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変身ものがたり (ちくま文学の森)
変身ものがたり/ちくま文学の森
死なない蛸/萩原朔太郎 水族館の忘れられた水槽内に住む蛸は忘れられているので餌を貰えない。餌を貰えないので飢えている。飢えているのに餌はない。仕方なしに自分の足を食べる内蔵を食べる身体全体を食べる。こうして自分自身をすっかり平らげた蛸の姿は消えてしまったが蛸は死なずに生きているという話。ウロボロス的蛸の話。蛸は無限に生き続けます。そういう話。
風博士/坂口安吾 蛸博士に妻を寝取られた風博士は復讐を誓い、蛸博士のカツラを盗み蛸博士の蛸頭を露わにし恥をかかせようと目論むも蛸博士は予備のカツラを装備し難を逃れる。万策尽きた風博士は絶望し世を去る決心をする。ところで、偉大なる風博士は慌て者なのでちょっと目を離すとすぐに別のことをしている別の場所に移動している。その慌てっぷりは移動すれば風が起こるくらいの慌てっぷりで、事件当日は風博士の結婚式の日だった。式の時間が過ぎてもやって来ない博士を呼びに博士邸に向かい、「約束の時間が過ぎました」と告げると博士は奇声を発し風に変化して消え失せてしまった。ついでに蛸博士はその日、インフルエンザに罹りました。そういう話。「風博士を知っているか」という話から風博士の遺書、そして風博士が風になった日についてという構成ですが、風博士が蛸博士を憎むようになったきっかけは「妻を寝取られたから」。風博士が風になったのは「風博士の結婚式の日」。どういうことでしょう。それはそれとして、「蛸」の話の次に来るのが「『蛸』博士を憎む風博士の話というのはなんだか面白いです。
オノレ・シュブラックの失踪/アポリネール 失踪したオノレ・シュブラック氏について。彼は変人であった。夏冬通して身につけるものはガウンとつっかけ靴のみという軽すぎる出で立ち。なぜこのようなおかしな格好をしているのか。それは彼の特技に理由があった。彼は全裸になると壁に擬態することができるのだ。そして彼は追われる身であった。というのも、夫を持つ女に手を出したせいである。ある日、女との情事の最中に彼女の亭主が部屋に押しかけてくる。それもピストルを手にして。オノレ・シュブラック氏は消えてなくなりたい壁に溶け込みたいと強く願う。すると驚いたことに体が壁へと変化した。亭主はオノレ・シュブラック氏を探すも見当たらないので怒りに任せて自身の妻をピストルで撃ち殺してしまう。そうしてオノレ・シュブラック氏は追われる身となった。ある日、件の男がついにオノレ・シュブラック氏を見つける。氏は間一髪のところで壁に擬態し難を逃れたが男はやはり怒りに任せて氏が消えたと思われる壁に向かってピストルを発砲し立ち去ってしまう。その現場を見ていた氏の友人は壁に呼びかけるも声は返ってこない。壁に触れるとまだ生温かく、また壁の弾痕は人の心臓の位置と顔の位置にあることに気付く。終わり。「(風に変化して)失踪した男」の話の後に「(壁に変化して)失踪した男」の話が来てなるほどなと思いました。
壁抜け男/ユーメ 極度の過労状態から壁抜け能力を手に入れた男の話。医者にかかり壁抜け治療のための薬も処方してもらう。その薬の材料には「ケンタウルスのホルモン」が混ざっているそうです。何かの隠語ではなく半人半馬のケンタウルス。壁抜けを医者に看て貰える世界なんだからケンタウルスくらいいるだろ納得しろよということでしょう。医者に薬を処方してもらうも壁抜けを楽しむようになる。高価な宝石類を盗み、自らを「狼男」と自称する怪盗になって人生を楽しむ壁抜け男。捕らえられ刑務所に入れられても壁抜け能力を使って看守をコケにしたり脱獄したりとやりたい放題。そんなこんなで「狼男」をやることにも飽きてきた壁抜け男は脱獄後、変装をし別人として生きることにする。時を同じくして「壁抜け」自体にも飽きてくる。ピラミッドの真ん中にでも行ってみようかとエジプト旅行の計画を立てていると、たまたま見かけた美女に一目惚れしてしまう。彼女は嫉妬深い夫と結婚していた。なんだかんだで彼女と接触を図り、夫から入念に閉じ込められた女の家に這入ってみせると嘯いてみせる。訝しむ女。壁抜け男は自身の言った通り、女が一人になる夜、見事に壁を抜けて女の部屋に侵入してみせる。女は熱狂して男を出迎え、二人は夜が更けるのも忘れて愛し合った。翌日、壁抜け男は頭痛に悩まされる。たまたま引き出しの中にあった薬を見つけて服用する。そして夜。再び女の家に侵入し情事に耽る。その帰り、幾重にもある壁を抜けながら男はなんとなく身体に違和感を覚える。それは塀を通り抜けようとした時、はっきりとした抵抗感として現れる。男は壁に取り込まれてしまったことに気付く。今朝方、男の服用した薬は壁抜けに悩んでいた際に医者から処方された薬であったのだ。そして男はこのまま、塀の中から出られないでいるのだった。終わり。「『壁』に変化することのできる男」の話の後に「『壁』を通り抜けることができる男」の話が来てなるほどなと思いました。
鼻/ゴーゴリ 理髪師の家。朝の食卓に並んだパンの中から人の鼻が出てくる。心当たりのある理髪師の男はその鼻を捨てに行く。橋の上から川に向かって鼻を捨てたところを警察に見咎められる理髪師の男。その先はどうなったかわからないそうです。そう書かれているんだから仕方がない。なんですかこれは。第一部、完。第二部。主人公は八等官の男。「八等官」というのが何なのかよくわかりませんが警察のことだそうです。多分。その八等官の男が朝目覚めると自身の鼻がないことに気付く。鼻を探す旅に出る八等官。自分の鼻を見つけるもそれは身なりの良い礼服を着た五等官の姿をしていた。は? 唐突に現れる鼻人。鼻人を追いかけるも見失う八等官。仕方がないので新聞に広告を出そうとするも「鼻を探している」なんていう広告は荒唐無稽過ぎて新聞の品位が下がると言われ掲載を断られてしまう。結局、自分の鼻を捕まえることができずに自宅に帰る八等官。すると来客が訪れる。それは第一部で理髪師を見咎めていた警察官で八等官へ鼻を届けてくれる(何があったかは不明)。医者を呼び鼻を取り付けてもらおうとするもくっつかない上、それはそのままの方がいい、などと言われて帰られてしまう。自分がこんな目にあったのは、もしかすると佐官夫人が自身の娘と八等官を結婚させるために何らかの魔術を使って自分に嫌がらせをしているのではと思い手紙を出してみるも丁寧な断りの返事が届き、夫人は無関係だと確信する八等官。後日、八等官が目を覚ますと花があるべき場所に帰ってきていた。なんだかよくわからないけど、こういう出来事は世の中にはあり得ることである。終わり。そう書かれているんだから仕方がない。なんだこの話。本当に何だこの話。
のっぺらぼう/子母澤寛 ボロ屋敷でのっぺらぼうに出会う話。3ページで終わる一口怪談。海坊主にはこのくらいがちょうどいいです。
夢応の鯉魚/上田秋成 鯉を描かせたら天下一品の僧侶が病を得てふらふらと湖に入り込み泳ぐ。「魚になりたい」と願う僧侶。水の神がそれを聞き届け叶えてやる。たちまち見事な鯉魚と化した僧侶。水の神からは「餌に目がくらんで釣り針にかからぬように」と注意される。水中をのびのび泳ぐ僧侶魚。ある程度、遊んだところで飢えに苦しみだす僧侶魚。眼の前に現れる釣り餌。釣り人は懇意にしている知り合い。よしんば針にかかったところで知り合いであれば助けてくれるだろうと高をくくり釣り餌に食い付き釣り上げられる僧侶魚。「待て、わしじゃ」と何度訴えても釣り人には届かずプリプリする僧侶魚。それはもう高慢に。釣り人に運ばれる僧侶魚は宴席に連れてこられる。そこの料理人に包丁を当てられた瞬間、僧侶は目を覚ます。弟子達に囲まれている床の上の僧侶。かれこれ三日間目を覚まさないままであった僧侶。そろそろ葬式の準備をすべきかという時に僧侶は目を覚ましたらしい。僧侶は件の釣り人を呼び、自分が魚だった時に見た宴席の話をすると「いかにもその宴はあったがなぜ知っているのか」と釣り人。自分が鯉魚に化した話を聞かせる僧侶。「苦痛の叫びというのは人には届かないんだなぁ」と僧侶。
魚服記/太宰治 馬禿山と呼ばれる山で植物採集をしていた学生が崖から滑り落ちて滝壺に飲み込まれた。第一部、完。第二部。同じく馬禿山にて。炭焼き小屋に住む父娘は滝壺の近くに茶店をこしらえた。夏が過ぎ秋が過ぎ、客も来なくなったので今年は店を畳むことにする。その際、何故か唐突に娘をなじり出す父。謎です。冬が訪れる。娘は吹雪の中、何故か唐突に外に飛び出し、滝壺に沈んでしまう。しかし、娘は鮒に変化したので無事でした。終わり。なんのこっちゃ。第一部の滝壺に沈んだ学生は何だったのか。第二部の娘が吹雪の中、突然外に飛び出たのは何だったのか。謎しかありません。
こうのとりになったカリフ/ハウフ 王の座を狙う悪い大魔術師にしてやられてコウノトリに変化してしまった王様と宰相は同じようにフクロウ(何故か作中では『ふくろ』表記だったので意味がわかりませんでした)に変化してしまった貴婦人と協力して人間に戻り、王様と貴婦人は結婚してシワ背になりました。めでたしめでたし。小学校低学年あたりの国語の教科書に載ってそうなちょうどいいファンタジー話でしたが、拷問をほのめかしたり処刑を行う場面が出てくるので、お子様には刺激が強いかもしれません。
