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ふわっとした記事は久しぶりですね。
今回はありがたいことに質問を頂いたので、オセロの上達と練習法について思うところを書きます。
オセロ教室の講師をやっていることもあり今までも何度も聞かれたことがあったのですが、まとまった内容で答えられていなかったな~と。
すごく長くなってしまった上に文章だけなので、太字だけ読んでだいたいわかるようにしました。

この記事は中級~上級者向けで、例えばオセクエで言うと赤レート(2000)を達成したことがあるくらいの方~2200前後くらいの方に向けたものです
とは言ってもレートを100伸ばすのは大変な努力が必要になるので、この範囲でもだいぶ実力にバラつきがあると思います。
今回は質問者の方の実力を踏まえて、この範囲でもやや上側の人を意識して書いています。
こうなるとこの記事が刺さる人はめちゃめちゃ少ないのですが、まあいいでしょう。
この範囲より強い人は勝手に強くなってください(投げやり)。

当然ですが以下は私見なので、別のやり方で強くなった人はたくさんいると思います。
意見が分かれる部分もあると思いますが、今回は特にそういった注意は書きません。
僕は(連盟)三段でそこそこ足踏みしたので、そのとき~七段になるまでに試して上手くいった/いかなかった経験をもとに書きます。

大きく序盤中盤終盤に分けて考えることにします。
当ブログの作法に則って、序盤は暗記が切れるまで、中盤は暗記が切れてから終盤まで、終盤は(暗記が切れた状態で)20個空きからとしておきます。

【全体を通して】

守破離」という言葉があります。

オセロに当てはめると大雑把には
守:理論(手筋)に忠実に打つこと
破:理論(手筋)の例外に気づき取り入れること
離:独自に有効な理論(手筋)を構築すること

になるかと思います。(ほんとはちょっと違うけど!)

有段者や赤レートレベルで伸び悩みを感じている人はだいたいこの「破」がうまくいってないような気がします。僕はそうでした。
なんでうまくいかないかというと、実は「守」がまだ不十分であることが原因です。
「守」から「破」に至るためには、一度徹底的に「守」を見つめなおしてみることが必要でした。
以下では「守」を再確認することに主眼を置いて、当時の練習法を振り返ってみます。

ちなみに、私見では「離」に至っているプレイヤーは僕を含めてほぼいないので、ここは天才プレイヤーたちに任せるとしましょう。

【序盤】

定石選択は最も悩むところの一つだと思います。
ざっくり二通りの選択が考えられます
(1)自分の得意な進行を確立して、極める
(2)最善進行を研究して、相手の変化を受けきる


既に自分の中にこれと決めたものがある人もいれば、何を選んでいいか悩んでいる人もいるでしょう。
前者の方はとりあえずそれを貫いてみればいいと思います(対象のレベルの方だとそういう人が多い気もします)。
後者の方、あるいは前者だけど伸び悩みを感じる…という方には、(2)最善進行から選ぶことをオススメします。

これには二つ理由があります。
・最善進行の暗記は戦術として強力であるだけでなく、今後自分から変化を仕掛けるうえでも財産になる
・最善進行を打ち続ける限り、基本的に中盤以降に敗因があるため、反省材料になる

です。
実際に私が三段から昇段し、以降数年で七段になったときには、しばらく黒番で虎大量進行、白番で最善受けを使い続け、知識を補強していきました。

大切なのは実際に七段になったときは黒でも白でも変化をしていたのにも関わらず、最善進行(受け)を練習することには大きな意味があったことです。
理由の一つは、最善進行をある程度理解していないと、有力な変化のレパートリーが少なくなってしまうからです。
今回の記事が対象とするようなプレイヤーは、オンラインでも生の大会でも、他のプレイヤーとの再戦が少なくないと思います。
既に対策「される」側にまわりつつあるプレイヤーが勝ち続けるためには、序盤の選択で後れを取らないことは必須ですが、特定の定石を打ち続ける場合、対策をされても大丈夫なほどの相当高いレベルで習熟していないと「新手一勝」で終わってしまいます。

最善進行を練習した経験のあるプレイヤーなら複数の変化を用意するのはそれほど大変なことではありません。一方で逆は困難です。
例えば、黒番でF8コンポス、白番で最善受けを採用していた場合、新しくロジステロを打つためにはロジステロだけを研究すればよく、しかも相手の最善受けについても多少の知識がある状態になります。
一方で、黒番でローズ、白番でカン(イタリアンクロス)だけを打ち続けたプレイヤーが新しくロジステロを打ち始めようとしたときには、相手にノーカンを打たれることも想定して考えなければいけません。
(同じ理屈で、最善進行は選べるものであっても、できれば全て経験しておくのが良いと思います。縦取りだけでなく斜め取りも一年くらい打ってみた経験は間違いなく活きています)

