リマール
2008年04月07日
Never Ending Story/Limahl
みなさんは「レトロフェス [ Retrofest ] 」ってご存知ですか?
これ、80年代に活躍したアーチストが集うフェスティバル形式のイベントで、英国で数年前から行われているそうなんですが、当ブログでも何度か記事中でこのイベントのYouTube映像を紹介していますので、ご存知の方も多いと思います。
CD Journal.comのニュースによれば、今年夏のレトロフェスに出演するカジャグーグー [ Kajagoogoo ] にリマール [ Limahl ] が参加するそうで、久々に5人のオリジナル・メンバーが揃っての演奏を観ることができるようです。(なお、レトロフェス2008には、ボーイ・ジョージ、ポール・ヤング、ハワード・ジョーンズ、ミッジ・ユーロ、ブロウ・モンキーズなどの出演が予定されているそうですが、他の出演アーチストや詳細についてはCD Journal.comをご覧ください。)
前回、オリジナル・メンバーが5人揃ったのは、リマールが脱退してから20年目となる2004年のことで、アメリカのケーブルTVの企画によるたった一度だけの再結成ライヴでした。
残念ながら、以前、カジャグーグーの『White Feather』の記事で紹介したDailymotion(動画サイト)のこの時の映像はすでに削除されており、現在、ネット上で観ることはできませんが、最後のリマールの涙はちょっと感動しちゃいました(この映像が他で見れるところがあれば教えてくださると嬉しいです)。
結局、このライヴがらみのニュースにより、リマールとニック・ベッグス [ Nick Beggs ] の確執をさらけだすことになってしまったので、もう二度とオリジナル・メンバーでの演奏は聴くことができないと落胆していたのですが、いや〜、嬉しいニュースです。
ちなみに、今年2月のスマ・ステーションという番組で、リマール自身が「昔のKajagoogooのオリジナルメンバーでLiveをする」とコメントしていたので、ご覧になった方もおられるかと思います。
SMA Stationでのリマールのコメント映像
最近の彼らの主な活動を紹介すると、カジャグーグーの方は、昨年6月にリマールとドラムのジェズ・ストロード [ Jez Strode ] 抜きの3人で再結成し、カジャグーグー名義とでは23年ぶりのシングルとなる「Rocket Boy」を発表、さらに、この3人にサポート・メンバーを加えて昨年のレトロフェスに出演しています。
「Rocket Boy」の映像(プロモかな?)(ちなみにこれはニック自身の投稿です。)
リマールの方は、ソロ・シンガーとして懐メロ系イベントやTV番組に出演し、2006
年にオリジナルとしては13年ぶりとなるシングル「Tell Me Why」、続いて同年、本日紹介するアルバム『Never Ending Story』を発表。
「Tell Me Why」のプロモ映像
いずれも近年の80'sブームのあおりを受けてのことか、意欲的な活動が増えてきただけに、再結成を望む声が大きくなって来るのも当然の流れなのかも知れませんね。
日本でもぜひお願いしたいところです。
さて、今日紹介する『Never Ending Story』というアルバム、これが実に興味深い内容なんですよ。
一応、リマールのベスト盤に最新シングル「Tell Me Why」が収録されているという形にはなっているんですが、まず、この新曲以外は全曲フル・リ・レコーディング、つまり、演奏から歌まですべてが新しく録り直されています。
しかも、驚くなかれ、リマールのソロ名義の「Never Ending Story」「Too Much Trouble」「Only For The Love」や、リマール在籍時代のカジャグーグーの曲「Too Shy(邦題:君はToo Shy)」「Hang On Now」「Ooh to Be Ah」などに混じって、リマール脱退後のカジャグーグーのヒット曲「Big Apple」「Turn Your Back on Me」「Lions Mouth」「Shouldn't Do That」までもが収録されているんですよ。(注:「Only For Love」がなぜか本作では「Only For The Love」となっていますが同じ曲です。)
「Never Ending Story」のプロモ映像
「Too Much Trouble」のプロモ映像