妖精族の娘/ダンセイニ 人間に憧れた妖精がどうにかこうにかして人間になるもやっぱり妖精暮らしが最高というわけで妖精に戻る話。妖精から人間になる際に「妖精は人間と違って魂がないので魂を作る必要がある」として仲間達が奔走して魂を手作りしてくれます。人間をやめたくなったらその魂を誰か他の人間に押し付ける必要がある、というわけで突然現れたぽっと出の貴婦人に魂を押し付けることで主人公は無事に妖精に戻ることができたわけですが、二重の魂を持つことになった貴婦人はどうなったのか。謎です。ぽっと出で現れて魂を押し付けられてその後は不明。便利な舞台装置。後味が悪いです。
山月記/中島敦 羞恥心と自尊心が溜まりに溜まった結果、虎に変化してしまった男の話。中国が舞台の話というわけで作者は中国人だと思っていました。日本人でした。内容の話です。人が虎に化すことは中国ではよくあることなので、これは中国あるある話です。一般的な中国の話です。偏見にまみれています。
高野聖/泉鏡花 旅先で出会った僧と気が合い、宿を紹介してもらい、ついでに同室に泊まり、「私」は寝付きが悪いから寝るまでの間、僧から諸国行脚の面白話を語ってもらう話。その話というのが、僧の行脚の途中、茶店で薬売りに出会う。薬売りは僧より一足早く出発するが人が踏み入れば迷ってしまう荒れた旧道に踏み入ってしまう。このことを後から知った僧は見殺しにすることもできないので薬売りを追って旧道へ。散々な目に会いながら旧道を行く僧。夜になるも薬売りには追いつかず、仕方なしに見つけた一軒家に一夜の宿を求める。家に住むのは美しい女と白痴の少年。それと馬小屋から馬を連れ出して売りに行こうとしている親父。女から手厚いもてなしを受ける僧。旅の汗を流すため、家の裏手にある川へ女と向かう。その際にカエルだのコウモリだのサルだのが女に群がってくる。こんな場所に住んでいるから遊び相手はこういった生き物相手になると女。川に浸かって旅の汚れを清める僧。それを手助けする女。まるでソープ嬢のようにエロティックに。それから女の虜になった僧は行脚修行を止め、ここで女と夫婦になるのも良いと思うようになる。悶々煩悶する僧。馬を売って身軽になった親父が帰ってくる。親父が言うには、自分の連れて行った馬は僧が追いかけていた薬売りで、女の手が触れて川の水を振る舞われたものは皆動物に変化してしまう、と言う。女はそんな神通力を持っているので、自宅にやってきた男を自分に惑わせひとしきり楽しみ、飽きれば神通力を使って動物に変えてしまっている。女に群がってきたカエルだのコウモリだのは皆、かつては人間だったらしい。ちなみに一緒に住んでいる白痴の少年は女の実家が医者をやっていた時の患者で女の父親の手術がもとで白痴になったの甲斐甲斐しく世話をしている。親父から女の身の上話を聞き終えた僧は女のもとを離れて里へ一目散。終わり。「男達を動物に変化させる魔性の女」というのはギリシア神話のキルケーの魔女を彷彿とさせますね。これは読みやすい方の泉鏡花。
死靈の恋/ゴーチエ 神学校に通う男が僧侶になったその日に女に恋をする話。その女は魔性の女。すでに死んだと言われたり男の夢の中でだけ現れたり男の血をすすったり棺の中で完全な状態で収まっていたり死骸は聖水を浴びると粉々に砕けたり、それらを見知っておいて尚女に恋をしている僧侶。恋しすぎておかしくなっているから同門の方々は女を見てはならぬと戒めて終わり。洋物ホラーですね。
マルセイユのまぼろし/コクトー 強盗事件を起こした男が女に変装して女ばかりのアパートで隠れている話。なんだか女装が楽しくなってきた男は女の格好のまま外に出て楽しんでいたらうっかり自動車に轢かれそうになってしまう。運転手に介抱され車内に連れて行かれ、車内に座る財産家の紳士に見初められ紳士の屋敷に住むことに。特に手を出されることもなく、女装がバレることもなく、平和に過ごす日々。しかし、男の方が二重生活にいい加減疲れてきたので、世話係として一緒に住まわせていた仲間の女と共謀し、紳士を拘束して逃げ出す算段を立てる。その計画の実行日。紳士に連れられダンスホールに来ていた女装男。いっそこのまま真実を話して息子として扱ってもらおうかなどと考える男。帰り際、ホールの階段の上から強盗仲間の姿を認めると階段の欄干から飛び降りて死んでしまう。この部分、よくわかりませんでした。何が起こったのか。何故このような行動をとったのか。それから紳士は一人屋敷に帰ると女装男と共謀していた女から撃ち殺され、場面は変わって裁判所。紳士を撃った女は女装男なしでは生きていられないし、紳士もまた女装男なしでは生きていられない。なぜなら、「まぼろしに惚れていたのだから」。なんだかよくわからないけど、純愛です。
秘密/谷崎潤一郎 以前の感想はこちら。今回の感想はここから。別世界に住みたくなった男が隠れ家を用意し、そこで今まで親しんでいた書物から離れ、オカルティックな書物に親しむように。サブカルに傾倒する男。酒に酔いながら夜の散歩へと洒落込むと古着屋で自分におあつらえ向きな女物の着物を見つけ、女の姿で往来を歩きたいという欲望が湧いてくる。すぐに行動に移す男。女物の着物一式用意し化粧も施し、夜の街へ出かける。たまらない気持ちよさ。それから毎晩女装をして夜の街を闊歩する男。ある晩、映画館に訪れる男。そこで昔捨てた女を見つけたので復縁を持ちかける手紙をしたためて女の袂へこっそり投げ込む。帰宅後、着物の襟から女の書いた返信の手紙が現れ、待ち合わせ場所と時間を指定してきたので、描かれた通りの時間に指定場所へ赴くと車がやってきて男を車内へと誘う。その際に男は目隠しをされてしまう。車内には女の気配。そのまま車は進み、件の女の住む屋敷に着く。人に身分を知られたくないのでこのような方法をとったと女。それはそれとして女との逢瀬を楽しむ男。そんなラブアドベンチャーを続けていたある日、男は女の住処が気になりだす。女の住居へ向かう車内で漢はついに女に目隠しを外してくれと懇願し、少しの間だけ目隠しを外してもらい、外の景色を目に焼き付ける。それから女と別れた後、どうしても女の住居を特定したくなったので記憶した風景をもとに散策をする男。ついに女の住む屋敷を見つけるが女は屋敷の二階の欄干から死人のような顔をして男を見下ろしている。女の目は失意の色が浮かび、部屋の奥へ消えてしまう。それから男は女を捨て、隠れ家を引き払い、もっと凄い歓楽を求めるようになった。終わり。女装男話の次に来るのも女装男話。それはそれとして、現在の女の素性がわかった男は「『秘密』などと云う手ぬるい淡い快感に満足しなくなって、もっと色彩の濃い、血だらけな歓楽を求めるようになった」とあります。「血だらけな歓楽」とは何でしょう。凄く気になります。その後の歓楽話が気になります。
人間椅子/江戸川乱歩 以前も感想を書いたような気がするんですが過去記事検索機能がパーなので見つけきれませんでした。過去記事を探す努力怠っています。それはそれとして、感想はここから。作家の女のもとに一通の手紙が届く。とある家具職人の男は自分の作った椅子の中に潜んで出荷先で盗みを働こうと画策する。男入の椅子は外国人向けホテルに出荷され、そこのロビーに設置される。はじめのうちは計画通りに盗みを働いていたが段々と自分である椅子に誰かが座ってくれるのが気持ちよくなる。目的がすり替わる男。こんな気持の良い生活が続いていたある日。ホテルのオーナーが変わり。男入りの椅子が競売にかけられ、とある官吏の家に買われる。その家の書斎に設置される椅子男。書斎は主に細君が使っている。その細君とは手紙を読んでいるあなたです。手紙はそこで締められている。衝撃を受ける女。それからまた一通の手紙が届く。筆跡は先程の椅子男のもの。それによると「私の自作小説の出来はどうだったでしょうか。題名は『人間椅子』です」とのこと。終わり。何が真実なのか何が創作なのか。創作であるならば官吏の家に買われた後のことがはっきりしすぎている。
化粧/川端康成 自宅の便所の窓から隣の斎場の便所が見える。そこで葬式に来た女達は鏡を見ながら化粧をしている。そんな女達の中で一人、若い女がやって来る。その女は他の女のように化粧をしに来ているのではない。泣きに来ている。ひとしきり泣いた後、笑顔を作って便所を出ていく。私はびっくりした。終わり。笑顔の練習ってやつですね。
お化けの世界/坪田譲治 動物ごっこをしてどちらが強いかを競う幼い兄弟。父が会社でやらかして絶望している中、兄弟二人にふざけて殺してもらおうとするも殺しきれず、そんなことをやったせいで兄弟の弟の頭がおかしくなって子犬を殺そうとしたりクラスメイトや教師が人外に見えたりする話。これ主人公は弟なんですかね。
猫町/萩原朔太郎 薬中男が療養地で散策していたら不思議な雰囲気の街に出た。完璧に調和の取れた街。調和を乱した時、街に猫が溢れかえる。人家からも猫が現れる。ふと気づくと周りから猫は消え、なんでもない退屈な街が姿を現す。私は確かに見たのだ。猫の街を。終わり。薬中の言うことだから、で聞き流してしまえるのが惜しいですね。
夢十夜/夏目漱石 明治四十一年頃の夢日記十日分。ぺろりと読めちゃうちょうど良さ。
東京日記 抄/内田百閒 これも恐らく夢日記だと思います。八日分の現実的に非現実的な記録。


おかしい話 (ちくま文学の森)
おかしい話/ちくま文学の森
おかし男の歌/長谷川四郎 「おかし男」と呼ばれる詩人がいて、今はもういないという詩。何かしら意味を見いだせるのかもしれませんが見つけきれませんでした。
