◆ZTT レーベル

2009年05月02日

everything could be so perfect… [ Special Edition ] /Anne Pigalle

everything could be so perfect…/Anne Pigalle

今日はZTT Boxアクト[ Act ] の『Laughter,Tears and Rage [ Deluxe Edition ] 』に続いて、ZTTの復刻シリーズ第3弾として今年2月に発売されたアン・ピガール [ Anne Pigalle ] の『everything could be so perfect… [ Special Edition ] (邦題:青春の彷徨)』(生産枚数限定盤)を紹介したいと思います。

実はこのアルバムは今でも私の大好物で、以前、廃盤となった通常盤CDの方でも紹介したことがあるのですが、前回のアクト同様、流通量そのものが少なく、リイシューに関しても望む声は多かったものの、アン自身が拒否していたため実現には至らず、常に品薄で中古盤にも高価なプレミアがついていました。

今回の奇跡とも言えるリイシュー盤は、1985年にZTTレーベルから発表された同名のアルバム『everything could be so perfect…(邦題:青春の彷徨)』に収録されていた8曲(CD発表時は本作にも収録されている「Like We Do」が追加された9曲)に、12inchシングル盤の「He! Staranger(邦題:異邦人)」と「Why Does It Have To Be Way...(邦題:何故に...)」に収録された曲を全て加えた合計16曲入り、まさしくZTT時代のアン名義のコンプリート盤とも言える内容のスペシャル・エディションCDです。

私は本作のLPとCDに加えて「He! Stranger」の12inchは持っていたのですが、「Why Does It Have To Be Way...」の12inchだけは当時でも見つけることができず(タイミングを外してしまっただけですが…)歯がゆい思いをしていただけに、このリイシューは感涙ものでした。

さらに、オリジナル盤(LP)の8曲の歌詞(英、仏詩のみ)、2003年にイアン・ピールが行ったインタビュー(原文と和訳)、本作発表に際しての高橋健太郎氏の解説が載っているブックレットが付属しており、私の知らなかった発表前後の裏話やZTT以降の活動も知ることができたんです。

しかも、これだけスペシャルな内容で2,300円!
ま、紙ジャケ仕様であることに関しては好き嫌いの分かれるところだと思いますが、当時の日本盤CDの裏を見ると3,300円の定価がついていますし、高価なプレミアのついた中古盤に比べれば確実にお得感はありますよね。

いや〜、ここのところ毎回言ってますが、こんな豪華な復刻盤を安価で企画して下さったZTT Japanさんにはほんとに感謝です。


さて、アン・ピガールについて私が知っていたことは以前のレビューにだいたい書かせていただいておりますので、まずはそちらをお読みいただくとして、今回は、この復刻盤に付いていたブックレットから新たに知り得た情報とボーナストラック8曲に関して書かせていただきます。
(ちなみに、以前書いたレビューはこちら


まず、私が勝手にアンのデビュー・シングルだと思っていた「Hot Sagas」はニック・プリタス [ Nick Plytas ] との共同名義で、オン・ユー [ On-U Sound Records ] の主宰者として知られるエイドリアン・シャーウッド [ Adrian Sherwood ] のプロデュースのもと、1982年にイルミネイティッド・レコードというところから発表された4曲入りのマキシ・シングルだったということ。

電子ファンク〜ジャズ的なニックの演奏を、ダブで有名なシャーウッドがプロデュースしているわけですから、さぞかし面白い音源だったことでしょう。

ま、アンのソロ名義である本作もほとんどがニックとの共同作業によって制作されていますので、実質的には大差ないとも言えるわけですが、残念ながら「Hot Sagas」はさらに入手困難なシングルで、未だに試聴すらできておりません(持っておられる方がいらっしゃったら、感想を教えて下さると幸いです)。

もう一つは、同じく82年にアンとニックのユニットであるヴィア・ヴァガボンド [ Via Vagabond ] 名義でスティッフ [ Stiff Records ] から発表された「Who Likes Jazz?」に関しての話ですが、このシングルでは音楽的な部分でアンは関与しておらず、名前を変えたり、ジャケット・デザインのアドバイスしたりというコンサルタント的な形で参加していたということ。

ちなみに、ヴィア・ヴァガボンド名義の「Who Likes Jazz?」をお聴きになられたF-ROCKさんの情報によると、『ジャ、ジャーズ♪』というコーラスは入っているものの、ボーカルトラックはなく、基本的にニック・プリタス名義の「Who Likes Jazz?」と同じオケが使用されているようです。
(『The Stiff Records Box Set』←こちらのボックス・セットに収録されているそうですので、興味を持たれた方はご覧ください。)

ひょっとすると、『ジャ、ジャーズ♪』の部分にアンの声も重ねて使っている可能性はありますが、ニックのソロの「Who Likes Jazz?」で聴かれるボーカル・パートをアンが歌っていたわけではないようです。


さて、この後、ヴィア・ヴァガボンドのデモテープを数々のレコード会社に送ったところ、唯一、興味を示したのがZTTのポール・モーリィ [ Paul Morley ] だったことは以前も書いた通り。

しかし、ZTTが契約したのはヴィア・ヴァガボンドというグループではなくアン・ピガール個人でした。

このことに関しては、ニックがZTTと契約することを拒否したから、もしくは、デモテープを送ってから契約が成立するまでの間につき合っていた2人が破局してしまい、活動を続けられる状態ではなくなったからという理由が考えられます。

そういえば、ニックは本作の発表までにABC☆の1stアルバム『The Lexicon Of Love』で後のZTTの面々と一緒に仕事をしていますから、そこで馬が合わなかったのだとすれば拒否する理由も理解できなくもないですし、ZTTとの契約が成立してから本作を発表するまで2年以上もの月日が経っていますから、様々なトラブルが発生して制作が遅れ、すったもんだの末につき合っていたカップルが破局したのだとしても不思議ではありません。

いずれにせよ、ポール・モーリィがアンの歌を気に入ったわけですから、彼が聴いたヴィア・ヴァガボンドのデモテープはアンがボーカルをとっている歌ものだったことは間違いないでしょう。

さらに、本作のクレジットに目を通してみると、オリジナル盤に収録された8曲中「Looking For Love」を除く7曲がニックの作曲となっています。

「Looking For Love」のプライベート・ライヴ映像?

ここで疑問を感じるのは、契約の時点でアンだけを引き抜いたにせよ、制作段階の前後でアンとニックが別れたにせよ、本作にここまでニックが関与しているのは不自然だということ。

実は、本作のブックレットのアンのインタビュー記事に下記のようなことが書かれていました。
『もしかしたらトレヴァーがもっときちんと曲をプロデュースしてくれていたら、ヒットしたのかもしれない。何曲かトライはしたのよね。「Why Does It Have To Be Way...」って曲は、バンドと一緒に作りはじめて、トレヴァーがちょっとプロデュースをやってくれたんだけど、うまくいかなかったの。一度バンドの方がうまくいかず、ゼロからやり直したんだけれど、トレヴァーはまるでこの曲はボートに乗っているみたいだって言ってたわ。バラバラの個性がぶつかってしまったのね…。』

なお、本作のクレジットによれば、「Why Does It Have To Be Way...」だけがトレヴァー・ホーン [ Trevor Horn ] のプロデュースとなっており、それ以外の曲はルイ・ジャーディム [ Luis Jardim ] のプロデュース曲で、アレンジがリチャード・ナイルス [ Richard Niles ] 、ミックスがスティーヴ・リプソン [ Steve Lipson ] 、アラン・ダグラス [ Alan Douglas ] 、ボブ・クラウシャー [ Bob Kraushaar ] 、ボブ・ペインター [ Bob Painter ] 、そして、ニック・プリタスは作曲、演奏の他に、ミュージカル・コーディネーション( Musical co-dination )として名を連ねています。

つまり、当初はトレヴァーが全面プロデュースの予定だったところ、「Why Does It Have To Be Way...」をプロデュースしてみた時点で自分に合わないことを悟って投げ出し、一旦保留する形になった…。

その後、ヴィア・ヴァガボンドとして完成していたデモトラックに他のZTTの面々が手を加え、アンのソロとして発表した…、ということなのでしょうか。

ちなみに、今回追加された楽曲の中に「Why Does It Have To Be Way(Piano Version)」という曲があるのですが、ニックのソロをお聴きになられた方なら、これがほぼニックの打ち込みによるデモ・バージョンであるだろうことがおわかりいただけると思います。


さて、この後、アンは本作に続くセカンド・アルバムを制作することをZTTから要請されるのですが、一時的に音楽活動そのものに興味を失ってしまった彼女はこれを拒否、今度はアメリカに渡って絵画や写真の仕事をしていたそうです。

しかし、音楽活動自体はアメリカでも行っていたようで、彼女のコンサートを観に来たドナルド・キャメルという映画監督に気に入られ、彼の映画に出演することが決まっています。

残念ながら、映画の話はドナルドの自殺によって白紙になってしまったそうですが、恐らく、アンにとっては音楽も絵画も写真も女優も自己表現の手段のひとつだったのでしょうね。

さらに、2000年以降は再びロンドンに戻って写真や絵画を続けながら、音楽活動にも力を注いでおり、TDSというエレクトリック系アーチストと組んで『Amerotica』というアルバムや『L' Histoire D' Anne Pigalle』というDVD作品も発表しています。

ちなみに、この2作品は現在もアンのオフィシャル・サイトを通じてのみ販売しているようですが、日本から購入するのは少々手間がかかりそうです。
できれば、なんとか日本でも購入できるようにして欲しいところですね。

ま、とりあえず、マイスペースのアンのページで新曲を聴くことはできますので、興味を持たれた方はご覧になってみて下さい。


あと、本作とは関係ないのですが、今回の記事を書くにあたってYouTube映像を検索していたところ、昔の伊勢丹のCMにアンの曲が使われていたことを知りました。
しかも彼女自身が出演しているんですよ(驚)。

アンの風貌から察するところ、恐らく90年代半ば頃のCM映像だと思うのですが、音源自体がCD化されていない上、関西在住の私はにとっては初めて見る映像であるため、確かなことはわかりません。(ご存知の方がいらっしゃったら教えて下さると嬉しいです。)

他にも、最近のライヴ映像などを見つけましたので、合わせて紹介しておきますね。

伊勢丹TVCMの映像「Tango Contre La Monte」」
「The Pleasureground」のプロモ映像?
「The Pleasureground」のライヴ映像(アカペラ?)
「Children Of The Revolution」のTVライヴ映像



さあて、ここからは収録曲の解説をさせていただくとしましょう。(今回は話が長いな〜。笑)

まず、基本的に、トラック1〜8まではLP発売時と同じ曲が収録されており曲順も同じ。
一応、2008年リマスター盤ということになっていますが、既発曲に関しては、元々がかなりクリアな音質であっただけに、音量レベルが以前のCDに比べて若干大きくなっている以外は、さほど大きな変化は感じませんでした。

