ロディーフレーム

2007年06月04日

Stray/Aztec Camera

Stray/Aztec Camera

本作『Stray』は、アズテック・カメラ [ Aztec Camera ] の1990年に発表した4thアルバムです。

前作『Love』(1987年) では、いわゆる「ネオアコ」路線から大きく飛躍し、アメリカの著名アーチストらを迎えて、ソウル・ミュージックやブラック・ミュージックを基調としたサウンドを展開しています。

前作の中に「ネオアコ」らしさを見つけるとするなら、ロディ・フレイム [ Roddy Frame ] らしいメロディー・ラインと、ネオアコ独特ともいえる音色のリード・ギターのみで、当時流行していたブルー・アイド・ソウル的なアプローチをロディなりのセンスで実践していました。

デビュー当時からアズカメの位置した、日本でいうところの「ネオアコ」路線から逸脱したとはいえ、ブラックやソウルという一貫したテーマの元にロディの個性が被せられた、まとまりのある作品であったと言えるでしょう。


しかし、それから2年半という期間をおいて発表された本作には、一貫したテーマを見いだすことは出来ません。

まず、1曲目からいきなりスローでムーディーな「Stray」が選曲されているのですが、ムリヤリ過去の作品と結びつけるとするなら『Knife』の最後に収録された美しいスロー・バラード「Knife」でしょうか。
どちらかと言えば、アルバムの中盤〜最後に収録されそうな曲と言えますね。

続いて、2曲目は、最近のパワー・ポップ的なアプローチの「The Crying Scene」、3曲目は少々ハードで重たいイメージの「Get outta London」、4曲目にはウェス・モンゴメリーを意識したという、とんでもなくジャジーな名曲「Over My Head」、そこから一転して、5曲目には、元クラッシュ [ The Clash ] のミック・ジョーンズ [ Mick Jones ] をゲストに迎え、まるでビッグ・オーディオ・ダイナマイト [ Big Audio Dynamite ] のバッキングでロディ・フレイムが歌っているかのような「Good Morning Britain」、6曲目は全盛期のキッスを思わせるバッキングの「How it is」、7曲目は唯一ネオアコ臭さの残る「The Gentle Kind」、8曲目ではまたしてもジャジーなフレーバーを散りばめた「Notting Hill Blues」、ラストはギター1本による弾き語りで、ネオアコと呼ぶにはフォーキー過ぎる「Song for a Friend」。

以上のような非常にバラエティーに富んだ内容で、まるでロディがボーカルをとっているコラボ作品をまとめた編集盤のような趣のアルバムです。

「Good Morning Britain」のプロモ映像

2作目『Knife』までは、バンド形式であったのに対し、前作『Love』ではそれを解体、アメリカのセッション・ミュージシャンを起用したアメリカ録音を行っており、本作では再び英国の新顔セッション・ミュージシャンを集め、録音からミックス・ダウンまで、全てをホーム・グラウンドであるイギリスで完結させています。

ちなみに、本作のメンバーはロディ・フレイム [ Roddy Frame ] (V,G)、ポール・パウエル [ Paul Powell ] (B)、フランク・トントー [ Frank Tontoh ] (D)、ゲイリー・サンクチュアリー [ Gary Sanctuary ] (Key)。

前作の好調な売り上げを考えれば、もう少しお金をかけた作品になっても良さそうなものですが、あえて原点に帰るかのようにメンバーに新顔を起用、プロデュースに関しても、前作で数曲エンジニアを担当していたエリック・カルヴィ [ Eric Calvi ] とロディ本人の共同名義であり、ゲストのミック・ジョーンズを除けば、特に参加アーチスト的なウリはなく、手作り感覚すらも感じさせます。

考えてみれば、アルバム・タイトルの『Stray』とは、「迷う、さまよう」といった意味があり、「Stray Cats」=「野良猫」のように使われます。

本作のタイトル『Stray』と、この内容をそのまま安易に解釈すれば、ロディ自身の「迷い」がダイレクトに表現されたものであり、「迷い」自体をテーマにしたと考えることも出来るわけですね。

何だか、「ポリシーがないというのがポリシー」みたいな話ですが、正直言って、当時26歳という、この頃のロディ・フレイムの「迷い」がストレートに表現されている作品だと思います。

事実、日本盤のライナーに載っていたロディのインタビューによれば、
「新作(本作)には方向性なんてないよ。とっちらかってるだけだ(笑)。今回は自分でプロデュースもしたから、本当に好き勝手やったって感じだね。ウェス・モンゴメリーを聴いたら、ジャズの曲をやる、ストーンズを聴いたら、ロックン・ロールをやるって感じさ。意図的なものじゃなくて結果的にそうなっただけなんだよ。マーケティングとしては良くないかもしれないけど、かといって他にどうしようもないからね。とりあえず、今のロディ・フレイムはこれです。ってわけなんだ。」
と語られています。