太陽の中の女/ボンテンペルリ 自家用飛行機で空の散歩と洒落込んだ若者が同じように空を飛んでいるお嬢さんを見つけてナンパをする話。お嬢さんに振られてから若者は飛行機で出かけるのを止めた、で話は締められています。特に何かを思うようなことはありませんでした。
死んでいる時間/エーメ 一日生きた後、次の日一日はこの世から消滅する(=死ぬ)男の話。こんな性質を持っているので仕事には就けなかったが幸いにして親族からの遺産で生きていくことができた。こんな性質を持っているので女は諦めていたが、たまたま運良くお互いを思い合う仲になれた女と出会い結婚するが、結局一日おきに死ぬ男に女が愛想を尽かし、浮気され別れる羽目になります。終わり。
粉屋の話/チョーサー 若くて美しい妻を持つ大工の男が家に住まわせている書生に良いように言いくるめられ、自身はキチガイ扱いされ妻は寝取られる話。読むことを後悔するような嫌な話。NTR好きな方は良いんじゃないですかね。海坊主には素質がないのでただただ胸糞悪いだけでした。
結婚申込み/チェーホフ ト書き小説。隣家の娘に結婚申し込みに行くも言わなくて良いことを言うせいで話が逸れまくる話。いいからさっさと結婚申込みしろや。
勉強記/坂口安吾 仏教大学に通う男の話。なんだかよくわかりませんでした。
ニコ狆先生/織田作之助 犬の「狆」に似た顔を持つ忍者先生についての話。表題の「ニコ狆」とは、自分が狆に似た顔だということに気付いた先生。以降、自分の顔を笑う者、自分の顔について蔑む者、さらには先生には関係なく「ちん(狆)」と言った者を得意の忍術で襲うようになります。それから主人公が先生の弟子になった際に初めに伝授された煙遁の術を使うにはタバコが必要。タバコを吸い慣れていない主人公、ニコチン中毒で死にかけ、先生に禁煙を訴える。幸いにして先生も禁煙を決意したところ。何故かと言うと「ニコチン」の「ちん」が「狆」に通ずるから。終わり。
いなか、の、じけん 抄/夢野久作 田舎のちょっとした事件のまとめ。新聞のゆるゆる欄にでも書いてそうな小話集です。
あたま山/八代目 林家正蔵演 さくらんぼを種ごと飲んだ男の頭に桜の木が生えて宴客で賑わうようになると、これはうるさくてかなわんと木を引っこ抜くと跡地の窪みに水が溜まり今度は釣り堀ができて客が賑わう。というところまで海坊主はなんとなく知っていました。落ちはあたま山の男が釣り堀客もうるさくてかなわんと自らの水溜りに身投げして終わりでした。こんな落ちだったのか。それはそれとして、あたま山の話に移る前にいくつかの小話が紹介されています。太陽と月と雷が旅籠に泊まり、翌日、雷が女中に相棒(太陽と月)のことを訊く雷。女中は、「もうお発ちになりましたよ」。それに対し雷、「月日が経つのは早えもんだ」。女中、「あなたはいつ頃お発ちンなります?」。雷、「夕発ちにしよう」と「夕方に出発すること」と「夕立ち」を掛けている小話で始まり、このような言葉遊び小話が紹介されていくんですが、その中の河童の親子の話がわかりませんでした。内容はこうです。家の中で遊んでばかりいる河童の子供は親に急かされて外へ出て人間の子供の尻子玉でも抜いてくるよう言われる。それから帰ってきた子供が泣き泣き親に言うは、逆に尻子玉を抜かれてしまったと泣き言子河童。親河童は子河童の尻を確認して唸る。「素人にしちゃあよく抜いてある」。終わり。これも何かしらの言葉遊びが含まれているような気がするんですが海坊主にはわかりませんでした。ググってみましたがわかりませんでした。能力不足です。引用の端折った部分に答えがあるんでしょうか。
大力物語/菊池寛 日本の力持ち列伝(主に女性)。おまけ程度に男の力持ち列伝も掲載。オムニバスな一口力持ち物語達。
怪盗と名探偵 抄/カミ 作者紹介によると、これはコント小説らしいです。ト書き小説。
ゾッとしたくて旅に出た若者の話/グリム 有能な兄をもつ頓馬な弟がゾッとしたくなったので親から追い出されたついでにゾッと体験を求めに旅に出る話。なんだかんだと常人であれば「ゾッとする」体験を何事もなく通り過ぎた結果、一国の姫と結婚し幸せになるという話。ゾッとするためには就寝時に水をぶっかければよろしいという話。
運命/ヘルタイ 運命に選ばれなかったらどうあっても人は結ばれないという話。何年経とうが気持ちが変わろうが運命にそっぽを向かれると人は絶対に結ばれないという話。こういう場合は潔く諦めるべきなんでしょう。損切りというやつですね。多分。
海藻と郭公時計/T・F・ポイス 一生独身を誓った女が家中の家具だの道具だのを全て結婚させる。しかし、郭公時計を結婚させるのを忘れていたので嫁探しの度に出る。海岸にて打ち上げられた乾燥海藻を見つけ、これは郭公時計の嫁としてふさわしい、と連れ帰り二人を結婚させる。それから半年が経ち、郭公時計と海藻夫婦は自宅に泥棒が入り自分たちが盗まれた挙げ句海に捨てられることを予言し、せっかくだから海藻の前夫である海に挨拶に行くことにし、予言通り郭公時計夫婦は盗まれ、予言通りになる。海藻は前夫に会う際に郭公時計へ、前夫の海が嫌がるから時報の鳴き声を出してはならぬと約束させていたことを忘れ、郭公時計は鳴いてしまった途端、海からやってきた大波は郭公時計を粉々に打ち砕き、海藻は泳ぎ去ってしまう。終わり。なにこれ。無機物の擬人化、結婚、なんとなく遠藤徹の「カデンツァ」を思い出しました。
奇跡をおこせる男/H・G・ウェルズ なんだかよくわからないけど突然奇跡(超能力)を取得した平凡な男が奇跡の奇跡っぷりに不安になって牧師に相談をしたところ、人助けに活かせばいいということになり橋の修理やら何やらをすることに。その際、時間がもったいなくなったので地球の自転を止めたら大災害を巻き起こしたので自分の奇跡能力に願い、時間を巻き戻してもらい更に奇跡力をなかったことにして終わり。なんだかこういう映画がありそうです。それと、地球の自転を止めた際、ありとあらゆる物々が射出されるように飛び出す天変地異の場面で伊藤潤二の「惑星レミナ」を思い出しました。重力がおかしくなった地球の場面を思い出しました。
幸福の塩化物/ピチグリッリ 子供のような女が結婚をして愛人を作る話。何を読まされているんだコレはという気分になりました。内容が頭に入ってきませんでした。まったくもって。
美食倶楽部/谷崎潤一郎 「美食戦隊薔薇野郎」は無関係でした。ありとあらゆる美食に通じ飽食を謳歌する者の集う倶楽部。その名も「美食倶楽部」。会員達は美食に通じすぎたあまり、そんじょそこらの美食には飽いていた。そんな中、会長は新たな美食を求め街をさまよっていると行き慣れない道から美食の匂いを嗅ぎ取る、たどり着いた先は在日支那人の集う館。たまたま出てきた館の支那人に無理を言い、館内に入れてもらい、美味なる食のご相伴に与ろうとしたが館の会長は一見さんお断りという態度で美食倶楽部会長を追い返してしまう。しかし、連れてきてくれた支那人の親切心により、館内で催される宴を隠れて伺うことに成功し、そこで実に素晴らしい料理の秘技を習得してきた会長は帰宅後、倶楽部の会員を呼び、宴を始める。会長の習得してきた料理の魔術により会員達は味わったことのないとても素晴らしい料理を堪能することができました。めでたしめでたし。という筋書きなんですが、肝心要の「美食倶楽部会長が支那人達の宴で何を見てきたのか」、そして「そこで何を習得してきたのか」が謎のまま終わったので消化不良気味です。
ラガド大学参観記/牧野信一 なんだこれ。本当になんだこれ。何について書かれているのか、さっぱりわかりませんでした。異文化も異文化過ぎると読み込みが停止します。SF感のある話。多分。これだけだとアレなのでもう一度読み返しました。科学国であり、また超数学国でもある国の首都ラガドにて、大学の受験資格を得た「私」は入学受験準備の仕事である「ラガド大学参観記」を歳月を費やして作成している。そんな中、仮装忘年会へ向かうところで話は終わる。かなり端折りました。理解が及ばない。異文化コミュニケーション。
本当の話 抄/ルキアノス 頭を休めるにはこういう話を読むのがちょうどいいということで語られる架空の話。開始3ページ辺りをしっかり読んでおきましょう。海坊主は読み込んでいなかったので今その部分を流し読みしながらこれを書いています。かつての歴史家達が綴った旅行記のパロディという体だそうです(作者紹介に書いていました)。「かつての」というのはギリシア神話辺りの時代です。多分。というわけで、この話も幻想的な旅行記となっています。葡萄酒の川が流れ、人を誘惑し虜になった者を取り込む樹木美女が生い茂る島に行ったり、月世界と太陽世界の戦争に参加したり、巨鯨に飲み込まれ体内に住む先住民と力を合わせて他に住む人外共に戦争を仕掛け、それらを統一したり、島を船として使う巨人の戦争を眺めたり、牛人の島に行ったり、旅人を誘惑し餌食にするロバ足美女の島に行ったり、そういう話。何か思い出しそうなのでググったりなんだりして思い出しましたが、「アレクサンドロス・ロマンス」でした。


思いがけない話 (ちくま文学の森)
思いがけない話/ちくま文学の森
夜までは/室生犀星 男というものは皆何かしらぶらぶらぶらんこさんをぶらつかせながら生きているという話。詩? ちんこの話なんでしょうが、なんとなくなぞなぞ感があります。「男がぶらぶらさせているものなーんだ」。うーーん、ネクタイ!!