なお、追加曲であるトラック9〜12の4曲は12inchシングル「He! Staranger」、トラック13〜16の4曲は12inchシングル「Why Does It Have To Be Way...」にそれぞれ収録されていた曲で、以前のCDに収録された16.の「Like We Do」以外は初CD化音源ということになります。

ただし、9.「He! Stranger - One」と10.「He! Stranger - Two」は、元々12inch盤の中で1曲として扱われていました。
なぜ、2曲に分けたのかは不明なのですが、ひょっとすると、ちょうどこの分け目のところで少し長めのブレイクが入るので、マスタリングの機械的な問題でここにマーキングが入ってしまったのかも知れません。

ま、個人的には2曲に分けるのは不自然なような気もするのですが、何か意図があって分けた可能性もありますね。

いずれにせよ、9.と10.を合わせて7分強となる大作ですので、本作の一番の見せ場と言えましょう。

「He! Staranger」のプロモ映像


11.「He! Stranger ( Than Fiction )」は、同曲のピアノ・バージョンで、アンの歌声と生ピアノ、そしてニック・プリタスの十八番であるハモンド・オルガンで構成されています。

シングル・バージョンのような、いかにもZTT的なゴージャスさはありませんが、実に華麗で美しいバージョンです。

「He! Stranger」がヴィア・ヴァガボンドのデモ・テープに入っていたのだとすれば、恐らくこのバージョンに限りなく近いものだったことでしょう。


12.「Johnny」は、手持ちの12inchシングルのクレジットではニック・プリタスのプロデュースとなっており、ZTT色をほとんど感じさせない生のジャズっぽいバッキングの曲です。

語りかけるようなアンの歌唱法のせいか、シャンソンっぽいイメージもあり、ZTT以降の彼女の楽曲に最も近いスタイルだと思います。


13.「Why Does It Have To Be Way...(Single Version)」は、その名の通りシングル用に制作されたテイクで、アルバム・バージョンに比べてストリングス・アレンジのメリハリが強調されており、わずかに4秒ほど短くなっています。

「Why Does It Have To Be This Way...」の映像(音のみ)
「Why Does It Have To Be This Way…」のライヴ映像
(ニック・プリタスがピアノで参加!)


14.「Faut-ll Vraiment Que Ce Soit Comme Ca」は「Why Does It Have To Be Way...(Single Version)」のフランス語バージョン。
ボーカル・パートが違うだけでバッキングは同じ(だと思います)ですが、個人的にはこちらのバージョンの方が彼女のイメージに合っているように感じます。


15.「Why Does It Have To Be Way...(Piano Version)」は、11.のようなピアノ・バージョンではなく、比較的簡素な打ち込みと生ピアノ、アンの歌によるデモ・バージョンのようなイメージの曲です。

リズム・マシンの音がニックのソロで聴かれるものと非常に似ており、ZTT色を全く感じませんので、ひょっとするとポールの聴いたヴィア・ヴァガボンドのデモ・バージョンをそのまんま収録したのかも知れません。


16.「Like We Do」は、既発の日本盤CDにもボーナスとして追加されていたのですが、3拍子のリズムに印象的なストリングスのフレーズが乗っかる、実にアンらしいイメージの楽曲です。


さて、今、本作をこうして聴き直してみると、アンが当時のZTTのアーチストの中ではかなり異端な存在であったことがご理解いただけると思います。

いわゆるZTTの音ではあるのですが、そこからイメージする言葉は「アンニュイ」であったり、「ジャジー」であったり「クラシカル」であったり…。

かといって、この頃の音源をフレンチ・ポップやジャズ、シャンソンの枠に収めるのも無理がありますし、ポップスやロックというカテゴリーにも収まりません。

まさしくニューウェイヴだったわけですね(笑)。

とはいえ、ピアノやオルガンが楽曲の芯にあり、ストリングスなどで味付けされている曲が多いため、今聴いてもさほど古くささは感じないと思います。

未聴の方はぜひこの機会に聴いてみて下さい。

このレビュー記事をに興味を持たれた方なら、きっと気に入っていただけるはずですよ。


ところで、私は今回の復刻シリーズで、本作とアクト『Laughter,Tears and Rage [ Deluxe Edition ] 』の2枚を購入したのですが、それぞれ以前のCDのジャケットと見比べてみてちょっとした違いに気がつきました。

使われている写真が同じであることは間違いないのですが、裏表共に少々画質が荒く、わずかにレイアウトを変更した上で紙ジャケ化されています。

恐らく、昔のジャケットからカラーコピーした写真をトリミングしてサイズに合うように拡大したのでしょう。

オリジナル盤を持っている私としてはこの点だけが残念なのですが、それでも復刻盤発売に際してのZTT Japanさんの苦労が感じ取れました。

できれば表ジャケットくらいはオリジナルに忠実であって欲しいところですが、贅沢は言えません。
ZTTレーベルの作品はレアな12インチ盤が多いだけに、今後もこのようなレア・トラックを網羅した復刻盤を企画していただきたいと思います。

ZTT Japanさん、期待していますよ。
/BLマスター

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2009年03月27日

Laughter,Tears and Rage [ Deluxe Edition ] /ACT

Laughter,Tears and Rage/ACT

今日紹介するアクト [ ACT ] の『Laughter,Tears and Rage(邦題:ラフター、ティアーズ&レイジ)』は、元プロパガンダ [ Propaganda ] の歌姫、クラウディア・ブルッケン [ Claudia Brucken ] (ドイツ語ですので正確には2つ目の”u”の上に点が2つ付きます)と、70年代後半からテクノの元祖的な活動をしてきたアーチスト、トーマス・リア [ Thomas Leer ] の2人による結果として短命で終わってしまったユニットの1988年発表の唯一のオリジナル・フル・アルバム。

今回紹介している『Laughter,Tears and Rage [ Deluxe Edition ] 』は、今年1月にZTT Japanから「ZTT アーカイブス 復刻シリーズ 第3弾」として発表された4作品のうちの1枚で、1988年発表の通常盤(LP発売時11曲、CD発売時14曲)にボーナストラックを追加した22曲入りの盤に加えて、2004年にZTTのサイトからのみ7,500枚限定発売され即完売となったCD3枚組の英国盤『Laughter, Tears and Rage: The Anthology』から選りすぐりのレア曲やリミックスを13曲収録したボーナス盤を追加した2枚組、合計35曲収録の日本限定盤(日本語のライナー・ノーツが付属、歌詞、歌詞対訳なし)です。

実は、本作、前々から取り上げたいと思っていたアルバムの1枚だったのですが、発表当時のセールスが悪かったせいか流通量そのものが少ない上、解散後になって再評価されたため長らく廃盤状態が続いていたんですよ。

その後発売された3枚組の限定版はあっという間に売り切れてしまいましたし、たまに出る中古盤は2〜3倍のプレミアのついたものばかりでなかなか手が出せません。

ま、それでもLP盤は持っていたので、そこに収録された分だけでも紹介させていただこうかと考えていたんですが、そうこうしている間に、ZTT Japanから豪華な内容の復刻版が安価で発売されたというわけなんです。

昔、12インチ盤を苦労して探しまわったのは何だったんだ!と、うっすら疑問を感じつつも(笑)、そりゃもう嬉しくて、早速、購入しました(笑)。


さて、内容をレビューする前に、アクトの2人について紹介しておこうと思うのですが、クラウディア・ブルッケンに関しては、当ブログで何度も取り上げておりますので「Propaganda」もしくは「Claudia Brucken」のところをお読みいただくとして、今回は相方のトーマス・リアーについて簡単に紹介しておきます。

トーマス・リアーは、1970年代後半からMTR(マルチ・トラック・レコーダー)による多重録音でテクノ・ポップと呼ぶには少々実験的な作品を発表してきたアーチストで、シンセサイザー、ピアノ、ギター、ベース、ボーカルなどを1人でこなすマルチ・プレイヤー。
コアなファンには「シンセ職人」や「実験くん」(笑)なんて呼ばれ方もしているようです。

そのスジの方(笑)に有名な彼の作品としては、テクノの裏名盤との誉れも高いロバート・レンタル [ Robert Rental ] と共同名義の『The Bridge』(1979) 、ソロ名義では、デビュー・シングルの「Private Plane」(1978)、12inch2枚組で発表された『Contradictions』(1982)、サンプリングを多用した『The Scale of Ten』(1985)、などがあります。

なお、『The Bridge』は、TGことスロッビング・グリッスル [ Throbbing Gristle ] の自主レーベルであるインダストリアル・レコード [ Industrial Record ] 、『Scale of Ten』はメジャーのアリスタ [ Arista Records ] から発表されているものの、『Contradictions』の方はなぜかネオアコの総本山とも呼ばれるチェリー・レッド・レーベル [ Cherry Red Records ] から発表されているため、ネオアコ系のアーチストという誤解を受けていたりもするのですが(笑)、私の知る限りはテクノ、アンビエント、ハウス、インダストリアルなど、どちらかと言えば電子楽器を多用した音楽ジャンルのアーチストです。

そんなトーマス氏がクラウディアと組んだのは1987年のこと。

クラウディアは85年にプロパガンダを脱退し、同年、元ヘヴン17 [ Heaven 17 ] のボーカルで後にABC☆でマーティン・フライ [ Martin Fry ] の右腕となるグレン・グレゴリー [ Glenn Gregory ] との共同名義でZTTからシングル(12inch)「When Your Heart Runs Out Of Time」(写真下)を発表。

Glenn Gregory & Claudia Bruckenこのシングルは、後にクラウディアの夫となるポール・モーリィ [ Paul Morley ] のアイデアにより企画されたものなんですが、プロパガンダの重量感のあるダークな音楽性とはかけ離れたムーディーな作品だったせいかセールス的には伸び悩み、単発の企画ものの域をでることはありませんでした。
(このシングルにはこっそりギターでミッジ・ユーロ [ Midge Ure ] の名前がクレジットされているんですよ。ま、これぞミッジ!というプレイではありませんが…。笑)

当時、プロパガンダの大ファンだった私にとってみれば、確かに肩すかしをくらったような印象を持ちましたが、今になって聴いてみれば、キャバレー・ミュージック〜日本のムード歌謡をエレポップ風に味付けしたようなシングルで、これはこれでなかなか面白い作品ですので、ZTT Japanさんには何らかの形で再発をお願いしたいところです。

このシングルがこの後のクラウディアのポップス・フォーマットでの音楽活動におけるひな形的な作品となり、今日紹介しているアクト〜ソロ、そして元OMD [ Orchestral Manoeuvres in the Dark ] のポール・ハンフリーズ [ Paul Humphreys ] と結成したワン・トゥー [ One Two ] などにも影響を及ぼしているのかも知れません。

