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2009年01月

2009年01月31日

ペギソハット杯麻雀大会〜謎のペギソからの感謝状〜

ブーツ型の半島の、ちょうど足首あたりに位置する街、ナポリ。
さまざまな人が交錯するこの街に、一軒の料理店があります。

屋号、ペギソハット。ナポリの街の人々曰く、

  「街の山の手側のさ」
  「商館街のすみにある・・・ほら、あのペンギン印のレストラン」
  「なぜか不思議と人が集まるんだよね・・・」

でも、『なぜか不思議と』ではなくペギソハットにお客さんが集まることが、年に何回かあります。
それは、エイプリルフールの馬鹿騒ぎだったり、誰かの誕生日パーティだったり。
昨日の夜も、そんな珍しい夜だったようで・・・。

・・・

というわけで、第一回ペギソハット杯麻雀大会、無事グランドフィナーレじゃよ!
ペギソブログでは、表彰式〜打ち上げの様子をSSでお送りしつつ、各賞受賞者へペギソからの
コメントを書いてみたいと思います。なお発表順は、表彰式での順番に由来しますじゃよ。

・・・

☆最高得点賞・・・106,000点/謎の、100M
☆最低得点賞・・・-33,000点/もふれった、50M&ケルト語辞書


この2つは、セットとして語らざるを得ないのうw
それは最終日、首位を走る謎のさんのラス半宣言が入った卓での出来事。
麻雀って、ひとりでするものじゃない。各々に思惑があるからこそ面白いというその妙味が凝縮された
試合であったな・・・と思います。この、本当に最終局面で役満を狙うという謎のさんの大胆さや豪運はもちろんすごいんじゃけど、個人的には、勝負云々を超えたところでもふれった嬢の
頭の片隅に「ここで振り込んだら美味しいかも!」という思惑が・・・なかったとは言わせないじゃよ!
そんな最高得点&最低得点賞でしたw

☆役満賞・・・2日目・数え役満/フォルス(ツモ上がり・子)
        3日目・国士無双/kazuki(真刀よりロン上がり・親・当たり牌:1ピン)
        4日目・数え役満/穿鴬(ツモ上がり・親)
        4日目・四暗刻/シュトレイン(リーチ一発ツモ上がり・子)
        4,8日目・国士無双/kazuki(ツモ上がり・子・ツモ牌:西)
        6日目・大三元/kazuki(ケンタロウよりロン上がり・子・当たり牌:白)
        7日目・大四喜/クレアラシル(ツモ上がり・子・ツモ牌:西)
        7日目・四暗刻/ラゴス(ツモ上がり・親・ツモ牌:六万でラゴゲージ炸裂)
        最終日・字一色/謎の(もふれったよりロン上がり・親・当たり牌:中


15日間の期間中、突発本戦も含めるとおそらく10日以上本戦日があったと記憶しておるじゃよ。
その中で、9回の役満というのは・・・参加人数を考えると、ちと少ないのかな?
とはいえ、どの役満にもそれぞれ思い出というか、初日のフォルスさんの綺麗な数えにはじまって、
最後の勝負を決めた字一色まで、どれもお見事としか言いようの無いものでした。
個人的にそんな9回の役満の中で、一番「おお!」と思ったのは、やはり7日目、ラゴスさんの
四暗刻じゃのうw
これについては、後ほどに解説を譲るじゃよ!
あとは、やっぱり3日目の国士となるわけじゃけど・・・これも、また後でのうw

☆最多試合参加数・・・127試合/kazukiFujiyama、殿堂入り、59M630k

規定試合数は5試合、それを戦い抜いたら少なくとも参加賞はもらえる・・・という今大会の中で、
ひときわ輝く驚愕の数字がこの127試合消化。表彰式でも言ったことだけど、大体麻雀、一試合
30分かかるとして・・・127試合ってことは、単純に計算すると63時間30分は打ってたことに
なるわけで・・・これ、深夜時間帯が多かったことも考慮して吉野家時給(大阪の場合)で計算すると
7万円は超えるじゃよ!まさに思い出はプライスレス・・・。90試合超えの段階で、試合数グラフを見た
者たちが呟いた「オウ!フジヤーマ!」は、いやもうね・・・本当に伝説じゃよw