「Only For Love」のプロモ映像
「Too Shy」のプロモ映像
「Hang On Now」のプロモ映像
「Ooh To Be Ah」のプロモ映像
「Big Apple」のプロモ映像
「Turn Your Back On Me」のプロモ映像(USバージョン)
「Lions Mouth」のプロモ映像
「Shouldn't Do That」のプロモ映像
原曲は、仲が悪いと言われていたニックが歌っており、リマールは一切からんでいない曲だというのに、その曲をリマールが自分名義のアルバムに自らが歌って収録しているんです。
これを「節操がないなぁ」「えげつないことするなぁ」「喧嘩売ってるんとちゃうか」とみる方もおられるかも知れませんが、見方を変えればニックに対するリマールからのラブコールとみることはできないでしょうか。
もし、そうだとすれば、このアルバムの発表が再結成のきっかけのひとつとなっているのかも知れません。
ま、個人的には、もし、2ndアルバム以降もリマールが歌っていたとするとこんな感じだったんだろうなと興味深く聴くことができました。
個人的にリマールの歌声が大好きで、ニックのこもった高い声が苦手だっただけに、この録音は実に嬉しく感じます。
いや、ニックが嫌いなわけではなく、ベーシストとしての彼のセンスとテクニックには惚れ込んでいます。
それだけに、オリジナル・メンバーでの再結成を望んでいたわけですから。
ただ、個人的にはニックの声が好みに合わなかっただけなんです(笑)。
残念ながら、アマゾンでは本作を試聴することができませんので、簡単に解説をさせていただきますと、新曲「Tell Me Why」以外の収録曲は、基本的にオリジナルに忠実に制作されています。
ただ、悪く言えば、リズムマシンやシンセの音がチープだったり、空間処理の奥行き感が足りなかったり、無理矢理なフェードアウトで終わっていたりと、多少、DTM(デスク・トップ・ミュージック)的なお手軽感を感じてしまいます。
また、演奏しているメンバーのクレジットがないため、誰が演奏しているかはわからないのですが、ベースはもちろんニックが弾いているわけではないでしょう。
しかし、昔のヒット曲を歌うシンガーにありがちな、メロディーをいじったり、”タメ”や”ひっぱり”を入れたりすることはほとんどないので、そういう意味での気持ち悪さはありません。
そして、何よりリマールの声がほとんど老けていないのが驚きです。
若干、高いキーが苦しそうに感じる部分もありますが、滑らかなメロディーの動きは以前より気持ちが良いくらいです。
そういう意味で非常に聴きやすい「リ・レコーディング・アルバム」です。
もちろん、初めてリマール、カジャグーグーをお聴きになる方には本作ではなく、オリジナル音源のベスト盤『The Very Best of Kajagoogoo』の方をおすすめしますが、当時カジャグーグーやリマールのファンだった方にとっては本作もかなり楽しめるアルバムなのではないでしょうか。
ところで、昨年のレトロフェスでのカジャグーグーは、ニックがリマールのボーカル・パートを兼任して「Too Shy」を演奏しましたが、今年はリマールが2nd以降の曲を歌ってくれることでしょう。
ニックのベース+リマールのボーカル、私にとっては、まさに待望のステージです。
☆昨年のレトロフェスでのカジャグーグーの映像
「Too Shy」のライヴ映像
「Big Apple」のライヴ映像
「Lions Mouth」のライヴ映像
「Turn Your Back On Me」のライヴ映像
「Shouldn't Do That」のライヴ映像
☆近年のリマールの映像
昨年のTV番組出演時の「Too Shy」の映像
一昨年の80'sフェスでの「Never Ending Story」のライヴ映像
また、今年6月にリマールとジェズ抜きのカジャグーグーとして発表する予定だった新譜も、リマールが参加の上発表されることになるようです。
恐らく、ジェズの参加も間違いないでしょう。
当然、発表は予定より遅れるでしょうが、ファンにとっては嬉しいニュースですよね。
ちなみに、ウィキによると、この再結成はレトロフェスの主催者Bradley Snellingがオリジナルメンバーでライヴに出演する様に働きかけた結果なんだそうで、現在、彼はカジャグーグーのマネージャー役を務めているのだとか。