プロパガンダの音楽性を、インダストリアル、ゴス、エレポップの中間的なポジションに位置するダークなポップスと表現するならば、アクトはその流れをよりポップに軌道修正し、曲によってハウスやジャズ、サイケ、50年代のキャバレー・ミュージックなどのエッセンスを加えた80年代後半のダンサンブルなポップス、と表現することができます。

良く言えば多彩な、悪く言えば的を絞り込めていないアルバムと言うこともできるわけですが、そもそもコンセプチュアル・アルバム的な要素はほとんどなく、シングルをまとめたベスト盤的な風合いを持ったアルバムですので、プロパガンダの面影さえ追わなければ、それはそれで楽しむことが出来ると思います。

とはいえ、プロパガンダ的な要素が皆無というわけではありません。

鼻にかかった妖しいクラウディアの歌声は何ら変わっていませんし、曲によっては、『A Secret Wish』に収録されていても違和感のない曲もあります。
また、『A Secret Wish』をプロデューサーであるスティーヴ・リプソン [ Stephen Lipson ] がほとんどの曲をプロデュースしているわけですし、ゴージャスなストリングスやパーカッション、ダークなメロディー・ラインなどの部分であの独特の雰囲気が継承されているように感じる曲もありました。さらには、ZTTレーベルの創始者であるトレヴァー・ホーン [ Torevor Horn ] がプロデュースした楽曲も収録されています。

しかし、ジャパン=シルヴィアン&フリップではないのと同じく、プロパガンダ=アクトではありません(…と、またシルヴィアンを例にあげるマスター。笑)。
やはり、全くの別物と認識した上でお聴きになられることをオススメします。

さて、本作の内容ですが、基本的には88年に発表された『Laughter,Tears and Rage』(LP発売時11曲)に未収録曲と別ミックスを24曲追加した2枚組です。

Disc 1の収録曲は以下の通り。
いつものように、タイトルにアンダーラインが入っているものはYouTube映像をリンクしておきましたので、興味を持たれた方は曲タイトルをクリックしてご覧ください。

1. Absolutely Immune
2. Chance
3. Laughter
4. I Can't Escape From You
5. Short Story (Thinker)
6. Poison
7. Under The Nights Of Germany
8. Heaven Knows I'm Miserable Now
9. The 3rd Planet
10. Gestures
11. Bloodrush
12. A Friendly Warning
13. Certified
14. Where Love Lies Bleeding
15. (Theme From) Laughter
16. Snobbery And Decay
17. I'd Be Surprisingly Good For You
18. (Theme From) Snobbery And Decay
19. Absolutely Immune (Seven Inch Mix)
20. White Rabbit
21. Dear Life
22. (Theme From) I Can't Escape From You

なお、DISC 1のプロデュースは、「2. Chance」がトレヴァー・ホーン、「12. A Friendly Warning」がアクト、「15. (Theme From) Laughter」がグレッグ・ウォルシュ [ Greg Walsh ] 、それ以外の曲はすべてステファン・リプソンが担当しているようです。

なぜか発表当時のアルバムには、アクトの楽曲の中で最もヒットしたシングル「Snobbery And Decay」が収録されていなかったのですが、これが耳馴染みのあるシングル・バージョンに加えて別バージョンまで収録されたのは嬉しいことですね。

また、生ピアノをフィーチャーしたジャズ〜シャンソンっぽい楽曲や、ボディ・ビート風のミックス、スミス [ The Smith ] のカバー曲「Heaven Knows I'm Miserable Now」なども追加されており、ただでさえ守備範囲の広いアクトの音楽性をいっそう広げています。

ただ、やはりアクトに関しても従来のZTTの手法は継承されていますので、フランキーやAON同様、数々の12inchシングルで多種多様なバージョンが発表されています。

さすがにそれら全てを聴いて来たわけではありませんので、どの曲がどのシングルにカップリングされていたのか、すべてを把握することはできないのですが、付属のライナーノーツにボーナス・ディスク(Disc 2)に収録された楽曲のみ、簡単な解説がありましたので、DISC 2に関してはそちらをそのまま引用させていただき、一部、私の補足を加えて紹介することにします。

ちなみに、こちらもタイトルにアンダーラインが入っているものはYouTube映像をリンクしておきましたので、興味を持たれた方は曲タイトルをクリックしてご覧ください。

1. Snobbery and Decay (The Naked Civil)
多数リリースされた同局のリミックスのうち、限定の12インチ(12XACT28)に収録されたヴァージョン。原曲、他ヴァージョンとくらべ、これぞZTTというエレクトリックなリミックスとなっている。
(イントロ部分だけを聴くとプロパガンダのリミックス曲を思い出してしまいますが、ひょっとすると同じバスドラの音やベース音を使っているのかも知れません。途中に聴こえるオケヒットにはニヤけてしまいます。笑)

2. Strong Poison
同じく(12XACT28)に収録されたアルバム収録曲「Poison」のリミックス。80年代後期ならではのエレクトロなリズム強化は聴きもの。

3. Absolutely Immune II (Trevor's Twelve Inch Mix)
同曲の限定12インチ(VIMM1)に収録されたトレヴァー・ホーン自身によるリミックス・ヴァージョン。
(このバージョンは、ミックスがトレヴァー・ホーン、プロデュースがステファン・リプソンを担当しているようです。)

4. Chance (Throbbin' Mix)
トラブルにより発売中止(発売中止前に少数は流通したようだ)になった同曲の12インチ(BETT1)のためのリミックス・ヴァージョン。各種制作されたが、フランキー・ゴーズ・トゥー・ハリウッドを彷彿とさせるエレクトリック・ディスコなヴァージョンとなっている。
(トラブルにより発売中止となったのは、88年に発表しようとした「Chance」のシングル。アバ [ ABBA ] の楽曲の一部をサンプリングして使おうとしたところ、裁判沙汰になり敗訴、このことにより、発売したばかりの同曲のシングルは回収、この後発表されたアルバムにはサンプリングした部分をカットしたミックスが収録されました。
なお、余談ですが、アバは最近まで、一切のサンプリング行為 {※} を許しておらず、他でも裁判を起こしているのだとか。しかし、96年にフージーズが「Rumble in the Jungle」でアバの「The Name Of The Game」、2005年にマドンナが「Hung Up」でアバの「Gimme Gimme Gimme」のサンプリング使用を許可されています。ま、許可される基準は曖昧ですが、いずれにせよ、今でもアバの曲をサンプリングして使用する承諾を得るのは至難の業のようです。{※ カバー曲ではなく、曲の一部をサンプリングして別のトラックに乗せるという意味です。念のため。} )

5. Winner '88 (Extended)
同12インチ(BETT1)のカップリングのためのリミックス・ヴァージョン。

6. I Can't Escape From You (Love and Hate)
12インチ(TIMM2)のためのリミックス・ヴァージョン。ポップでメランコリックな原曲の魅力がさらにアップされている。

7. Under the Nights of Germany (Trial Edit)
アルバムに収録された同曲のエディット・ヴァージョン。

8. States Of Logic
「Absolutely Immune II」の12インチ(VIMM1)にカップリングされたアルバム未収録曲。

9. Body Electric
2004年の限定盤3CDのボーナス・ディスクに収録された完全未発表曲。

10. Heaven Knows I'm Miserable Now (Lucky's Skank 1)
「 I Can't Escape From You」の12インチ、CDシングルのカップリングとなったザ・スミス [ The Smith ] のカヴァー曲。
(ちなみにスミスの原曲はこちら→The Smith「Heaven Knows I'm Miserable Now」

11. Winner '88 (Instrumental)
2004年の限定盤3CDのボーナス・ディスクに収録された当時未発表のインスト・ヴァージョン。ACT風エレクトリック・ボディ・ミュージック!

12. (We Give You Another) Chance
同曲の12インチ(BETT1)のカップリングとなった別リミックス・ヴァージョン。

13. Gestures (Improvised)
2004年の限定盤3CDのボーナス・ディスクに収録された当時未発表のリミックス。アルバムに収録された約4分の原曲を10分を超える大作に。90年代以降のクラブ・ミュージックを先取りした先進的ヴァージョンとなっている。

なお、DISC 2のプロデュースは「4. Chance (Throbbin' Mix)」はトレヴァー、「Winner '88 (Extended)」「9. Body Electric」「10. Heaven Knows I'm Miserable Now (Lucky's Skank 1)」「11. Winner '88 (Instrumental)」がアクト、それ以外の曲は全てステファン・リプソンが担当していようです。


ところで、私は今回の復刻シリーズで、本作とアン・ピガール [ Anne Pigalle ] の『Everything Could Be So Perfect…』の2枚を購入したのですが、それぞれ以前のCDのジャケットと見比べてみてちょっとした違いに気がつきました。

使われている写真が同じであることは間違いないのですが、裏表共に少々画質が荒く、わずかにレイアウトを変更した上で紙ジャケ化されています。

恐らく、昔のジャケットからカラーコピーした写真をトリミングしてサイズに合うように拡大したのでしょう。

オリジナル盤を持っている私としてはこの点だけが残念なのですが、それでも復刻盤発売に際してのZTT Japanさんの苦労が感じ取れました。

できれば表ジャケットくらいはオリジナルに忠実であって欲しいところですが、ZTTレーベルの作品はレアな12インチ盤が多いだけに、今後もこのような復刻盤は企画していただきたいと思います。

いずれにせよ、非常にお得な盤であることは間違いありませんので、興味を持たれた方はこの機会に手に入れて下さい。
/BLマスター



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2009年02月17日

Zang Tumb Tuum: The ZTT Box Set

Zang Tumb Tuum: The ZTT Box Set

今日は、昨年10月に発売されたZTTレーベルの4枚組ボックス・セット『Zang Tumb Tuum: The ZTT Box Set』を紹介したいと思います。

実は、先日、なんとなくグーグルでプロパガンダ [ Propaganda ] を検索してみたところ、昨年10月にユニクロの「UT」からZTTレーベルのTシャツが発売になっていたことを知りました。
 ↓
「ユニクロ UT : ZTT Records」

プリントの種類は「ZTTのロゴ」「ジ・アート・オブ・ノイズ [ The Art Of Noise ] 」「プロパガンダ」「フランキー・ゴーズ・トゥー・ハリウッド [ Frankie Goes To Hollywood ] 2種」「808ステイト [ 808 State ] 」の6種類。

残念ながら、一部店舗限定だったそうで、私の行動範囲にあるユニクロでは販売されなかったようです。

それでもネット販売で手に入れることは可能とのことで、早速、調べてみたところ…、あらら〜、2月15日現在、残っているのは「ZTTロゴの黄色」と「フランキーの黒・Sサイズ」のみ。
処分品で安くはなっているのですが、送料がかかる上、私の欲しいTシャツではありません。
う〜ん、再発されるのを期待して待つか、手作りするしかなさそうです…トホホ。

しかし、なぜ、今頃になってこんなTシャツが企画されたのでしょうか。

疑問を感じてさらに詳しく検索してみると、なんと、昨年、「Zang Tuum Tumb Japan」というZTTレーベルのアーチストのCDやグッズを取り扱う会社が発足、さらに、808ステイト、アート・オブ・ノイズ、プロパガンダ、アン・ピガール [ Anne Pigalle ] 、アクト [ Act ] などの旧盤が、紙ジャケの『ZTTアーカイブス 復刻シリーズ』として続々とリイシューされたんだとか。
 ↓
「Zang Tuum Tumb Japan」
(なぜかサイト名では"Tumb"と"Tuum"が逆になっているんですが、これって意図的なものなんでしょうか??)