改心/O・ヘンリー 凄腕金庫破り野郎が出所し、片田舎で名を変えて過ごし改心し銀行マンの娘を射止め婚約し幸せに過ごしていたところ、銀行の最新型の堅牢な金庫に婚約者の姉の子供が閉じ込められてしまう。改心し、金庫破りから足を洗う決心をし、かつての仲間に仕事道具を譲る手はずを整えていた矢先の出来事。閉じ込められた子供。金庫破りの居所を突き止め男を見張っている刑事(金庫破りはここに落ち着くまで金庫破りを何度かやっていた)。手元に仕事道具を持つ金庫破り。決心し、仕事道具を駆使し金庫を開け子供を救出し、自ら刑事のもとへ向かう男。しかし、刑事は男を見て「人違いだ」と告げて去る。終わり。良い話。
くびかざり/モーパッサン 貧乏夫婦が夜会の招待状を貰うも妻は着けていく装身具がない。仕方がないので金持ちの友人からダイヤの首飾りを借りて夜会に臨むことに。夜会から帰宅した夫婦は借りていた首飾りを紛失したことに気付き、探し回るも見つからず、友人へは言い訳の手紙を出して借用期限を延ばしてもらい、夫婦二人で似た意匠のダイヤの首飾りを買うための資金繰りへ。妻は親の残してくれた遺産を使い、足りない分は夫が方方から金を借りて資金を工面し、資金を集めどうにか購入費用に充てた。その後、極貧と化した夫婦は死に物狂いで働き借金を返済した。十年が経っていた。ある日、妻はかつて自分に首飾りを貸してくれた友人に出会い、十年前に借りた首飾りを紛失してしまったので似たような首飾りを購入して返却したことを告白する。友人は驚愕の声で言う。「あのダイヤは偽物だから価格も安かったのよ!」。終わり。やるせない。ただただやるせない。失った十年間。
嫉妬/F・ブウテ 自分の夫は自分の友人である未亡人と浮気していることはお見通しだと夫に訴えたら、夫が未亡人宅へ行き、「妻に怒鳴られてあなたへの思いに気付いた」「私もです」。終わり。つまり、浮気夫の妻は道化だったということでしょうか。何これ。
外套/ゴーゴリ 小役人の男は貧しく新たな外套を作るにも困難で、いつもボロを纏っていたが思いのほか多く貰えた給金と貯蓄を合わせ、とっておきの外套を新調する。常日頃主人公を馬鹿にしていた仕事仲間達が新調された外套を見ると、それを祝う夜会を開いてくれることに。主人公は乗り気ではなかったが無理やり参加させられる。夜会後、一人帰る主人公。人気のない公園で何者かに襲われ外套を盗まれてしまう。交番の警察に被害を訴えても梨の礫。同情してくれた下宿先の老婆から署長へ訴えろと勧められその通りにするが面会もできず、やはり同情してくれた仕事仲間から有力者を頼れと勧められたので今度は有力者(この有力者、なにがどう『有力者』なのかはっきり描かれていないのでふわっとしています。役人?)に会いに行くもすげなくされ、失意の主人公は外套がなくなったこともあり熱病に冒され死んでしまう。その後、主人公が外套を奪われた場所で人の外套を奪う幽霊が現れるようになる。ある日、有力者がその幽霊に会い、外套を奪われていしまう。それ以後、幽霊は現れなくなる。終わり。
煙草の害について/チェーホフ 表題は講義の題目。内容は夫婦生活なんて懲り懲りだ、というもの。大っぴらに愚痴を言うだけの話。
バケツと綱/T・F・ポイス バケツ君と綱君が主人が自分達を使って自殺をしたのは何故かということについて話し合う話。バケツ君と綱君は人間ではないので人間らしい考え方を持っていません。だから、主人が自身の妻の浮気現場を見て失意に打ちひしがれ自殺を選ぶに至ったということがわかりません。なぜならバケツと綱は人間ではないから。そういう話。
エスコリ夫人の異常な冒険/P・ルイス 舞踏会の帰り、誘拐されてしまう婦人姉妹。誘拐先にてドレスを丁重に奪われ長時間放置された後、丁重にドレスは返され、誘拐犯からなぜ誘拐したのかを聞かされる。それによると誘拐犯は裁縫師で自身の主人が婦人姉妹の来ているドレスを痛く気に入ったので同じものが欲しいと言う。凄腕裁縫師なので見ただけで模倣することは可能だが一点だけ、施された刺繍だけは現物をじっくり見てみないと模倣できない。婦人姉妹の女中に話をつけてドレスを借りてくることも考えたが「女中は話ができない」と言う。ここ、よくわかりませんでした。「女中は話ができない」というのは文字通り、つまり唖であると言う意味ではなさそうです。とすると、融通が利かない、と言う意味での「話ができない」でしょうか。それはそれとして、裁縫師は婦人姉妹を自宅まで送り届ける際、忠告をします。この件を口外したら夫人方のお友達が面白おかしく言い触らすぞ、といった意味の忠告をします。それから帰宅後、早速友人へ誘拐事件の話をする夫人。友人は口外しないことを誓うが友人の友人達へ言い触らしてしまう。「朝帰りの言い訳にしては骨が折れすぎている」と付け加えて。終わり。約束はきちんと守りましょうという話。
蛇含草/桂三木助演 雷神家族の話から始まりますが本編には無関係でした。関係があるのかと思って読んでいたので繋がりがよくわからないことになってよくわからないことになっているぞとなりましたが無関係な話でした。オープニングアクトということでしょう。それで本編。蛇が人間を食べて腹を膨らました際に舐めて腹中の人間を溶かしてしまうという蛇含草。それを軒先に魔除けとして吊るしているご隠居の家に男がやってくる。蛇含草の話を聞いた男はそれなら家でも魔除けとして吊るそうというわけで半分譲ってもらう。それはそうと、男は大の餅好きでご隠居が貰った餅を見つけ、「これなら自分一人で全て平らげることができる」と啖呵を切り、餅の大食いに挑戦するが、あと五つ六つ残したところで男の限界が来て退却することに。自宅にて、腹が苦しくて何もできないでいる男。ふと蛇含草の話を思い出す。腹が膨れたときに服用すれば腹を治すことができる、と男は蛇含草を口にする。それから男の様子をご隠居が見に来る。男の女房に案内され寝室へ向かうと男がいたはずの布団の上には男はおらず、その代り餅の山ができていた。終わり。「蛇含草」は単なる「胃薬」ではなく、「人間を溶かす」効能のある毒草であるという話。この話、元は落語だったんですね。以前に何かで見て知ったようなふわっとした記憶です。Wikipediaで調べてみたらこの演目は「滑稽話」に分類されるそうです。怪談話じゃないんですか。
あけたままの窓/サキ ケーキは嘘、ではなく、姪の話は嘘。してやられる話。
魔術/芥川龍之介 インド人に魔術を教えてもらう。ただし欲のある人間には教えられぬとインド人。主人公は欲を出したので魔術を教えてもらえませんでした。終わり。この「欲」というのはどういった「欲」なのか。序盤、主人公はインド人に魔術を乞う場面でインド人は魔術を何種類も使って魔術の存在を証明する。この場面。インド人が無知な主人公に自分の魔術をひけらかしているように見えてしまいます。これも「欲」ではないでしょうか。主人公は主人公で金銭欲に負けて魔術を諦めることになります。「欲」というのは「金銭欲」だけなんでしょうか。
押絵と旅する男/江戸川乱歩 電車内で主人公は奇妙な老人と二人きりになる。老人は額を持っている。主人公はその額が気になるので見せてもらう。額には押絵が描かれており、そこには若い娘と老人が仲睦まじい姿を見せていた。老人が言うには絵の中の老人は自身の兄だという。老人は兄が絵の中に入った経緯を話し出す。云々。
アムステルダムの水夫/アポリネール 鸚鵡と猿と織物を売りたかった水夫、紳士に騙され殺人事件の半人に仕立て上げられた上に自分もついでに猿も殺されてしまう話。やるせない。鸚鵡だけが真実を知っている。織物はどうなったか不明です。
人間と蛇/ピアス 以前の感想はこちら。今回の感想はここから。とある生物学者の屋敷に居候する若き学者、読書中にふと気付くと寝台の下から何かの双眸がギラギラとこちらを伺っている。それは蛇で学者を睨みつけている。文字通り蛇睨みにすくむ学者。しかし、自分は勇気ある男だという自負があったので、すぐさま使用人を呼ぶなどという臆病な行動はできない。ではどうするか。どうもしない。ただただ蛇を恐れ続け、唐突に何者かに顔を殴られ(この場面がよくわからなかったです。室内には学者と蛇しかいないので『何者』はいません。おそらく何かの比喩なんでしょうがわかりませんでした。恐怖で足がもつれて倒れ込んで家具に顔をぶつけた?)床に倒れ込んでそのまま絶命してしまう。部屋を貸している若い学者の部屋からただならぬ音を聞き取った家主の生物学者と使用人が部屋に駆けつけるとそこには男の死体が。発作を起こしたのだろうと推理する生物学者。ちなみに男は発作を起こすような何らかの疾患を患っているという伏線はありませんでした。それはそれとして、寝台の下からあるものを見つける生物学者。それは蛇の標本だった。終わり。臆病は身を滅ぼすということですね。
親切な恋人/A・アレー 恋人を待つ男。ついにやってきた恋人は冷え切った室内に激怒する。怒りを鎮めるため、とっておきの温め方を考案する男。それは自身の腹を切り割って、その中に恋人の足を入れるというもの。臓物足湯に大満足し、お互いの中を深め合う恋人達。この日は忘れられない一日になりました。終わり。男が死んで終わるという猟奇的な終わり方かと思えば、普通に恋人に腹を縫ってもらって終わりました。なんだかよくわかりませんが、内臓は傷つけない限り、直に足をぶち込んで暖を取っても人間は死なないということですね。良い子は真似してはいけません。
