デビッドシルビアン

2008年03月08日

Weatherbox/David Sylvian

Weatherbox/David Sylvian

一昔前、活動歴の長いアーチストのアルバムを数枚1パックにした、いわゆる「限定ボックス・セット」をリリースするのが流行りましたよね。

当時の「ボックス・セット」というのは、LPレコードが全盛だった時代の作品をCD化して、何らかのオマケをつけてセット売りしたものがほとんどなので、言ってみれば、コレクターズ・アイテム的なものだったわけなんですが、それでも熱狂的なファンにしてみれば嬉しいリリースでした(金銭的には問題ですが…笑)。

恐らく、こういったセットを購入するファンの方(私も含めて)は、レコードで既に持っている作品も、CD化された時に買い直していることが多いため、音源としてダブらせてしまっていると思うのですが、自分の大好きなアーチストの作品だけは特別ですよね。
ファンというのは、たった数曲の未発表曲やパッケージ違い、予約特典のポスターやブックレットなどに心を奪われてしまうものですから…(笑)。

そのアーチストに興味のない方からすれば、なんという無駄遣い…と、あきれてしまうことでしょうが、ファン心理ってそんなものなんですよね。


今日紹介するのは、私の崇拝するデヴィッド・シルヴィアン [ David Sylvian ] の1989年発表のボックス・セット『Weatherbox(邦題:ウェザーボックス)』です。

内容的には、それまでのシルヴィアンのソロ名義の音源、『Brilliant Trees』(1984年)、『Alchemy: An Index of Possibilities(邦題:錬金術)』(1985年)、『Gone To Earth(当時の邦題:遙かなる大地へ)[ 2枚組 ] 』(1986年)、『Secrets Of The Beehive』(1987年)という作品を5枚のCDに収め、58ページからなるスペシャル・ブックレットと共に豪華なボックスに封入したもの。

ウェザーボックス3

特に目新しい楽曲やバージョン違いが追加されているわけでもないので、音源的には魅力はなかったのですが、『Alchemy: An Index of Possibilities』に関してはこれが初CD化でした。

本作が発表されるまで『Alchemy: An Index of Possibilities』は限定カセットか、12inchシングルでしか聴くことができませんでしたので、初めてノイズのないクリアな音質で聴くことができたことが嬉しかったのを覚えています。

ただし、本作に含まれる『Alchemy』には、シングルのみで発表された「POP SONG」(1989年)のカップリング曲だった前衛っぽいアンビエント作品「The Stigma Of Childhood (Kin)」と「A Brief Conversation Ending In Divorce」が追加されていますので、現在アマゾンで購入できる『Alchemy: An Index of Possibilities』や、カセットのみで限定発売された時とは内容が異なっています。

しかし、それ以外のディスクに関しては発表年のオリジナル盤と全く同じ内容で、追加曲はおろか、リマスタリングやリアレンジなども一切施されていないようです。


では、何が魅力なのでしょう。

まず、1枚づつ別の柄がCDケース自体にシルク・スクリーン印刷されており、トータルなアート作品となっていること。

ウェザーボックス1ウェザーボックス2

ちなみに、このボックス・セットのデザインは、シルヴィアンとのインスタレーションを行ったことでも知られるラッセル・ミルズ [ Rusell Mils ] とデイヴ・コッペンホール [ Dave Coppenhall ] によるもので、シルク印刷やボックスの組み立てを見る限り、恐らく、かなりの手作業が必要だったことが想像できます。

また、スペシャル・ブックレットに関しては、各楽曲のクレジットが一度に確認できると共に、この年までのソロワークの全てを記したカタログ的なページが付属しており、ラッセル・ミルズのアートと一緒に楽しめます。

ただし、写真に関してはモノクロのが2枚だけですし、歌詞も一切載っていませんので、このあたりを重視される方にはおすすめできません。

ブックレットに挟まっているポスターのようなものも、ラッセル・ミルズらしいデザインは施されているものの、シルヴィアン作品の年表的なものなので、飾って楽しむようなものではありません。

つまり、外見上はデヴィッド・シルヴィアンとのコラボレーションによるラッセル・ミルズの立体作品的なものと考えていただいたら良いかと思うのです。

そして、中身に関しては、最もレコード(もしくはカセット)のミックスに近い状態で楽しめるCDと言うことができるでしょう。

シルヴィアンの意図していないボーナス・トラックが含まれていない分、本来あるべき形の一つの作品として聴くことができるのです。

ファン心理としては微妙なところですが(笑)、シルヴィアン自身のオフィシャル・アルバムには本来収録されていないはずの「Forbidden Colours(邦題:禁じられた色彩)」(戦場のメリー・クリスマスのテーマのボーカル入りバージョン)などが追加されているのはレコード会社側の売るための仕掛け的なものであり、作品としては蛇足ですからね。

つまり、音的な意味では、本作が、シルヴィアン自身の意図していた形の音源といえるわけです。


ところで、本作に付属のブックレットの表紙に「Tree」「Stone」「Earth」「Water」「Light」という5つの意味深なワードが書かれています。

それぞれのディスクのケースにシルク印刷された図柄と照らし合わせてみると、「Brilliant Trees=Tree」「Alchemy=Stone」「Gone To Earth=Earth」「Gone To Earth instrumental=Water」「Secrets Of The Beehive=Light」と解釈することができるのですが、このコンセプトが後付けでないとすれば「Brilliant Trees」制作までの間に、すでにここまでの作品の構想は完成していたことになります。

確かに、これらをテーマとして各アルバムを制作していたとしても何ら不思議ではないのですが、そうなるとカセットや2枚組などの変則的な発表の仕方をとったのはおかしいですよね。

そこで、私なりに考えてみたのですが、それぞれの作品自体は発表ごとに完結、しかし、それらの作品をひとつにまとめる際に、5枚で一つの作品として楽しめるようそれぞれのディスクにサブ・テーマを作り、全体に『Weatherbox』という名称をつけた。

映画に置き換えれば、それぞれ監督、出演者の違う一話完結のショート・ムービーをまとめたオムニバス映画に、別の大テーマがあるようなもので、すべてを見終わった後に初めて大テーマを解釈できるような構造になっているのかも知れません。

そう考えると…、いやはや、壮大な作品です。



最後に、アマゾンでは紹介されていませんでしたので、全ての収録曲を紹介しておきます。

なお、曲タイトルにアンダーラインの入ったものは、いつものようにYouTube映像(イメージ映像を含む)をリンクしてありますので、よろしければご一緒にご覧くださいませ。


Disc 1 『Brilliant Trees』
1. Pulling Punches (5:01)
2. Ink In The Well (4:29)
3. Nostalgia (5:39)
4. Red Guitar (5:07)
5. Weathered Wall (5:40)
6. Backwaters (4:49)
7. Brilliant Trees (8:35)

Disc 2 『Alchemy』
1. Words With The Shaman (Songs From The Tree Tops) Pt. 1 Ancient Evening (5:14)
2. Words With The Shaman (Songs From The Tree Tops) Pt. 2 Incantation (3:28)
3. Words With The Shaman (Songs From The Tree Tops) Pt. 3 Awakening (5:16)
4. The Stigma Of Childhood (Kin) (8:28)
5. A Brief Conversation Ending In Divorce (3:28)
6. Steel Cathedrals (3:28)

Disc 3 『Gone To Earth』
1. Taking The Veil (4:40)
2. Laughter And Forgetting (2:40)
3. Before The Bullfight (9:45)
4. Gone To Earth (3:01)
5. Wave (9:13)
6. Riverman (4:53)
7. Silver Moon (6:07)