しかも、ほとんどのアルバムに未発表音源やレア・トラックなどのボーナス・トラックが追加されているではないですか。
お〜っ!こ、こ、こ、これはすごい!(少々興奮気味です)

すでに持っているアルバムがほとんどなのですが、このボーナス・トラックはぜひとも聴いてみたい…、しかし、ボーナス・トラックだけのためにもう一度購入するのももったいない…、いや、しかし、今買っておかなくては絶対に後悔するはず…、あ〜、どうしよ…。

悩みに悩んだあげくアン・ピガールとアクトのCD購入を決定!(呆)

しかし、ZTT Japanで注文すると500円の送料がかかるようなので、念のためAmazonでも検索。

お〜、予想通りこちらにもあるじゃないですか(嬉)。
販売価格は同じで、もちろん1,500円以上は送料無料!
 ↓
エヴリシング・クドゥ・ビー・ソー・パフェクト
ラフター、ティアーズ&レイジ(デラックス・エディション)

とはいえ、今、ZTT Japanで2枚以上同時購入すると、プロパガンダのツアー・パンフレットのレプリカがもらえるそうなので、私はZTT Japanで購入することに決めました。
実は、このパンフ、来日公演時、開演ギリギリに入場したため、売り切れで悔しい思いをしたんですよ。
ま、欲しかったパンフレットを500円で購入したと思えば安いものですからね。
ただし、この特典は数量限定とのことですので、終了後はAmazonで購入された方がお得だと思います。


ま、話がどんどん脱線してしまいそうなので、ここらへんで話を戻しまして(笑)、今日紹介する『Zang Tumb Tuum: The ZTT Box Set』はZTTレーベル25周年を記念して企画された4枚組(3CD + 1DVD)の限定スペシャル・ボックス・セットです(ZTTのレーベル創設者であるポール・モーリィとZTT所属アーチストの取材を続けて来たイアン・ピールの2人によるテキストを収載した72ページの分厚いブックレット付)。

Zang Tumb Tuum: The ZTT Box Set 2


内容的には、馴染みのある通常のシングル・バージョンが多いものの、これまで品薄のため入手困難となっていたアクトやアン・ピガール、アフリカ・バンバータ、サン・エレクトリック、アンドリュー・ポピーなどの音源も収録されており、なかなかお得感のある選曲となっています。

個人的には、レアなリミックス・バージョンや未発表曲をまとめたボックス・セットがあっても嬉しいんですが、結局、永く聴けるのは普通のバージョンだったりするので、この選曲はまさしく25周年記念のボックスにはふさわしいものだと言えるでしょう。

また、DVDに関しては、大ヒットしたフランキーを除いて、MTVなどでもあまり目にすることがなかった貴重な映像ばかりで、しかも、これをきれいな画質で観ることが出来るわけですから、ファンにとっては感涙ものです。

個人的には、大好きなアントン・コービン [ Anton Corbijn ] 監督バージョンである1.「Propaganda - Dr Mabuse」、初めて見ることのできた4.「Anne Pigalle - He Stranger」、ジョニー・デップが監督、出演の13.「Shane MacGowan - That Woman's Got Me Drinking」あたりが気に入っております。

ただし、このDVDに関してはPAL仕様(ヨーロッパなどで主流の方式)で記録されているため、日本の一般的なDVDプレーヤーでは再生することができません(ちなみに日本の方式はNTSC仕様)。

とはいえ、パソコンならPALやNTSCの区別が元々ありませんから普通に再生可能ですし、パイオニアやビクター、デノンなどの一部機種のようなPAL→NTSCの変換機能を内蔵しているDVDプレーヤーをお持ちならテレビでも観ることが出来るとのこと。

ちょっと残念な仕様ですが、とりあえず、パソコンがあればレアな映像をきれいな画質で観ることが出来るわけですから我慢するとしましょう。


さて、本作の収録曲は以下の通り。

いつものように、アンダーラインの入った楽曲に関してはYouTube映像をリンクしてありますので、興味を持たれた方は曲名をクリックしてご覧になって下さい(注:本作に収録されたバージョンと異なることがあります)。
あと、ご覧になる際は、映像によって音量の大小がありますのでご注意ください。

ディスク:1
1. Frankie Goes To Hollywood - Relax
2. Frankie Goes To Hollywood - Two Tribes (Annihilation)
3. Frankie Goes To Hollywood - The Power of Love
4. Art of Noise - Battle
5. Art of Noise - Beat Box
6. Art of Noise - Close (To The Edit) (12" Edited mix)
7. http://www.youtube.com/watch?v=6w_q58CFfAo
8. Propaganda - Thought
9. Propaganda - Dr. Mabuse
10. Act - (Theme from) Laughter
11. Act - Snobbery & Decay
12. Act - White Rabbit
13. Anne Pigalle - Why Does It Have To Be This Way?
14. 808 State - Pacific 202
15. MC Tunes Vs. 808 State - Tunes Splits The Atom (Rap)
16. MC Tunes Vs. 808 State - The Only Rhyme That Bites (7" Version)
17. 808 State - Cubik (Original Mix)
18. David Jordan - Move On (Clean Radio Edit)

ディスク:2
1. David Jordan - The Sun Goes Down
2. David's Daughters - Is This Love
3. Novecento - Day and Night (Morales Radio Edit)
4. Seal - Killer (William Orbit Remix Edit)
5. Afrika Bambaataa & The Soulsonic Force - Don't Stop... Planet Rock (House Mix II by LFO)
6. Time Unlimited - Men Of Wadodem
7. 808 State feat. Bjork - Ooops
8. Shades of Rhythm - Sweet Sensation
9. General Max - Time Keeper
10. Sun Electric - Red Summer (The Orb Koskiewicz Mix)
11. Nasty Rox Inc. - Nobby's One
12. Frankie Goes To Hollywood - Welcome to the Pleasuredome (An Alternative to Reality)
13. Art of Noise - Moments In Love (Beaten)
14. Andrew Poppy - Kink Konk Adagio

ディスク:3
1. Shane MacGowan - My Way
2. Shane MacGowan & Sinead O'Connor - Haunted
3. Kirsty MacColl - Soho Square
4. The Frames - Say It To Me Now
5. The Frames - Pavement Tune
6. Lee Griffiths - No-One
7. (Lo)Max - Waiting In Vain
8. das Psych-oh! Rangers - Homage to the Blessed
9. 808 State feat. James Dean Bradfield - Lopez (re-guessed and remixed by Brian Eno)
10. Tara - Save Me From Myself (Apollo 440 Kingdome Come Ambient Mix)
11. Heights of Abraham - What's The Number
12. Art of Noise - Out of This World (Version 138)
13. Seal - Crazy (Extended Version)
14. Seal - Future Love Paradise
15. Seal - Kiss From A Rose


ディスク:4(DVD)
1. Propaganda - Dr Mabuse (video)
2. Art of Noise - Close (To The Edit) (video)
3. Frankie Goes To Hollywood - Two Tribes (Video Destructo Version) (video)
4. Anne Pigalle - He Stranger (video)
5. das Psych-oh! Rangers - The Essential Art of Communication (video)
6. Andrew Poppy - The Amusement (video)
7. Act - Snobbery and Decay (video)
8. Nasty Rox Inc. - Escape From New York (video)
9. MC Tunes - Tunes Splits The Atom (video)
10. Shades of Rhythm - Exorcist (video)
11. 808 State - Plan 9 (video)
12. Adamski's Thing - One of the People (video)
13. Shane MacGowan - That Woman's Got Me Drinking (video)
14. The Frames - Revelate (video)
15. Dove - Don't Dream (video)
16. Leilani - Flying Elvis (video)
17. David's Daughters - Dreaming Of Loving You (video)
18. Raging Speedhorn - The Gush (video)


なお、本作は、当然、先述のZTT JAPANでも販売しておりますが、内容的には全く同じもの、ディスク4のDVDに関してはAmazonの取り扱い商品と同じくPAL方式の盤が入っていますので、一般的なDVDプレーヤーでは観ることが出来ません。

しかし、今、ZTT JAPANで購入すれば、本作に同梱のものとは別選曲のNTSC方式のDVD(ZTT アーティストによるレアなプロモ・ビデオ+アーティストのインタビュー収録)がもらえるそうです。

ただし、こちらの特典DVDも数量限定(もう終了しているかも?)とのことですので、終了後はAmazonのマーケット・プレイスで取り扱っている2,561円(09/2/16現在)の新品が最もお得です(マーケット・プレイスは1,500円以上でも送料が別にかかりますのでご注意ください)。

いずれにせよ、本作は限定生産とのことですので、欲しい方はプレミアのつかないうちに手に入れておきましょう。

それにしても、これからのZTT Japanの復刻シリーズが楽しみです。
/BLマスター

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2007年12月06日

Love : And A Million Other Things/Claudia Brucken

Claudia Brucken

今日紹介するのは、元プロパガンダ [ Propaganda ] の歌姫、クラウディア・ブルッケン [ Claudia Brucken ] が1991年に発表したソロとしてのデビュー・アルバム『Love : And A Million Other Things(邦題:愛は万華鏡のように…)』です。

実は、このアルバム、前々から取り上げたかったのですが、廃盤になっている上、アマゾンでもずっと品切れ状態だったため記事にできず、中古でも入荷してくれないかなと心待ちにしていたんですよ。

先日、アマゾンで、久しぶりに「クラウディア・ブルッケン」と検索してみたところ、もちろん中古品ではあるものの、妙なプレミアが付くこともなく2枚も入荷しているではないですか。

恐らく、本来ならプレミアがついていてもおかしくないCDだけに(私の価値観ですが…)、このチャンスを逃してしまっては二度と記事にすることはできません(笑)。

そんなわけで、緊急に記事を書かせていただくことにしました。


クラウディア・ブルッケンは、先述の通り、元プロパガンダのメイン・ボーカリストとして84年にZTTレーベルからデビュー、ドイツ特有の重厚な雰囲気と、ZTT特有の派手なサンプリング・サウンドが見事に融合し、緊迫感に満ちた独自の音世界とそのキャラクターで確固たる地位を築き上げています。

ま、プロパガンダについては、以前の記事、『A Secret Wish』、『Wishful Thinking』、『Outside World』のところで取り上げておりますので、詳しくはそちらをご覧下さい。

