※この記事は現実逃避に3時間ほどで作った記事なので探すと色々と不正確な点、表現など粗があります。温かい目でお楽しみください。


こんばんは。
色々と書く書くと言ってるものがたまっているかと思いますが、今日はそれら全てと無関係な記事を思い付きで更新してみます。



自分はオセロ以外にも実は大学院生をやっているのですが、ありがたいことに研究で何をやっているか聞いてくださる方がちょくちょくいます。
分野で言うと統計物理というのですが、なかなか一口にうまく説明できずもどかしいので、そういう記事を一度書いてみようと思いました。

もちろん研究はこれをそのままやっているわけではないです。
GOROなどの大学生オセラーは理系も多いにもかかわらず、あまり自分と専攻が近い人がいなくて悲しいので(数学は多いのに!)、統計物理という分野の紹介をできるだけ親しみやすい話題に翻訳して書いてみようと思います。
こういうのを面白いと思ったら大学で統計物理という授業をとってみてくれると嬉しいです(実は、僕の研究は統計物理ユーザーの中でも極一部がやっているだけなのですが…)。


【今回の記事は?】

さて、今回の話題はオセロの初手です。
オセロの初手には等価な4つの手があります。
当ブログでも過去記事にありますが(このころは完全に内輪向けにだけ書いていたのでこういう記事がちらほらありますね)、このうちどれを選ぶかはたまに話題にあがると思います。
体感では6~7割のプレイヤーはF5を選択しているようです。
4つの初手は等価にも関わらず、なぜF5派が主流になったのでしょうか?

実は物理ではこうした「別にどれを選んでも変わらないけど、なんとなくみんなが同じものを選ぶ」現象が知られています。
今回はとてもシンプルな設定から主流派が生まれるような例を作ってみたので、その紹介をしようと思います。


【問題の設定】

今回の設定は以下です。
➀大きな盤(今回は24×24)のそれぞれのマスに人が立っている
➁それぞれの人は「私は初手〇〇派」という主義を決めて、一日に一度主義を変えられる
③それぞれの人は自分の上下左右の人とは仲が良く、初手の主義を揃えたい(他の人は無関係)


特に③の性質が重要です。これを「協調性」と呼ぶことにしましょう。
さて、協調性には程度があるとします。協調性が低いと隣の人の初手と関係なく自分の初手を選びますし、協調性が高すぎると隣の人と同じ初手じゃないと気が済まなくなります。

以下の実験では、最初はみんなが好き勝手な初手を選ぶ状況から
(A)協調性の低い集団
(B)高い集団
(C)高すぎる集団
でなにが起きるかを、250日にわたって追ってみました。

もちろんほんとに実験したわけじゃなくて、パソコンでそういう設定の実験をしました。

4種類の初手を「青、緑、茶、白」で表すことにします(書き始めてから気が付いたけど、白は見にくいな…)。
5日ごとにその日の人々の主義をまとめて、盤上の人の様子をGIFにしています。
それでは見ていきましょう。

【実験の結果】

(A)協調性が低い集団
sq_24_1

(スタート地点がわかりにくい…そのうち作り直すかもしれません)
協調性が低い集団は、隣の人の色をある程度は気にするものの基本的にその日の気分で主義を決めます。
結果、時間が経つと最初よりなんとなく隣の人と同じ色を選んでいる部分が増えるものの、どの初手も同じくらいの人が打っています。
協調性が低い集団では、F5のような主流派が生まれるのは難しそうです。


(B)協調性が高い集団
sq_24_2
協調性が高い集団では隣の人と初手を揃えたい傾向が強いです。
そのため、実験開始から数日で、いくつかの仲良しグループ(白、緑、青)に分かれていることがわかります。

そして実験の終盤では、白グループが他のグループを取り込んでしまい、ほぼ全員が白グループに属する状態になりました。(白なのは「たまたま」です)

注意点として、この実験ではそれぞれの人が仲がいいのは隣の人までです。
それでも、協調性の高い集団では「友達の友達」とも主義が揃いやすく、結果として全員が白グループに属するまでになりました。
白グループがいい!という決定的な理由はないのですが、隣と色が揃うと幸せだというだけで極端な偏りが起きてしまう結果になりました。


(C)協調性が高すぎる集団
sq_24_10
さて、素朴な直感として、集団の協調性が高ければ高いほど全員の意見が揃いそうな気がします。
しかし、今回の実験の条件では、協調性の高すぎる集団は直線で区切られたいくつかのグループに分かれて固まってしまいました!

なぜこんなことが起きるのでしょう。
みなさんも実験の参加者の気持ちになって考えてみるとわかります。

あなたがグループの境界部分の人だったとしましょう。
仲がいいのは上下左右の人だけです。
あなたはその4人とできるだけ意見を合わせたいです。どうしますか?
そう、周囲の4人は3対1(グループの角なら2:1:1)であなたと同じ色が多数派です。絶対に意見を変えるべきではありません!


全てを知っている私たちにとっては、集団の全員が意見を揃えたほうが幸せになれることは当たり前に思えるのですが、実験の参加者にとってはいつだって隣人と意見を合わせることが全てなのです。
これは少し専門的な言葉では大域解と局所解と言います。
局所的な損得を追い続けていても、大域的な成功を収められるとは限らないわけですね。
(B)の例では協調性を優先しつつも程よく意見を変えることで最終的に一つにまとまったわけです。



【まとめ】

さて、今回は特に差がない4択でも、周囲の人との協調性が意外な偏りを生むことを見ていきました。
実は統計物理学というのはこうした「単純なルールに従って動くたくさんのモノ、ヒトなど」を調べるのにとても強力なツールになっています。
もちろん現実の人はこんな単純な意思決定をしているわけではないのですが、単純なおもちゃの模型からこうした傾向がみられるのはなかなか面白いんじゃないでしょうか(あんま面白くない?ないか。そっか…)

とてもシンプルな例を見ましたが、いろいろ設定を変えても遊べそうです。たとえば
・2,3,5,6,...択ではどうなるんだろう
選択肢が多いと意見がまとまりにくくなるかも…?

・人がさらに増えたら/減ったらどうなるんだろう
例えば100万×100万の人の場合はパソコンでも実験が難しい。実験以外でもわかることがある?

・人によって協調性がちがったらどうなるんだろう
人には個性がありますからね。反発する人もいるかも。

・「隣の人」の数が増えたらどうなるんだろう。
斜めを入れたり、Twitterのフォローフォロワーなどのよりリアルなつながりに変えたり…

・協調性が高すぎる人たちが意見を揃えるにはどうしたらいいんだろう
「急がば回れ」「損して得取れ」戦略はどうしたらいいんだろうか…?

などなど、挙げきれませんが色々考えられる問題があります。
これらの問題に取り組んできたのが統計物理の歴史(の一部!)で、そのテクニックは物理を超えて色々な問題に応用されているわけです。

あんまり物理っぽくないので、専門が物理ですと言ってこういう話をするとどことなくガッカリされてしまうわけですが、楽しいので理系大学生のみなさんは物理はやらなくてもぜひこれ(と熱力学)だけでもかじってみてくださいな。
今流行りの統計学や機械学習を理解する上でも有用ですし、(量子)アニーリングマシンとかいうのが流行ってますが(D-Waveとか聞いたことありますか?)これはまんま統計物理です。他にも色々。

というわけで自分の分野に関連したちょっとした小話でした!



最後に重要な注意として、この記事は正確には「なぜF5が主要なのかに答える」記事ではなくて、「こういう設定で主流派が生まれることがあるよ」という紹介なので、別にオセラーの協調性がどうこうについて論じたいわけではありません。あしからず。