最善進行だけを打ち続ける期間は、相手がやりたい放題やってくるので研究負けしやすく、思うように勝てないかもしれません。
しかし負けた試合も、不利になってしまった手が少なくとも一つはっきりしているはずですから、明確な反省材料をひとつ手に入れることができます。

高段者を目指す場合、同じ定石だけで勝ち続けるのは難しいと考えたほうが良いと思います。
将来のための「急がばまわれ」だと思って、最善進行を知っておくことをオススメします。

これは「守」を徹底することで「破」に至れるようになる例だと思います。

【中盤】
中盤戦の中でも大きなウェイトを占めるのはやはり、辺(+中辺)の扱いです。
中盤でも辺の処理は試合の流れを大きく変えるため、ここの精度を並のプレイヤーと差をつけられるレベルまで上げることは必須です。

具体的な手筋はキリがないですし、抜けなく語ることは僕にはできないと思うのでしません。
しかし、特に生オセロの20分持ち程度の時間があれば、僕は少なくとも辺への自分の着手は根拠をもって説明できると思います。

ここで重要なのは、「根拠をもって着手できると言った、僕の生オセロの試合の辺への着手」に限定しても、100%正解の手を打つはずがなく、ミスをすることが多々あります。
あるいは辺以外の選択でも、たびたびミスをします。

ミスには(少なくとも)二種類あることに気が付かなくてはいけません。
(A)自分の読みが甘く、想定と違う進行になってしまい損をした
(B)自分の想定通りに進んだが、結果損をしていた


(A)のミスについては、読み抜けがないように気を付ける、くらいしかありません。局後は自分が何を読んで着手し、何を見落としたのかを明らかにして反省しておきましょう。ただ、多くの人は(A)を気に掛け過ぎている気配があります。読み落としは確かに大いに反省するべきミスで、知らない手筋があったのならば覚えるべきですが、学べることは(B)ほど多くありません。

(B)はより深刻です。一方で、成長のきっかけになるのは実はこちらだと思います。
人間は中盤から完全読みをすることは不可能なので、中盤での着手は経験則から導かれる指針に従って打つことになります。例えば単独C打ちをして本当に悪いのかは読み切れなくても、経験則から単独Cの形が悪いことを知っているので、普通は打ちません。
自分の中にある指針に従って打った結果、読み落としをしていないのに間違ってしまった場合は、指針が間違っているとは限りませんが、修正が必要か、少なくとも例外があることを知らなくてはいけません。

オセロに関して例外のない指針を持つ人はいないと思うので、たくさん打っていれば(B)に出会うことは少なくありません。
局後自分が(B)のミスをしたとわかったとき、「なぜこの局面が例外的なのか」を考える必要があります。
これは結構大変な作業で、誰も完璧な指針を持っている人がいない以上誰かに教えてもらって正解とも限りませんし、明確な答えがあるかどうかもよくわからない(極論完全読みしかない!)わけです。自分なりの答えをなんとかひねり出すしかありません。
一方で、この作業の積み重ねがより正確な指針を与えてくれます。すべての着手にこの作業を行うことが理想ですが、あまりに大変なので、せめて辺の着手だけでもやっておきましょう。特に辺の着手に関しては上達に直結すると言って良い成果が出ます。

僕はブログに自分がミスをした局面について自分の判断根拠と間違いの理由をまとめていた期間があります。今から見返すと浅いことが書いてあって恥ずかしかったり、逆に当時しっかり反省したのに身についていないこともあってそれはそれで恥ずかしかったりと、恥ずかしいのですが、とにかくブログでの検討の経験が棋力向上に役立ったのは間違いありません。

これも、自分の中に指針を用意し、そこに根拠をもって着手することを徹底して「守」ることで、今までの常識を「破」る手の必要性に気付けるということです。
根拠なしに着手を繰り替えすだけでは、そもそもミスが(A)(B)どちらかもわかりませんね。

さらにこの場合、「破」ったことでできた例外を盛り込むことで「守」るべき新しい指針ができてきます。
簡単な例として皆さんは既に、「X打ちはダメで隅をとればよい」という指針を持って打っていたら、ある日「ウイング攻め」という例外に出会い、指針を更新して「ウイング攻めの場合はXに打ってもいいし隅を取ってはダメ」という新たな指針を守って打つことを経験していますよね。


【終盤】


ここは最も意見が分かれるところだと思います。実戦/練習のそれぞれで
(ア)終盤は石数まで数えて最善を打つべき
(イ)終盤は勝てばなんでもOK、スピード重視

の立場が考えられます。

僕は実戦でも練習でもだいたい(イ)派で、さらにとんでもない要求をすると、手順がわかれば数えなくても±4石くらいの精度で石数を把握しておけると良いな~と思ってます。