クラウディアは85年に、ZTTレーベルの中核を成す人物の一人、ポール・モーリィ [ Paul Morley ] と結婚(ちなみに、プロパガンダが送ったデモテープを聴いて気に入り、ZTTに勧誘したのもポールです)。

それが引き金になったのかどうかはわかりませんが、彼女は86年10月にプロパガンダを脱退、その後、夫ポールの企画で、トーマス・リアー [ Thomas Leer ] と87年にアクト [ Act ] というユニットを結成、『Laughter, Tears and Rage』というアルバムを発表しています。

アクト「Absolutely Immune」のプロモ映像
アクト「Snobbery & Decay」のプロモ映像

しかし、軽いポップス指向の曲やジャジーな曲がシングルカットされているため、重厚なプロパガンダのイメージとのギャップが大き過ぎたのか、ごく一部のファンに受け入れられただけで、これといったヒットも無く、1枚こっきりであっという間に姿を消してしまいました。

その後、89年には、自らのアイデアによる『Primadonna(プリマドンナ)』というアルバム・タイトルでソロ・プロジェクトの構想が固まり、それが形を変えて本ソロ作『Love : And A Million Other Things(邦題:愛は万華鏡のように…)』となったようです。

とはいえ、本作の発表までの間には、いろんな紆余曲折があったのでしょう。
クレジットをよく見ると、異なる2つのユニットによって制作されていることがわかります。

一つは、プロパガンダの初ライヴに、ドラマーとしてゲスト出演した元ジャパン [ Japan ] のスティーヴ・ジャンセン [ Steve Jansen ] から派生したと考えられる、ジャパン系の人脈で構成されるスティーヴ・ナイ [ Steve Nye ] と、もう一人の共作者ジョン・ユリエル [ John Uriel ] を中心とするユニット( 2,6,9 )、もう一つは、ボム・ザ・ベース [ Bomb The Bass ] 、イレイジャー [ Erasure ] 、ニュー・オーダー [ New Order ] などの作品で知られるパスカル・ガブリエル [ Pascal Gabriel ] を中心とするユニット( 1,3,4,5,7,8,10,11 )です(11は日本盤のみのボーナス・トラック)。

2つのユニットの大きな違いは、スティーヴ・ジャンセンの生ドラムが入っているかどうかという点ですが、全体を通して聴く限り特に違和感はなく、一つの作品として自然な流れが形成されているように感じます。

ちなみに、クレジットによれば、本作で言うクラウディア・ブルッケンとは、クラウディア・ブルッケン&ザ・シルヴァー・オブ・フラワーズ(スティーヴ・ナイ+パスカル・ガブリエル+ジョン・ユリエル)というグループのことだそうで、この4人で作曲が行われているとのこと。

恐らく、別々のユニットで制作された楽曲をこの4人でまとめたのでしょうね。
そう考えると2つのユニットの出す音に違和感が無いことにも納得がいきます。

なお、クレジットによれば、7曲目のみ、アクトで相方を努めたトーマス・リアーの作曲のようですので、ひょっとするとこの曲だけはアクト時代のアウト・テイク(未発表曲)なのかも知れません(本作にトーマスは参加していません)。

曲調的には、ZTTレーベルの関与がなくなったせいか、プロパガンダ時代に比べると若干重厚さに欠ける気もするのですが、その分ダンサンブルな曲が増えているように感じます。

とはいえ、あくまでもプロパガンダ時代と比較しての話でして、当時流行していたポップな曲に比べれば、充分に重たさは感じていただけると思います。

アルバムに先駆けて発表された第一弾シングル「Absolut(e)」は、しっかりと踊れるテンポのディスコライクな曲ですが、第二弾シングルの「Kiss Loke Ether」に関しては、若干ムーディーながら、プロパガンダ時代を思い出させる重たさも併せ持っています。
(シングル「Kiss Like Ether」のカップリング曲「I, Dream」が一番プロパガンダっぽいのですが、残念なことに、このシングル以外には未収録です。)

「Absolut(e)」のプロモ映像
「Kiss Like Ether」のプロモ映像
(なぜか、この曲にはクレジット上、参加していないはずのスティーヴ・ジャンセンが後ろでドラムを叩いています。笑)

そして、何より、彼女独特の鼻にかかった声からはプロパガンダの面影も感じられますので、本作の前年に発表された新生プロパガンダの『1-2-3-4』を聴くよりは、よほどプロパガンダらしい雰囲気を感じ取ることができることでしょう。

しかし、いくら優れたアルバムとはいえ、あくまでもプロパガンダ名義のアルバムではありません。

プロパガンダの全盛期の音を期待して購入するのはやめたほうが良いと思います。。


この後、クラウディアは、同じく元ZTTレーベルに在籍したアーチスト、アンドリュー・ポピー [ Andrew Poppy ] との共作『Another Language』(2005)や、元O.M.D.のポール・ハンフリーズ [ Paul Humphreys ] と結成した新ユニットワントゥー [ OneTwo ] で『Instead』(2007)というアルバムを発表するなど、今でも精力的に活動しているようですが、個人的にはプロパガンダのアルバムの次に好きなのが本作『Love : And A Million Other Things』です。

ワントゥー「Cloud9」を使った映像
(デペッシュ・モードのマーティン・ゴアがギターを弾いている曲です)
アソシエイツのビリー・マッケンジーのトリビュート・ライヴでのワントゥーの映像

残念ながら、本作をアマゾンで試聴することはできませんが、プロパガンダが、いや、クラウディアの声が大好きだったという方には、ぜひ聴いていただきたいアルバムです。

なお、アマゾンで曲目が紹介されていませんでしたので、下記に紹介しておきました。
欲しいと思われた方は、妙なプレミアが付かないうちに手に入れて下さい。

1. Kiss Like Ether
2. Baby Sigh
3. Absolut(e)
4. Suicide - Song For a Ghost
5. Unforgivable
6. Moments of Joy
7. Fanatic (The Nail in My Soul)
8. Love: In Another World
9. Always...
10.Surprise
11.Absolut(e)〜Shooting Star(日本盤のみ)


ところで、いつだったか、音楽系のブログを書いている方が、クラウディアの声がエヴリシング・バット・ザ・ガール [ Everything But The Girl ] のトレーシー・ソーン [ Tracey Thorn ] の声に似ているという話を書いておられるのを読んだことがあります。

お〜、言われてみれば、確かに似たところを感じます。

どちらも個人的に大好きなシンガーなのですが、そう考えてみれば、私の好きな女性シンガーのツボは「鼻にかかっていること」なのかも知れません(笑)。
/BLマスター

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2007年11月07日

(Who's Afraid Of ?) The Art Of Noise/The Art Of Noise

Who's Afraid Of ?(新盤)

今日は、ZTTレーベルの看板ユニット、アート・オブ・ノイズ [ The Art Of Noise ] の84年のデビュー・アルバム『(Who's Afraid Of ?) The Art Of Noise(邦題:誰がアート・オフ・ノイズを…)』を紹介します。

思えば、83年、大学の同級生だった国分寺のロジャーことComo-Lee氏に12inchシングル(ミニ・アルバム?)「Into Battle with the Art of Noise」を聴かせてもらった時の衝撃は非常に大きなものでした。

まるでクラシックのアルバムのようなデザインのジャケットの中に、それまで聴いたことのない、未完成のようにも聴こえる実験的サンプリング・コラージュ作品が収められていたのです。

とはいえ、あくまでもポップス・ベースであるため、まったく小難しい印象はなく、どこかに洒落たユーモアを感じさせてくれる、まさしくアート・オブ・ノイズ(=騒音芸術)と言えるセンセーショナルなデビューでした。

しかし、この時点では、ZTTレーベルが「Video Kills The Radio Star(邦題:ラジオスターの悲劇)」のヒットで名を馳せた元バグルス [ Buggles ] のトレヴァー・ホーン [ Trevor Horn ] と、元NMEの毒舌ライターであったポール・モーリィ [ Paul Morley ] の新レーベルといった程度の情報しか公開されておらず、当のアート・オブ・ノイズに関してもトレヴァー・ホーンの新グループ的な扱いで、実体はほとんどわかりませんでした。

Who's Afraid Of ?(旧盤)そんな状態のまま、翌年、デビュー・アルバムである本作『(Who's Afraid Of ?) The Art Of Noise』、さらに、ZTTの十八番とも言える12inchシングルを次々に発表(実際のところ、1曲につき何バージョンあるんでしょう?)、そして、唯一行われたTV番組でのライヴにおいてもピエロ風のメイクや当時の本作のジャケット(写真)にあるマスクを被ったまま行われました。

84年のTV番組でのライヴ映像

「Beat Box Version 1」の映像
「Beat Box Version 2」の映像
「Close (To The Edit) Original Version」の映像
「Close (To The Edit) - Version 2」の映像
「Moments In Love」の映像

さらには、85年春にロンドンで行われたZTTのショー・ケース・ライヴにおいて正体を明かすと宣伝しながらも、いざ幕が上がってみれば、アルバムと同テイクのテープをバックに、ジャケットにあるマスクを被った数名のダンサーからなるパフォーマンスが展開されただけで、ファンやマスコミの期待を見事に裏切ったのです。

とはいえ、個人的には歯がゆさを感じながら、このパフォーマンスが、アート・オブ・ノイズの謎めいたイメージをさらに高めることに成功していたように感じます。

しかし、実際のメンバーは、この扱いに不満を感じていたのか、同年秋、ZTTレーベルから離脱し、チャイナ・レコード [ China Records ] と契約、この時、ようやくアート・オブ・ノイズとして初めて姿を現したのが、アン・ダッドレー [ Anne Dudley ] 、J.J.ジェクザリック [ J.J.Jeczalik ] 、ゲイリー・ランガン [ Gary Langan ] の3人だったのです(ゲイリーは87年に脱退)。

当時のインタビューによれば、トレヴァー・ホーンとポール・モーリィはプロモート戦略の面でのコーディネートをしただけで、作曲、演奏、録音に関しては、実際のメンバーである3人だけで行われたとのことで、この話が本当だったとすると、トレヴァーとポールは、セックス・ピストルズ [ Sex Pistols ] アダム&ジ・アンツ [ Adam & The Ants ] バウ・ワウ・ワウ [ Bow Wow Wow ] のプロデュースを行った時のマルコム・マクラレン [ Malclm McLaren ] とヴィヴィアンのような立場だったわけですね。

その後、ZTTのプロモーション術的な束縛から解放された第2期アート・オブ・ノイズは、既存のスタイルのプロモーションに乗って、テレビ出演やライヴ活動を始めるのですが、ポップさを増した楽曲のせいか、はたまた、J.J.のおっさん的ルックスやコメディアン的なパフォーマンスのせいか(笑)、ZTT時代の謎めいたイメージが一気に吹き飛んでしまいました。

考えてみれば、デビュー当時、音に洒落たユーモアのようなものを感じていたのはJ.J.のキャラクターだったのかも知れません。

とはいえ、彼のルックスとパフォーマンスのせいで、時代の先端を突っ走っていた音楽が、イタズラ好きなおっさんにサンプラーという高価なおもちゃを与えて作らせた音楽というイメージに変化してしまいました。