Disc 4 『Gone To Earth instrumental』
1. The Healing Place (5:27)
2. Answered Prayers (3:09)
3. Where The Railroad Meets The Sea (2:51)
4. The Wooden Cross (4:59)
5. Silver Moon Over Sleeping Steeples (2:21)
6. Camp Fire: Coyote Country (3:50)
7. A Bird Of Prey Vanishes Into A Bright Blue Cloudless Sky (3:15)
8. Home (4:30)
9. Sunlight Seen Through Towering Trees (2:59)
10. Upon This Earth (6:24)

Disc 5 『Secrets Of The Beehive』
1. September (1:17)
2. The Boy With The Gun (5:18)
3. Maria (2:50)
4. Orpheus (4:48)
5. The Devil's Own (3:11)
6. When Poets Dreamed Of Angels (4:45)
7. Mother And Child (3:12)
8. Let The Happiness In (5:33)
9. Waterfront (3:22)

なお、本作の日本盤は、ヴァージンU.K.で発表された作品に日本でシールを貼付けただけですので、内容的には輸入盤であり、シールと予約特典だったポスター以外、何ら違いはなく、日本語解説やライナーノーツなども追加されていませんでした(U.S.盤も同じのはずです)。

そんなわけで、初めてデヴィッド・シルヴィアンを聴こうという方や、ベスト盤的な作品をお探しの方には向かない作品ですが、よりシルヴィアンを理解したい方や、熱狂的なファンの方にはおすすめします。
/BLマスター

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2008年02月23日

Secrets of the Beehive/David Sylvian

Secrets of the Beehive

今年もこの日がやってまいりました。

今日、2月23日は私の崇拝するデヴィッド・シルヴィアン [ David Sylvian ] の誕生日。
彼は1958年生まれですので、今日でなんと50歳になったというわけなんですよ。

いや〜、めでたいことです。

そこで、今日は、彼の最高傑作との誉れも高い1987年発表のアルバム『Secrets Of The Beehive』をもう一度紹介させていただきたいと思います。

さて、まずは、なぜ、本作がシルヴィアンの最高傑作と言われているのでしょう?

実は、以前、ホルガー・シューカイ [ Holger Czukay ] とのコラボ作品『Plight and Premonition』を紹介した際にも書いたのですが、シルヴィアンの作品は、ソロになってから本作まで、インストものと歌ものが真二つに分かれているんですよ。

ソロとしての1stにあたる『Brilliant Trees』が歌もので、ほぼ同時に録られたカセット作品『Alchemy: An Index of Possibilities(邦題:錬金術)』がインスト、2ndアルバム『Gone To Earth(邦題:遥かなる大地へ)』は歌もの1枚とインストもの1枚による2枚組、そして3rdアルバムにあたる本作『Secrets Of The Beehive』が歌もので、本作と並行して制作されたホルガー・シューカイとのコラボ作品『Plight and Premonition』、さらに、その続編となる『Flux + Mutability』がインストもの、というように完全に分けられているのです。

ちなみに、『Flux + Mutability』以降の彼の作品は、インストものと歌ものが1枚のアルバムに共存しています(編集盤やイベント用に作られた特殊な作品を除いて)。

では、なぜ真二つに分ける必要があったのでしょうか?

『Brilliant Trees』の制作時のインタビューを読むと、参加ミュージシャンと一緒に即興的なセッションを行いながら作曲が行われていたらしく、膨大なアウト・テイク(ボツ・テイク)が生まれたそうなんです。

『錬金術』は、そんな中で生まれたアウト・テイクが基盤になっているため、悪く言えばリサイクル的な作品とも言えるんですが、これがなかなか気持ちよくて、評判が評判を呼び、後に通常盤としてCD化されています。

また、『錬金術』の翌年に発表された『Gone To Earth』においても、やはり、大半の曲が参加ミュージシャン(特にロバート・フリップ [ Robert Fripp ] )との即興的なセッションによって作曲が行われているようなのですが、ここでのインスト曲は、歌もののアウト・テイク的な曲の断片をリサイクルしたものばかりではなく、最初からインストものとして制作された曲も多いようです。

つまり、ここまではスタジオに入ってからのクセのあるミュージシャンとのセッションによって偶発的に生まれた曲に肉付けを施すことによって歌ものが制作され、その過程で付加的にインストものが生まれたとみることができるわけです。


しかし、本作『Secrets Of The Beehive』の制作時には、この作曲方法はとられていません。

スタジオに入る前にしっかりとした作曲作業を行い、ほとんど出来上がった状態のデモテープを準備、その上で、頭の中で出来上がっている曲のイメージに必要なアーチストをリストアップして招き、スタジオで肉付けが行われたそうなのです。

要するに、ほとんどのパートのフレーズは、スタジオに入るまでの間にシルヴィアンの頭の中で出来上がっており、参加ミュージシャンはそれをほぼ忠実に再現したということですね。
とはいえ、頭の中のイメージを完成させるには、彼が招いたミュージシャンの個性的なプレイは必要不可欠だったわけで、決してシルヴィアンの独壇場だったわけではありません。

そういう意味では、最もソロ・アルバムらしい作品とも言えるでしょう。

それをふまえた上で本作を聴き直すと、それまでのアルバムの曲よりもシンプルで、ひとつひとつの楽器の音がしっかりと引き立っているのがよくわかります。

特に、アコースティック・ギターや生ピアノ、ウッド・ベースの音が美しく、空間処理に関しても非常にナチュラルなイメージが残るのではないでしょうか。

この中にあっては、デヴィッド・トーン [ David Torn ] のエフェクティヴでトリッキーなギター・プレイでさえオーガニックな雰囲気に感じ取れてしまいます。

また、これまで多用されてきた電子楽器系の音色は、どちらかと言えばアコースティック楽器を引き立てるための脇役に回っており、浮遊感のある独特のパッド系のシンセ音までもがストリングスの一部であるかのような錯覚に陥るのです。

逆に言えば、ボーカルとメロディー・ラインに重きを置いた、ボーカリストのソロらしい作りになっているのでしょうね。


もちろん、歌詞に関してもすばらしく、繊細で芸術家肌のシルヴィアンらしさを感じさせてくれます。

恐らく、歌詞もスタジオに入るまでに完璧に仕上がっていたのでしょう。
ヒットソングによくある言葉遊び的な歌詞ではなく、悪く言えば、小難しい文学的な詩のような歌詞なのです。


つまり、本作は、シルヴィアンの歌と詩に重点をおいた、最もパーソナルな歌ものアルバムなのです。
デヴィッド・シルヴィアンの最高傑作と言われるのも頷けますね。

もちろん、彼を崇拝する私にとっても特別な作品で、これまで43年間生きてきた中で最も聴き込んだアルバムであり、恐らくこの先もずっと聴き続けるアルバムが本作なのです。


前回紹介したときの焼き直しになりますが、まず、プロローグ的なピアノの短い曲「September」から始まり、メランコリックなギターとストリングスが美しい「The Boy with the Gun」、夢幻的で静かな「Maria」、落ち着いたジャズ調の曲の中に静寂を感じる名曲「Orpheus」、暗いながらも叙情的な「The Devil's Own」と流れて行く様は、芸術的な映画を観ているかのような印象を抱きます。