☆最多勝利数・・・34勝/リール・バレーヌ、100M

実はコレ、表彰式ではミスして29勝とか言っておるんじゃよな・・・。リールさんすまぬ;;
この記録、もちろんリールさんの試合数がFujiyamaに次ぐ93試合と多いこともありますが、
それにしてもすごい記録じゃよ!ざっと勝率3割6分以上ということじゃからのう。
Fujiyamaを鉄人・金本とすると、今大会のイチローはリールさん・・・って逆に分かりにくいか;;
また、リールさんが戦った相手が、深夜の濃い面子や上位に名を連ねる面子が多かった、という点でも
この記録はずば抜けていると言っていいとおもうじゃよ。

☆平均点DE賞・・・20位/タント=カセーグ、21位/マリアン、各受賞者に50M

参加人数のちょうど真ん中、平均点(正確には平均順位)を取った人に授与されるこの賞。
一見、一番平凡な人に与えられる・・・ように見せかけて、ここも非常に濃い面子が並ぶ結果になったのうw
タント堂はもはやナポリでは説明不要のピンクピエロとして(失礼!でも本人はオイシイと思ってる
はずじゃよw)有名じゃのう。
で、マリアンさん。ペギソ店長では今大会はじまるまでご縁のなかった人の一人なんじゃけど、
大会期間の後半には彼女はずっとペギソハットで寝泊りをしておってのうw必然的に、本戦前の
朝食をご一緒したり、本戦の無い日も練習を共にした仲。とある理由から激しく仲間同士で殴りあう
FF2のPT状態だったガンジャ旅団参加者の中でこの成績というのは・・・なるほどさすがは四天王の
一人と感服したじゃよ!

☆七海生産者商会賞・・・7位/クレアラシル、7M730k

スポンサーの冠賞である、七海生産者商会賞。七海、ということで7位に!ということでのうw
そこ、駄洒落か!とか言わない!まあ、駄洒落なんじゃけど・・・。賞金を持ってくるついでに、商館の柱に
幸薄くなる呪文をかけていった、そんなtokiさんからの幸薄を受賞したのは、最終日逃げの戦術を取った
クレアラシルさんでした。まあ、戦う面子を選ぶことや逃げも立派な戦術である・・・とは思うんだけども・・・
まあ、これ以上は言うまい!というわけで、クレアラシルさんには賞金7M773kと共に逃げることの
出来ない幸薄が・・・これは恐ろしいのう、ククク・・・。

☆ペギソハット賞・・・5位/ジョルジーニョ、50M&ペギソハット無料お食事券

主催者であるペギソの名前を冠にした、ペギソハット賞!何気に豪華賞金と、豪華なんだかまったく
不明の副賞がついておるこの賞、受賞してくれたのはみよっこからの刺客(と言うか保護者か!?)
ジョルジーニョさんでした!さすが大所帯みよっこの副会長というべきか、麻雀でも貫禄を見せ付けて
くれた気がするのう。終始安定感のある戦績で、見事上位を勝ち取ってくれたじゃよw
で、副賞のお食事券な。店に並んでおる料理ならどれでも200皿、どーんとペギソが奢らせてもらうじゃよ!
いつでも店まで食べに来て下され!宅配はやってないけどものうw

☆ブービー賞・・・39位/マリア=ヒルデブルグ、30M&強欲商人の鉄鎖200個
☆最下位・・・40位/黒ばと、10M&戦利品10個

さて、ここからは若干不名誉な記録が2連。
とはいえ、短期決戦(と言っても127試合とかはけして短期ではないけども・・・)の今回の大会、
上位に実力と相まって期間中幸運の女神に熱烈に愛された結果ランクインした人がおる中、下位の方は
逆に実力関係無しに幸運の女神の平手打ちを喰らいまくってしまった結果・・・というのが顕著だった気が
するのう。その最たるところが、このお二人。マリアさんにしても黒ばとさんにしても、確かに
上手い!という打ち手ではないかも知れんけど、それにしても運に見放されていたようにペギソは
感じました。とはいえ勝負は時の運、今回どん底だったなら次は昇るしかないじゃよ!是非次回も
そう思って参戦して欲しいと思うのう。