頭蓋骨に描かれた絵/ボンテンペルリ 地質学的に良い辺境の村を訪れた男(地質学者?)。村内を案内してもらう中、墓地内のお堂に訪れる。そこには墓地に収まりきれなくなった古い死人達の頭骨だけが保管されていた。その骨たちには額の部分にそれぞれ月桂樹であったり薔薇の冠が描かれている。その絵師が気になった男は案内に教えを請い、絵師のもとへ行くことに。絵師は見事な手術法を考案したので自身の頭骨を自らの手で取り出し、疑似骨を頭に詰め込んでいると言う。男にもその手術を施そうと提案されるが、上手いことはぐらかし逃走することに成功する。その勢いのまま、村からも脱出する男。終わり。絵師は気が狂っていたのか。本当に素晴らしい手術法を考案したのか。本当にその術式を自身に施したのか。謎です。
仇討三態/菊池寛 仇討ち話三種類。一つ目。敵討ちの旅に疲れ、仏門に下った男が同じ寺内で修行しているものの中にかつての敵を見つける。しかし、男は敵を討つ気がとっくに失せていた。とはいえ、相手に一言物申しておかねば決意が鈍りそうなので、敵へ諸々の説明をし、自分には仇討ちを成し遂げる気はないと告げる。その日の夜、何者かが剃刀を持って床に就く男を見下ろしている。それがあの敵であることに気付くも咎めることはせず、寝返りを打つという独り言を呟き、なすがままにする。あくる朝、男の修行する寺から逃亡者が出たという。終わり。悟りを開けば仇討ちなど詮無きことということですね。二つ目。仇討の旅をする兄弟武士。八年目のある日、二手に分かれていたところ、弟が敵を見つけるも兄と一緒に討たねば申し訳が立たないというわけで兄との合流を待つ。その間に敵がうっかり病死してしまう。仕方がないので故郷に帰る兄弟。仇討ちに失敗した情けない兄弟、と陰口を叩かれる日々。そんな中、同藩内にて仇討ち旅に出かけて三十年目の兄弟武士が見事に敵を討ち果たして帰藩する。その兄弟と比べられ、更に陰口を叩かれる八年目兄弟。ある日、三十年目兄弟の帰藩を祝う宴に呼ばれた実は縁者だった八年目兄弟の兄。後ろ指を刺されることは必至なことは承知の上、参加することに。一人黙って酒を煽っていたところ、三十年目兄が挨拶に訪れ、仇討の件でつい愚痴ってしまう八年目兄。それに対し三十年目兄は「人間の寿命のほとんどを敵討ちに費やしたものの悲しみはわかるまい」と涙し、二人は泣きあった。終わり。時間は有意義に使いましょうということでしょう。3つ目。とある屋敷での宴会中。使用人連中のみで酒宴を開いていたところ、料理番の老人が酒に煽られ自分の身の上話を始める。とはいえ、その内容はかつての雇い主の話を面白おかしく盛ったもの。そうとは知らぬ他の使用人連中は大いに盛り上がる。その中で、とある武士と口論の末、その武士を斬り殺したという武勇伝を披露する。宴が終わった後、老人が一人歩いていたところ、使用人の若い娘から「父上の敵」と言われ、脇腹を刺され絶命してしまう。あの武勇伝の中で老人に切られたとされた武士の娘が何の因果か使用人として同じ屋敷に仕えていたのだ。老人の嘘を知らない者達は娘を褒め称え、身分の良い若者を婿養子として迎えた。終わり。嘘は身を滅ぼす、ということでしょう。
湖畔/久生十蘭 ろくでなしの極みの男が嫁ともう一度やり直すため、何もかも、富も名誉も自身の子供も捨てて暮らすことに決めたという告白文。子供はきちんと跡取りとしての手続きをしているので無事です。やり直しに至るまでの道程。
砂男/ホフマン 弁護士権錬金術師である嫌な老人コッペリウスに心を支配されて狂人になった主人公が気狂いを発症したり治ったりする話。「砂男」とはメガテンシリーズでおなじみなザントマンのこと。子供を寝かしつけるための教訓話としての砂男、心の底から嫌っているコッペリウス、コッペリウスに似た晴雨計売(正体はコッペリウスだった)、一目惚れをした白痴じみた美女(正体はコッペリウスと主人公の通う大学教授が共同制作した自動人形)。これらが合わさって主人公は完全な狂人になり、心優しい恋人の声も届かず自ら命を断つことになる。登場人物において重要人物である老人コッペリウス。何者なのかいまいちよくわからない。もしかしたら悪魔だったのかもしれない。
雪たたき/幸田露伴 なんだかよくわからない。なんだかよくわからない。雪道を歩く浪人が下駄に溜まった雪を除くため、たまたま近くにあった屋敷の門に下駄を叩きつける謎行動。あえての行動なのか、本当にたまたま行ったのか。わかりません。下駄を叩く音で来客が訪れたと勘違いした屋敷の住人が、男をの手を引き屋敷内に連れて行く。拒むことなく「ええい、ままよ」気分で連れて行かれる謎精神の男。屋敷内にて通された部屋で、男を連れてきた女中と女主人と面会する男。何言うわけでもなく、なぜか「にったり」顔の男。もうわけがわからない。なんだかよくわからないけど、「こちら側の落ち度なので金子を受け取ってお帰り願いたい」と屋敷側の女達。「実はこの家の主人と懇ろな仲である」と嘘か真かよくわからないことを言い、室内にあった笛を堂々盗んで退去する男。何もわからない。場面は変わって、女中と誰かの会話の場面。なんだかよくわからないけど、笛を取り返してほしいと訴える女中。「誰か」は恐らく屋敷の女主人の父親辺りの親類にあたる大商人の老爺。その権力を持ってして男が何故か持っていった笛を取り返せとのこと。大商人は「笛は破損しただの紛失しただの適当な理由をつけて主人には前よりも立派な笛を買い与えよう」と提案するも、あの笛でなければ駄目だと女中。あの笛さえ取り返すことができるのなら自分の命など惜しくもないとまで涙ながらに訴える。何故こんなに笛に固執するのかはわかりませんが時中の熱意に負け、笛の奪還を誓う大商人。幸い、笛泥棒の住居は女中が探っていた。それから次の場面は笛泥棒宅。男と大商人が会話の花を咲かせている。何やら難しい話(読めはしても理解はできない文章というやつです)。最中、「今は船の上にいる旦那が屋敷に帰り次第、後ろ暗いことをした女主人の真実を旦那に告げるため、手ぶらで向かえば嘘だと思わかねないので証拠品として屋敷内の笛を持ってきた。返せと言われてもどんな見返り品を寄越されても返すわけには行かぬ」と唐突にかつて訪れた屋敷での出来事を話し出す笛泥棒。大商人がどんなに頼んでも首を縦に振らない笛泥棒とのやり取りが続いていると、話を聞いていた若い武士がやってきて「宝物など何の価値もないものなんだから欲しがっている者にさっさと渡せ」と言う。若い武士は笛泥棒の知り合いらしく、大商人からの見返りで笛泥棒らの属する復讐者集団の一員だという。主のために敵のいる城に攻め込みたいが戦のための諸々が足りないので、大商人からの援助を喉から手が出るくらい欲している。それは他の仲間達も同じで、笛泥棒宅に集まり、さっさと笛を渡してしまえと訴える。多勢に無勢、笛泥棒はついに笛を大商人に譲ることにする。それから大商人の支援を受けた復讐者一団は無事に城を攻め落とすことができ、大商人も娘の不義の証拠である笛を手に入れめでたしめでたし。と思いきや、ある日の大商人宅に、とある男の首が投げ入れられて終わります。最後の「男の首」。ざっくりと男の紹介はありますが誰なのかははっきりとわかりません。最後の最後で唐突に新たな登場人物を出すだろうか。単純に悔し紛れに笛泥棒が誰とはなしに刈ってきた男の首を投げ入れたというのも考えづらい。とすると、これはあの女主人の旦那ではないだろうかと思いましたが旦那は渡海商いとか言う商売人だったはずだし不義を働いた女の首ならともかく旦那を討つ必要性はない。いったい誰の首なのか。なんだかよくわからない。すっきりしない。わからないことが多すぎる。ならばもう一度読めばと思うも何だか気分の乗らない内容なので再び読む気がしない。


ちくま文学の森6巻 恐ろしい話
恐ろしい話/ちくま文学の森
「出エジプト記」より/文語訳「旧約聖書」 目には目をの原文。多分。
詩人のナプキン/アポリネール とある貧しい画家の家に順々に飯をたかりに来る四人の貧しい詩人。画家は詩人らになんだかんだ理由をつけて、洗っていない一枚のナプキンを使わせる。詩人達の内の一人が結核を患い、血の混じった痰をナプキンで拭う。それでも洗濯することなく回し使いされる結核で汚染されたナプキン。その後、四人の詩人は全員結核に罹り病死する。その後、かつて詩人達に使わせていたナプキンを開くと詩人達の顔がシミになって現れていた。終わり。一枚のナプキンを使い回していたのは画家の意図的なのかがわかりませんでした。詩人の結核が発覚したあとも同じナプキンを使わせ続け、たかりに来る詩人達をことごとく病死させようとしたのでは。画家の目論見通り、めでたく詩人達は全滅しました。
パッソンピエール元帥の回想記から/ホフマンスタール いつも通る道に面した店にいる若い主婦は主人公に対し愛想が良い。ついに堪らなくなった主人公は主婦を連れ込み宿のような場所に呼び出し主婦との逢瀬を楽しむ(その際、主人公が来るまで主婦は謎の人物と会っていたがそれが何者なのかはわかりませんでした)。主婦から、こんな恥ずかしい場所で会うのは嫌だ、というようなことを言われたので今度は主婦の用意した家で会うことにする。それから、主婦の指定した日時に主婦の用意した部屋へ行くも主婦の姿はなく、代わりに謎の男が現れ、逃げ出す主人公。それから、再び主婦に会いたくなった主人公。主婦の家に行くと人だかり。何事かと踏み入ると男と女がペストで亡くなったという。その後、主婦の身の上や主婦の住んでいた店を調べてみるも何の成果はありませんでした。終わり。なんだかよくわかりませんでした。ペスト禍みたいな話ですか?
