GARY NUMAN

2008年08月07日

I,Assassin/Gary Numan

I,Assassin/Gary Numan

今日紹介するのはゲイリー・ニューマン [ Gary Numan ] の1982年のアルバム『I,Assassin(邦題:アッサシン)』です。

本作は、ジャパン [ Japan ] のベーシスト、ミック・カーン [ Mick Karn ] を迎えて制作された『Dance(邦題:ダンス)』の次に発表された通算6枚目のアルバムで、前作の暗く湿った曲調はそのままにリズム・セクションを強化したかなりの傑作です。

前作では、ジャパン在籍時代のミック・カーン独特の個性が作品全体を覆っており、そこに、やはりジャパン在籍時代のデヴィッド・シルヴィアン [ David Sylvian ] を意識したかのような湿ったゲイリーのボーカルと特徴的なシンセサイザーの音が組み合わさっていました。

言わば、『Gentlemen Take Polaroids(邦題;孤独な影)』の頃のジャパンとゲイリー・ニューマンのコラボ作品のような雰囲気が漂っていたわけなんですが、ミック・カーンがジャパンのメンバー以外のアーチストと一緒にアルバムを制作したのはこれが最初であり、彼が楽典的な知識に乏しかった(=自分のスタイル以外では演奏できない)ことを考えればそれも理解できます。

また、部分的にではありますが、同じくジャパンのギタリスト、ロブ・ディーン [ Rob Dean ] が参加していたことも少なからず影響していたことでしょう。

おかげで、ゲイリーは新境地を開拓、本作『I,Assassin』で、このスタイルをも自分のものにしたのです。


考えてみれば、ゲイリーはここまでアルバム2枚ごとに進化を遂げています。

1st『Tubeway Army』は、パンクにシンセサイザーを導入したニューウェイヴの原型とも言える斬新なサウンドで、それを2nd『Replicas(邦題:幻想アンドロイド)』で完成させています(2ndまではチューブウェイ・アーミー [ Tubeway Army ] というバンド名義で発表しています)。

ちょうど、ジョン・フォックス [ John Foxx ] 在籍時代のウルトラヴォックス [ Ultravox ] と同じようなサウンド・ポジションの作品ですね。
この後、時代がパンクからシンセ主体のニューウェイヴに移行するわけですが、それを考えるとゲイリー・ニューマンやジョン・フォックスの功績は偉大です。

その後、大ヒットとなった3rd『The Pleasure Principle(邦題:エレクトリック・ショック)』ではギターを一切排除し、シンセサイザーを音の中心に据えた電子ロックとも言える分厚く過激なサウンドを展開、4th『Telekon』ではこの流れをくんだ、これぞゲイリー・ニューマン!と言えるヨーロピアン・スタイルのニューウェイヴ・サウンドを確立。

そして、5th『Dance』では雰囲気がガラっと変わり、ジャパン風味の暗く湿った実験的な曲調へと変化、そして本作『I,Assassin』でその曲調をゲイリー・ニューマンなりのポップなサウンドへと深化させたのです。

余談ですが、なぜか、この5th、6thのジャケットはゲイリーがハンフリー・ボガード風の帽子をかぶって写っているので、お探しになる時はそれを目印にしていただくとわかりやすいと思います(笑)。


本作『I,Assassin』は、前作のミック・カーンに変わって、ポール・ヤング [ Paul Young ] のバンドやティアーズ・フォー・フィアーズ [ Tears For Fears ] などでも超個性的なフレットレス・ベースを聴かせてくれたピノ・パラディーノ [ Pino Palladino ] が参加しており、ベースに対するこだわりを感じさせてくれます。

特に、ピノはフレットレスでスラップ・ベース(チョッパー奏法)まで演ってしまう特殊なベーシストだけに、ゲイリーが意図的に前作の流れを継承しつつポップな(ファンキーな)サウンドにシフトするつもりだったとすれば、最高のキャスティングだったと言えるでしょう。

ゲイリー・ニューマンのヴォーカルの関しては、前作よりもポップな楽曲が多いせいか、粘り気は若干薄らいだ気はするのですが、やはり、ジャパン時代のデヴィッド・シルヴィアンを思わせる粘着質な歌い方は健在です(笑)。