そして、レコードで言えばB面に入って、一曲目が、スパニッシュ寄りなアコースティックギターの音が印象に残る名曲「When Poets Dreamed of Angels」、フリージャズ的な要素を含みながらもヴォーカリゼーションのすばらしさに酔うことの出来る「Mother and Child」、第一弾シングルとなり、どこかマイルス・デイヴィスの「スケッチ・オブ・スペイン」を彷彿させる「Lets the Happiness in」、ストリングスアレンジがすばらしく、エピローグ的でアルバムの最後を飾るにふさわしい「Waterfront」と完璧なまでの構成力でまとめあげられています。

「September」をテーマにした映像作品
「The Boy With the Gun & Orpheus」のライヴ映像
「Maria」のライヴ映像
「Orpheus」のプロモ映像
「When Poets Dreamed Of Angels」のライヴ映像
「Mother And Child」のライヴ映像

なお、この後、ボーナス・トラックとして現行盤では「Promise(The Cult Of Eurydice)」、最初にCD化された時は「Forbidden Colours(邦題:禁じられた色彩)」(「戦場のメリークリスマス」のボーカル入りバージョン)が追加されていますが、作品としては「Waterfront」で完結していますので、誤解の無きようお願い致します。


ところで、本作のアウト・テイクには「Ride」というすばらしい曲があります。

「Ride」のライヴ映像

以前紹介した『Everything and Nothing』というヴァージン時代の総まとめ的なアルバムにのみ収録されているのですが、それぞれのメンバーの個性がよく出たポップな曲で(シルヴィアン作品としてはポップという意味です)、シルヴィアン入門曲としてもちょうど良いバランス感覚を持っています。

そんなにすばらしい曲なら、なぜ、本作に収録しなかったのかと疑問に思う方もおられると思いますが、いざ、どの曲と入れ替えるのか、どの位置に挿入するのか、と考えてみると確かに難しいところがあります。

言い換えれば、こんな名曲を捨ててまでアルバムの完成度にこだわったシルヴィアンに拍手を贈りたいのです。

デヴィッド・シルヴィアンに興味を持たれた方は、とにかく本作を聴いてみてください。

この記事を最後まで読んでくださった方なら、間違いなく手に入れて損はしないはずですよ。
/BLマスター

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2007年09月19日

Flux + Mutability/David Sylvian & Holger Czukay

Flux + Mutability

先日、デヴィッド・シルヴィアン [ David Sylvian ] ホルガー・シューカイ [ Holger Czukay ] のコラボレーション・アルバム『Plight & Premonition』を紹介したばかりですが、今日はこの2人による続編的コラボ作品『Flux + Mutability』を紹介したいと思います。

本作『Flux + Mutability』は、基本的に前作『Plight & Premonition』の延長線上にあり、前回と同じく「現代アート系の個展会場で流れていればバッチリ」のアンビエント感溢れる音響作品で、悪く言えば、印象的なメロディーや起承転結のない、難解なイメージのサウンド・アートです。

収録曲数も、前作と同じく「Flux (a big, bright, colourful world) (直訳すれば「流動」)」と、「Mutability (a new beginning is in the offing)(直訳すれば「無常」)」という2曲で、それぞれ16分57秒、21分00秒という、やはり長尺のインスト作品なので、シルヴィアンのボーカル目当てで聴くには不向きなアルバムです。

『Plight & Premonition』は、シューカイがシルヴィアンのソロに参加したことにより、自然発生的に生まれたプロジェクトでしたので、個人的には、手探りで方法論を模索しつつ完成にこぎつけた、まさしく実験的なイメージを抱くのですが、本作『Flux + Mutability』は、前作で培った方法論の元で計画的に制作されているようで、完成度やまとまりの点ではこちらのほうが上回っているように感じます。

とはいえ、前作『Plight & Premonition』の未完成がゆえの緊張感や実験性は、それぞれのコアなファンにとって非常に面白いところであり、決して本作『Flux + Mutability』よりも劣っているという意味ではありません。

しかし、一般的に見れば、間違いなく本作の方が聴きやすいと思います。


前作との大きな違いは、「Flux」の方にパーカッションやギターなどが加わり、曲として聴きやすくなったことが挙げられるでしょう。

パーカッションに関してはシルヴィアンのソロ『Brilliant Trees』に収録のタイトル曲「Brilliant Trees」のエンディング部分、ギターに関してはシューカイの『Movies』に収録された「Persian Love」のギターを彷彿させる心地良さがあり、シルヴィアンのシンセ、シューカイの短波ラジオなど、それぞれ独特の音色と混じり合いながら絶え間なく変化を続ける様は、まさしく「Flux(流動)」というタイトルにピッタリな気がします。

逆に「Mutability」の方は、シルヴィアンのソロ『Gone To Earth』のインスト盤の方に収録されているアンビエント作品の尺を延ばしたかのような楽曲で、フワ〜とした浮遊感のある音色がそれぞれ干渉しあう、ノンビートでシンプルな構造のアンビエント作品です。

ブライアン・イーノ [ Brian Eno ] のアンビエント作品に似た要素も多分にありますが、どこかオーガニックで枯れた感じがするのはシルヴィアンならではの味なのかも知れませんね。


参加アーチストは、シルヴィアン、シューカイに加えて、前作でも名を連ねているヤキ・リーベツァイト[ Jaki Liebezeit ] 、同じくカン [ Can ] 人脈のミヒャエル・カローリ [ Michael Karoli ] 、ミチ [ Michi ] 、そして、シューカイの師匠であるカールハインツ・シュトックハウゼン [ Karlheinz Stockhausen ] の息子、マルクス・シュトックハウゼン [ Markus Stockhausen ] がクレジットされています。

また、前作ではシューカイが単独でプロデュースとミックスを行っていたのですが、本作は2人が共同で行っているようで、前作よりも「シルヴィアンっぽさ」が前面に出た作りとなっています。

これは恐らく、シューカイのミックス技法をシルヴィアンが自分なりに解釈、吸収し、オリジナルとして完成させた現れなのではないでしょうか。

ひょっとすると、シューカイはシルヴィアンの成長具合を温かい目で見守りながらサポートしていたのかも知れません。

前回のスターウォーズの例えで言うなら、ルークが「惑星ダゴバ」でフォースをコントロールする修行を終え、再び戦いに戻るシーンですね(笑)。


本作以降のシルヴィアン作品は、フォースを身に付けたおかげか(笑)、インプロヴィゼーション的な要素が多分に加わり、現代音楽度が高くなったように感じられるはずです。

つまり、録音スタジオに入るまでの間に作り込まれた音を再現するようなシーケンサー的な録音法ではなく、録音スタジオに入ってから個々のメンバーの個性が合わさることによって生まれた即興性を大切にした録音法に変わったような気がするのです。

この変化により、作曲方法自体も変化したのか、本作以降はインストものと歌ものの垣根がなくなっているのです。

試しに、本作の2年後に発表されたレイン・トゥリー・クロウ [ Rain Tree Crow ] を聴いてみて下さい。

頻繁に聴こえてくる短波ラジオの演奏は、明らかにシューカイから影響を受けたものであり、ライヴの際に生では再現の難しいインプロヴィゼーション的なフレーズが増えていることに気がつかれると思います。

さらに、シルヴィアン主導のオリジナル・アルバムの中でインストものと歌ものが1枚の盤に混在するようになったのは、このレイン・トゥリー・クロウが初めてなのです(ライヴ盤、編集盤、ボーナストラックを除く)。

さすがに、ロバート・フリップ [ Robert Fripp ] との共作『The First Day』だけは別物に感じますが、その後の『Dead Bees on a Cake』『Blemish』、ナイン・ホーセズの『Snow Borne Sorrow』などでも、『Plight & Premonition』と『Flux + Mutability』で生まれた手法が活かされているのは明らかです。