悪く言えば、散漫でまとまりのない作品なのかも知れませんが、メロディー・ライン自体はロディ自身の作詞・作曲によるいつもの延長線上にあるアズテック節であり、バッキングに様々な試行が凝らされているだけなんですね。

そういう意味では、良くも悪くも、紛れもなくアズテック・カメラの(ロディ・フレイムの)作品です。

個人的には1枚の作品として通して聴く価値は感じませんが、アルバム・コンセプトに縛られていない分、1曲ごとにその時の気持ちが完結されており、気楽に聴くことができます。

つまり、コンセプチュアル・アルバムを聴く時のような気構えは必要ありませんし、通して聴かないと意味を成さない曲(単体では意味を成さない曲)がないということになります。

ロディ曰く、「結果的にそうなっただけ」なのでしょうが、実に割り切った発想の聴きやすいアルバムです。
1st『High Land, Hard Rain』でアズテック・カメラのファンになった方は、2nd『Knife』前後で見切りをつけてしまっていることが多いと思うのですが、本作は、どちらかというと、ネオアコ・ファンではなく、これ以降のギター・ポップ好きの方にお勧め出来るアルバムですね。

もちろん、ロディ個人のファンの方は要チェックです。

上に紹介した日本盤では試聴はできませんが、輸入盤の中古(こちら→)『Stray』で全曲試聴可能です。

まずは、一度聴いてみられてはいかがでしょうか?
/BLマスター

uknw80 at 17:50|PermalinkComments(4)TrackBack(0)

2007年05月16日

Knife/Aztec Camera

Knife/Aztec Camera

本作『Knife』は、1984年に発表されたアズテック・カメラ [ Aztec Camera ] の2ndアルバムです。

前作の紹介の時にも書いたのですが、アズテック・カメラというグループは、ロディ・フレイム [ Roddy Frame ] (V,G) 以外のメンバーは実に流動的で、結成当時は、ロディに加えて、アラン・ウェルシュ [ Alan Welsh ] (B)、デイヴ・マルホランド [ Dave Mulholland ] (D)という3人組でしたが、80年8月にはアランが脱退、代わってキャンベル・オウエンス [ Campbell Owens ] (B)が加入し、このメンバーで同年の暮れにグラスゴーのインディ・レーベルであるポストカードと契約、翌年、「JUST LIKE GOLD」「MATTRESS OF WIRE」という2枚のシングルを発表しています。

しかし、82年にはデイヴが脱退し、デイヴィッド・ラフィ [ David Ruffy ] (D),クレイグ・キャノン [ Craig Gannon ] (G)が加入、その後クレイグはすぐに脱退し、バーニー・クラーク [ Bernie Clarke ] (K)が加入、この時点で4人組となったアズテック・カメラはラフ・トレード [ Rough Trade ] と契約し、83年に1stアルバム『High Land, Hard Rain』を発表。

その後、バーニーが脱退し、代わって元ジョセフK [ Josef K ] のマルコム・ロス [ Malcolm Ross ] (G)が加入、英ワーナーに移籍し発表したのが本作『Knife』で、発表に合わせて行われたツアー(85年には初来日公演も行われました)まではこのメンバーでのバンド編成をとっているものの、3rdアルバム『Love』以降は、実質ロディ・フレイムのソロ・プロジェクトとなり、7thアルバムからは、ロディ・フレイムの個人名義でアルバムを発表しています。

脱退したメンバーのその後としては、マルコムがオレンジ・ジュースに、グレイグが、ザ・ブルーベルズ〜ザ・スミス、また、デヴィッド・ラフィはアズテック・カメラの影響を大きく受けた日本のグループ、フリッパーズ・ギターの2ndアルバム『カメラ・トーク』に2曲だけ参加しています。


デビュー・アルバムである前作『High Land、Hard Rain』では、素朴でナイーブな2、3分程度の尺の小曲が多く、また、空間処理なども非常にシンプルであったのに対して、本作では1曲を除いたすべての曲が4分以上という尺で、空間処理的にもプロ・ミュージシャンらしい奥行きを感じる洗練された楽曲になっています。

当時の同世代の若者にかなりの支持を得た『High Land、Hard Rain』の最大の魅力がこの素朴さだとするなら、その部分は本作ではやや抑えられ、代わりにアーチストとして立派に成長したロディ・フレイム(当時20歳)を見つけることができるでしょう。