さすがにライヴのためにスコットランドまで足を運ぶことはできませんが、できれば、SMA Stationでのリマールのコメント通り、日本でもライヴをお願いしたいところです。
日本各地のドームで80'sレトロフェスなんてのも良いかも知れませんよね(笑)。
とりあえず、その日が来るまで本作を聴きながら待つとしましょう。
いや〜、夏以降のYouTubeと新譜が楽しみです。
/BLマスター
2007年06月26日
White Feathers/Kajagoogoo
先日、リマール [ Limahl ] について書かれた外国のBBSに、当ブログの私の記事『Best of LIMAHL』を紹介して下さった方がおられました。
アクセス解析してみれば、そのBBSを通じて国外からも大勢の方に訪れていただいたようで、非常に嬉しく感じています。
そんなわけで、今日は調子に乗って、1983年に発表されたカジャグーグー [ Kajagoogoo ] のデビュー・アルバム『White Feathers(邦題:君はToo Shy)』を取り上げたいと思います。
本作『White Feathers』は2004年に発表されたリマスターものCDで、元々の10曲に加えて、リマール在籍時の貴重なリミックスや日本未発表の曲、初CD化の音源など、合計8曲ものボーナス・トラックを追加したもの。
音質も、当然良くなっているはずですが、これだけのレア・トラックを収録してこのお値段は本当にお買い得ですね。
下に当時のプロモとライヴ映像をリンクしておきましたが、アマゾンに入れば全曲試聴可能ですので、興味を持たれた方は、ぜひ、ボーナス・トラックだけでも聴いてみて下さい。
「Too Shy」のプロモ映像
「Hang On Now」のプロモ映像
「Ooh to Be Ah」のプロモ映像
「Kajagoogoo」のライヴ映像
実は、当時発売された『White Feathers』の日本盤のジャケットは、上にある写真とまったく違いました。
メンバー5人のにっこり微笑んだ顔がアップで並び、まるで当時の「明星」の表紙に並ぶアイドルのような写真だったのです。
ちなみにこちらがそのジャケットの日本盤です→『君はToo Shy』
つまり、日本では本国イギリス以上に、始めからミーハー・アイドル路線で売ることを目的としていたわけですね。
当時の私は、歌詞対訳やライナー・ノーツが読みたかったため、基本的には日本盤を購入することにしていたのですが、さすがにこのジャケットには気恥ずかしさを覚え、中身が同じなら…と、シンプルなジャケットの輸入盤を購入したことを覚えています(笑)。
しかし、内容は決してアイドル路線などではなく、母体となったアール・ヌーボー [ Art Nouveau ] のファンク路線と、リマールの元々持っていたAORっぽい側面、そして、当時最先端の電子楽器が合わさったダンサンブルなポップスなんですね。
カジャグーグーと前後してデビューした、ブルー・ズー [ Blue Zoo ] やサヴァ・サヴァ [ Cava Cava ] なども同じようにアイドル路線として売り出されてましたが、カジャグーグーに関しては、どこかに寄せ集め的な感覚は残るものの、音楽的基礎がしっかりしていた分、他のバンドとは根本的に違っていました。
このようなアイドル的な売り方の風習は、ビートルズ〜ベイシティ・ローラーズ〜デュラン・デュランという具合に形を変え、音楽的な背景を無視して顔だけで聴くという、オリコン的な意味でのメイン・ストリームの一つの流れを築きあげていたように思います。
それこそ、音楽誌ではなく「明星」「平凡」などの日本のアイドル雑誌に取り上げられる美形・男前バンドだったわけなんですが、そういった売り方が日本でのセールスに繋がっていたことは事実で、おかげで来日公演や編集盤などが楽しめたわけですから、ファンにとっては悪いことばかりではありません。
とはいえ、アイドル化してしまったがために、本来聴いてもらいたかった音楽ファンが遠のいたことも事実で、このことが後の音楽活動の足かせになっているようにも感じます。
これは、日本で言えばちょうどC-C-Bのポジショニングが似ていて、レコード会社の戦略に乗っかったおかげでドラマのテーマ・ソング曲「Romanticが止まらない」が爆発的に大ヒットしたものの、その後はイロモノ扱いを受けていますよね。
デビュー当時は、ビーチ・ボーイズをひねってココナッツ・ボーイズと名乗り、メンバー全員が細かい演奏をしながらボーカルを取れるほどのテクニシャン揃いで、絶妙のコーラス・ワークを聴かせてくれていたにも関わらず、一般的にはこの扱いなのです。