しかし、前作のミック・カーンといい、本作のピノ・パラディーノといい、個性的なフレットレス・ベースとゲイリーの粘着質なヴォーカルがよく合うんですよね。

シルヴィアンに比べればやや線の細いヴォーカルという印象はありますが、これはこれで実に気色の良い組み合わせです。

そして、もちろんゲイリー・ニューマン独特のシンセサイザーの音色も健在です。
そう、トレモロのかかったアナログシンセのあの音色と、浮遊感のあるパッド系のあの音です(笑)。
1980年前後のウルトラヴォックスのアルバムでもこれに似たような音色を聴くことが出来ますが、やはりどこか微妙に違うんですよね。
これらの音だけを聴けば『The Pleasure Principle』を思い出してしまうくらい特徴的な音色ですので、80年の時点で自分の音色を持っていたわけですね。

他にも、ロブ・ディーンがジャパン脱退後に結成したイラストレイティッド・マン [ Illustrated Man ] というグループに参加していたキーボーディスト、ロジャー・メイソン [ Roger Mason ] 、ユーライア・ヒープ [ Uriah Heap ] やザ・ファーム [ The Firm ] 、AC/DCなどでも活躍したベテラン・セッション・ドラマー、クリス・スレイド [ Chris Slade ] などが脇を固めており、骨太でダンサンブルなサウンドを構築するのに一役買っています。

未聴の方は、まず下のYouTube映像をご覧になってみてください。

「White Boys And Heroes」のプロモ映像
「Music For Chameleons」のプロモ映像
「We Take Mystery To Bed」のプロモ映像
「The Image Is」の映像
「Noise Noise」の映像
「Bridge? What Bridge?」の映像

いかがでしたか?
ピノ・パラディーノの存在感はかなりのものですよね。

「White Boys And Heroes」のチョッパーしまくりのベースも感動ものですが、ミック・カーンとはひと味違う「Music For Chameleons」の伸びやかなパオパオ・ベースにもしびれちゃいます(笑)。

はっきり言って、彼の代表曲「Cars」のイメージとは全く別物ですが、かなりかっこいいサウンドですよね。

最もゲイリー・ニューマンらしいサウンドの作品と言えば、「Cars」のイメージからか、やはり『The Pleasure Principle』『Telekon』あたりを選ばれる方が多いでしょうし、実際、最高傑作と呼ばれることが最も多いのは『The Pleasure Principle』です。

しかし、中期ジャパンからのデヴィッド・シルヴィアン信者である私としては、何かと共通点を見いだすことの出来る『Dance』や『I,Assassin』の方が好みです。
もちろん、『The Pleasure Principle』も大好きですし、最高傑作と呼ばれることにも納得はいくのですが…。

そんなわけで、本作『I,Assassin』は、ゲイリー・ニューマンのファンの方はもちろんのこと、中期〜後期のジャパンのファンの方、ピノ・パラディーノのベースを堪能したい方、フレットレス・ベースに興味のある方などには強力におすすめします。

う〜ん、どこかにこんなベースの弾ける方いませんか〜。
おっと、ゲイリー・ニューマンのアルバム・レビューでしたね(笑)。
/BLマスター

uknw80 at 19:29|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2006年08月05日

DANCE/GARY NUMAN

GARY NUMAN DANCE

このアルバムはゲイリー・ニューマンのソロ名義になっていますが、ジャパンのベーシスト、ミック・カーン(Mick Karn)との共作といっても過言ではないでしょう。

それはこのアルバムを聴いてもらえばわかることなのですが、それまでのゲイリー・ニューマンの作品とはかなり毛色の違うものになっています。

というのも、かの変態フレットレス・ベーシスト、ミック・カーンの圧倒的な存在感のあるウネウネしたベースフレーズがほぼアルバム全体に染み渡り、ある意味では、このアルバムが発表される1年前に出た、ジャパンの「Gentlemen Take Polaroids(邦題:孤独な影)」のアウトテイク(アルバム未収録曲)かと感じるほどリズムが変化しているのです。

ゲイリーの使用するシンセサイザーに関しても、愛用のアープ・オデッセイはもちろん使っているものの、デヴィッド・シルヴィアンが好んで使っていたシーケンシャル・サーキットのプロフェット5や、リンドラムもかなりの曲で使用され、しかも、7曲目の「Boys Like Me」のみではありますが、ギタリストとして、当時ジャパンを脱退したばかりのロブ・ディーン(Rob Dean)までゲスト参加していて、まるで「GARY NUMAN+JAPAN」といった感覚のアルバムです。

とはいえ、一聴してゲイリーの音色とわかるあの独特のシンセの音はどの曲を聴いても健在ですのでご安心を・・・。

2004年の「Night Talk」のライヴ映像

あと、歌詞においても変化が見られ、それまでの夢見がちな歌詞とは一転し、当時の大失恋の痛手からか、現実的でアンハッピーな内容となっています。

言わば、幻想アンドロイドがヨーロピアン・ダンディーに変身したといった趣です。

また、何度も言うようですが、当時のミック・カーンの変態ベースフレーズは解放弦を多用しているため、それぞれのヴォーカリストのキーに合わせることができなかったと考えられます。
そのため、ダリズ・カーではピーター・マーフィーの声を活かしきれなかったのではないかと思うのですが、このゲイリー・ニューマンとのコラボに関しては非常にうまく合っているように感じます。