蠅/ピランデルロ 結婚を控えた牧場労働者の男が蝿が運んできた炭疽菌により炭疽病を患い、医者からも見放される。その際、自分を刺したと思われる蝿が医者を呼びに行っていた男(炭疽病患者と同じく結婚を控えていた)が新しくこしらえた顎の切り傷の上を這っているのを見る。終わり。ちょくちょく出てくる「巴旦杏」とはアーモンドのこと。
爪/アイリッシュ シチューが名物の料理屋にて、元警部が友人と食事に来ている。元警部が人生において唯一取り逃がした犯人についての話をする。犯人は料理屋勤めで犯行の際に指の爪が一枚剥がれている。とあるシチューが名物の料理屋で犯人として目星をつけた男を捕まえたので指を確認する。あるはずの指がない。証拠がなければ逮捕はできない。犯人の指はどこへ消えたのか。警察一同、犯人(仮)の勤める料理屋をひっくり返して探すも見当たらず。結局、十中八九犯人であった男を取り逃してしまう。では、犯人の指はどこへ消えたのか。そこで場面は元警部と友人に戻る。料理屋の店主がテーブルにやってきて自慢のシチューの感想を聞きに来る。シチューの味を絶賛する友人。うちのシチューは開業以来、一度も客からの小言を言われたことがない、ここで話を区切る店主。一度だけ、シチューの味が変だ、と言われたことがある、と。終わり。ウミガメのスープ感。
信号手/ディケンズ 信号手は幽霊に悩んでいた。その幽霊が現れると汽車が事故を起こしたり乗客から死人が出たりと何かしら良くないことが起こる。相手は幽霊なのでどうすることもできない。ある日、信号手は汽車に轢かれて死んでしまう。運転手は線路に出ている信号手へ、手を振り顔を覆って注意を促すも伝わらず、不幸にして信号手は轢かれてしまう。運転手が信号手に送った仕草は幽霊がやっていた仕草と全く同じであった。終わり。なんだかよくわかりませんでした。話し手は唐突に信号手と仲を深めた謎の人物。話し手は誰だ。
「お前が犯人だ」/ポー とある富豪が殺された。容疑者は問題児である甥。富豪殺しの犯人探しが始まるが、それに反対する者がいる。それは。富豪の家でタダ飯ならぬタダ酒を煽って好き放題過ごしていた富豪の親友で、性格の良さから皆に好かれていた。親友の反対も虚しく、結局犯人探しは行われる。しかも、親友の主導によりそれは行われる。いろいろあって、当初の疑惑通り甥が犯人ということになり死刑判決を受ける。その後、羽振りが良くなった親友は富豪から注文してもらった葡萄酒の箱が届く日に合わせて食事会を開く。届いた葡萄酒の箱を開くと、見つからなかった富豪の死体が現れ、親友に向かって「犯人はお前だ」と言う。親友は甥から殴られたことの復讐として甥に罪をかぶせるために犯行に及んだと告白し、釈放され富豪の遺産を継いだ甥は日頃の生活ぶりを反省し幸福に暮らした。終わり。富豪の死に疑惑を抱き、あらかじめ死体を探し出し、葡萄酒箱に仕込み、酒屋に口利きし、死体に腹話術を施した、という語り手は何者なのか。
盗賊の花むこ/グリム 娘を嫁に出したくなった父親。名乗りを上げてきた男がいたので身上を調べたら金も持っているし取り立てて悪いところも見当たらないのでその男に娘を渡すことにする。娘は秘密主義の男のことが気になったので男の住処がある森へ一人向かう。いろいろあれしてこれして、実は盗賊でしかも食人鬼だったが隠れ家で小間使いをしていた老婆の助けを得て娘は脱出し、ついでに盗賊一味を捉え、皆残らず打首しました。終わり。娘の父親のいい加減っぷりが酷いですね。とにかく娘を処理したかった感。
ロカルノの女乞食/クライスト とある城。主人の嫁の親切心から一室に乞食を住まわせていたが主人は乞食が邪魔なので無下にすると乞食は死んでしまう。その後、この部屋に幽霊が出るようになる。そのせいで売却予定だった城に買い手がつかない。主人夫婦が本当に幽霊が出るかどうか確認のために犬を連れて件の部屋で一晩過ごす。現れる幽霊。逃げる嫁。頭がおかしくなった主人は部屋に火をつけ自分もろとも城を燃やす。終わり。この舞台がイギリスであれば買い手が引く手あまたでしょう。
緑の物怪/ネルヴァル 夜な夜なとんでもない騒音を鳴らす地下室がある。調査にでかけた組頭の男はそこで踊り狂う酒瓶の群れを見る。緑の瓶はオスで赤の瓶はメス。男は赤の瓶を胸に抱き、うっかり床に落として割ってしまう。記念に緑の瓶を持ち帰り、その後開いた自身の結婚式で緑の瓶の酒を夫婦のみで飲む。それから二人の間に子供が生まれる。肌の色が緑の悪魔が生まれる。終わり。マザーグースで瓶が歌う詩があったことを思い出しました。
竈の中の顔/田中貢太郎 湯治に来ていた男。そこで仲良くなった囲碁上手な僧。来るな来るなと再三注意されていたにも関わらず、僧の住む庵へ行く男。庵の竈の穴からは人の顔が現れ、扉の閉じられた仏壇の中には奇怪な仏像と人の生首がある。出された茶を捨て、宿へトンボ返りをする男。宿の亭主からは前もって怪しい僧の話は聞いていたが、それが囲碁上手な僧であったと言われ、詳細を口にすると災いが起こるというわけで男を宿から帰す。それから屋敷に帰り、帰国祝いの席にて、可愛がっていた末子が縁側に出ると大声を上げる。慌てて様子を見に行くとそこには首のない死体があった。終わり。なんだかよくわかりませんでしたが、「牛の首」的な詳細不明の怪談話感があります。
剣を鍛える話/魯迅 床に就いている主人公。水瓶に落ちたネズミを見に行く。溺れるネズミを弄んだり助けたりしつつ、結局は殺してしまう。何かの伏線かと思ったら無関係でした。起きてきた母親から主人公もいい年なので父の仇を討てと託される。父は腕利きの鍛冶師で大王の命令で渾身の剣を雄剣雌剣の二振り作り上げる。干将莫耶ですか? それはそれとして、雌雄に分けた剣の内の雌剣を大王に献上した際に、これ以上良い剣を世に出さないようにと大王に処断される。その仇を討って欲しいと母親。家に遺された父が大王の命令で作った剣の雄剣を携え、旅に出る主人公。都に着いた主人公。運良く大王の行列に鉢合わせる。しかし、押しかけた民の群れにより大王を逃してしまう主人公。ついでに民衆にもみくちゃにされた際にぶつかった民に面倒な絡まれ方をされる。そこを助けてくれたのは謎の黒い男。更にその男から、大王の命を狙っている者がいるとの密告があったので大王は追手を送り出している。主人公を逮捕するつもりだ、との情報を得る。男は主人公の代わりに仇討ちをしてやる、と持ちかける。なぜならば、黒い男は主人公の父親の知り合いで主人公のことも以前から知っているから。この黒い男が大王への密告者かと思ったら違いました。それはそれとして、主人公に仇討ち代行を持ちかける男。その代わりに主人公の剣と命が欲しいと男。了承し、自らの首を切り落とす主人公。何が何やら。その後、奇術師と称し大王への謁見を許される。熱湯を注いた鼎の中で子供の首を舞わせる奇術を大王に見せる。子供の首というのは主人公の首。しばらく後、大王に鼎を覗かせる黒い男。その際に大王の首を切り落とす。熱湯の中でお互い噛み合って喧嘩をする主人公と大王の首。主人公が不利と見るや黒い男は自らの首を切り落とし加勢する。大王の側近達が気付いた頃には鼎の中には頭蓋骨が三つ。どれが大王の首なのかわからない。仕方がないので三つ全てを大王の墓に納めることにして終わり。黒い男は何者なのか、主人公の父親とはどのような関係だったのか、大王への謁見の際に名乗った自己紹介は真実なのか、何もかも最後まで謎でした。これは仇討ち成功なのか。謎の全滅エンド。黒い男の名乗った「宴師敖者」は元ネタがあるんですかね(未確認)
断頭台の秘密/ヴィリエ・ド・リラダン 以前の感想はこちら。今回の感想はここから。死刑囚となった博士が面会に来た博士から、断頭台で首を切り落とされた直後、意識があれば自分の今から言う通りに目蓋を指定回数動かして欲しい、とのこと。承諾する死刑囚。処刑実行日、首を切り落とされた死刑囚。すかさず博士が死刑囚の首を拾い上げる。死刑囚の首は目蓋を動かすが博士に指定された数に足らないまま事切れる。終わり。終わり。
剃刀/志賀直哉 剃刀研ぎ師兼顔剃り屋。床屋なんですか? そこの店主が風邪を引いて床に臥せっている。そんな中、客が訪れる。使えた若秀は素行が悪いので首にした。今、店にいるのは使えない若者。仕方なしに店主が病を押して仕事をする。まずは剃刀砥ぎ。次に来た客は顔剃りを依頼する。熱にうなされながら仕事にかかる店主。だんだん意識が朦朧となり、客の喉を切り裂く店主。終わり。風邪を引いたスウィーニー・トッド(和風)