むしろ、アズテック・カメラのアルバムを全て聴いてみれば、『High Land, Hard Rain』の方が異端なイメージを抱くことになるかも知れません。

私が思うに、『High Land、Hard Rain』は、結成時やインディーズ時代に作った楽曲の寄せ集めで、雰囲気の合う楽曲をまとめたものだったのではないでしょうか。

もちろん、ネオアコの代表作となるほどの大傑作であることは間違いありませんが、デビュー前に書き貯めたかなりの数の曲のストックの中から、ベスト・ワークをまとめたのだとすれば、飾り気のないシンプルな作品であるだけにそれも納得がいきます。

極端に言うなら、プロ・アーチストとしてテーマを決めて1枚のアルバムに向き合ったのは、本作『Knife』が最初であり、本来のメジャー・デビュー作品ともとれるというわけです。(ちなみに、ラフ・トレードは大手とはいえ、一応インディーズですが。)

実際、『High Land、Hard Rain』のプロデュースは、当時のメンバーであったバーニー・クラークがジョン・ブランド [ John Brand ] と共同で行うという手作り感覚溢れる作品であるのに対し、本作ではダイア・ストレイツ [ Dire Straits ] のマーク・ノップラー [ Mark Knopfler ] が担当しており、その点だけを見ても立派にメジャー作品の素質を備えています。

また、マーク・ノップラーという人選が功を奏したのか、いわゆる日本で言うところのネオアコ感覚は強くなっており、前作でも使われていたラテンの要素を含むファンカラティーナ的パーカッションをより大胆に、さらにホーンセクションまで導入した「Still on Fire」や「All I Need Is Everything」というポップでキャッチーな曲を生んでいます。

「Still On Fire」のプロモ映像(衣装がいかにも80年代です。笑)

もちろん、作詞作曲は全曲ロディが行っているので、メロディー・ラインはいかにもアズテック・カメラ的ですが、「All I Need Is Everything」では、どこかダイア・ストレイツ的な懐かしいフレーバーも感じさせてくれます。

「All I Need Is Everything」のプロモ映像(おおっ、美少年!)

さらにこれらの曲に混じって、1stの面影の残るシンプルでメランコリックな「Just Like the USA」や「Backwards and Forwards」、アコギ1本で演奏した「Birth of the True」などが収録されているところも嬉しいところです。

昨年のライヴでの「Birth of the True」の映像

あと、マーク・ノップラーが連れてきたのでしょうか、この翌年、ダイア・ストレイツにキーボーダーとして正式加入するガイ・フレッチャー [ Guy Fletcher ] がゲスト参加しているところも面白いですね。
なお、ガイ・フレッチャーは後期ロキシー・ミュージックブライアン・フェリーの作品でも活躍しているベテラン・キーボーダーです。
実は、ネオ・アコースティックというジャンル名は日本でしか通用しないのですが、結局のところ、フォーク+ロック+ラテンが主軸になっているので、そう言う意味では前作よりも本作『Knife』の方が充実している感はありますね。

しかし、ネオアコを、素朴でシンプルなギター・ポップと捉えるなら、前作『High Land、Hard Rain』の方がしっくりきます。

とはいえ、どちらも紛れもなくロディ節の効いたネオアコの代名詞的存在、アズテック・カメラの傑作であることは間違いありません。

なお、最新作は昨年発表されたロディ・フレイム名義での『Western Skies』、アズテック・カメラの1stから数えて9作目となりますが、今でも透明感のあるあのボーカルは健在で、今年43歳とは思えないキレイな歳のとり方をしています。

こういうところだけは私も同い年として見習いたいものです。
/BLマスター

uknw80 at 18:16|PermalinkComments(8)TrackBack(3)

2006年09月13日

High Land, Hard Rain/Aztec Camera

AZTEC CAMERA 1st

アズテック・カメラ(Aztec Camera)は、スコットランドのイースト・キルブライド出身のロディ・フレイム [ Roddy Frame ](V, G)を中心とした3人組として1980年に結成されました。

ロディ・フレイムの他のメンバーは実に流動的で、結成当時は、アラン・ウェルシュ(B),デイヴ・マルホランド(D)という3人組でしたが、80年8月にはアランが脱退、代わってキャンベル・オウエンス(B)が加入しました。
このメンバーで同年の暮れにグラスゴーのインディ・レーベルであるポストカードと契約し、翌年、「JUST LIKE GOLD」「MATTRESS OF WIRE」という2枚のシングルを発表しています。

