☆ノイズ・インダストリアル系

2007年01月25日

1/2 Mensch(DVD)/EINSTURZENDE NEUBAUTEN

Halber Mensch/EINSTURZENDE NEUBAUTEN

今日紹介するのは、ドイツのインダストリアル系バンド、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン [ Einsturzende Neubauten ](一つ目の”u”の上には点が2個付くのですが、ブログでは文字化けしてしまうので省いています)。

またしても英国のバンドではありませんが、英ミュート・レーベルに一時期在籍していたこともあり、後のニューウェーヴ、ノイズ/インダストリアル系バンド、エレクトリック・ボディー・ビート系バンドなどに与えた影響を考えると避けて通るわけにはいきません。

恐らくは、デペッシュ・モードやソニック・ユース、もっと言えばアート・オブ・ノイズなども、彼らの影響を強く受けているのではないでしょうか。

アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン(う〜っ、発音しにくい!)は、1980年ドイツのベルリンで、ブリクサ・バーゲルト [ Blixa Bargeld ] を中心に結成されました。
このバンド名は日本語に置き換えると「崩壊する新建築」。
まさしく、このバンドにピッタリな名前なんですよね。

ちなみに、ブリクサは、ニック・ケイヴ & ザ・バッド・シーズ [ Nick Cave & The Bad Seeds ] のギタリストでもあります。

私の思うところ、こういったインダストリアル系バンドの源流はスロッビング・グリッスル [ Throbbing Gristle ] にあるように感じます。
スロッビング・グリッスル以前のアーチストといえば、カテゴリー的に前衛系のものは現代音楽、もしくは過激なものはパンクとしてとらえられることが多く、「インダストリアル」というジャンル名自体、彼ら主催の自主レーベルの名前が発端であったように記憶しています。

しかし、スロッビング・グリッスルが電子的な加工を施した楽曲が多いのに対して、ノイバウテンは非常にアナログで肉体的、いや、音の暴力とも言える攻撃的なバンドです。

チェーンソーや電動ドリルなどの電動工具、ドラム缶や鎖などのメタル・ジャンクを、ギターやドラムの代わりに使い、バンドサウンドに導入するという、ある意味で実験的、ある意味では無茶とも言える暴挙に出たのです。

これは、当時の私にとって「ロックの革命」とも言える出来事でした。

日本のTV番組でのインタビューとライヴ映像

昔の来日時のライヴを観に行ったのですが、チェーンソーの回るスピードをコントロールすることで、まるでノイジーなギターのような音を出している様には鳥肌もので、電動ドリルでコンクリートを割る音は、まるでヘビメタでの2バスのドラム音のようにも聴こえました。

そこに重なるブリクサのほとんど叫び声としか聴こえないボーカルは、この工業的なバッキングにぴったりとハマっており、その独自の世界観をまざまざと見せつけられてしまいました。

さらに、コンクリートを割った時に出た埃で会場は非常に煙たく、ライヴというよりは工事現場を観に来たような錯覚を感じた瞬間もしばしば・・・。
文字通り、「崩壊する新建築」の公演だったわけです。

今作『1/2 Mensch(邦題:半分人間)』は、そんなノイバウテンの80年代半ばの来日公演時(83年だったと思います)に、日本人監督、石井聰亙の手によって撮られたドキュメンタリー映画を、DVDに焼き直したものです。


内容的にはライヴを含む初期のベスト盤的なもので、多少グロい映像も含まれますが、白虎社も登場する
アーティスティックな映像です。

彼らの破壊的なパワーは映像作品の方が理解しやすいように思い、あえてこのDVDを紹介させて頂きました。
ちなみにこのDVDは輸入盤ですが、リージョン・フリーなのでほぼ全てののDVDプレーヤーで再生が可能です。

「1/2 Mensch」の映像の一部

なお、同タイトル『1/2 Mensch』(1984年)というアルバムはノイバウテンの中で最高のセールスを記録し、「ユーグン」というシングル・ヒットを生み、同曲の12inch盤ではエイドリアン・シャーウッドがリミックスを担当しました。

しかし、90年に入ると、『Tabula Rasa』(1993年)を発表し、この破壊的な音はパワーダウン、リリカルで時にはクラシックの要素まで取り込んだ、初期に比べればずいぶん叙情的な作品へと変貌と遂げていきます。(それでも充分に前衛的ではあると思うのですが・・・。)

「Blume」のプロモ映像

当時の私からすれば、「工事現場じゃないノイバウテンなんて、ノイバウテンじゃない!」なんて思ったものですが、今になって聞き返してみれば、1stアルバム『KOLLAPS』(1981年)の中でセルジュ・ゲンズブールの曲の一節を取り込んでいたりして、メロディーにも充分こだわっていたことが伺えるわけなんです。