そう言う意味で、この2枚のホルガー・シューカイとのコラボ作品は、デヴィッド・シルヴィアンを語る上で非常に重要な意味を持つ作品なのです。

90年以降のシルヴィアン作品がお好きな方はもちろんのこと、これから最近の作品を聴いてみようという方にも、ぜひ一度は聴いていただきたいと思います。

インストものは苦手という方には少々辛い作品なのかも知れませんが、本作前後のアルバムがお気に入りの方なら、きっと楽しめるはずですよ。
/BLマスター

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2007年09月11日

Plight & Premonition/David Sylvian & Holger Czukay

Plight & Premonition

元カン [ Can ] のホルガー・シューカイ [ Holger Czukay ] と元ジャパン [ Japan ] デヴィッド・シルヴィアン [ David Sylvian ] の関係は、スター・ウォーズで言うところのヨーダとルーク・スカイウォーカーの関係に似ているような気がします(笑)。

ヨーダがルークにフォースを伝授したのと同じように、シューカイはシルヴィアンに短波ラジオという楽器の使い方を伝授したのです。


私が推察するに(いや、本当に勝手な想像なんですが…)、シルヴィアンは1stソロ・アルバム『Brilliant Trees』(1984年)で、かねてから興味を持っていたアート・ロックの師匠達を招き、ジャパンという枠組みを離れた自らの音楽的な可能性を模索していたんだと思うんです。

とはいえ、『Brilliant Trees』は、元ジャパンのボーカリストのソロ一作目であり、リスナーやヴァージンから求められているものはあくまでも歌もの中心のアルバム。

それでもシルヴィアンは自らの好奇心を抑えることができなかったのでしょう、『Brilliant Trees』のセッション中に産まれたインストものの楽曲に手を加え、さらに別の師匠や友人の力を借りて、限定ものの実験的なカセット作品『Alchemy : An Index Of Possibilities(邦題:錬金術)』(1985年)を発表しました。

マスターテープの音質的な問題もあったのですが、セールスの見込めない実験的なインスト作品であるにも関わらず、数量限定のカセット作品として発売することでヴァージン側も納得、無事、インスト作品を発表するアーチストとしても船出することができたのです。

ちなみに、意外にも『Alchemy : An Index Of Possibilities』は好評だったようで、89年発表の限定ボックス・セット『Weather Box』でCD化されて以来、通常盤としてもCD化されています。

翌年、86年には、さらにこの延長線上で『Gone To Earth』という作品を発表しているのですが、このアルバムは歌もの1枚とインストもの1枚という変則的な内容で、シルヴィアンにとって、歌ものとインストものが別のベクトルにあることを指し示しているような気がしました。

その後、1987年に、シルヴィアン自身が「完璧な絵画に近い」と表現するほど完成度の高い作品『Secrets Of The Beehive』を発表し、歌ものアルバムとしての理想的な形を完成させたのです。

なお、『Secrets Of The Beehive』の発表後、ソロとしては初の大々的なワールド・ツアーが行われておりますので、そんなところからも彼自身の納得具合を感じ取れるような気がします。

しかし、シルヴィアンにとっての興味の対象はもちろん歌ものだけではありません。

『Gone To Earth』の完成後から、『Secrets Of The Beehive』の制作と並行して、彼の音楽的師匠の一人であるホルガー・シューカイと共に実験的コラボレーションが進められていたのです。

今思えば、この頃は、歌ものとインストものを全く別のプロジェクトで制作することで、彼なりの音楽的バランスをとっていたのかも知れません。


そのプロジェクトというのが、今日紹介するシルヴィアンとシューカイのコラボレーション・アルバム『Plight & Premonition』なのです。

実は、本作は86年〜87年に録音されているのですが、それぞれの所属レコード会社の契約上の問題から一旦お蔵入りになりかけ、88年にやっと発表までこぎつけた作品で、本来なら『Secrets Of The Beehive』と発表順が逆になっていたのかも知れません。

内容の方はタイトルが示す通り「Plight (The Spiralling Of Winter Ghosts) (直訳すれば「苦境」)」と「Premonition (Giant Empty Iron Vessel)(直訳すれば「前兆」)」という、たった2曲が収録されているのみ、それぞれ18分27秒、16分24秒という長尺の曲で、LPレコードでは片面に一曲づつ収録されています。

都合上「曲」という表現をしましたが、実際は印象的なメロディーやコード展開はほとんどなく、起承転結もない、緩やかな音の変化を楽しむ音響作品とでも言うべきアルバムです。

1曲目の「Plight」は『Gone To Earth』完成後の86年2月に、単身ドイツに渡ったシルヴィアンが、シューカイ、同じく元カンのヤキ・リーベツァイト[ Jaki Liebezeit ] 、カール・リッピガウス [ Karl Lippergaus ] らとインプロヴィゼーション(即興演奏)を行い、後日、シューカイが編集及びミキシング処理して完成させたそうです。

2曲目の「Premonition」の方はその翌年2月に、シルヴィアンとシューカイの2人だけで録音されているのですが、ダビング編集などの加工をほとんどすることなく発表しているせいか、若干、ナチュラルな風合いで、「Plight」よりも明るめなイメージがあります。

ちなみに、シルヴィアン曰く『「Premonition」の方が自分自身に近い』とのことで、ラッセル・ミルズ [ Russell Mills ] とのインスタレーションの際に制作された『Ember Glance』に似たランドスケープ的なアンビエント感を感じることができます。

わかりやすく言えば、どちらも現代アート系の個展会場で流れていればバッチリの音響作品で、シルヴィアンのインスト作品からメロディー的なフレーズを無くした状態で尺を延ばし、その上にシューカイ独特の短波ラジオの演奏(?)とコラージュを乗せ、さらにシューカイがミックスとプロデュースを行った作品、という説明ができます。

恐らく、一般的には、難解でおもしろくない音楽と捉えられてしまうかも知れませんが、この2人の音楽を知る方には非常に刺激的で興味深い音楽的な実験として楽しんでいただけると思います。

言い換えれば、メインストリーム系の音楽を好んで聴いておられる方にとっては、音を楽しむ「音楽」ではなく、音の学問という意味で「音学」、それぞれをよく知る方にとっては、2人の個性を感じさせる音がぶつかり、融合している様を楽しむことの出来る面白い「音楽」と感じ取れるのではないでしょうか。

本作は、ホルガー・シューカイの単独プロデュース(ミックスも単独)で、シューカイの人脈と思われるアーチストが参加しているため、どちらかというとシューカイのイメージが強いように思われがちですが、バックのブライアン・イーノ [ Brian Eno ] のアンビエント作品にも通ずる、浮遊感のあるシンセサイザーの使い方はモロにシルヴィアン作品の音であり、共同名義ならではの両者のバランスのとれた作品であると思います。

しかし、別の見方をすれば、冒頭で書いたように、ヨーダがルークにフォースを伝授しているかのように、シューカイがシルヴィアンにマンツーマンで短波ラジオの演奏を伝授している「惑星ダゴバ」的な作品でもあるのです。

シューカイ師匠のお茶目さは、どこかヨーダにも似たところはあるのですが(笑)、シュトックハウゼンから学んだフォース、いや、短波ラジオ演奏を自分なりに解釈し、アート・ロックの中に大胆に組み込んだ御大であるわけですから、まさしくヨーダのような師匠的風格も兼ね備えているわけです(無理矢理ですが…)。

この翌年に、ほぼ同様のコンセプトでパーカッションを加味して制作された続編的作品『Flux + Mutability』が発表され、それ以降、シルヴィアンはシューカイ師匠から独り立ちし、自らフォース、いや、短波ラジオを演奏するようになりましたので、そういう意味では、シルヴィアンの音楽的な魅力をより広げた修行の場的な存在の作品ということができると思います。