三浦右衛門の最後/菊池寛 戦に破れ君主を見捨てて逃げ出した美少年武士三浦右衛門。辿り着いた村で村人に馬鹿にされ、落人だということがバレると着物や刀を奪われる。しかし、命が惜しいのでフンドシ姿で逃げ出す右衛門。その後、どこぞで着物を手に入れまともな身なりになった右衛門が辿り着いたのは、そこの城主はかつて人質時代に右衛門が数々の行為を与えたという恩がある。そこを頼って、かつ嘘八百を並べ立て、城に囲われることになる右衛門。城主は右衛門の君主とその敵方との中間でどっちつかずに属している。合間を縫って右衛門の君主の消息を探ると既に君主は死んでいるとの情報を得たので、ここは右衛門の首を敵方に差し出すのが良い身の振り方だと判断し、右衛門を不忠の罪で処刑しようとするが右衛門は命が惜しいと言う。城主は右衛門を弄んでやりたくなったので、片腕を差し出せば命を助けてやる、と持ちかける。承諾する右衛門。片腕を切り落とされた右衛門。これだけでは足りぬ。もう片腕も差し出せ、と更に持ちかける城主。命が惜しい右衛門。もう片腕も差し出す。両腕をなくした右衛門。それでもまだ足りぬ、と城主。今度は片足を差し出せ、と持ちかける。やはり、命が惜しい、と片足を差し出す右衛門。片足も切り落とされほとんどだるま状態の右衛門。これでもまだ命が惜しいか、と城主。右衛門は声が出せないも口を動かす。すかさず目配せをする城主。控えていた太刀取から首を切り落とされる右衛門。首だけで何事か口を動かす右衛門。恐らく、命が惜しい、と言っているのだろう。三浦右衛門の最後を知った時、「There is also a man」の感に堪えなかった。終わり。最後の英文は学力うんこの海坊主では理解できなかったので、Google翻訳にぶち込んだところ「男もいます」とのこと。「こんな男もいるんだなぁ」みたいなことでしょう。それはそれとして、君主の寵愛を受けた美少年武士が汚らしい村人達から折檻を受け、身ぐるみ剥がされ、その後は処刑場で城主に弄ばれほぼだるま状態にされた挙げ句に結局打首になる。刺さる人には刺さる内容だと思います。リョナ小説。
利根の渡/岡本綺堂 川岸に盲が毎日朝な夕なに立っている。渡し船が来ると客人一人ひとりを捕まえて「野村彦右衛門はいないか」と問いただす。その人物を探すため、毎日毎日川岸に立っているらしい。興味を持った渡し船の船頭の老人が盲に声をかけ食事を与え、ついに自らの住む小屋に盲も一緒に住むよう誘う。そうした暮らしが続いたある雨の日。小屋の近くを流れる川で巨大なスズキが見つかる。老人が捕まえに行くが歯が立たず。そこでやにわに盲がやってきて太針でスズキの目玉を正確に狙い、一突きの内に仕留める。それに恐怖を覚える老人。なんやかんやあって、盲が風邪を引く。病の床で盲は自らの素性を話し出す。それによると盲はとある侍の屋敷に奉公使えをしていた者で、そこの主人の嫁に色目を使ったところ、主人にばれ、目を潰され放逐されてしまった。潔く命を取るのならまだしも人を不具にして追い出すのは酷すぎる、と自分の不忠っぷりを棚に上げ、主人に対し復讐を誓う盲。按摩師の弟子入りをして針の扱いを修行し、完璧に使いこなせるようになったので後はかつての主人に近寄るだけ。そこで主人が江戸と国許を度々往復していたことを知っていたのできっとこの渡し場の船に乗るだろうと当たりをつけ数年間相手を待ち続けた。しかし、本懐を遂げぬまま病を得てしまい、寿命ももう尽きそうになったので世話になった老人に全てを話しておきたかった、と盲。次の日、老人は自らの手で自分の首筋にある急所を太針で貫き絶命している盲を見つける。死体は近所の寺に懇ろに葬った。それから数年。長雨の影響で洪水が起こって渡し船が出せない日が続いたがようやく落ち着いてきて船も出せるようになったある日。完全に落ち着いていはいない川で一隻の船が転覆した。近くにいた船頭や見張りのために出ていた村人衆の働きもあり、ただ一人を除いてすべての乗客は救出された。助からなかった一人というのが江戸から出てきていた野村彦右衛門という名の侍で数年前より眼病を患い盲目状態だったという。船頭の老人はかつて弔ってやった盲の墓に参りに行った。終わり。なんとなく気持ちのいいような話ですが、なんとなく逆恨み感のある話でもあります。いくら美しいからと言って主人の嫁に手を出してはいけない。NO、NTR。
死後の恋/夢野久作 ロシアの国にて。ボロ礼服を着たロシア紳士に呼び止められ、一緒に食事をすることになる日本の軍人。紳士が言うには自分が今から話すことを信じてくれれば自分の全財産を渡すとのこと。紳士は話し出す。貴族の一人息子であった紳士は自暴自棄から軍隊に志願する。そこで貴族の匂いのする兵卒と出会って気が合い、いつしか兄弟同様の仲になる。しかし、楽しい時間は長続きしなかった。紳士たちの隊に斥候任務が下される。出発前日、紳士は友人と二人きりになる。友人は周りに人がいないことを確認すると、懐から袋を取り出して開き、見事な宝石群を見せる。友人はその宝石の由縁を語る。実はやんごとなき身分であった友人。しかし革命が起これば一族皆殺しは避けられぬ。万が一のために一族の血統を絶やさぬよう友人に一族の財産である宝石を譲り家から追い出し、身分を隠して生活させる。そして、時節が旧家に来たならばその宝石を使って身分を証明し、家を再興して欲しいと託されていると言う。それから身分を隠して細々と生活を続けていたが強制徴兵に引っかかり軍人になってしまった。それから、昨夜、仲間達がひそひそ話をしているのが耳に入った。それによると自分の一族が過激派の手にかかり皆殺しにあったという。そうして何の望みもなくなってしまったので一番の友人である紳士に全て話しておきたかった、と友人。紳士は思い出す。廃帝一族がロマノフ王家の血統が過激派によって絶えてしまったということを。もしも友人の身の上話が真実で、本当にロマノフ王家の血統だとすると、友人と同じ年頃の皇子はいないはずである。一番年齢が近いのはアナスタシヤ殿下であるが彼女は女性である。それはそれとして、友人は王家筋の者に違いないと確信する紳士。そして、実は宝石愛好家でもあった紳士はどうしても友人の持つ素晴らしい宝石が欲しくなる。次の任務で友人が戦死したらいいのにと思うくらいに。それから任務決行当日。大草原を行軍する紳士達の属する隊。突然、機関銃の攻撃を受ける。この際、紳士は太腿に銃弾を受け負傷するも命に別状はなく生き延びる。そうこうしている内に仲間達は近くに見えていた森に逃げてしまった。すると森からも激しい銃声が聞こえてくる。生来弱虫であった紳士は足の傷もあり気絶してしまう。しばらく後、正気に戻った紳士は草原を這いずりながら移動し仲間達が向かった森を目指す。夜になりようやく辿り着いた森の中で明かりを得るため、ガソリンマッチに火を灯す。すると目の前にそびえ立つ大樹に人間の死骸が括り付けられているのを見つける。それも一人だけではなく何人もの人間の死骸が、丸裸でありとあらゆる残虐な行為を受けて凄惨な姿と化した戦友達の死骸が目の前いっぱいに現れる。紳士の背後にある一際大きな樹で友人の死骸が引っかかっているのを見つけてしまう。しかし、その死骸は他の戦友達と違い、銃弾の跡も虐殺の後もない。紐で縛って引っ掛けてあるだけの死骸の顕になった胸元から、友人が女性であったこと知る紳士。しかも陵辱の跡も認めてしまう。紳士が欲していた宝石は猟銃に込めて下腹部に打ち込まれてあった(『空砲に込めて』とありましたが銃弾以外の物を込めて発射するということは可能なの疑問です)。紳士は言う。きっと彼女は私に恋をしていたから両親の形見である宝石を見せ、身の上話をしてくれたに違いない。しかし、私は宝石に目が眩み、彼女の告白に気づかなかった。それでも彼女の私に対する愛情は変わりませんでした。なぜなら私をあの森に引き寄せたのは彼女に違いないから、と。そして日本の軍人に彼女に撃ち込まれていた宝石を見せる。話を一通り聞いた日本の軍人は話を信じると言い、歓喜する紳士。紳士の全財産であるという宝石を譲ろうとすると軍人の態度は一変、紳士の話が本当らしくないと言いのけ退席する。アナスタシヤの名前を呼ぶ紳士がひとり残されて終了。なんとなく映画「スターリングラード」を思い出しました。ぶら下がった死体のシーンありませんでしたっけ。小説と時代が違う? よくわかんねえや(無学)作中は何の……何の戦争をしているんですか……? さ、左翼革命……?