単なる、奇をてらったアイデア勝負のパンク・バンドではなかったことが、良く聴けばわかっていただけるように思います。

2005年のライヴ映像とインタビュー

なお、この後も、2004年にはドイツ人監督により『 Einsturzende Neubauten - Seele brennt(邦題:アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン - 魂が燃える)』というドキュメンタリー映画が再び製作されています。

最近は何でもサンプリングされ、デジタル化された上で音楽が制作されることが多いわけなんですが、こんな時代だからこそ彼らのような肉体的な音楽を知って頂きたいと思います。
/BLマスター

uknw80 at 17:06|PermalinkComments(6)TrackBack(3)

2007年01月07日

FORTH THE HAND OF CHANCE/PSYCHIC TV

サイキックTV

■82年発表1stアルバム(本CD/98年再発盤は、LP初回プレス限定Discが、日本盤のみ収録され2枚組み仕様)

サイキックTV(以下PTV)は、
スロッヴィング・グリッスル(以下TG)解散後、リーダーのジェネシス・P・オリッジとピーター・クリストファーソン(ピンク・フロイド等で有名なプログレ・アーティスト御用達のデザイン集団ヒプノシスの一員でもあった)が結成したTGの発展系ユニットです。 

冒頭の「JUST DRIFTING」はストリングス・オーケストラのバックに聴き様によってはミッシェル・ルグランを彷彿とさせる様なイージー・リスニング的な曲なのですが、彼らが演ると勿論一癖ありますね。ドラムがリン・ドラムってのが時代を感じさせます。

一転2曲目は、ピストル・ノイズのサンプリングもけたたましい、暗黒サウンドに。
エキゾチックなパーカッションも伴い、PTVの″擬似″宗教団体というコンセプトにマッチし、暗く重いサウンドです。
後半一転してアコギの伴奏でモノローグ的なVoの展開になるのですが、この一曲にヴェルヴェッツへのオマージュが感じられます。後述しますがこの曲のVOは、マーク・アーモンドの様です。

3曲目はジュリアン・コープが作りそうなサイケ・POPですね。

4曲目、アコギのフォーキーなインストで、瞬く間に終わります。

5曲目、ルグラン的なストリングスで、瞬く間に終わります。

赤ん坊の泣き声がカットインされ始まる6曲目。以降ヴェルヴェット初期的な暗黒サウンドになるのですが、ストリングスとエレクトロニックが絡み合うエンディングはスリリングの一言。

7曲目、エレキの早弾きで、瞬く間に終わります。

8曲目、ヘリコプターの音をシンセで作った音をメインに、ギター・インプロで作ったインストです

9曲目「OV POWER」。クレジットされてませんが、トランペットが入ったファンク・ナンバーですね。題名通り、パワー入ってます。熱は感じないんですが。

10曲目、表題曲「テンプルの預言」。ストリングスのバックに、
ピーターでしょうか、ポエト・リーディング的Voが美しいエンディング曲です。

以上本編を久々に聴き、客観的な曲紹介を致しました。
以前、TGのレヴュー時に言及した、オリッジ・マニアの友人曰く、
TG〜サイキックTVでオリッジが表現しているのは″愛″だと。
屈折した音構造ではありますが、その裏に人間の持つ欲求の根源としての愛が垣間見れる点で同意する所です。

今1st時のオリッジのインタヴューが掲載された当時の雑誌を捜してみたのですが、見つからず、2nd発表時のフールズ・メイト誌でのオリッジのインタヴューがありまた。
″擬似″宗教団体という言葉を上記しましたが、実際当時、オリッジは″サイキック・ユース″というコミュニテイーを創設し、3千人の会員を擁していた様です。実際の儀式にたずさわっているのは8〜9百人。宗教団体という言葉は持ちいづ、教会組織と言及しています。
「サイキック・ユースがカルトではない理由も、それが成員ひとりひとりのための、非拘束的な狼集団であらねばならないからだ。我々は互いを支配しない。助言を与えるだけだ。〜自由を拘束するルールならびにカリスマ的リーダーなど、テンプルには一切存在しない」(オリッジ談)
象徴としてのカリスマ存在がオリッジではあるにせよ、非営利な、いわゆる宗教団体ではあったのでしょうか・・・。
(余談ですが、サイキック・ユースのメンバーには、何故か当時アイドル・バンドだったパナッシュに居た妖艶なニュー・ハーフ?ポール・ハンプシャーも在籍していました。)
この他、″性″等についても述べています。
人間存在というものの核、それを抑圧する近代社会構造との関係を、神秘主義的な音楽を用いて提示していたのが当時のオリッジだったと思います。

ちなみに3、6曲目にはマーク・アーモンドがゲスト・ヴォーカルとして参加しています。

Disc2『サイキックTVのテーマ』

映像作品″ファースト・トランスミッション″のサントラであるのです
が、サティー的なピアノ曲に始まり、民族楽器を多用したシャーマニックなサウンドは、テンプルの儀式にも使用されていた様です。
前述しましたが、このDisc2は、日本盤以外、CD化されていません。そういう意味でも今作は貴重な作品であると思います。