☆最強卓・北家・・・4位/日曜日、50M&仕入発注書(カテゴリー4)200枚

上位4人を、最強卓の雀士とするならば、4位は北家。
その席に座ったのは、日曜日さんでした。一時は暫定トップにつけながらその後も逃げることなく
果敢に戦い、順位こそ3つ下げたものの、見事最強卓・北家の称号ゲットです!
日曜日さんは、卓上を盛り上げてくれただけでなく、その下ネタ全開(でもないか、ガンジャの方曰く
かなりセーブされていた模様・・・)のトークでも場を盛り上げてくれましたw
あとはあれじゃな。本戦日程が平日に多かったのも、日曜日さんがこの順位で落ち着いてしまった
理由の一つかもしれませんのうw

☆最強卓・西家・・・3位/W.タールシュトラーセ、100M&仕入発注書(カテゴリー3)200枚

上位4人を、最強卓の雀士とするならば、3位は西家。
60試合という脅威の試合数を消化しつつ、この席に座ると言うのは並大抵の実力ではないと
ペギソはこっそり思っています。夜中の厳しい時間帯なのに楽しんで打っていた強い人、という
イメージが完全に固定されてしまったのうw最強卓・西家の称号はW.タールシュトラーセさんに
与えられました!トップこそすごく多いわけではないけれど、安定して2着以内に入っていたり、
大きく崩れない麻雀・・・と言っていいんじゃろうか。そんなに大ハズレなことは言ってないと思うじゃよ!

☆最強卓・南家・・・2位/ヴォルペ・ビアンカ、150M&バタデコーラ&コルト全色揃

上位4人を、最強卓の雀士とするならば、2位は南家。
タールさんが60試合消化なら、こちらは運営実務をこなしつつの20戦。半分くらいは壊れてたような
気がするけども・・・身内ながらこの成績は非常に立派だと思います。最強卓・南家の座で爆睡中なのは
ヴォルペ・ビアンカ!タイプ的にはRasさんに近いタイプの打ち手かのう、守りの堅い麻雀を打つ
打ち手だと思います。運に恵まれて爆発的に、ということがほぼないというのも特徴と言えば
特徴じゃろうか。非常に地味ながら、ずっといい位置につけての2位でした。

・・・

☆最強商会賞・・・Partenopea(ナポリ7番)チーム、30M&ピラルクグリル200皿&戦利品10個

最強商会賞、実はかなりの接戦でした。三人以上参加の商会で競ってもらったわけなんじゃけど、
ここでも安定した強さを誇ったのがPartenopeaチーム。エース・タールさんの抜群の安定感と、
パドリオさんの脅威のリカバリー、そして波は荒いながらも平均するとそれなりのラインで落ち着いた
もふれったさんの3人で、見事今大会最強商会となりました。
しかし、何気に商会のカラーが出たのもこの賞。どことは言わんけど、ほれ・・・あそこの商会な。明らかに
身内同士で殴り合っておったからのうwそれがガンジャクオリティ!!

☆殊勲賞・・・ラゴス、10M

ラゴった!」と言えば役満を上がること。常連の間ではおなじみの、そんなペギ荘用語があります。
今大会でも見事にラゴれるのかどうか・・・ペギソは、おそらく7割くらいはやってくれるだろうなと信じて
待っていましたwそして見事に七日目、やってくれました。完璧なまでのラゴゲージ炸裂の模様は
こちら!なお、この大技にはラゴゲージを2本消費するとのこと。第二回大会では是非とも
4本消費して、再びの天和に期待したいところじゃのうw

☆敢闘賞・・・紅団扇・真刀、10M(・商用クリッパー『イーピン丸』)

敢闘賞は、お二人に。
まず、紅団扇さん。初日から派手なロケットスタートをぶっ放した後、順調に突き抜け続けて・・・
恐らく飛び回数は最多ではなかろうか・・・。それでいて、案外平均してしまうとなんとも美味しくない
38位に落ち着いてしまうあたり、不運なのかネタなのか・・・。けども、その大会中にみせてくれた
アグレッシヴな背中をペギソは忘れない!痛みに耐えてよくがんばった!感動したじゃよ!!ということで、
敢闘賞受賞です。
伝説のイーピン丸
    で、真刀君な。これはもう説明不要との声もあるのうw
    ありえないと誰もが思った4枚目のイーピン、それを
    リーチ後にツモってしまった、今大会ある意味でもっとも
    不運、そしてもっとも美味しい男・・・それが真刀。
    その悲惨な背中に敬礼を送りつつ、kazukifujiyama造船の船

イーピン丸を贈ります。造船代金は賞金の10Mを勝手に使いました^^名前変更柄変更不可じゃよ!
ちなみに真刀君。序盤18戦(平均点:16835,29)と、後半19〜38戦(平均点27914,29)で、
大会中に大きく平均点の上昇を見せた成長株なんじゃよ。第二回大会での活躍に期待!