少々、小難しい印象を持たれるかも知れませんが、シルヴィアン、シューカイ、それぞれの音楽をこよなく愛す方にはもちろんのこと、イーノ系のアンビエントものがお好きな方、現代アート系の個展に流す音楽をお探しの方、瞑想に使う音楽をお探しの方などにもぜひ聴いていただきたい作品です。

さすがに、こういった音響作品だけに、YouTubeでも関連映像を発見することはできませんでしたが、一応、アマゾンで試聴することは可能です。
ただ、15分以上という長尺のインスト曲を30秒ほど聴いても参考にはならないような気もしますので、そのあたりはご了承下さいませ。

また、2002年に発表されたヴァージン時代のインスト作品のベスト盤的アルバム『Camphor』の中に「Plight」のショート・バージョンが、同じくデジパック仕様のUK限定盤『Camphor (+Bonus CD)』に付属していたボーナス・ディスクに「Premonition」のショート・バージョンと、別バーションの「Plight」が収録されていますので、興味を持たれた方は比較されるのも面白いと思います。


ところで、シルヴィアンのソロ名義の来日公演が近づいてきましたね。
今回のライヴは、スティーヴ・ジャンセン [ Steve Jansen ] 、キース・ロウ [ Keith Low ] 、ComboPianoの渡邊琢磨を迎えて、ナイン・ホーセズ [ Nine Horses ] の曲を中心に演奏されるのだとか…。

まだチケットは残っているそうなので、観に行きたい方はお早めにお買い求め下さいね。
/BLマスター

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2007年05月28日

OIL ON CANVAS/JAPAN

OIL ON CANVAS/JAPAN

本作は、1982年に行われたジャパン [ Japan ] の解散ツアーとなった「Sons of Pioneer Tour」の(英国ハマースミス・オデオンでの)模様を収めた、ジャパン唯一のオフィシャル・ライヴ盤です。

このツアーの武道館公演(12月8日)では、アンコールで、シルヴィアンの盟友、坂本龍一&矢野顕子(当時は夫婦ですね)や、スティーヴの師匠(?)、高橋幸宏氏がゲスト参加し、当時、坂本龍一氏がDJを務めた「サウンド・ストリート」というFM番組で枠を拡大して放送されました。

ちなみに、ジャパンとしての最後のライヴはこの年の12月16日の名古屋公演で、その模様を収録した、なぜかジャケットに大きく海老の絵が描かれた『Yebi』というタイトルの2枚組みのブート盤LPがあって、たまに聴いてみたりします(笑)。

しかし、音質的にはさすがにオフィシャル、本作に勝るものは存在しません。

ブート盤や、FMで放送されたもののような「うるさすぎる黄色い歓声」がほとんど入っていないため、楽曲に集中して聴くことができるのも魅力ですね。

特に、日本公演での黄色い歓声はものすごいですから、よほどの忍耐がなくては楽曲に集中できません。


収録曲は、実際のライヴの演奏曲から「Alien」や「European Son」などが数曲省かれているものの、ほぼ曲順通りで、それに3曲の小曲を付け加えることによって、単なるライヴ盤ではない、一つの作品として完成させています。

ただし、プロローグ的な役割の「Oil on Canvas」、エピローグ的な「Temple of Dawn」は良しとしても、CD化されて1枚ものの作品となってしまった今となっては、LPの1枚目と2枚目のつなぎ的な役割を持つ「Voices Raised in Welcome, Hands Held in Prayer」は意味がないように思います。

楽曲自体はガムラン風で、決して悪くはないのですが、あのやきこさん(矢野顕子さんの別名。笑)の存在感がスゴすぎて、CDで通して聴くには、あまりにも違和感があり過ぎます。

この3曲の小曲を除けば全12曲となるのですが、うち、7曲が『TIN DRUM(邦題:錻力の太鼓)』、4曲が『Gentlemen Take Polaroids(邦題:孤独な影)』、1曲が『Quiet Life(邦題:クワイエット・ライフ)』からの楽曲となっており、1st、2nd
からの楽曲は一切含まれておりません。

実際のライヴでも、初期2枚からの楽曲は演奏されていないのですが、『Quiet Life』の発表までの間にシングルと編集盤でのみ発表された「European Son」と「Life in Tokyo」(武道館公演のアンコール)だけはアレンジを変えて演奏されています。(原曲の方は、『The Very Best of JAPAN』などのベスト盤に収録されています。)

言うなれば、電子楽器中心の音作りに転身してからの曲目を『Tin Drum』をメインに見せてくれたライヴということになりますね。

自動演奏部分(恐らくマルチ・トラック・テープ)と生演奏が見事に組み合わさっているところも面白いところですが、オリエンタルな味付けが施された『Tin Drum』からの曲と、ヨーロッパ的な『Gentlemen Take Polaroids』『Quiet Llife』からの曲が同居しているにも関わらず、全体を通して聴いても違和感をほとんど感じないところも大きな見どころです。

これは、『Gentlemen Take Polaoids』に収録されていた、エリック・サティーのような楽曲「Night Porter」の、ピアノ部分がマリンバに変更されるなど、非常に『Tin Drum』寄りなアレンジが施されており、他の楽曲に関しても同様に、全体的なトーンを合わせる工夫をしていますので、違和感がなくて当然なのかも知れません。

逆に言えば、そういう細かいところにまで工夫を凝らしているのがジャパンなのです。

このツアーの合間に出演したTV番組での「Night Porter」のライヴ映像

多くのヴィジュアル系バンドのボーカルに影響を与えた デヴィッド・シルヴィアン [ David Sylvian ] のファルセットまじりの独特な歌唱法はもちろんのこと、スティーヴ・ジャンセン [ Steve Jansen ] の完璧なまでにジャスト・タイミングなドラミングと、それに絡むミック・カーン [ Mick Karn ] のクセの強い、歌うような変態フレットレス・ベース、さらにリチャード・バルビエリ [ Richard Barbieri ] の奏でるオーバーハイムの霧のかかったような空間的な音色や、プロフェット5を極限まで駆使した金属的な音色のシンセサイザーの音色、そしてツアー・サポートを務める土屋昌巳のエイドリアン・ブリューばりの個性的な変態ギター。
(この時の土屋氏のストラトと同じく、ブリューもストラトのボディーの塗装を剥がした状態で弾いていますね。こうすると、ギター・ケースの中の乾燥剤の威力が増して、乾いた音がでるんだとか!?)