解散した今でも、メンバーのキャリアには元C-C-Bという看板がつきまとい、いくら玄人ウケのする音楽を演ったとしても、それをミーハー視する玄人にはなかなか受け入れられない。
結局、そういうことだと思うのです。
カジャグーグーに関してもそれは同じこと。
たまたま、当時、アイドル的人気を誇っていたデュラン・デュランのキーボーダー、ニック・ローズ [ Nick Rodes ] の初プロデュースという肩書きと、カラフルな髪型などのせいで、デュラン・デュランの弟分扱いのイロモノ・ミーハー・バンド的なポジショニングでのデビューとなってしまったのですが、曲作り、演奏技術などの点ではデュラン・デュランを明らかに上回っており、オリジナル・メンバーのまま、あと3〜4年の間でも続けることさえ出来ていれば、ジャパン [ JAPAN ] のように、少しは正当な評価を受けることが出来たのかも知れません。
とはいえ、今や、仙人のような音楽を作っているデヴィッド・シルヴィアン [ David Sylvian ] ですら、昔からのキング・クリムゾン・ファンにはミーハー扱いされることがあり、まだまだ正当な評価を受けていないのが現実です。
そう考えると、一度ついてしまったミーハーなイメージを拭い去るのはかなり難しいことなんですよね。
そもそも、ニック・ローズがプロデュースするという話は、デュラン・デュランのボーカリスト、サイモン・ル・ボンのガールフレンドがリマールと知り合いだったそうで、自らのキャリアのために新人バンドのプロデュースをやりたがっていたニック・ローズを紹介されたことがきっかけとなっているそうです。
ニック・ローズにとっては、プロデュースという初めての仕事を、デュラン・デュランのプロデューサーであったコリン・サーストン [ Colin Thurston ] と共同で行うことで、大ヒット作品に関わることができたのですからラッキーだったでしょう。
しかし、ニック・ローズの名前のおかげでカジャグーグーが日の目を浴びることができたのも事実なわけで、世にゴマンと溢れる、「技術はあってもチャンスのないバンド」に比べれば、彼らはツイていたのかも知れません。
ところで、先日、YouTubeで興味深い映像を発見しました。
ニック・ベックス [ Nick Beggs ] のテクニックのスゴさを証明する映像です。
まずはこの映像をご覧下さい。
「Nick Beggs jammin' Robo slob - 2007」のデモ映像
今と昔ではずいぶん雰囲気が変わってしまいましたが、ニックが弾いているのは、チャップマン・スティックという楽器で、早い話が、ギターとベースの弦を一緒に板の上にセットし、両手でハンマリング奏法(指で弦を叩いて音を鳴らす奏法)をすることで、通常のギターやベースでは不可能なピアノのような広い音域と音数を発することができるというもの。
この難しい楽器で、ものすごい音数を発しているにもかかわらず、本人は至って涼し気な表情なのが驚きです。
チャップマン奏者としては、キング・クリムゾンのトニー・レヴィンやトレイ・ガン、日本では元パール兄弟のバカボン鈴木などが有名ですが、ニックも彼らに負けず劣らずのテクニシャンで、しかも、これを弾きながらリード・ボーカルまで取ってしまう腕前は実に見事です。
個人的にはニックの声があまり好きにはなれないのですが、彼の演奏技術とセンスには惹かれてしまいます。
ついでに、プロモなので実際に映像の中で演奏しているわけではありませんが、昔の映像でもチャップマンを弾きながら歌っている映像がありましたので紹介しておきますね。
「Turn Your Back On Me」のプロモ映像
あと、彼らの近況ですが、つい先日(今年6月)、ニック・ベッグス、スティーヴ・アスキュー [ Steve Askew ] 、ステュワート・ニール [ Stuart Neale ] の3人で、カジャグーグーとしてアメリカのレコード会社と契約したそうで、昨日(6月25日)「Rocket Boy」というタイトルのシングルを発表しました。
カジャグーグー名義では実に23年ぶりのニュー・シングルということになりますね。
なお、ドラムのジェズ・ストロード [ Jez Strode ] の参加はなかったようです。
「ROCKET BOY」の映像
(ニックの部屋でのプライベート・ムービーのようにも見えますが、これってプロモ?)