☆技能賞・・・W.タールシュトラーセ、10M

クワ、3位のところと最強商会賞のところで散々書きつくした感のあるタールさん、三度目!
というわけで、タールさんに関しては上の方に一杯書いてあるのを読んでくれじゃよ!;;

・・・

謎の優勝者!


    ☆最強卓・東家・・・1位/謎の、250M&ダイヤモンドの指輪



上位4人を、最強卓の雀士とするならば、1位は東家。
試合数は10試合と少ないながらも、その10試合ほとんどすべてを、圧倒的な高得点で勝ち抜いた
今大会最も幸運の女神に愛された男。特に、最終試合においてたたき出した10万点オーバーという
得点は、もはや幸運の女神の恋人と言っても過言ではないでしょう!東家の席にどっかりと座るは、
カモメ騎士商会・謎のさんです!!
そもそも発端の記事が『謎のペギソからの挑戦状』というところがまたね・・・え?これもしかして
伏線だったのか!!と、そんなわけはないんじゃけどもwけども、もしかしたらこれも必然だったのかも
知れない、そう思わせてくれる圧勝っぷりでした。

・・・

MVPのエロス穿鴬


    ☆大会MVP・・・穿鴬、250M&・・・



そして、今大会最も活躍したと思われる人に運営から感謝を込めて授与される、大会MVPの称号。
この人の受賞に、今大会参加者で異存のある人はいないのではないかのう。
常に成績上位に位置しつつも、強敵との戦いこそを好み誰の挑戦からも逃げず、また色々な分野で大会を
盛り上げ、数字に見えにくいところで活躍してくれた人でもあります。
「参加し、楽しむことにこそ意味がある」と運営が考えていた今大会において、まさに最高の
戦いを見せてくれた穿鴬さんに、敬意と感謝を込めて大会MVPの称号を贈ります。

・・・

☆ナポリダイス賞・・・出目33・33位/ランドルフ・カータ、100M

この大会、ナポリ5番ペギソハットにお客さんを集めるだけでなく、ナポリの街をもっと
知ってもらおうという側面もあったイベントじゃから。なので、ナポリのイベントの〆と言えば・・・
皆さんご存知、ダイスじゃのうw参加者人数の面がある40面ダイスを振ってくれたのはもちろん
この人!小芝居も忘れないあたりがさすがだのうwで・・・出た目は33。いい感じに低い所に当たったと
思ったら・・・クワー!またカモメか!!ランさん、美味しいとこ持ってったのう・・・w

では、大会最後の、〆の一枚!

閉会式記念撮影





















「あれ??最後の記念撮影に私(俺)入ってないよ!?」
「表彰式には参加できなかったけど、記念写真に入りたい!」
そういう方いらっしゃったら、是非ペギソまで連絡下さい。右上・欠席者ポジションで写真を掲載させて
いただくじゃよ!ククク・・・。

・・・

以下、主催者ペギソより大会参加者・関係者の皆さんへ。

最終順位・記録・各賞受賞者の確認・運営ビアンカ先生の連載最終回等はこちら
各賞受賞&参加賞・原稿料の受け取り等について、出来る限り早く対応したいと思っております。
表彰式不参加で受賞の可能性のあると思われる方はこちらで順位等確認していただき、ペギソまで
ご連絡(ゲーム内メール・この記事へのコメント等)下さい。

運営小話「ペギソの中の人からの感謝状」を追記として掲載してみました。
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un_jealous at 10:18|PermalinkComments(49)clip!大航海時代 

2009年01月29日

「あの人に届けた挑戦状」〜大会スポンサー紹介特別編・4・『木曜日は別の顔』

第一回ペギソハット杯麻雀大会絶賛開催中!!