ところで今作98年にCD化されたのですが、既に廃盤の様でして、
amazonでも中古価格2万円というプレミア価格になってしまって
います。その事でレヴューするのに躊躇したのですが、UK NWを
語るに重要な作品であると判断し、レヴュー致しました。

遅れ馳せながら、皆様明けましておめでとう御座います。
旧年中は本blog御愛顧の程、大変感謝いたしております。
本年もどうぞ宜しくお願いいたします/星


uknw80 at 10:52|PermalinkComments(11)TrackBack(1)

2006年10月31日

red mecca/cabarete voltaire

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■81年発表4thアルバム(THREE MANTRASをアルバムに含めると)

こういう奇怪なアルバムも平然と近所のレコード屋で売ってた訳です、当時。
まぁ怖い音楽です、これは。現在聴いてみると流石に軽減はされて聞こえますが、まだ怖いですねぇ(笑)。

当時ポパイ誌でミュージシャンのアンケートのコラムがありまして、ライヴ・ハウスに良く行っていたP-MODELの平沢進のフェイヴァリットと謂う事で購入(もう一枚がピーター・ガブリエル「3」でした)し、真夜中に試験勉強しつつ聴いていた思い出があるのですが、後ろから幽霊が出て気そうな怖さがありました。子供心に好きなアーティストのフェイヴァリットを理解しようとしていた訳です。

元ポップ・グループのマークステュアート&マフィアの1stにも怖さを感じたのですが、プラス妙な不気味さがあるんですよね、今作には。
はっと見たら部屋の窓ガラスにイモリが居るって感じの。

とにかくネガティブな気持ちにさせてくれるアルバムです。
しかし、そしてそれはオルタナティブという概念的には最高の表現とも謂え訳でして・・・。
彼らは当時スロッビング・グリッスルと、競い合う?インダストリアル・ノイズ&オルタナティヴ・バンドだった訳ですが、今作に措いての怖さは断トツだと思います。TGは「クラゲの遊泳」として聴き流せますが、
コレはひつこく纏わり着いてくる嫌悪感が、あるのですヨ。

あと、下さったコメント返信書いてる時にあ!っと思ったので付け足しですが、
呪術的なんですよね、それも何か紛い物的なね。

不気味で怖い音楽をお探しの方に打って付けのアルバムです!
音楽肝試しに一丁!ってのはどうでしょか。
/星

uknw80 at 00:52|PermalinkComments(2)TrackBack(3)

2006年07月07日

Throbbing Gristle's Greatest Hits/Throbbing Gristle

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スロッビング・グリッスルの主なアルバムは80's以前に作成されている訳でして、ここで言及するのを躊躇いましたが、80'sNWに措いてそのアイデンティティーが1つの指標になった事に措いて紹介しようと思います。

インダストリアル系と謂えば、今日ではミニストリーに代表される所謂エレ・ボディーの進化系を指すのですが、当時はamazonで試聴出来る通りの訳の判らんビョーキ系サウンドだった訳です。当時は「クラゲの遊泳」という謂い得て妙な言説をした方も居ました。

僕が彼らのレコードを手にした動機は、YMOの伝説的な本「OMIYAGE」で坂本龍一がフェイヴァリットに挙げていたからです。そして高校時、中学でYMOに洗脳した友人に聴かせたら「現代音楽じゃん」という返答。彼は当時クラッシックを主に聴いていたらしく、そういう冷めた感想でした。
ところが彼はその後、TGに魅了され、リーダー:ジェネシス・p・オリッジのア-ティスティックな思考に共感し、その後オリッジが結成したサイッキックTVの情報を僕が教えられる形になってしまいました・・・。

この破戒的なサウンドには、どうやら近代社会の矛盾への問いかけが内包されている様です、「奥」を聞くと。
このレヴューを書くにあたって当時のロック・マガジン誌でのオリッジのインタヴューを再読しましたが、ナチ的な煽動やエキセントリックなイメージとは裏腹に、反体制、平和主義者だという感想を持ちました。

オリジナル・アルバムを紹介しようかとも思いましたが、彼らにしてはPOP(テクノPOP!)な11「ADRENARIN」が入っているので、このベスト・アルバムを選びました。

とにかく「奇妙な音楽」そして、「奇妙なモノ」を求めている方に御勧めする一品です。
/星

追記:
裏ジャケでオリッジが着ているシャツは、YMOの第2回ワールド・ツアーで坂本龍一から譲り受けたYMOのコスチュームです。
恐らく現在、彼は保存して無いかとは思いますが(苦笑)。

uknw80 at 21:37|PermalinkComments(5)TrackBack(0)
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