例えるなら、最先端の美術館ですばらしい絵画を見て、さぞかし気難しい芸術家が描いたんだろうと思っていたら、まるで少年のような心を持った山下清画伯(裸の大将)が描いていたというような感覚でしょうか。

ま、それはそれで大好きなのですが、イメージ的にはZTT時代の謎めいたものの方が合っているような気がします。

ジャンルこそ違いますが、そういう意味では、クリストファー・クロスが正体を現した時にも似ていますね(笑)。

恐らく、ZTTレーベルのプロモーション・ラインに乗ったままで正体を現すことがあったとしたら、このような方法はとらなかったことでしょう。

もちろん、夜のヒットスタジオや来日公演で見たJ.J.の陽気さは決して嫌いではないのですが(むしろ大好きです。笑)、そう考えると、トレヴァーとポールのとったイメージ戦略は正しかったのかも知れません。

ちなみに、チャイナ・レコードからは『In Visible Silence』(1986年)『In No Sense? Nonsense!』(1987年)『Below the Waste』(1989年)という3枚のアルバムを発表、その後、数々のリミックス・アルバムは発表されるものの、正式な解散を表明することなく活動を休止、1999年になって再びZTTレーベルから、アート・オブ・ノイズ名義で『The Seduction of Claude Debussy?ドビュッシーの誘惑?』というニュー・アルバムを発表しました。

しかし、この作品ではトレヴァーが音作りの中核として、楽器演奏者ではなかったはずのポールと共に演奏にも加わっている反面、元々実際の演奏者であったJ.J.やゲイリーの名前はなく、アンのみが参加、さらに、ゴドレイ&クレームのロイ・クレーム [ Lol Creme ] までもが参加し、デビュー当時やチャイナ・レコード時代の第2期とも違う形のアート・オブ・ノイズとなっています。

どの時代の作品も斬新なアート・オブ・ノイズらしい要素を持っていることは間違いありませんが、最も実験的で、かつ、ユーモアを感じさせる、その名の通り騒音芸術(=The Art Of Noise)だったのは、間違いなく第1期の頃の作品でしょう。

未聴の方は、ぜひ一度じっくり聴いてみて下さい。
こんなに実験的なのに小難しく感じないのはアート・オブ・ノイズならではですよ。
/BLマスター

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2007年06月19日

Outside World/PROPAGANDA

Outside World/PROPAGANDA

本作『Outside World』は、2002年に ZTTレーベルから発表された、プロパガンダ [ PROPAGANDA ] のリミックスとアウトトラック(未発表曲集)をまとめた編集盤です。

個人的な意見ですが、プロパガンダは80年代半ばの ZTTを象徴するような音作りだと思うんです。

当時、最先端のサンプリング技術を駆使した実験性とポップ性を兼ね備え、重たくダークなイメージ戦略と、ジャーマン・テクノの要素、さらに、適度な音遊びの要素を盛り込んだすばらしいプロデュースの業。

どこを切り取っても、私的には、ZTTレーベルで一番好きなグループです。

ZTTレーベルの他のグループと比較すると、ZTT在籍時代の アート・オブ・ノイズ [ The Art Of Noise ] は、実験性が高くポップスの王道から外れた、言わばプロトタイプ、反対に、 フランキー・ゴーズ・トゥー・ハリウッド [ Frankie Goes To Hollywood ] は、AONで培ったサウンドと売れる仕組みを見事に組み込んだ量産型、そしてプロパガンダはちょうどその間に位置し、両者の要素をバランスよく取り込んだ、通受けのするオタク・アイテムという感じでしょうか。

車に置き換えて言うなら、AONがモーター・ショーに出品された実際には販売しないショー用のコンセプト・カー、FGTHが時代の感性を敏感に捉えた一般に販売される車、プロパガンダは、昔ニッサンで販売されたBe-1、パオ、フィガロのような限定車といった感じですね(ちょっと無理があるかな?笑)。

また、金属的な映画(なんじゃそりゃ?)に例えれば、AONが『鉄男』のような実験的要素の強い作品、FGTHが『ロボコップ』のようなハリウッド映画、プロパガンダが『キューブ』のような若干マニアックな映画のような雰囲気を感じます。

つまり、AONは、実際にはポップスとして成立しないような新しい要素だけを前面に出した極端な音楽であり(不思議なことに一般的にも認知されてはいますが…)、FGTHは、その新しい要素を取り込みつつも、ポップスのカテゴリーから外れることのないエンターテイメント性の強い音で広く一般に受け入れられる音楽、プロパガンダは、さらにそこに音遊びとジャーマン・ニューウェーヴ的なダークなイメージを追加することで、一部のマニアックなファンにウケる要素を盛り込んだ音楽を、それぞれ作って来たのではないかと思うわけです。

もちろん、これらの音作りやイメージ戦略は、それぞれのグループが作り上げたものではなく、ZTTレーベルという、音とイメージのデザイン工房が、彼らの元々持っていた個性の上に過剰なまでのプロデュースを行ったことにより生まれたものなのですが…。

今回は、少々、例えが強引でしたが、先ほどの映画的なたとえで言うなら、本作『Outside World』は、オリジナル・メンバーでの唯一のアルバム『 A Secret Wish』という映画の「未公開映像」や「メイキング映像」「ボーナス映像」を網羅した限定版DVDに同梱されるボーナスディスク的存在です。
要は、本編を観た方だけが楽しめる特典というわけですね。

ゆえに、『 A Secret Wish』や『 Wishful Thinking』を聴いて大好きになった方にはたまらない魅力の作品ですが、本作をベスト盤代わりに購入しようと思っておられる方にはオススメできません。

さて、本作の収録曲は以下の通りです。

1. Das Testament des Dr Mabuse (13th Life mix)  6:34
2. Lied  2:48
3. p.Machinery (Beta mix)  9:33
4. Duel (Bitter Sweet)  7:38
5. The Lesson  4:18
6. Frozen Faces (12" version)  5:30
7. Jewel  6:54
8. Complete Machinery  10:56
9. Das Testament des Dr Mabuse (DJ promo version)  9:52
10. Femme Fatale (The Woman With The Orchid)  3:24
11. Echo Of Frozen Faces  10:28

ちなみに、1.9.10.はトレヴァー・ホーン[ Trevor Horn ] 、2.4.5.6.7.8.11.はスティーヴ・リプソン[ Stephen Lipson ] 、そして3.だけはこの2人の共同プロデュース名義になっています。

ちょっと面白いのは、5.「The Lesson」が「Dr.Mabuse」のデモ音源的な音をバックに、ボーカル部分の電気的処理の実験をしているところを録音したもののようなのです。
それこそ、メイキング的音源なわけで、ポップスの王道からはかなり外れた実験的な楽曲なのですが、コアなファンには楽しんでいただけると思います。

あと、10.「Femme Fatale (The Woman With The Orchid)」は、現在では入手困難な1985年に発表されたZTTレーベルのショーケース的なアルバム『IQ6 Zang Tumb Tuum Sampled』という作品にのみ収録されていた曲で、ご存知、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「Femme Fatale(邦題:宿命の女)」のカバー曲です。
彼らのオリジナル・アルバム『A Secret Wish』『Wishful Thinking』には未収録でしたので貴重な音源ですね。
しかも、ものすごくデキの良いカバーなので、プロパガンダのファンの方なら、これだけのためだけでも買いだと思いますよ。

また現在、本作と同じ内容のCDに、プロモ映像を収録したDVDを同梱した2枚組のアルバム→『Outside World』も発売されているのですが、残念ながらDVDの方はPAL方式のため一般のプレーヤーでは観ることができません。
しかし、一部のPAL方式のDVDが再生可能なプレーヤーかパソコンをお持ちの方なら非常にお買い得ですのでオススメです。

ちなみに、DVDには「Dr. Mabuse」が2バージョン、「Duel」が2バージョン、「P-Machinery」が1バージョン、そして「Mabuse」と「Duel」のTVコマーシャルが収録されているそうです。
「Duel」の映像が一つだけ足りませんが、恐らく下記の映像だと思います。

特に「Dr. Mabuse (First version)」は、 アントン・コービン [ Anton Corbijn ] が監督を務めた作品なので、見応えがあると思いますよ。

「Dr. Mabuse (First version)」のプロモ映像
「Dr. Mabuse」のプロモ映像
「Dr. Mabuse」のTVコマーシャル映像
「Duel」のプロモ映像
「Duel」のTVコマーシャル映像
「P-Machinery」のプロモ映像

ついでに、本作とは関係ありませんが、英国でのライヴにゲスト参加していた元 ジャパン [ Japan ] のドラマー、スティーヴ・ジャンセン [ Steve Jansen ] と、シンプル・マインズ [ Simple Minds ] のベーシスト、デレク・フォーブス [ Derek Forbes ] がしっかりと映っている『ZTTショー』というビデオの映像も発見しましたので、合わせて紹介しておきますね。

「Dream within a Dream」のプロモ映像

なお、一番上に紹介しているUK盤は、こちらの方が価格が安いので紹介しましたが試聴はできません。
試聴をしてみたい方は、US盤のこちら→『Outside World』からアマゾンに入っていただければ、全曲試聴可能です。

『A Secret Wish』が大好きな方は、ぜひ本作も聴いてみて下さい。
きっと満足いただけると思いますよ。
/BLマスター

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2007年03月07日

The Ambient Collection/The Art of Noise

Art of Noise Ambient Collection

本作『The Ambient Collection』は、1990年にチャイナ・レーベルから発表された、アート・オブ・ノイズ [ The Art of Noise ] のアンビエント・ベスト的内容の作品。

アート・オブ・ノイズは、1983年にZTTレーベルの看板ユニットとして、顔はもちろん、メンバーの素性を一切明かさずにデビューしました。

その謎めいたイメージと、当時最先端の電子楽器を多用した非常に斬新な手法の曲で注目を集め、オーケストラ・ヒットという劇的な音を大流行させています。

しかし、1985年にはZTTレーベルとのトラブル(3人としては覆面ユニットであることに不満があったようです)からチャイナ・レコードに移籍、ようやく、J.J.ジェクザリク [ J.J. Jeczalik ] (Electoronics) とアン・ダッドレー [ Anne Dudley ] (Key)、ゲイリー・ランガン [ Gary Langan ] (Mix) の顔が始めてアート・オブ・ノイズとしてメディアに露出されることとなったわけです。

しかし、ゲイリーは移籍後発表された『In Visible Silence』を最後に多忙のため脱退、その後のワールド・ツアー(来日公演もありました)では、J.J.とアンを中心にゲスト・プレーヤーを招いて行われています。