  ペギソハット杯・最終日までのスケジュール&各賞のご案内(最終確定更新)はこちら

  大会参加者様向け大会要綱こちらから!
  大会7日目終了時点更新の順位や各種記録こちら
  豪華作家陣が様々な角度で見た本大会を描く小説シリーズも好評連載中じゃよ!


・・・

ブーツ型の半島の、ちょうど足首あたりに位置する街、ナポリ。
さまざまな人が交錯するこの街に、一軒の料理店があります。

屋号、ペギソハット。ナポリの街の人々曰く、

  「街の山の手側のさ」
  「商館街のすみにある・・・ほら、あのペンギン印のレストラン」
  「なぜか不思議と人が集まるんだよね・・・」

ナポリの隅でこっそり営業しているペギソハットですが、木曜日は特別にナポリ広場で屋台を出しています。
今回のお話は、そんな特別な木曜日を彩るこの世界で広く知られた『木曜日の顔』たちの物語。

・・・

ナポリ名物・木曜市の心地よい喧騒の中、ペギソはちょいちょい、とその男の纏う異国風装束の
袖を引っ張りました。
振り返った男の耳元で、こそこそと囁きかけるのはあの話。

  「麻雀?」
  「そう、麻雀じゃよ。ユールの旦那も何度かやった事はあるじゃろ?」

座りなれた広場の、中央より少し南が、その男の定位置。
暖かな日差しが優しく降り注ぐ石畳の上にバザーを並べるたくさんの売り子たち、その全員がしっかり
目に入る位置に今日も座るその男の名前を、ナポリで知らぬ者は少ないはずです。
男の名は、ユールクース。ナポリ木曜市のマスターにして、ナポリの名物縫製屋。
・・・同じ縫製屋として比較する時、穏やかな笑顔のタント=カセーグを『商売人』の色合いが濃い縫製屋と
するならば、こちらは『職人』気質の縫製屋だと言えるかもしれません。ちょうど、その中間に位置するのが『慧眼』のセビリア木下服飾店主Elza、となるでしょうか。
タイプは違えども、もちろん三人とも腕の確かな縫製屋であることは言うまでもありませんが、そんな
性格の異なる三人の中で、一番この話に嫌悪感を示す可能性が高いのは・・・それは、職人らしく頑固で
真面目なこの男であろうな・・・そうペギソは考えていました。

  「んまぁ…やった事はあるけど。でもそれが何さ?」

予想通り、(また胡散臭いたくらみだな?)と言いたげな顔のユールを見て、ペギソは愛用のカバンから
羊皮紙を取り出し、そっとユールの目の前に差し出します。
羊皮紙に書かれているのは、ご禁制である麻雀大会の告知文。頑固で真面目なユールにこんなものを
差し出すのは、非常に危険な賭けであると考えるのが普通です。
ですが今回、どうやらペギソには勝算がある様子。

  「ククク…まぁこれを見るじゃよ…」
  「…つまり、大ギャンブル大会を開催しようと。そういうわけだね…」
  「そんな人聞きの悪い! ちょっとした“お遊び”じゃよ!」

やっぱりね、といった顔で溜め息をつくユールの内心を想像して、ペギソは素早く言葉をつなぎます。

  「ままま、ユールの旦那が賭け事を好かぬのは百も承知」

今でこそ、真面目な働き者を蝕み廃人にしてしまうという理由で御禁制の遊びとなった麻雀ですが、
元々欧州に持ち込まれた時には、使用する道具の美しさや珍しさから王侯貴族に愛された遊びでも
ありました。
このナポリの国王であるフェデリーゴも、そんな麻雀や麻雀牌の魅力を知る一人であり、その中毒性をも
よく知っている人物。つまりフェデリーゴ自身、麻雀に魂を抜かれかけたことがあるのです。
そんなフェデリーゴお抱え縫製師の一人であり、誘惑に強い真面目な性格でも知られるユールが、
今も国王のお忍びの遊び相手として王宮に呼ばれ、節度のある厳しい友として“お遊び”の範囲で
麻雀に付き合っている・・・という、常連客の噂として耳に挟んだ話をペギソは覚えていたのでした。

  「じゃからここはどうじゃろ、一つ“ お 遊 び ”として参加してはどうかのう?」
  「んー…」

会話の中で今日二回目となる“お遊び”という言葉に、今度はかなり強くアクセントを置いて発声した
ペギソの意図は、しっかりとユールに伝わった様子。眉間にしわを寄せ、考え込む振りをしつつも
ちらり、とペギソを忍び見たユールと視線が合った瞬間、ペギソは内心の安堵を隠さない笑顔を
ユールに向けました。