最もこれは正確ではないというか、誤解を生むと思うので、もう少しちゃんと書きます。
理想的には目指すべきは石数までわかることで、当然その練習を積むべきです。
ただし、実戦の限られた時間では(イ)の立場をとらざるを得ないことも多く、そういう状況を想定しないで(ア)の完璧主義の練習だけをしても仕方がないと思います。
実戦でよくある以下のケースでは、どちらも(イ)の立場で行くしかないので、(ア)の練習はあまり役に立ちません
・有力な手順が見えない
・数えるには時間が足りない
一方で(ア)が役に立つのは以下のケースです
・細かい試合で有力な手順が複数あるため順番に調べていきたい
・有力な手順が見えたが時間に余裕があるため勝っていることを確認しておきたい
(・ポイントの関係で石数がほしい)
真に勝ち続けるためには全てのケースに対応する必要がありますが、多くのケースに対応するために必要で、勝敗に直結するのはどちらかと言えば(イ)の力であると思います。

多くの人が練習では(ア)がベストで、(イ)は怠けているだけと考えているような気配を感じますが、(ア)も(イ)も練習なしにできるようになることではありません。
このような風潮(ほんとのところはわからないけど…)を踏まえて、(イ)の重要性を強調したいと思います。
実際、10個空きほどになると半分以上の局面で「見えてしまえばこれしかない」手順があり、間違えるのは「見えていたけど時間内で数え間違えた」からではなく「見えなくて時間切れ」が圧倒的に多いはずです。
まあ、個人的には(イ)の方面に振り切れすぎてカウントミスがかなり多いので、最近(ア)も見直してはいますが…多くの人は(イ)の練習がまだまだだと感じます。
スピードを上げるためには終盤における三手一組、五手一組などの手筋をよく理解し、目の前の局面が既知のパターンに分類されないかを素早く判断する必要があります。

さらに、(イ)の練習は単に最終盤を解くだけでなく、いわゆる魔の40手目で素早く方針を立てるためにも重要です。
40手目付近は中盤的な考え方と終盤的な考え方の接合部なので、かなり局面の認識にミスが生じやすい手数になっています。
終盤には終盤の稼ぎ方、ポイントがあり、それを素早く見つける訓練を積んでいないと、曖昧に中盤戦を続けた結果出来上がった局面を最終盤になってから解くことになり、取り返しのつかない事故が多くなってしまいます。
終盤入り口段階で、終局までに大雑把に想定される手順に対して「勝ち」「負け」「細かい」くらいの大雑把な分類をしなくてはいけません。数手進めるごとに、大雑把な読みをさらに精密にしていく必要があります。これは(イ)の訓練を積み、頻出パターンになっている部分をすぐに見つけなくては到底間に合いません。この大雑把な判断に必要な精度が±4程度だと考えています。例えば、6石以上勝ってるな~という感覚がある手順はちゃんと勝っていてほしいということです。

(イ)の練習を積む上での手筋の整理ですが、手前味噌ですがこの記事の最後を参考にしていただければ良いかと思います。終盤と言ってもいわゆる終盤問題10個空きくらいだけを想像するのは良くなくて、やはり20個空きくらいから「ライン」「中辺」「Cライン」への意識を強めていきましょう。終盤でも「守」るべき手筋をしっかり理解しているからこそ、型「破」りな例外的手筋を発見できるのです。ここでも例外は時間とともに守るべき手筋に取り込まれていきますね。


【まとめ】

長々と書きましたがまとめると練習/訓練としては
(2)最善進行を研究して、相手の変化を受けきる勉強をして
(B)自分の想定通りに進んだが、結果損をしていた着手を反省し
(イ)終盤は勝てばなんでもOK、スピード重視を実現できるよう局面を整理する
ことが重要かと思います。
(1)(A)(ア)はさらなる上達のためには必要ですが、(2)(B)(イ)のほうが地道ながら効果が大きいので、バランスとしては後者を重視しましょう。

また、これらの事柄を理解して自分の理論に取り込めているかをチェックする基準として、0から例題が作れるかを確認してみると良いです。
オセロは新しい知識や発想をインプットする機会はたくさんあるのですが、アウトプットの機会は通常、次に同じような局面があらわれるまでありません。
そのため例題をつくるとか、SNSで他の人に向けた解説を公開するとか、そうしたアウトプットの機会を作ることが大切だと思います(大量に打つ、というのも一つのアウトプットですが)。
ブログは書くのも読むのもやや大変ですが、後でまとめて見返す時間が短くて済むので僕は気に入っています。
最近はTwitterで問題を出している人や実況動画をあげている人もいて、あれも面白いだけでなくいいアウトプットだな~と思います。


以上です。ほぼ三段~五段当時に考えたことを思い出しながら書きました。
人それぞれの上達法があると思うので、自分に必要な練習を考えるのも大切な練習ですし、単純に面白いかと思います。
オンラインオセロ教室では自分は(2)(B)(イ)を意識した講義をしようと思っています。

書いていて思いましたが、自分自身最近はこうした練習をキチンとできていないです。
そういう意味でも改めて書く機会を頂いてよかったな~と思いました。