5月29日(水)

昨日の話の続きとなりますが・・・

今回行ったのは出来うる限りの「腫瘍摘出およびICG併用レーザー療法」というものです
原理を説明すると少し難しくなりますが・・・

「 足を残した状況でできる範囲の腫瘍を摘出します
 その後摘出表面に残っているかもしれない腫瘍細胞を
 インドシアニングリーン(ICG)というもので標識します
 標識された細胞はレーザー光線の感受性が高まり
 レーザー照射によって腫瘍細胞へ熱刺激を加えます」

そうすることによって腫瘍細胞を取り残ってしまったとしても
再発のリスクがとても小さくなります
またオーナーの一番の希望である「足を残す」ことができます

そこでいよいよ決戦日・手術当日となりました
こういった手術はいつも緊張しますし
様々な状況が起こることを想定していくつものプランを予め練っておきます
もちろん予想外のことは起こるものですが
少しでも不安要素を取り除くために
過剰なまでに準備することが多いです

いざ皮膚に切開を加えていくと・・・
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その下に腫瘍が見えてきました(豆のような楕円の塊です)
皮膚直下にあるのではなくどうやら筋間(腕の筋肉の隙間)に存在するようです
しかし触診と違って、境界はある程度しっかり確認できます
これで少しは取りやすくなるかと思いましたが・・・
腕の神経も腫瘍の傍を走っていました
損傷を与えてしまうと麻痺が残ってしまうので注意が必要です
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そっと神経(白いスジのようなものです)を傷つけないように注意しながら
腫瘍塊を摘出していきます
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無事に”できもの”を摘出することができました
”できもの”は病理検査を依頼して
本当に脂肪肉腫か?取り切れいているかどうか?血管などに浸潤していないか?を調べてもらいます

話は戻りますが
この後摘出した表面にレーザー照射をしていきます
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この緑色の液体がインドシアニングリーン(ICG)です
表面に浸透・標識させレーザー照射を行いました
これで万が一、腫瘍細胞が残ってしまっても
それらを死滅させることができます
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そしてキレイに傷を縫合して・・・
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無事に手術は終了しました

高齢での手術となりましたが麻酔からもスッと覚めてくれて一安心です
次の日から食欲も出てきて、数日で無事退院となりました 

あとは病理結果が気になるばかりです
当院で病理検査を依頼する機関は
大阪府立大学の獣医病理学教室です
ここでは恩師が的確な診断を下してくれます
学生時代だけでなく今でもお世話になりっぱなしで頭が下がります

そして結果は・・・
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脂肪肉腫。再発は要注意だが、腫瘍は切り取れている 。また血管等への浸潤も見られない。
というものでした 
たしかに再発の危険性はあるかもしれませんが
レーザー治療も併用してるのでそれは何年も先の話となるでしょう
再発して病態が進行する前に、天寿を全うする可能性が高いです

今後定期検診は続きますが 、ホッと胸を撫で下ろしました
飼い主さんの強い意志がこの結果を引っ張ってきたのかなと思ってしまいます
確かに断脚が一番の治療法だったのかもしれませんが 
今回は足を失うことなく乗り切ることができました

「癌でもあきらめないで」
今回は逆にこの子から教えられたような気がしました・・・
これからも諦めずに病気と戦っていこうと思います

では今日はこの辺で・・・・ 
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