網膜脈視症/木々高太郎 精神病院の診察室。母親を連れた少年が診察に訪れる。患者は少年で動物恐怖症や小型動物の死骸恐怖症だの赤い炎の幻覚が見えるといった症状を訴える。少年は入院することになる。幻覚の方は眼球の血管が見えてしまう表題にもなっている網膜脈視症だと診断が下される。いろいろあって、少年は父親の自殺を見ていた。しかし、少年の父親は存命である。母親を問いただす。実は今の父親は二人目で前夫は病を得てから首吊り自殺を遂げたと言う。それから、主治医と少年が病院から失踪する。なんだかんだと先生の名推理もあり、実は少年の現在の父親は犯罪者であり、しかも首吊り自殺に見せかけて前の父親を殺してしまっていた。それと、ついでに金回りが苦しかった主治医も金をちらつかせて殺した。先生の名推理と名診察のおかげで事件は解決。でも主治医は秀才だったのに死んでしまったのはもったいなかったなぁ。終わり。
罪のあがない/サキ 自宅で飼っている鶏が何者かに殺された。そういえば隣家の飼い猫が鶏小屋に度々忍び込んでいた。ということで隣家の主人と相談の上、猫を死刑することにした。その際、主人が言うには「子供達には黙っておけばいい」とのこと。そして、刑を終えたところを隣家の何も知らない子供達に目撃され、ケダモノ扱いされる主人公。高価な菓子を送っても欲しがっていた花束を送っても子供達の冷ややかな態度は変わらず、のみならず、主人公のまだ幼い子供をさらい、豚小屋に連れていき糞の山に沈める。実は鶏殺しの犯人が猫ではなくネズミであったことが判明し、しかも猫はネズミ捕りに鶏小屋に通っていたことが判明する。ここにきて、どうしたら子供達に許されるか尋ねる主人公。猫の墓で白いシーツを着て「私は浅ましいケダモノです」と言い続ければ許す、と子供達。仕方なしに実行する主人公。その後、子供達から相変わらずケダモノ扱いされる主人公でした。終わり。隣家の主人は何もしません。一番の胸糞ポイントはここですね。何もしない隣家の主人。
ひも/モーパッサン 市場で紐を拾う老人。老人は普段から何かしら役立ちそうなゴミを拾うことを趣味にしていた。紐を拾うところを老人と以前いざこざを起こした馬具師に見られてしまう。二人は執念深い質なのでいまだに腹を立てあっていた。その後、宿屋へ行く老人。そこで財布の紛失があった旨を知らせる「ひろめ屋」がやってくる。この「ひろめ屋」というのがピンとこないのでググりました。宣伝業者だそうです。それはそれとして、憲兵が紐を拾った老人を探しにやってくる。憲兵は老人を役場まで連れていき、町長に引き合わせる。町長が言うには、財布を拾ったのは老人だという情報提供があった、と告げる。その目撃者は老人といがみ合っている馬具師であった。自分が拾ったのはただの紐で財布は拾っていないし、馬具師が見たのはこの紐だ、と紐を見せつけながら話すも町長は信用しない。馬具師は信用のできる立派な人だから、と話にならない。馬具師を呼んで対談させてもお互い罵り合うばかり。老人自らの申し出で身体検査が行なわれるも当たり前だが財布は見つからず。仕方なしに帰宅を許される老人だが噂はすっかり広まり、財布泥棒だと決めつけられてしまう。村中あるき回り、必死に自己弁護するも皆に軽くあしらわれてしまう。その後、財布は別の人物が拾っていたことがが判明するも、老人の相棒にやらせたこととして村に広まり、結局老人の汚名はそそげない。老人はひたすらに紐の話をする。それは死の床まで続いた。終わり。何を思ってこのような胸糞話を書いたのか、作者の気持ちを考えたくなります。嫌なことがあったんですか。むしゃくしゃしていたんですか。それはそれとして、ちくま文学の森の登板率高いですねモーパッサン。モーパッサン、モーパッサン、雨、モーパッサン。
マウントドレイゴ卿の死/モーム 精神病院に一人の男がやってくる。彼の名はマウントドレイゴ卿。優秀な政治家であったが目下の者を徹底的に見下すところがあり、そのせいで敵が多かった。彼は自分を診断する博士も目下に見ていたので傲岸不遜な態度で診断に挑む。彼は言う。最近、悪夢に悩んでいる、と。その内容は、宴会でズボンを履き忘れたところを皆に見られて笑われる。自分が常日頃から見下しているグリフィス議員からも見られてしまう。その夢を見た翌日。グリフィス議員に出会うと彼はマウントドレイゴ卿の足をじろじろ見た後、片目をつぶって見せた気がした。あたかも昨日の夢を知っているかのように。その次に見た夢は議会で論争を行っていた。反対党席の中に忌々しいグリフィス議員を見つけると、彼はマウントドレイゴ卿に向かって舌を出した。マウントドレイゴ卿は自分がどれだけグリフィス議員を軽蔑しているかを見せるために野卑な流行歌を歌い上げる。すると、議会にいた人間全てが笑い転げだす。そこでようやくマウントドレイゴ卿は自分が大失策を犯してしまったことに気付いたところで目が覚める。次の日の議会にて、グリフィス議員の演説をしていた。その中にマウントドレイゴ卿が夢の中で歌った流行歌の歌詞が二行ばかり現れる。思わずグリフィス議員の顔を見ると彼は冷笑を浮かべてマウントドレイゴ卿を見つめている。次の夢は居酒屋へ行く夢だった。そこで美しくもなく若くもない売春婦が欲しくなる。すると突然現れたグリフィス議員が「大いに愉快にやることだな」などと軽口で話しかけてくる。何回か言葉を交わす二人。マウントドレイゴ卿は近くのテーブルからビール瓶を見付け、それを手に取り力いっぱいグリフィス議員を殴りつけたところで目が覚める。翌日、議会の図書館を訪れていたマウントドレイゴ卿はそこにグリフィス議員がいることに気付かなかった。すると別の議員がグリフィス議員の近くにやってきて声を掛ける。グリフィス議員は応える。「酷い頭痛がする。まるで瓶か何かで頭を殴られたようだ」と。このようなことがあり、マウントドレイゴ卿は眠るのが怖くなり不眠状態に陥っているのをどうにかしてほしいと訴える。このままでは自殺をするか夢の中でグリフィス議員を殺すしかないと言う。博士はグリフィス議員に対してなにか後ろめたいことがあるのではとマウントドレイゴ卿に問う。嫌々ながらに卿が言うには、かつて議会においてグリフィス議員の家族や選挙区の有志達が集まっている中で徹底的にグリフィス議員を言い負かして彼の出世の望みを断ったことがあると告白する。それならば誠心誠意彼に対して謝れば悪夢から逃れられる、と博士。そんなことをするくらいなら自殺をするほうがましだ、とマウントドレイゴ卿。それしか方法はない、と博士。しかし、それだけはどうしてもできない。自分は後悔していないと鋼の意志のマウントドレイゴ卿。その言葉を最後に卿は診察室を去る。それから、マウントドレイゴ卿が診察を予約している時間(よくわからなかったんですが、後日でしょうか)になっても卿が現れない。他の約束もあることなので女中に言伝を頼んでおく、その際、ついでに夕刊を持ってきてもらう。博士の目に飛び込んできたのは「マウントドレイゴ外相惨死す」の文字。記事によるとマウントドレイゴ卿は地下鉄の駅で電車の入ってきた線路の上に落ちたのを目撃されたらしい。おそらく突然失神してしまったのだろうと記事は綴る。博士は自分が患者に対して何もできなかったことに対する自分への不満が浮かぶ。続いて、新聞を繰っていところ、博士はギクッとする。それはグリフィス議員が急病で死亡した、という小さな記事だった。マウントドレイゴ卿はきっと夢の中でついにグリフィス議員を殺してしまったのだろう、と博士は考える。そして、なんとも言えない恐怖を感じるのだった。終わり。
ごくつぶし/ミルボー 年を取って働けなくなった老人は女房から食事を出されなくなる。女房は、働けなくなった老いぼれ馬に餌を与える者がどこにいる、と言う。いるわけない、と老人。そして、自分の立場を理解し、静かに死ぬ準備に入る。何かをもたらさないものは死ぬしかないので、静かに死に行くことに決めた老人。寝台に横になり一日中そこから動かない。そして、ついに死んだ老人。残された女房は思う。あの人は良い人だった。立派に身なりを整えて、息子の許可が取れたなら金持ちのような墓を建てよう。終わり。「何かをもたらさないものは死ぬのが当然」なんです。無産は死ね、ということです。無産は死ぬしかないんです。何も生み出せない何の価値もないものは死ぬしかないんです。死ぬしか。
貧家の子女がその両親並びに祖国にとって重荷となることを防止し、かつ社会に対して有用ならしめんとする方法についての私案/スウィフト 貧困層の子供は往々にして不幸な人生を歩む。それも子供だけでなく親も不幸になる。そうならないためにはどうしたらよいのか。筆者渾身の案はこうである。貧困層の子供で満一歳を迎えたら国に買い取ってもらい食肉にすると良い。そうしれば貧乏な母親は十分な資産を得ることができるし、子供が商品になるとわかれば父親は母親に暴力を振るわなくなり夫婦仲は円満になる。それに幼児の肉はとても美味なので、それを口にすることができる地主などの富裕層は快楽を得ることができるし、新たな雇用にも繋がり国が富めること請け合いである。そして、我が国に救う旧教徒の数も減らすことができる。なんて素晴らしい案なのだろう。終わり。幼児肉はとても美味だそうです。ごくつぶしの後に来る話が貧困層の子供食用化の話というのは何だかドキドキします。
ひかりごけ/武田泰淳 北海道の羅臼にて発光する苔「ひかりごけ」を見に来た話し手。そこで案内してもらった中学校の校長より、とある事件の話を聞く。それによると、この地で軍船が難破し、船員が遭難する。折しも季節は真冬。寒さと飢えに襲われる船員達。そこで人肉食に辿り着き、最後の一人になった船長は殺人と死体損壊の罪で裁判にかけられる、といったもの。これが前半部分。後半は話し手が制作した戯曲の台本形式で人肉事件が繰り広げられる。第一部では船長の容姿の指定は「読者が想像しうる限りの悪相の男」。名前が記録に残っていた船員西川は「美少年」を指定されています。それとその他の船員二人。以上が登場人物。既に遭難した状態で幕が上がります。訛り丸出し、船長への不信感丸出し(ここは野上弥生子の『海神丸』を彷彿とさせます)、そして飢餓と疲労、そして寒さから死んでいく船員。「人を食べた人間は首の後に光の輪が現れる。まるで『ひかりごけ』に似た光が現れる」と昔からの言い伝えを語る死にゆく船員。それを踏まえ、船員達(西川)の首の後から光の輪が生じる。そして、船長の首の後にも同じ輪が光る。うんぬんかんぬん。この第一幕の終わり方の舞台演出が良いです。アイヌの祈祷音楽が鳴り響く中、ひかりごけの光が満ちる。西川の死体を引きずる船長は頭を抱える。音楽のテンポが変わり舞踏曲風になる。幕が下りる。ゾクゾクします。第二幕の舞台は法廷の場。船長に指定された容姿は「第一幕とは打って変わってキリストのごとく平安な顔。俳優は別人を使うのが望ましい。何よりも重視するのは、筆者を案内してくれた校長の顔に酷似していること」とある。食人や殺人を通して悟りを開いたとも取れる容姿指定。それから演出者が演技をするために念頭に入れることとして、ボッシュやブリューゲルのグロテスクな聖画、日本中世の絵巻物の表現法を念頭に入れろ、とあります。舞台の話しに戻ります。検事から詰問を受ける船長。第一幕の訛りは消え失せ、落ち着いた標準語で喋る船長。完全に悟りを開いている船長。自分を裁けるのは人に食べられたことのある人間か、人を食べたことのある人間しかいない、と船長。いつの間にか、法廷に集まった人間の首の後にはひかりごけの色をした光の輪が生じる。全員に。船長は言う。見て下さい。よく私を見て下さい。船長の周りに集まる人々。おびただしい数の光の輪。終わり。第二幕の終わり方で作者の指定した画家であるボッシュの絵画「エッケ・ホモ」を思い出しました。何か変な名前だから覚えていました。「エッケ・ホモ」の意味は「この人を見よ」。絵画の内容はローマ総督により尋問にかけられるキリスト。総督の呼びかけ「エッケ・ホモ」に応え、集まる群衆が醜く描かれています。海坊主は第二幕の演出者向けの指示で浮かべた絵画がこれだったんですが、これはキリストが誤って殺されたことを伝えているそうです。ひかりごけ事件に話を戻しましょう。船長は罪人なのか。死体損壊が罪だと決められているのなら罪なのでしょう。多分。なんだかもうわかりませんが、貧困者の子供を食肉化しようという案の後に続くのが人肉食事件というのは何だか考えられますね(何も考えていない)。