それぞれの個性がこの時点で完全に開花しており、まさに、どこをとってみてもジャパンというバンドの完成形と言えるのではないでしょうか。

デビュー当時に、ミーハー・バンドというレッテルを貼られたバンドが、ほんの4年少々という短い期間でここまで成長を遂げるとは、誰も想像できなかったことと思います。

かつての私がそうであったように、今でも「中身のないミーハーお化粧バンド」という認識のもとに誤解を受けることの多いジャパンですが、この完成形の姿から黄色い歓声を除けば立派な音響芸術系のバンドだったことがわかっていただけると思うのです。

同名の本作のビデオ版『Oil on Canvas』(現在はDVD作品『The Very Best Of JAPAN』に同時収録されています。)に関しても、やはり、単なるライヴ・ビデオではなく、『Tin Drum』のコンセプトに合わせたオリエンタルな映像が挿入されたり、その映像とバランスを取るためにライヴ映像にフィルターがかけられたりしており、そんなところにも彼らのこだわりを感じさせてくれます。
ただ、ファンの間では、ライヴ映像以外は必要なく、もう少しクリアですっきりした画像で見たかったという意見が多いのも事実ですが・・・。

以下が、そのビデオ『Oil on Canvas』からの映像です。
念のため断っておきますが、このミック・カーンの動きは電動ではなく、自身で動いています(笑)。

「Sons Of Pioneers」
「Gentlemen Take Polaroids」
「Swing」
「Visions Of China」
「Ghosts」
「Still Life In Mobile Homes」
「Methods Of Dance」
「The Art Of Parties」
「Canton」

この作品を最後にジャパンは解散、シルヴィアンはファルセットまじりの独特な歌唱法や、お化粧、前面だけをブロンドに染めた髪型(いわゆる「デビちゃんカステラ」ですね。笑)をやめ、まさに仙人的な音楽と芸術を中心にしたソロ活動を展開、スティーヴはリチャードと組み、ミックもソロに重点を置いた活動へとシフトしています。

以降、91年にレイン・トゥリー・クロウ [ Rain Tree Crow ] という、ジャパンとは別名義で事実上の再結成をしていますが、シルヴィアンのジャパン時代の歌唱法や、ミックらしい変態ベース・フレーズが無いという点、電子楽器を多用しながらもアコースティック・ライクな音作りをしている点などを考えると、明らかにジャパンとは別物、どちらかと言えば、シルヴィアンのソロの延長線上にある作品でした。

ヴァージンの望むジャパン名義での再結成盤を拒否して、別名義にしたのも頷けます。

Rain Tree Crow「Blackwater」のプロモ映像

シルヴィアンを神と崇める私としては、本格的な再結成ライヴを観たいという気持ちもないことはないのですが、それだけはやめて欲しいという気持ちの方が大きく、出来ることならタイムマシンで1982年に戻ってもう一度じっくり観てみたいと思っています。

ま、そうは言っていても、万が一再結成されることがあれば、間違いなく観に行ってしまうのですが・・・(笑)。


なお、『Tin Drum』のプロデュースはスティーヴ・ナイ [ Steve Nye ] が担当しているのですが、『Quiet Life』『Gentlemen Take Polaroids』でプロデュースを担当していたジョン・パンター [ John Punter ] が、ツアーに同行するライヴ・エンジニアに転向していたため、そのまま引き継いで、メンバーと共同で本作のプロデュースを行っています。

決してノリノリのご機嫌なライヴではありませんが、ジャパンのファンの方は当然のこと、誤解して食わず嫌いだった方にこそ聴いていただきたい芸術的な作品です。

未聴の方は、上のYouTube映像の他、アマゾンでも全曲試聴可能ですので、まずはさらっとでも聴いてみて下さい。
/BLマスター

uknw80 at 20:38|PermalinkComments(2)TrackBack(1)

2006年12月02日

Everything and Nothing/David Sylvian

David Sylvian Everything & Nothing

本作は2000年に発表されたデヴィッド・シルヴィアンの初のベスト盤です。
2枚組のCDに、未発表曲やボーカルを新しく録音し直した曲、また、新しくミックスし直した曲などが29曲も収録されており、全作品を持っているコアなファンにとっても楽しめる新鮮な内容の作品です。

しかし、ベスト盤というのはあくまでCDショップなどの便宜上の区分けであり、本作の内容的にはシルヴィアンのヴァージン在籍時代の軌跡と言った方がしっくりきます。

一番有名な「戦場のメリークリスマス」のボーカル入りである坂本龍一とのコラボ「Forbidden Colours(邦題:禁じられた色彩)」や、シルヴィアン名義のシングルで一番売れた「Red Guitar」を始めとする「Pulling Punches」「Silver Moon」などのシングル曲を収録していないのです。

これらの楽曲を収録すれば、立派にベスト盤としてセールスを見込めたであろうはずなのですが、なぜこのような選曲にしたのでしょうか。
私が思うに、これまで彼を支えてくれたファンへの彼なりのサービス精神なのではないかと思うわけです。

彼のアルバムを持っておられない方がとりあえずの意味でベスト盤を買うのなら、比較的聞きやすいシングルをまとめたアルバムの方が嬉しいでしょうが、既存の作品を持っておられる方にとっては不必要なものなわけで、よくある未発表曲を1、2曲追加したベスト盤であったとしたら、それだけのために無駄なお金を使うことになるわけです。

その点、本作は最低でもリマスターが施されており、未発表曲やニューレコーディング、ニューミックスのものも多いため、シルヴィアンの作品全てを持っている方にとっても全く損のない内容となっています。

曲の紹介を全て書くとえらいことになりそうなので、目玉となる数曲の紹介だけにさせて頂きます。

まず、Disc1-1曲目の「The Scent Of Magnolia(邦題:マグノリアの残り香)」は、99年発表の『Dead Bees on a Cake』レコーディング時に制作された未発表曲。
シルヴィアンにしては珍しくポップでわかりやすい曲でなので、逆の意味で外されたこともうなずけます。
もちろん、未発表曲に関しても、今回の収録にあたり新しくボーカルが録り直され、ミックスもされているようです。

5曲目の「Ride」は、87年発表の『 Secrets of the Beehive 』のレコーディング時に制作された未発表曲。
これは名曲です。
ポップさとけだるさの絶妙なバランスが最高で、とにかくシルヴィアンの歌ものらしい持ち味が100%出ているすばらしい曲です。
いかにもスティーヴ・ジャンセンらしいドラムや、坂本龍一らしい手癖のピアノ、デヴィッド・トーンのエフェクティブなギター、マーク・アイシャムのトランペットが見事にブレンドされた珠玉の1曲です。
なぜ収録されなかったのか不思議なくらい良く出来ていると思います。

7曲目の「Ghosts」は、ご存知81年発表のJAPANの『TIN DRUM(邦題:錻力の太鼓)』に収録された、ジャパンの曲としては一番売れた楽曲。
新しくボーカルが録り直され、ミックスもされているので、新鮮に感じます。

8曲目の「Pop Song」は、89年に発表されたシルヴィアン名義では珍しいシングルのみの楽曲で、リマスタリングが施されています。
このシングルはやや入手困難になっているので、今回の収録は嬉しいところです。

14曲目の「Thoroughly Lost To Logic」は「Pop Song」の録音時に制作された未発表曲で、現代音楽的なポエトリー・リーディング系の小曲。

Disk2-2曲目の「Cover Me With Flowers」は、『Dead Bees on a Cake』の録音時の未発表曲で、やはりシルヴィアン作品らしい要素を多分に含んだ少々重ための楽曲です。
Gone to Earth
8曲目の「Some Kind Of Fool」は、中では一番旧く、80年に発表したJAPANの『
Gentlemen Take Polaroids(邦題:孤独な影)』の録音時の未発表曲。
実にドラマティックな展開で、当時のシルヴィアンの音楽的な成熟具合をうかがい知ることができます。
その時代の作品が本作で違和感を持たないというのはミックスの技術だけのせいではないでしょう。

12曲目「Bouy」は、86年に発表のミック・カーンのソロ『Dream Of Reason』に収録されたシングル曲のリマスターで、ジャパン解散以降、ミック・カーンとのセッションはこの時の2曲と、ジャパンの再結成と騒がれたレイン・トゥリー・クロウの2回のみ。
まさかこの曲が収録されるとは思ってもみませんでした。
しかし、原曲では若干大きめのベースパートを多少抑えたミックスとなっています。

