Penguin Cafe Orchestra

2006年10月30日

Preludes Airs & Yodels/The Penguin Cafe Orchestra

Penguin Cafe Orchestra Best

ペンギン・カフェ・オーケストラは、英国サセックス出身のサイモン・ジェフス [ Simon Jeffes ] が中心となり76年に結成された生楽器がメインの環境音楽プロジェクトで、今で言うところのヒーリング・ミュージック的な心休まるサロン・ミュージックを発表してきました。

私、個人的には、ブライアン・イーノと並んで、エリック・サティーの「家具の音楽」という発想を継承していた唯一のグループという印象を持っています。

「家具の音楽」というのは、わかりやすく言えば「生活の一部としてさりげなく流れている音楽」とでも表現すればいいのでしょうか、周りの人の話し声や足音、扉の開く音、水が流れる音・・・、それらの日常生活を取り巻くすべての音に溶け込み、聴くではなく聞くための音楽、言わば、環境音楽という思想から成り立っている音楽のこと。

サティーが小さなサロンで演奏会を開いたとき,聴衆が静かに聴いているのをみて「おしゃべりを続けて!歩き回って!音楽を聴くんじゃない!」と言ったのはあまりにも有名な話で、ブライアン・イーノと、このペンギン・カフェ・オーケストラの作品にも同じような思想が息づいているように思います。

しかし、この両者の違いは、イーノはある意味でメディテーション・ミュージック的、ペンギン・カフェはリゾート感覚溢れるヒーリング・ミュージック的に聴こえるところです。

具体的に言うと、瞑想する時にはイーノ、木漏れ日の下で芝生に寝っころがって昼寝をする時にはペンギン・カフェという雰囲気ですね。

イーノの環境音楽はともすれば小難しい実験音楽的に捉えられがちですが、ペンギン・カフェにはそういった難しさは一切感じません。
実験的な要素も含んでいるにもかかわらず、能天気ですらあり、時には笑ってしまうほど気さくで馴染みやすい音楽なのです。

サイモン・ジェフス以外のメンバーが演奏するのは基本的にクラシック音楽で使用されているような、ピアノ、ヴァイオリン、オーボエ、ヴィオラ、チェロなどの楽器で、他にも、アコーディオンやウクレレなどのリゾート気分を高めるようなパートも含まれており、のどかなイメージを高めることに貢献しているように思います。

とはいえ、もちろん、クラシック音楽のような高尚なイメージはありません。

そして、中心人物サイモン・ジェフスが担当するのは、実に数多くの楽器で、ギター、ベース、ピアノ、ドラム、などのいわゆる普通のバンドに使われる楽器の他、そろばんや金属の板、ゴムバンドなども楽器として使用し、さらにこのアコースティック楽器の中では目立たないものの、プロフェット5やリンドラム、日本の楽器でSUZUKIのオムニコードなどの電子楽器類も担当しています。

さて、このペンギン・カフェ・オーケストラというネーミングですが、ライナーノーツによれば、「1972年6月にサイモンが腐った魚を食べてしまい、その時の悪夢に出てきた”ペンギン・カフェ”と言う名前に由来している」ということで、その「のほほん」としたイメージとは裏腹に怖いものも宿っているようです。

このアイデアを基に、京都の友人宅に居候していた時に作ったのが「Penguin Cafe Single」という楽曲で、1974年にZOPFというグループ名でこの曲を制作、その後76年までに「ペンギン・カフェ・カルテット」として録音した作品をまとめ、ピアノを担当していたスティーブ・ナイ [ Steve Nye ]の紹介でブライアン・イーノと出会い、イーノが主宰するオブスキュアレーベルから『Music From the Penguin Cafe(邦題:ようこそペンギン・カフェへ)』を発表しました。

そういえば、このスティーヴ・ナイという人物、ジャパンの「錻力の太鼓」、デヴィッド・シルヴィアンのソロで初期の3枚などでプロデュースを担当しており、プロデューサーとしての方が名が通っているようです。

今作は、96年にヴァージンから発表したペンギン・カフェ・オーケストラのベスト盤で、CDならではのクリアな音質により、この繊細な音楽を楽しむことが出来る珠玉の一枚です。

この後、サイモン・ジェフスは、1997年12月11日、脳腫瘍のため48才という若さでこの世を去られましたが、今、もし健在で音楽をやっておられたとしても、その音楽スタイルは大きく変わることはなかったと思います。

彼らのデビュー後、サントリーが「ペンギン・カフェ」というビールや、ビア・ホールを作ったり、ジャパンのミック・カーンが「ペンギン・カフェ・ギャラリー」というレストランをオープンさせたりしましたが、ひょっとすると、サイモンのこのプロジェクト名から拝借したものなのかも知れませんね。

とにかく、未聴の方はぜひ一度聴いてみて下さい。
聴いてみて損はないと思いますよ。
/BLマスター

uknw80 at 18:28|PermalinkComments(6)TrackBack(2)
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