彼の爬虫類を思わせる粘りのあるヴォーカルスタイルは、低いキーにおいて線は細いながらシルヴィアンの声と似たところもあり、ミック・カーンとの相性が抜群に良いのです。

このアルバム以降、それまでワンパターンだったゲイリー・ニューマンの曲調は幅が広がり、この次に発表された「I,Assassin」ではこれまた個性的なフレットレス・ベースで定評のあるピノ・パラディーノ(ポール・ヤングの1stなどで有名)らの力を借り、ファンキーなサウンドアプローチをするようになったのは、ミック・カーンとのコラボに新境地を見いだした結果なのではないでしょうか。

このアルバムには他にも、ゲイリーと以前から親交の深いクイーンのドラマー、ロジャー・テイラーや、バイオリンでナッシュ・ザ・スラッシュがそれぞれ3曲づつ参加しており、曲調の幅を広げるのに一役かっています。

ミック・カーンの変態ベースのファンの方にはぜひぜひ持っておいてもらいたい作品です。
/BLマスター

uknw80 at 18:14|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2006年07月19日

The Pleasure Principle/Gary Numan

GARY NUMAN Pleasure Principle

ゲイリー・ニューマンは1978年に「TUBEWAY ARMY」という名義でシンセパンクのような趣のバンドとしてデビューしたものの、ほとんど売れず、解散状態となり、2ndアルバム「Replicas」では同バンド名義ながら実質彼のソロアルバム的な内容となってしまいました。
しかし、この「Replicas」の発表前に出したシングル「Are 'Friends' Electric?」が大当たりし、全英1位の大ヒットを記録、同曲を収録した「Replicas」も当然のごとく全英アルバムチャートで1位となったのです。

その頃の貴重なプロモはこちらで観ることができます。
Are 'Friends' Electric?

その後、「チューブウェイ・アーミー」という名を捨て、ゲイリー・ニューマンのソロ名義で1979年に発表したのが、この「The Pleasure Principle」で、英国のみならず、日本でもヒットし、この頃、日本武道館でのライヴも果たしました。

蛇足ですが、私の記憶に間違いがなければ、この頃、デヴィッド・ボウイのツアーメンバー(もちろんシンセサイザー担当)としても来日しています。

このアルバムの大ヒットにより、それまでどちらかといえば実験的でポップではなかったシンセサイザーを使った音楽が英国でも一般化し、後のニューウェーヴ・バンドに大きな影響を与えました。
言わば、ドイツのクラフトワーク、日本のYMOのような存在がこのゲイリー・ニューマンなのです。
最近でもクラブ系アーチストが彼の曲をミックスネタによく使っているようですね。

しかし、クラフトワークや、YMOと違うところは「The Pleasure Principle」までは、リズムボックス以外すべて手弾きで演奏していることです。
当時、シンセやシーケンサーも高価なものでしたから、自らアンドロイドになりきっていた彼的には(顔は殆ど宇宙人ですが...)、自分自身が自動演奏装置だったのかも知れませんね。
ちなみに、彼の本名はGARY WEBBと言うのですが、NUMANと言う名前は電話帳でNEWMANと言う名前を見て「新しい人類=レプリカント」という具合にもとれるということで、NUMANと名付けたそうです。

昔、「Cars」で「車の中にいれば安心さ」と歌っていたゲイリーが80年代後期から飛行機にはまり、自家用セスナでどこかの領事館だかに不時着して大騒ぎになったことがありました。(そういえば「Airplane」という曲もあるのですが)
今でも飛行機を乗り回しているのかは知りませんが、たまに懐メロライヴ的な内容でツアーをしているようです。

話が長くなりましたが、このアルバムはウルトラボックスのビリー・カーリーも参加しており、ゲイリーの代表曲とも言える「Cars」や、インストの名曲「Airplane」、他にも「Metal」「Complex」「Conversation」など、一切捨て曲のない名盤です。
しかもこの価格にして、シングル「Cars」のB面曲「Asylum」などのボーナス曲も追加されているのでかなりお得な内容ですね。

未聴の方は、ぜひ、妄想アンドロイド「GARY NUMAN」の最高傑作を聴いてみて下さい。
/BLマスター

uknw80 at 14:15|PermalinkComments(1)TrackBack(0)
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