一方、リマールの方は、昨年ニュー・シングル「Tell Me Why」を発表、その後、過去に関わった曲を全曲新たに新ボーカル、新ミックスで録り直した『Never Ending Story』という、17曲入りのベスト盤的なアルバムを発表し、これに「Tell Me Why」も収録しました。
また、ライヴに関しても精力的に行っているようで、嬉しい限りです。
「Tell Me Why」のプロモ映像
昨年の80 Festivalでの「THE NEVERENDING STORY」のライヴ映像
なお、カジャグーグーのオリジナル・メンバーによる再結成は、アメリカのケーブルTV局の企画で2003年の10月に一度だけ行われているのですが、残念ながらYouTubeではその時のライヴ映像は全く発見できませんでした。
DVDで発売していただくと嬉しいのですが・・・。
デュラン・デュランもオリジナル・メンバーで活動を再開したことですし、できれば、カジャグーグーもそろそろ仲直りをして、もう一度、この絶妙な組み合わせで新譜を発表していただきたいものです。
/BLマスター
追記:
この記事をご覧下さったcolaさんから、なんと、2004年の再結成映像のURLを教えていただきました。
colaさんのご好意に感謝致します。
ちなみに、1の方は登場から「Too Shy」、2は「Too Shy」の続きから「Hang on Now」です。
本当に念願の映像でしたので、イントロ部分で鳥肌が立っちゃいました(笑)。
最後でリマールがちらっと涙を流しているのが印象的です。
2004年のカジャグーグーの再結成映像1
2004年のカジャグーグーの再結成映像2
ところで、ステージでリマールとニックが抱き合うシーンがあるんですが、仲直りはできないもんなんでしょうか?
2006年10月12日
Best of LIMAHL
リマール [ LIMAHL ] はご存知、アイドルミーハーバンドのレッテルを貼られたカジャグーグー [ Kajagoogoo ] のボーカリストです。
リマールの本名はクリストファー・ハミル [ Christopher Hamill ] 、芸名の(LIMAHL)は(HAMILL)のスペルを並べ替えたものだそうです。
彼は1958年に英国の炭鉱町ランカシャー州ヴィガンのあまり裕福ではない家庭に生まれ、若いうちからバンド活動を行い、なぜかヘア・ドレッサーを目指し高校を中退してロンドンへ上京しました。(ヘア・ドレッサーになるのはすぐに諦めているようです。)
ロンドンでは劇場でコーラスボーイなどのバイトを経験しながら、約3年間舞台の仕事に携わり、アガサ・クリスティー原作の芝居や、「ゴッド・スペル」というミュージカルなどにも出演、その間もいろんなバンドに出入りしては曲を書き貯めていたといいます。
どうしてもバンドがやりたかったリマールは、メロディー・メーカー誌に「ボーカルやりたし、バンド求む。」的な広告を出し、元々バカテク(すごく上手いという意味で)のファンクバンドでインディーズで作品も発表していた「アール・ヌーボー」というバンドが、売れるバンドにするためにボーカリストを公募中で、バンドの方から連絡をとり、ちょっとしたオーディションの後、意気投合しそのままボーカリストとして迎えられたそうです。
もちろん、そのバンドとは後のカジャグーグーのことで、連絡をしたのはニック・ベッグスです。
これが1981年のこと。
なお、バンド名は、翌年EMIとの契約の際に、プロデューサーを務めたデュラン・デュランのニック・ローズの提案により「カジャグーグー」と改名されました。
そもそも、なぜカジャグーグーがミーハーアイドルバンド扱いになってしまったのかは「The Very Best of Kajagoogoo」のレビューのところにも書かせていただきましたが、完全にレコード会社の売るための仕掛けだったんです。
日本でも「ロマンティックが止まらない」で有名な「C.C.B.」が似たような売り出し方をされ、一発屋的に消えてしまいましたが、どちらのバンドのメンツもかなりの楽器の達人で、マニアックなサウンドでは売れないからと、レコード会社の仕掛けに素直に乗っかってしまったのです。