14曲目「Bamboo Houses」は、82年発表の坂本龍一との共作シングル「Bomboo Music」のB面曲のニューリミックス。
坂本龍一の「ボクが・大好きだった建物たち・今は〜」というくぐもった声の語りを聴くと、昔FMで聴いていたサウンド・ストリートを思い出してしまいます。
これは素人耳で聴いても明らかに原曲とは違う音色が使われており、新鮮に感じられます。

15曲目の「Come Morning」は、95年発表のニコラ・アレシーニ&ピエール・ルイジ・アンドレオーニのアルバム『マルコ・ポーロ』の1曲目に収録された美しい楽曲のリミックスで、本作では最後を飾ることになりました。


他の楽曲については下記の曲名の頭に印をつけて紹介をさせて頂きます。
◎は未発表曲
○はニューミックス
+はニューボーカル&リミックス
■はリマスタード

ディスク:1
◎ 1. The Scent Of Magnolia
○ 2. Heartbeat (Tainai Kaiki II)
■ 3. Blackwater
◎ 4. Albuquerque (Dobro #6)
◎ 5. Ride
○ 6. The Golden Way
+ 7. Ghosts
■ 8. Pop Song
■ 9. Every Colour You Are
■ 10. Wanderlust
■ 11. God's Monkey
■ 12. Let The Happiness In
■ 13. I Surrender
◎ 14. Thoroughly Lost To Logic

ディスク:2
■ 1. Jean The Birdman
◎ 2. Cover Me With Flowers
■ 3. The Boy With The Gun
■ 4. Riverman
◎ 5. Aparna And Nimisha (Dobro #5)
■ 6. Midnight Sun
■ 7. Orpheus
◎ 8. Some Kind Of Fool
■ 9. Cries And Whispers
■ 10. Godman
■ 11. Laughter And Forgetting
■ 12. Buoy
○ 13. Weathered Wall
○ 14. Bamboo Houses
○ 15. Come Morning

なお、アマゾンに入れば全曲試聴可能ですので、まず聴いて頂いた方がわかりやすいかも知れません。

また、本作の初回輸入盤はもう1枚のボーナスCDの付いた3枚組で発売されました。
ボーナスディスクの収録曲は下記の通りです。

1.「The Scent Of Magnolia」(Edit)
2.「The Blinding Light of Heaven」
3.「The Scent Of Magnolia」(Portobello Mix)
4.「Brilliant Trees」(Version 2000)

このDisk3には合計23分強収録されておりピクチャーディスク仕様になってます。
しかし、現在ではプレミアがついてしまい、一番安いものでも 9,800円もしています。
それでもどうしても初回盤が欲しいという方は下記からアマゾンに入れます。
Everything and Nothing

実は、始めにヴァージン在籍時代の軌跡と書きましたが、まさしくその通りなんです。
この後、ヴァージン在籍時代のインストものをまとめたアルバムを発表し、一つの区切り(もしくは置き土産)がついたかのようにシルヴィアンはヴァージンを去りました。
そして、自身のレーベル「サマディー」を設立、いきなりアンコマーシャルな作品『Blemish』を発表したのです。

この作品は、かなり実験的な作品で、ほとんどインプロ(即興演奏)によって制作されており、流行歌を聴いておられる方にとっては非常に難解なものだったと思います。
恐らく、ヴァージンで発表することは不可能だったのではないでしょうか。
そのため、初回分はサマディーのサイトからのみのネット販売のみという形で発売されたのですが、意外に好評だったようで、一般のCDショップでも普通に買えるようになりました。
このレーベルを設立したことで自由にやりたいことができるようになったというわけですね。
/BLマスター

uknw80 at 17:49|PermalinkComments(8)TrackBack(1)

2006年08月28日

Gone to Earth/David Sylvian

David Sylvian Gone to Earth

デヴィッド・シルヴィアンは、ジャパン解散後、84年にソロとしての1st「Brilliant Trees」を発表しましたが、この作品はシルヴィアンのアルバムの中では最もわかりやすい作品で、全曲が歌ものでした。

その翌年には、カセットのみでの限定発売という形式で「Alchemy : An Index Of Possibilities(邦題:錬金術)が発表されたのですが、これはシルヴィアン作品の常連の坂本龍一や、実弟スティーヴ・ジャンセン、1stに参加したジョン・ハッセルや、ホルガー・シューカイ、ケニー・ウィーラーに加え、キング・クリムゾンのロバート・フィリップや、元ブランドXのパーシー・ジョーンズ、旧友の土屋昌己らが参加する、インスト(歌なし)のみで構成された非常に落ち着いた作品です。

後に、デジタルリマスターでCD化されましたが、シングル「Words With The Sharman(邦題:シャーマンの言葉)」と、環境ヴィデオ作品「Steel Cathedrals」をまとめたものであったため、ソロ作品としては別枠となります。

「Steel Cathedrals 」の映像の一部

そして、さらに翌年、86年に発表したのが、この2ndアルバム「Gone to Earth(邦題:遙かなる大地へ)」です。
このアルバムは歌もので1枚、インストもので1枚という2枚組の大作で、「錬金術」で初めてセッションした大御所ロバート・フィリップや、元ビ・バップ・デラックスのビル・ネルソンといった70年代後半の個性派に加え、1stにも参加したケニー・ウィラー、フィル・パーマー、元ジャパンのリチャード・バルビエリ、実弟のスティーヴ・ジャンセンなどにより制作され、珍しく坂本龍一は参加していません。
また、新顔としては、メル・コリンズ(Sax)、ハリー・ベケット(Hor)、B.J.コール(G)、ジョン・テイラー(Piano)[ デュラン・デュランのジョン・テイラーとは別人 ] 、イアン・メイドマン(B)らの、ジャズ系のロックでは定評のあるセッション・プレイヤーが参加していますが、ケニーやフィルと交流があるはずなので、そこからの紹介ではないかと思われます。

なお、プロデュースは、ジャパンのラストアルバム「錻力の太鼓」以来、「シークレッツ・オブ・ザ・ビーハイヴ」までの長きに渡る付き合いのスティーヴ・ナイが担当しています。

歌ものの方の1曲目「Taking the Veil」と、最後の曲「Silver Moon(邦題:銀色の月)」に関しては、シングルカットされたこともあり、幾分ポップさ(シルヴィアン的な意味においてのポップ感)の残る聴きやすい楽曲であるとも言えますが、全体的にはかなりアート志向の強く出た作品で、非常に重たく、かつ温かい、まさに大地を感じさせるような有機的な音作りが特徴です。

「Silver Moon」のプロモ映像
TV番組での「Taking The Veil」のライヴ映像

他にも歌ものの方(DISK1)には、本作にはジョン・テイラーのピアノをバックにしっとりとシルヴィアンのボーカルを聴かせる美しい小曲「Laughter & Forgetting」や、マイルス・デイヴィスのスケッチ・オブ・スペインを思わせる10分弱の大作「Before the Bullfight」、アバンギャルドでヘビーなフィリップのギターワークを強調したタイトル曲「Gone to Earth」、アンビエント志向の強いバックの音に重たいビートとフィリッパートニクス(フィリップの考案したギター)の音、そして美しくも味わい深いシルヴィアンのボーカルを堪能出来る名曲「Wave」、印象的なパーカッションが後のシルヴィアンの作品にも近い趣のある「River Man」が収録されており、これだけでも見事な作品です。

