク・ホワイトと共に 1st「The Lexicon of Love」の雰囲気を継承する見事なまでのABCらしい作品を作り上げました。

このABCの転身ぶりに英アルバム・チャートは敏感に反応していて、1st が1位、2nd が12位、3rdが28位、この 4thでは 7位に再浮上し、この後のダンス系の 5thアルバム「Up」では 58位と急降下しています。
もし、この「Alphabet City」が2ndであったなら、2nd、3rdで裏切られ見切ってしまうファンも逃げなかったでしょうから、おそらくは 3位までに入っていたかも知れません。

ちなみに、アメリカではなぜか 4thよりも 3rdの方が売れています。

話が長くなってしまいましたが、要するにこの「Alphabet City」は 1st に負けることのないかなりの傑作なんです。
前2作でファンを裏切ってしまったがために日本ではあまり知られていないアルバムとなってしまいましたが、この作品はかなりオススメの1枚です。

このアルバムからは、スモーキー・ロビンソンに捧げたという「When Smokey Sings」、失恋について歌った「The Night You Murdered Love」、エドワード2世のことから愛について書いた「King Without a Crown (邦題:失意の君)」という3曲がシングルカットされ、いずれもそこそこのヒットとなっています。

「When Smokey Sings」のプロモ映像
今年のライヴでの「When Smokey Sings」の映像

なお、「When〜」と「The Night〜」は、故バーナード・エドワードもこの二人と共にプロデュースに参加しています。

また、プロモーション・ビデオも非常に凝っていて、3曲ともジャン・ポール・ゴルチェの衣装を身にまとい、「The Night〜」ではパリのゴルチェのショップの中でも撮影されました。
やはり、マーティンにはカッコいいスーツがよく似合います。

「The Night you Murdered Love」のプロモ映像

特に、私的に「King 〜」のビデオは後期のデレク・ジャーマンの映画を彷彿させる色目が美しいシュールな映像で、非常に印象に残る名作です。

他にもシングルカットはされませんでしたが、和風の音色とのマッチングが聴きどころの「Bad Blood」や、ストリングスの美しい「One Day」など、バラード風の楽曲もみごとな出来で、マーティンが得意とするこの手のムーディーな曲調のものも収録されています。

なお、作品としては11曲目「Avenue Z」までで、12曲目以降はボーナストラックということになります。

本作「Alphabet City」は、「The Lexicon of Love (邦題:ルック・オブ・ラヴ)」が大好きで、2nd以降で期待を裏切られ、それ以降のアルバムを聴いていないという方には、ぜひ聴いていただきたい改心の一枚です。
この作品には裏切られることはないと思いますよ。
/BLマスター

uknw80 at 13:52|PermalinkComments(2)TrackBack(0)

2006年07月03日

The Lexicon of Love /ABC☆

ABC The Lexicon of Love

ABC☆は1980年にイギリスのシェフィールドで結成されました。
翌年シングル「Tears Are Not Enough」でデビューし、さらに82年、デビュー・アルバム「the Lexicon of Love(邦題:ルック・オブ・ラヴ)」をリリースし、発売と同時にいきなり全英チャート1位に輝きました。

「The Look Of Love」のプロモ映像

とにかく楽曲の良さ、アレンジの良さ、ショーの見せ方の上手さが際立っていましたので、いきなり売れたのもうなずけます。

実はこのアルバム、後のZTTレーベルが深く関与していたんです。
プロデュースが元バグルスでZTTレーベルの創始者トレバー・ホーン、オーケストラアレンジが後のアート・オブ・ノイズのアン・ダッドレー、ピアノとオルガンはアン・ダッドレーと親交の深いニック・プリタスで、オーケストレーションとファンキッシュなポップミュージックの華麗な融合や、少々大袈裟かと思われる空間処理に関しては、まさしくZTTレーベルの十八番でしょう。

「Look of Love」しか知らない方も多いと思いますが、これは、アルバム自体が一つの作品化していて、曲間をほとんど作ること無く起承転結を作ってあるのでぜひ1枚通して聴いてもらいたいと思います。

あと、このアルバムの最後に入っている「Theme from "Mantrap"」という曲はオリジナルアルバムには入っていなかった超名曲で「Poison Arrow」のラウンジジャズバージョンなんですが、このアルバムコンセプトからは少しずれるので、ご理解の上お聴き下さい。

「Poison Arrow」のプロモ映像
TV番組での「Poison Arrow」のライヴ映像(口パク)

ところでこのABC、84年の初頭に来日公演があったのですが、今でもそのショーアップされた完璧なまでの出来は脳裏に力強く残っています。
来日時のメンバーはマーティン・フライ[Martin Fry] (V)、マーク・ホワイト[Mark White] (G)、デヴィッド・パーマー[David Palmer] (D)、ステファン・シングルトン[Stephen Singleton] (Sax) でした。
わずか1枚のアルバムしか発表していないにもかかわらず3部構成になっており、合わせて2時間半という長丁場を飽きさせず観せてくれたのです。
なお、そのライヴの模様は「マントラップ」というプロモーションビデオ風の映画になっていますので、興味のある方は探してみて下さい。

このバンドは非常にメンバーの出入りが激しく、最後には92年まで連れ添った右腕マークが抜け、マーティン・フライただ1人でABCを名乗るようになってしまいました。

しかし、2004年にはTHE THEを抜けたデヴィッド・パーマーが再び加わりライヴ活動しているようです。

今年のライヴでの「The Look Of Love」の映像
今年のライヴでの「Poison Arrow」の映像

また、現在、マーティンは来年公開のヒュー・グラント主演の映画のサントラや、ヒュー・グラントのボイストレーナーとしても活躍しているようです。

これももちろんアマゾンで全曲試聴可能ですので、特に「Look of Love」しか知らない方は聴いてみて下さい。
捨て曲は無いですよ(キッパリ)
/BLマスター

uknw80 at 15:01|PermalinkComments(6)TrackBack(0)
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