カジャグーグーの場合は、そこにビッグネームの「デュラン・デュランのニック・ローズがプロデュース」という付加価値がついていたのですから気持ちもわかります。
しかし、売れる売れないは別にして、テクニック的には達人揃いで、プロデュースしているニック・ローズの方がはるかに劣るほどだったのではないでしょうか(ファンの方ごめんなさい。)。
その後、カジャグーグーは、ニック・ローズの名前のおかげもあってか、83年のデビューシングル「Too Shy(邦題:君はTOO SHY)」がいきなりの大ヒット、続くアルバム『White Feathers(邦題:君はTOO SHY)』、シングル「Ooh To Be Ah」「Hang On Now」もかなりのヒットとなり大成功、しかし、音楽性の違いから2ndアルバム発表前にリマールはクビになり、EMIとソロ契約を結ぶことになったのです。
これは、カジャグーグーのデビューからわずか1年足らずのことでした。
ちなみに私が大好きなのは「Hung On Now」で、リマールのソロでのミディアムテンポの楽曲はうまくこの流れを引き継いでいて好感が持てます。
「Too Shy」のプロモ映像
「Hung On Now」のプロモ映像
ボーカルをクビにしたカジャグーグーは本来のファンク指向に戻そうと必死になったものの、ミーハーバンドのレッテルを剥がすことは出来ず、ニック・ベッグスの好き嫌いの分かれる声や、時代にマッチしない音楽性のため人気は急降下。
一方、リマールは、脱退したその年の10月に、ソロで第一段シングル「Only For Love」、翌84年5月に「Too Much Trouble」、9月にソロとしての1stアルバム『Don't Suppose』をそこそこヒットさせ、11月には彼の代表作とも言える映画ネバー・エンディング・ストーリーのテーマ曲「Never Ending Story」の大ヒットで再びスターダムに返り咲きました。
「Only For Love」のプロモ映像
「Too Much Trouble」のプロモ映像
「The NeverEnding Story 」(Non movie Version)のプロモ映像
「Love in Your Eyes」のプロモ映像
ちなみに、このアルバム『Don't Suppose』は、ジョルジオ・モロダー [ Giorgio Moroder ] のプロデュース曲「Never Ending Story」を除いて、全ての曲をリマール自身が作詞・作曲しており、ファッション[ FASHION ] というファンク系NWバンドのディー・ハリス [ Dee Harris ] と、カジャグーグーの1stでエンジニアを担当したティム・パーマー [ Tim Palmer ] が共同プロデュース、ストリングスアレンジに関してはなんと、後のアート・オブ・ノイズの才女アン・ダドレー [ Anne Dudley ] がABCに続いて担当しています。
ディー・ハリスのファンク指向なベースや、ティム・パーマーのドラム(シモンズという6角形のエレクトリックドラム)、アン・ダドレーのストリングスアレンジのおかげで、本家カジャグーグーよりもこちらの方がカジャグーグーらしい気がするくらい良く出来ていました。
しかし、この後、86年にジョルジオ・モロダーのプロデュースで2ndアルバム『Colour All My days』を発表するも、カジャと同じくミーハーバンドの元ボーカルというレッテルを剥がすことができずに不発に終わり、EMIとの契約も打ち切られました。
さらに、「Too Shy」の新バージョンを収録するという約束のもと、ようやく契約にまでこぎ着けたドイツのBellaphonと日本のJimcoから92年に発表された3rdアルバム『Love Is Blind』も不発、以降はしばらく姿を見せることはありませんでした。
ちなみに『Love Is Blind』に収録されている「Too Shy '92」は当時流行のグランドビート系のアレンジで、今聴くとちょっと気恥ずかしくなってしまいます。