ワンマンライヴでの「Before The Bullfight」の映像

なお、DISK1の8,9,10は最近付け加えられたボーナストラックなので、ご了承の上お聴き下さい。

インストロメンタルの方(DISK2)には、同時期に同メンバーによって作られた実験的なものから、映画のサントラ的な楽曲や、環境ビデオのSE的なものまで収録され(ある意味で、ブライアン・イーノの環境音楽系です)、一つの芸術作品として成立しています。(洋風お化け屋敷の音楽みたいだと言う人もいます)

もちろん、ジャパン前期のミーハーなイメージはどこを探しても見当たりません。

また、このアルバムのジャケット・アートはラッセル・ミルズというアーチストによるもので(ウルトラマンの胸元のアップにも見えますが・・・)、この後、彼とのコラボでインスタレーション展が日本でも行われ、「エンバー・グランス」という作品も生まれました。
なお、ラッセル・ミルズは、この後も何度かシルヴィアンの作品のアートワークを担当しています。

考えてみれば、ジャパン後期から写真や油絵などにも挑戦し、解散後、環境ビデオ作品やインスタレーションを始めたシルヴィアンは、この時すでに音楽家の枠を超え、芸術家としてもみごとにその才能を開花させていたのかもしれません。

ポップで軽快な曲がお好きな方にはあまりお勧め出来ませんが、芸術に関心を持たれている方にはぜひ聴いていただきたいアルバムです。

とりあえずは、アマゾンで全曲試聴可能です。
/BLマスター

uknw80 at 15:54|PermalinkComments(1)TrackBack(0)

2006年08月11日

Brilliant Trees/David Sylvian

Brilliant Trees/David Sylvian

ジャパン解散後2年を経て、1984年に発表したデヴィッド・シルヴィアンのソロ第一段がこの「Brilliant Trees」です。

ジャパン解散間際になってシングル「Ghosts」がヒットしたため人気も絶頂の時期であり、ソロ第一段という期待感もあってか、シルヴィアンの作品としてはジャパン時代も含めて英チャートで最高位の4位を記録しています。

このジャケットは発表当時のものと違うので、少し残念な気もしますが、デジタルリマスターものなので、音質の方は多少良くなっていると思われます。

「Brilliant Trees」は、シルヴィアンのソロアルバムの中では最もポップな作品で、ジャパン時代の常にチャートを意識していた時代と、その後のよりアート志向な作品との間に制作されているため、シングルとなり得るようなわかりやすい構成の曲が多いのが特徴です。

しかし、わかりやすいとはいえ、フリージャズ的に参加ミュージシャンの個性を重視し、有機的な構築の仕方をしているようで、ヒットチャートを賑わすようなパターン認識で作られている曲とは趣が違います。

ジャパンの作品と比べると、エレクトロニクスは多用しているもののアコースティックなウッドベースやブラスなどを使い、ジャズ/アートロック寄りなアプローチをしているのでオーガニックなイメージの残るアルバムです。

よく聴けばわかるのですが、ジャパン時代のシルヴィアンの特徴でもあったファルセットを要所要所に織り交ぜて歌う、ある意味セクシーな歌唱法は、解散後の作品では一切聴かれず、良い意味で枯れた感のあるストレートな歌唱法に変わっています。

参加ミュージシャンはかなり豪華で、元ジャパンで実弟のスティーヴ・ジャンセン、リチャード・バルビエリの他、坂本龍一、元カンのホルガー・シューカイ、独特のトランペット音で有名なジョン・ハッセルや、映画音楽なども手掛けるマーク・アイシャム、フリューゲルホーンのケニー・ウィーラー等、個性的な音を出す面子をシルヴィアンが上手くまとめあげているのが実に見事です。

アルバム「Brilliant Trees」のレコーディング風景

1曲目「Pulling Punches」は力強いリフで、手法的にはジャパンの「The Art of Parties」的な雰囲気があり、第1弾シングルに予定されていたものの、ジャパンの延長線上に置かれるという誤解を招かないよう先送りされ、第2弾シングルとなった曲です。

「Pulling Punches」のプロモ映像

2曲目「The ink in the Well(邦題:詩人の血)」は、いきなりジャズライクなアプローチで、ウッドベースとブラシワークのドラムが印象に残る叙情的な名曲で、第3弾シングルとなりました。
プロモーションビデオはシルヴィアンらしさの良く出たモノクロの繊細なもので、ソロ作品のなかでは個人的に一番好きなPV映像です。

「The Ink in the Well」のプロモ映像

3曲目「Nostalgia」はアンドレイ・タルコフスキー監督の映画「ノスタルジア」にインスパイアされて作った曲らしく、静寂感のある重たい暗闇の中に滴る水滴のようにも感じるギターのフレーズが美しい曲で、このアルバムの中では最もアート色が強く感じます。

4曲間の「Red Guitar」は第1弾シングルに選ばれた曲で、スティーヴらしいテクニカルなドラムと、間奏におけるインプロっぽい坂本龍一のピアノが見事な曲で、ヴァージンのコンピなどにも収録されるほどで、シルヴィアンの作品の中では最も有名な曲となりました。
アントン・コービンが監督を務めた意味ありげなモノクロのプロモーション・ビデオも印象に残る、まさしく第一段シングルにふさわしい曲です。
なお、ビデオに登場するおじいさんは、アンガス・マクベインという1930〜40年代に活躍したシュールな肖像を撮る写真家で、彼の作品の中にフローラ・ロブソンという女優を胸まで土に埋めて撮影した写真があったらしく、それをモチーフにしてこのプロモは製作されています。
決して「戦メリ」のデヴィッド・ボウイを意識した訳ではないのです。

「Red Guitar」のプロモ映像

5曲目「Weathered Wall(邦題:嘆きの壁)」は、ジョン・ハッセルの作品に近いアンビエント感あふれる作品で、実におちついた雰囲気の曲です。
間奏部分での国籍不明のボイスは、恐らくホルガー・シューカイのラジオワーク的なもので、ジョン・ハッセルのペット音と非常に良くなじませてあります。
もちろん歌詞的にはかなり宗教色の強い作品となっております。

TV番組での「Weathered Wall」のライヴ映像

6曲目「Backwater(邦題:よどみの中に)」は、このアルバムでは一番実験的なもので、シンセベースの短いインダストリアル系のフレーズが延々に繰り返される中、バックのパッド系の音が徐々に変化するという、いわゆるミニマル・ミュージックの基本的な楽しみ方ができる曲です。

7曲目の「Brilliant Trees(邦題:輝ける樹木)」は、少々大袈裟な言い方かも知れませんが、私が41年生きてきた中で最も好きな落ち着く曲で、私のお葬式にはこの曲で出棺して欲しいと嫁に伝えているほどの曲なんです。
キリスト教的な教会音楽にも聴こえるこの曲は、自問自答するシルヴィアンの宗教的な意味合いの強い歌詞を含み、パイプオルガンのフレーズにもありそうなキーボードをバックに、シルヴィアンのボーカルと、ジョン・ハッセルの国籍不明の不思議な音のメロディーとが掛け合いながら光を見いだしていく様は、私にとっての究極の癒しなのです。
また、ジョン・ハッセルはスタジオ入りすると、まず、あぐらをかいて瞑想をするらしく、そういうイメージからもある種のメディテーション・ミュージックといった趣のある曲です。
歌が終わってからエンディングにかけてのパーカッションは雅楽に使われるもののような音色で実に気持ちの良い音を奏でています。
この曲を聴くと心拍数が徐々に落ち着いて行くような気がするのもわかっていただけるかと思います。

初期ジャパンで作り上げられてしまった「ミーハーお化粧バンド的なイメージ」は、すでにこの時点でどこにもありません。
/BLマスター

uknw80 at 13:54|PermalinkComments(2)TrackBack(0)
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