アート・オブ・ノイズの特徴は、何といってもフェアライトやシンクラヴィアという超高級サンプリングマシン(現在で言えばシンセサイザーというよりもハード・ディスク・レコーダーに鍵盤がついたような機械)による音のコラージュで、まさしく「騒音芸術」と言えるでしょう。

これによる人工的なインダストリアル・サウンドと、クラシックを思わせるオーケストレーションで、実験的かつ、ポップな作品を世に送り出してきたわけです。

本作は、そんなアート・オブ・ノイズの楽曲をキリング・ジョーク [ Killing Joke ] のベーシスト、ユース [ Youth ] によるリミックスで劇的なアンビエント作品になっています。

そう言えば、アン・ダッドレーは、キリング・ジョークのジャズ・コールマン [ Jaz Coleman ] とも『Songs from the Victorious City』というアラブ系のサウンドをフィーチャーした作品を共作しており、ここでもキリング・ジョークとの親交の深さが伺えます。

雷鳴や雨音から始まり、波の音や飛行機の横切る音など、フィールドワーク的な自然音で曲間が埋められ、ラストまで切れ目なく楽曲を繋ぎ合わせている本作は、このアルバム1枚で一つの作品と考えることができ、発想的にはプログレのコンセプチャル・アルバムのような趣も持っています。

しかも、浮遊感のある曲ばかりをセレクトしているため、非常に心地良く聴くことができ、メディテーション、もしくはヒーリング・ミュージックのような効果を感じることも出来るでしょう。

途中では、何度か「Opus 4」の「太陽もない、月もない、朝もない、昼もない」という日本語による意味ありげなボイスがフィーチャーされており(ライヴではこのボイスをドラム・パッドで演奏していました)、我々日本人にとっても興味深いところです。

「Opus 4 and Paranomia」のライヴ映像
「Eye of a Needle」のプロモ映像
Ils remixの「The Art of Love」のプロモ映像

音色的には、いかにも当時のアート・オブ・ノイズ的なサンプリング音がふんだんに使われているのですが、なぜか古くさいイメージはなく、今聴いても充分に堪能できるのではないでしょうか。

これは恐らく、アンのクラシックで培った絶妙のアレンジと、J.J.のサンプリングのセンス、そして、ユースのミックスのセンスの賜物だと思います。

また、アンのクラシック・ライクなピアノ演奏とサンプリングによるストリングス・アンサンブルの活かされた楽曲や、後のアート・オブ・ノイズの再結成時のアルバム『The Seduction of Claude Debussy』などにも通ずる、教会を思わせる混成コーラスをフィーチャーした楽曲も非常に心地良く、ある意味でエニグマ [ ENIGMA ] の『Sadeness』を思わせるスピリチュアルな一面も兼ね備えています。

考えてみれば、アート・オブ・ノイズ自体が元々このような要素も持っていたわけで、そういう意味ではエニグマのルーツの一つはここにあると言っても良いのかも知れません。

本作はアート・オブ・ノイズのオリジナル・アルバムではありませんが、1stアルバム『(Who's Afraid Of?) The Art of Noise!』、以前紹介した『The Best of the Art of Noise』と並んで、ぜひ聴いていただきたい完成度の高いリミックス・アルバムです。

アンビエントものがお好きな方や、アート・オブ・ノイズのオリジナル・アルバムは持っているのだけれど、リミックス・アルバムは聴いたことがないという方には超オススメです。

全体を通して聴かなくてはこの良さは伝わりにくいと思うのですが、とりあえず、アマゾンで5曲目までは聴くことができます。
雰囲気だけでもつかんでもらえるはずですので、興味を持たれた方は一度試聴してみて下さい。

とにかく気持ちいいですよ。
/BLマスター

uknw80 at 18:43|PermalinkComments(2)TrackBack(3)

2007年03月05日

808:88:98/808 STATE

808State Best

808ステイト [ 808 STATE ] は、アシッド系ハウスが全盛の1988年にマンチェスターで結成され、同年ZTTレーベルからデビューしたグループです。

読み方は「エイト・オー・エイト・ステイト」が一般的ですが、電子楽器系の音楽をやっている方の間では、RolandのリズムマシンTR-808の愛称である「808=やおや」をとって「ヤオヤ・ステイト」もしくは「ハチ・マル・ハチ・ステイト」と呼ばれることも多いです。

マンチェスターといえば、ファクトリー・レコードの本拠地でもあり、古くはバズコックス、マガジン、フォール、ジョイ・ディヴィジョン、スミス、その後もストーン・ローゼズやハッピー・マンデーズ、インスパイラル・カーペッツといった、いわゆる「おマンチェ系」(懐かし〜)のバンドなどを輩出したことでも有名な土地ですね。

そんなマンチェスターから、808ステイトのようなエレクトリック系のグループが輩出されたことも意外ではありますが、それ以上に驚いたのがこのグループがZTTレーベルの所属アーチストであったということです。

当時のZTTレーベルと言えば、アート・オブ・ノイズや、アンドリュー・ポピーに代表される実験的なサウンド、もしくは、フランキー・ゴーズ・トゥー・ハリウッド、プロパガンダなどに代表される過激なアプローチのエレクトリック系ポップスが主流であり、DJライクなクラブ系サウンドが売りの808ステイトのようなグループのデビューはほんとに意外でした。

グループ名は、先述のRolandの有名なリズムマシン「TR-808」から取ったという説が濃厚ですが、インタビューによれば、「808」が、アメリカのハワイ州の局番であることにも由来するそうです。
私的には、彼らと常夏のハワイがどうも結びつかなかったのですが、けっこうハワイでのイベントも行われているとか・・・。

結成当時のメンバーは、マーティン・プライス [ Martin Price ] (G,Key,Sax)、グラハム・マッセイ [ Graham V Massey ] (Key)、ジェラルド・シンプソン [ Gerald Simpson ] (Key)の3人で、デビューの翌年にはジェラルドが脱退し、代わってアンドリュー・パーカー [ Andrew Barker ] (Key)とダーレン・パーティントン [ Darren Partington ] (Key,Per)が参加、その後、90年にはマーティンが脱退し、以降は3人で現在まで活動を続けています。

結成のきっかけとなったのは、マーティンの経営するレコード店、イースターン・ブロック [ Eastern Bloc ] でのことで、ここに出入りしていた元バイティング・タングス(4ADやファクトリーにも所属したらしいですが・・・?)のメンバーのグラハム、クラブDJでもあったジェラルドと意気投合、マーティンの業界での顔の広さを利用した営業戦略によりスピード・デビューを果しました。

本作『808:88:98』は、ZTT在籍時の88年から98年までの作品『Newbuild』『Quadrastate』『90』『Utd. State 90』(米国市場向け編集盤)『Ex:El』『Gorgeous』『Don Solaris』から16曲もの代表曲をセレクトしたベスト盤です。
さすがにハウス系が主流の初期の作品は旧くささを感じてしまいますが、時代時代に合わせたサウンドの変化を楽しめるのはベスト盤ならではのこと。
DJさんなら手法だけを取ってみてもかなり勉強になることでしょう。
懐かしさと共に、新たな発見をすることも出来ます。

また、2004年には初期の未発表曲をまとめた『Prebuild』も発表され、最近になってこの手のサウンドの再確認の動きも出てきました。

「Pacific」のプロモ映像
TV番組出演時の「Pacific」のライヴ映像
「Ancodia」のプロモ映像

基本的に、ダンスフロアでの使用が意識しているのか、いわゆる「4ツ打ち」がメインになっていますが、さすがはZTT、踊れるリズムをキープしつつも、単調にならないようにいろんなバリエーションを楽しませてくれます。
単なる、「踊らせるためのダンス曲」ではないんですよね。

デビュー当時は、私の働いていたクラブディスコでかかりまくっていたためか、勝手に頭の中でZTTレーベルアーチストの音とは別の「ダンスもの」的な扱いをしていたのですが、今になって改めて聴いてみればZTTらしい音のコラージュがされており、所々に他のアーチストの作品で聴かれる音色もチラホラ・・・。
808ステイトが他のクラブ系のサウンドと違っていたのはここだったんですね。

彼らのデビュー以降、クラブ系のサウンドと、実験的なアンビエント系のサウンドの垣根が無くなってきたように思います。

そう考えると、その後のクラブサウンドはもちろんのこと、恐らく、エレクトロニカ系のサウンドにも大きな影響を与えているんでしょうね。

ビョークや、UB40ジョン・ハッセルなどとのコラボレーションも好評で、最近でも著名アーチストから続々とお声がかかっているとか・・・。

808 State feat. Bjork「Ooops」のプロモ映像h
808 State feat. Bjork「Ooops」のライヴ映像
UB40 & 808 State「One In Ten」のプロモ映像

本作なら、ダンスフロア系のサウンドが苦手な方でも、あっさりと馴染むことができるんではないかと思います。
ぜひぜひご一聴下さいませ。
/BLマスター

uknw80 at 16:24|PermalinkComments(0)TrackBack(1)

2007年03月03日

Everything could be so perfect.../Anne Pigalle

Anne Pigalle

アン・ピガール [ Anne Pigalle ] をご存知でしょうか?

彼女は、1985年にトレヴァー・ホーン主催のZTTレーベルからシングル「He! Stranger(邦題:異邦人)」でデビューし、同年、デビュー・アルバムである本作『Everything could be so perfect...(邦題:青春の彷徨)』を発表、ワールド・ツアー後(来日公演もありました)、あっさり消えてしまった伝説と言っても良いくらいすばらしいアーチストなんです。

なお、英国盤では、「Hot Sagas」という珍しい10inchのマキシ・シングルと、「Why Does It Have To Be Way...(邦題:何故に...)」のシングルが発表されています。

本作は、9曲中6曲が英語3曲が仏語で歌われており、彼女の、フランス訛りの英語のせいなのか、生まれもってのものなのか、アルバム全体を通して独特のアンニュイ(死語?)な大人の雰囲気を漂わせています。

アルバム全体の出音としては、ZTTらしさを感じる大袈裟な空間処理や、独特の音色に夜アレンジは施されているものの、ストリングスなどのオーケストラ系の音色が前面に出ており、非常にムーディーなイメージが残ります。

わかりやすく言えば、旧い映画音楽のようなムーディーさと、フランス系アーチストの持つ独特のアンニュイさ、そして80's UKならではのゴージャスな空間処理と電子楽器、それらを、シャンソンやワルツなどで味付けをしたような音楽ということになるでしょうか。

私にとってはZTTの作品の中でダントツの大好物で、昨年、私がプロデュースしたファッション・ショーの大切な最終シーンでこの「He Stranger」(12inchバージョン)を使ったほど。
また、20年以上経った今でも、お店でこのアルバムを流すことがあるほど聴き込んでいる作品なんです。