しかし、82年にはデイヴが脱退し、デイヴィッド・ラフィ(D),クレイグ・キャノン(G)が加入、そして、クレイグはすぐに脱退し、バーニー・クラーク(K)が加入、4人組となったアズテック・カメラはロンドンに進出、ラフ・トレードと契約を果たし、83年にこの1stアルバム「High Land, Hard Rain」を発表しました。

その後、バーニーが脱退し、元ジョセフ K のマルコム・ロス(G)が加入、英ワーナーに移籍し発表した2ndアルバム「Knife」のツアーまではこのメンバーでのバンド編成をとっているものの、3rdアルバム以降は、ロディ・フレイムのソロ・プロジェクトとなり、7thアルバムからは、ロディ・フレイムの個人名義でアルバムを発表しています。

これは私の勝手な思い込みかも知れませんが、ロディ・フレイムは非常に我が強いのではないかと思うのです。
善く言えば、完璧主義で、作品に対して自分の思いを曲げることがなく、それが元で、他のメンバーと衝突し、メンバーが落ち着くことがなかったのだと想像します。

そのおかげで、上質のネオアコ・サウンドを聴くことができたのですから、リスナーにとっては大歓迎なわけですが・・・。

この1stアルバム発表当時のロディは19歳という若さで、ギターをメインにした透明感のあるポップスを発表し、評論家やミュージシャンから好評を得て、一躍人気者となりました。

また、エルビスコステロから「イギリス最高の若き詩人」と大絶賛され、コステロの米国ツアーのサポートも務めています。

「Oblivious」のプロモ映像
TV番組での「Walk Out To Winter」のライヴ映像
「Oblivious」の別バージョンのプロモ映像

この頃のロンドンでは、ポスト・パンクの時代で、なんでもありなニューウェーヴというムーブメントが全盛になりかけている時期であり、アズテック・カメラもまた、その一端を担う一つの流れを作りました。

特に、日本においては、エブリシング・バット・ザ・ガールやペイル・ファウンテンズ、オレンジ・ジュース等と共に、ネオ・アコースティック(ネオアコ)という呼び名が付けられ(ネオアコという造語は日本でしか通じません)、その中心的なバンドとして有名になりました。

フリッパーズ・ギター(小山田圭吾、小沢 健二)や、カジヒデキなどは、アズテック・カメラからの影響を強く受けており、歌詞の中に「カメラ」というキーワードを頻繁に使っているほどです。

この1stアルバムでは特に音がシンプルなせいか、今聴いても旧さを感じさせず、今でもギターポップ系のバンドに愛聴されており、昨年のサマー・ソニックでもアレンジをほとんど変えることなく演奏されたようです。

また、ソロ名義になったとはいえ、今でも変わらぬ歌声で精力的にライヴツアーも行っています。

今年6月のライヴ映像(ずいぶんM型に後退しているような気がします)

ロディは私と同い年で、今年42歳。
まだまだ現役で頑張ってもらいたいものです。
/BLマスター

uknw80 at 14:38|PermalinkComments(2)TrackBack(1)

2006年06月19日

Deep and Wide and Tall: The Platinum Collection/AZTEC CAMERA

aztec best

80年代のネオアコ、懐かしいですねえ。
このアズテックカメラというバンドは、ほとんどロディ・フレイムのソロユニットだったわけなんですが、当時ネオアコというカテゴリーの中ではダントツの一番人気でした。
なんだかおしゃれの代名詞のような時期もあって、後に「渋谷系」といった言葉や、「フィリッパーズギター」などのフォロワーを産んだのもアズテックカメラがあってのことでしょう。

さて、このアルバムは2005年に発売になったデジタル・リマスターもので、レコード会社を移籍してからの作品まで網羅したなかなか良いセレクトのベスト盤だと言えます。

熱狂的なファンからすると、初期のネオアコ的な一番いい時期の曲がものたりない気もするのでしょうが、ビッグ・オーディオ・ダイナマイトとのコラボの「Good Morning Britain」や、坂本龍一とのコラボ「Spanish Horses」などの、ネオアコという言葉ではかたずけられない佳曲も一枚のアルバムに収録している以上、こういった選曲がベターであると言えます。

アズテックは1stで終わったと言って、それ以降のアルバムを聴いておられない方にもこのベスト盤だけは聴いてもらいたいと思います。

ロディ・フレイムは1964年生まれですから、今年42歳になります。
彼の22年間の集大成とも言えるベスト盤ですから、なかなかのお値打ち品なのではないでしょうか。
/BLマスター

uknw80 at 14:04|PermalinkComments(2)TrackBack(0)
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