その後、2000年頃からの英国での再結成ブームに乗り、カジャグーグーも再結成されたそうですが、その際の会見ではリマールが泣きながらインタビューに答えていたとか・・・。
さぞかし苦労したんでしょうから、泣けてくるのもわかります。
結局、カジャグーグーとしてのニューアルバムの発表はなく、懐メロコンサート的な1日限りのライヴで終わってしまったようですが、今年に入って、リマールはソロ名義でシングル「Tell Me Why」をリリースし、TV出演やライヴなども精力的に行っているようです。
今年発表した「Tell me why」のプロモ映像
2004年のTV番組での「Never Ending Story」のライヴ映像
最近のTV番組での「Too Shy」のリマールソロライヴ映像
話が長くなってしまいましたが、このリマールのベスト盤はジャケットの趣味こそ悪いものの、彼のやさしく気持ちの良い歌声と、ソングライターとしてのすばらしさを再認識するにはうってつけの激安お買い得盤です。
興味を持たれた方はぜひ聴いてみて下さい。
決してミーハーではないことがわかっていただけると思います。
/BLマスター
追伸:
この記事で紹介していたベスト盤は、プレミアがついているにも関わらず、いつの間にか売り切れ。
しかし、アクセス解析で調べてみれば、まだまだ大勢の方が探しておられるようです。
そこで、もう一度調べてみたところ、2007/6/26現在購入することの出来るリマールのベスト盤が他にもありましたので加えて紹介させていただきます。
なお、カジャグーグー時代の曲を収録していないアルバムや、本来、ニック・ベッグスが歌っているはずのカジャグーグーの曲をリマールが歌い直したバージョンを収録したアルバム、昨年、新ボーカル、新ミックスで発表されたアルバムもございますので、それぞれ収録曲をご確認の上、手に入れて下さい。
いずれも品切れの可能性がありますので、探しておられる方は早めに手に入れておいて下さいね。
2006年06月23日
The Very Best of Kajagoogoo
カジャグーグーってミーハーアイドルバンドじゃん・・・などどバカにしてはいけません。
今、聴き直せばご理解いただけるものと私は信じています(笑)。
笑われないように、まず、このバンドの結成からお話しすることにします。
彼らは元々、リマールが入るまではバカテクのファンクバンドとして活躍していたのですが、そんなバンドが80年代に売れるはずもなく、新聞にボーカリスト募集広告を出したところ、同じくシンガーとしてテクニックはあるものの売れなかったリマールが応募し合格となったわけです。
その後、デビューアルバムを制作する際にレコード会社側の意向で、当時売れまくっていたデュランデュランのキーボーダー/ニック・ローズをプロデューサーとして起用することになり、ご存知のようにミーハーバンドとして一時期バカ売れとなったわけなんです。(きっとこれがそもそもの原因なんです。)
レコード会社としては思惑通り、バンドメンバーからすれば本当にやりたいことからは遠ざかる一方で、イメージを振り払うためにリマールをクビにし、バンド名もカジャと改名するも人気は急降下、一方、リマールはソロ第一段はそれなりに売れ、ご存知「ネバーエンディングストーリー」で大当たりするも、その後は不発続きでした。
最近になって、アメリカのケーブルTVの企画で一日限定で再結成されたようですが、その際の会見ではリマールが泣きながらインタビューに答えていたそうで、もらい泣きした人も多かったとか・・・。
「Too Shy」「Never Ending Story」はもちろんのこと、「Hang On Now」「Only For Love」「Too Much Trouble」「Tar Beach」など、実はミーハーバンドと笑っていられない名曲ぞろいのKajagoogoo&Limahl、このベスト盤でご理解いただけると思います。
アマゾンで全曲試聴可能ですので、バカにせずもう一度聴いてやって下さい。
/BLマスター