実は、以前から何度か本作の紹介をしたかったのですが、紹介するための盤自体がアマゾンで品切れのため記事にすることができませんでした。

マーケット・プレイスでプレミア付きの中古盤とはいえ、やっと商品が入荷したようなので、今回の紹介記事が成立したというわけなんです。

とはいえ、やはりYouTubeでは映像は存在せず、アマゾンで試聴することもできません。
しかし、以前、「He Stranger」が、日本の高級車のTVCM(車種は忘れました)で流れたことがありましたので、ご存じないという方でも実際に聴いてみると案外耳に残っているかも知れません。


アン・ピガールは南フランスに生まれ、5歳でパリに移り住み、13歳で早くもバンドを結成、この当時からイギリスの音楽シーンに興味を持っていたそうです。

20歳になると意を決してロンドンに移住(1980年前後だと思われます)、その頃、本作でほとんどの楽曲を作曲したニック・プリタス [ Nick Plytas ] と出会いヴィア・ヴァガボンド [ Via Vagabond ] というユニットを結成しました。

ちなみに、ニック・プリタスに関しても紹介したいところですが、彼の作品も同じく入手困難となっており、アマゾンの入荷待ちをしている状況です。

なお、彼のソロ・デビュー・シングル「Who Likes Jazz?」は、元々、インディーズ・レーベルで先述の Via Vagabond 名義でリリースした曲だそうで、恐らくは、アン・ピガールが歌っていたと思われますが確証は得られていません。

また、Via Vagabond というユニットに関して詳しい情報がないのではっきりしたことはわからないのですが、本作に収録された楽曲で、アン自身が作詞、作曲した「Looking for Love」を除いた全ての曲がニックの作曲になっており、「Via Vagabond」というその名もズバリの曲も存在することから、このユニットにおいてすでに完成していた楽曲を新たにZTTレーベルの手を借りて発表したようにも感じられます。

ZTTレーベルとの出会いは、Via Vagabond でいろんなレコード会社にデモテープを送ったところ、ZTTの広報を担当していたポール・モーリー[ Paul Morley ] だけが興味を示し契約に至ったそうです。
ちなみにこれは1983年にデビューしているフランキー・ゴーズ・トゥー・ハリウッドの契約よりも前の話だそうですから、本作の制作にいかに時間をかけたのかがお分かりいただけると思います。


彼女の歌声は、悪く言えば微妙に音程が合っていないようにも感じられるのですが、語りかけるようなシャンソン風の歌唱法と考えればそれも納得がいきます。

雰囲気は違うのですが、歌唱法に限って言うなら、ソフト・セルのマーク・アーモンドにも同じような歌い方を感じてしまいます。
彼も、かなりシャンソンがお好きなようですから類似点があっても当然ですね。

また、アンは、エディット・ピアフが大好きだそうで、日本語の訳詞を読んでもその影響を強く感じることができます。

私は英語やフランス語に対して知識が薄いため、日本語の訳詞だけでしか判断できませんが、これを読む限り、同じくエディット・ピアフの影響を強く受けた越路吹雪や美輪明宏が歌っていてもおかしくないような、女性の恋や失恋の様子をドライに表現したポエティックな歌詞です。

そう考えると、Via Vagabond 時代にZTT以外のレコード会社がデモテープを聴いて反応がなかったことも理解ができますよね。
シャンソン風の楽曲が、ヒットチャートを駆け上がることは想像できなかったでしょうから・・・。

また、その後、ZTTから再発の話もあったそうですが、彼女はそれを拒否しているようです。

そんなわけで、本作は再発、リイシューなどされることもなく、たまに中古で出て来るアルバムにもプレミアがついているのでしょう。

できれば、10inchシングル以外では発表されていない「Hot Sagas」や、未発表の曲をボーナス・トラックに収録した本作の再発をお願いしたいところですが・・・(無理だろなぁ)。

なお、彼女は現在、写真、絵画の方面で活躍しながら、新曲をネットで配信し、時折ライヴも行っているようです。

興味を持たれた方は、下記の彼女のホームページをご覧になってみてはいかがでしょうか?

アン・ピガール HP

アン・ピガール マイ・スペース
(こちらのサイトでは無料でアン・ピガールのライヴ音源をフル・サイズで聴くことができますよ。)

それにしてもアンニュイで妖艶な美人です。
私も、大人の女性の良さがわかる年頃になったのでしょう。
/BLマスター

uknw80 at 17:37|PermalinkComments(6)TrackBack(0)

2007年02月10日

Welcome to the Pleasuredome/Frankie Goes To Hollywood

Welcome to the Pleasuredome/FGTH

本作『Welcome to the Pleasuredome』はフランキー・ゴーズ・トゥー・ハリウッド [ Frankie Goes to Hollywood ] (以降FGTHと表記)の1984年に発表したLPでは2枚組のデビューアルバム。

FGTHに関しては、以前ベスト盤『Bang!...The Greatest Hits of Frankie Goes to Hollywood』を紹介していますが、彼らは、1980年にパンク・バンドとして結成され、その後、ゲイであることを前面に打ち出したスタイルがトレヴァー・ホーン [ Trevor Horn ] の目にとまり、1983年にZTTレーベルからシングル「Relax」でデビューしました。
なお、グループ名の由来は、フランク・シナトラが音楽界から映画界に進出することを伝える新聞記事の見出しから「都へ出てきて堕落する」という意味をこめて名付けられたそうです。

トレヴァーの関与していないシンプルな「Relax」の映像(ビデオ版 BAND AID『VIDEO AID』に収録された映像)

当時のメンバーは、ホリー・ジョンソン [ Holly Johnson ] (V)、ポール・ラザフォード [ Paul Rutherford ] (V)、ブライアン・ナッシュ [ Brian Nash ] (G)、ピーター・ギル [ Peter Gill ] (D)、マーク・オトゥール [ Mark O'Toole ] (B)の5人。

デビュー・シングルの「Relax」は、性行為を描写した歌詞内容や排尿音などが問題となり、英国BBCだけでなく、多くの国の放送局で放送禁止となることで、逆に宣伝効果が高まり大ヒットを記録、彼らの名前は一躍有名になりました。

「Relax」のプロモ映像
夜のヒットスタジオでの「Relax」の衛星インタビューとライヴ映像

日本では英語に対する認識の甘さのためか、あまり歌詞の内容に触れられることはありませんでしたが、それでも当時のNHKでは放送を自粛するという措置をとっているそうです(まあ、基本的に当時のNHKではほとんど使うこともなかったはずですが・・・。)
最近では、この曲のインパクトが買われたのか、多くのTVCMや「水10! ココリコミラクルタイプ」のテーマ曲に使われていました。

これは、マルコム・マクラレンが、セックス・ピストルズの「女王陛下くそくらえ!」というメッセージを盛り込んだ楽曲をあえて放送禁止にすることで、逆に宣伝効果を狙って成功したのと同じタイプの手法で、スキャンダラスなイメージを持たせることでワイドショーやゴシップ誌に書き立てられることを逆に利用した宣伝術です。

最近では、タトゥー [ t.a.T.u ] がドタキャン騒ぎや素行の悪さで日本のワイドショーやゴシップ誌を賑わせ、逆に人気が出てしまったのと似ていますが、彼女達も同じくトレヴァー・ホーンのプロデュースであることから、もしかするとこれも計算ずくの演技だったのではないかと考えることもできます(真相は分かりませんが・・・)。

いずれにせよ、このスタイルのスキャンダラスな宣伝方法は、今でもそれなりのセールスを生み出すことができるのは間違いないようです。

しかし、ゲイのスキャンダラスなイメージだけではなく、楽曲の方も良く練り込まれており、デビュー前の単なるハード・ゲイ指向の強いパンクから、当時最先端のサンプリング技術を駆使した攻撃的な音色で、非常に豪華な最新鋭のダンス・ミュージックへと変化を遂げました。
ちなみに、「Relax」のバックには、レッド・ツェッペリンのドラマー、故ジョン・ボーナムのドラム音をサンプリングした音色が効果的に使われています。

別バージョンの「Relax」のプロモ映像

また、続く2ndシングル「Two Tribes」は、当時の米ソ冷戦と核戦争の危機を歌い、アメリカのレーガン大統領とソ連のチェルネンコ書記長のそっくりさんが取っ組み合いで闘うというPVが話題を呼び、全英で9週連続1位を記録しています。

「Two Tribes」のプロモ映像

本作は、このようなシングルと、当時のブームであった12inchシングルによる大量のリミックス盤による戦略が行われた後、満を持して発表されたデビュー・アルバム(LP2枚組の大作)で、シングルや12inchシングルによるダンス仕様、もしくは音遊び的な作品と比べれば、まるでプログレ系アーチストのコンセプチャル・アルバムのような趣を持つメリハリの利いた作品です。

ここから私が感じるテーマは、ずばり「戦争と愛(同性愛)」。
ある意味で重たい作品とも言えるのですが、実に完成度は高く、所々に挿入される効果音的な音色やボイスなどのおかげで物語性が全面に現れ、このアルバム全体で1つの作品であることを感じさせてくれます。

なお、この後、本作から「The Power of Love」と「Welcome to the Pleasuredome」がシングルカットされました。

「Welcome to the Pleasuredome」のプロモ映像
ホリー・ジョンソンのソロでの「The Power of Love」のライヴ映像

さらに、この頃行われたワールドツアーでは、あえてナチス・ドイツのような装飾を施した舞台セットを使うことで、このアルバムのテーマ性をより強靭なものとし、音楽的に世界征服を目論んだ(笑)のではないでしょうか。

実際、こういったセンセーショナルなイメージ戦略により、FGTHは一躍人気者となったわけですが、逆に「トレヴァー・ホーンの操り人形」「ライブではテープを流すだけで演奏もできない」など、彼らを皮肉る声も多くあったそうです。
(ちなみに、実際、ライヴではテープをバックに流していましたが、メンバーはそれに合わせてきっちり演奏はしていたようです。)

しかし、これだけ世間を賑わわせると飽きられるのも早いというのが世の常、この後86年に発表した『Liverpool』はほとんど話題にのぼることもなく、87年にホリー・ジョンソンがグループを離れると共に解散への道を辿りました。

そして、2004年、トレヴァー・ホーンの音楽生活25周年記念コンサートに合わせて再結成の話が持ち上がりますが、ホリー・ジョンソンはそれを拒否、新たにライアンというボーカリスト(やはりゲイ?)を迎えて再結成が行われました。

トレヴァー・ホーンの音楽生活25周年記念コンサートでの「Welcome to the pleasuredome」のライヴ映像
同じく同コンサートでの「Two Tribes」のライヴ映像

恐らく、90年初頭に公の場で公表した持病のエイズのせいではないかと思うのですが、実際のホリーの拒否の理由はわかりません。

なお、新生FGTHはその後もライヴ活動を行っており、今年中には新メンバーでのニューアルバムを発表する予定があるとか・・・。

怖いもの見たさというんでしょうか、カルチャー・クラブの新ボーカルと同じようにちょっとだけ興味を感じてしまいました。
/BLマスター

uknw80 at 18:15|PermalinkComments(2)TrackBack(1)
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