  「…ま、頭数として数えといて」
  「そうこなくちゃ! いや実はのう、既に参加者名簿には旦那の名前を記入しておって…」
  「…全く」

もう諦めた、と言わんばかりの顔でこめかみを押さえる仕草を見せるユール。
しかしその目には、職人の顔の時には決して見せない、少年っぽい輝きが浮かんでいます。
それは、『陽気で祭り好き』と評されるナポリ気質を持つ、ユールのもう一つの顔。
この顔をしたユールになら、馴れ馴れしい口調で大丈夫というもの。ペギソはいつもの調子に戻って、

  「…して旦那、大会を開催するにあたり賞金のスポンサーを募集してるんじゃが…」
  「…そっちが本命か」
  「何の事かのう、ククク…」

再びこめかみを(今度は真剣な顔で)押さえるユールから、かなりの大きさの皮袋をせしめたのでした。

・・・

これで、5番商館の倉庫に鎮座する金貨の詰まった皮袋は、200袋余り。
金額にして十億を軽く超える量の金貨が、そこで唸っているわけです。

・・・

  (これだけの量があれば・・・なんでも欲しいものが手に入るじゃよ・・・!)

食料品や酒類の保存のため、ごくごく小さな明かり取り用の窓しかない倉庫の中でも燦然と輝く黄金。
『お金というものは寂しがりやで、たくさんあるところにどんどん集まってくる』とは、どこの誰が
言い出したものか。まさにその通りの状況になりつつあるナポリ5番商館倉庫に、使わなくなった古い
バスタブを運び込み、いつかどこかで見たことがある広告の真似事じゃよ!と、皮袋の金貨をざらざらと
流しいれます。その、二億ドゥカートを超える量の金貨に埋もれつつ、

  (実際やると重いし冷たいしいいことないのう・・・。けど気分は最高だのう!)

・・・そんなことを考えながら富豪気分に浸っていたペギソの頭上から、黄金に負けないほど眩い光が唐突に
降り注いだ気がして、ペギソはホールへとつながる扉の方を見ました。

  「店長、お客さんが来てるよ!」

遠くインドから呼び戻されたセルゲイが、休憩がてら久々に店番を務めていた店先にやってきた客に驚き、
急いで倉庫まで呼び出しに来たのも無理はありません。急かされるようホールに向かったペギソも、
遠目からでも分かる煌びやかなオーラにうっかり一瞬目を奪われました。
偶然商館で食事をしていたユスティニアやフォルス、大会の参加者登録用紙を取りにきたシュトレインも
同じ様子でぼんやりと玄関に立つ客を眺めています。

その客の名は、Schaft。

『永遠の18歳』を自称するに若々しい声と、ティーンエイジャーらしいハイテンション、そして
切れのいい語り口で人気を集める彼女には、多くの信奉者がついていることでもよく知られています。
『木曜日の恋人』とまで讃えられ人々に愛される彼女のもう一つの顔。それが、鋭い洞察力とカリスマ性で
知られる、セビリア9番商館に居を構える商会・Aurea Mediocritasの商会長としての
顔です。腕利きの船大工として高名なkazukiや、セビリア木下の服飾店主Elzaが副商会長を勤める
この商会の中にあって、商会名でもあるAurea Mediocritas(ラテン語で“黄金の中庸”)を体現するような
その存在感は、まさに精神的支柱と言って過言ではないでしょう。

そんなSchaftにも、ペギソはスポンサー依頼の手紙を送っていたのでした。
しかし、イスパニアが近く攻撃すると噂の、ポルトガル同盟港アルギンを巡る戦準備に忙しいのであろう
彼女から返事はないまま。寂しく思いつつも、彼女の立場を考えるとこの時期にそのお願いは
幾らなんでも無茶と言うものだろう・・・と、流石のペギソも思っていたのです。

が。

  「あらみなさんお揃いで^^」

商館に居る誰もが、木曜日の夜に聞きなれた声。
それが目の前にいるSchaftの口から発せられた瞬間に、惚けた顔をしていた全員が立ち上がり、Schaftに
向かって敬礼しました。
それを艶やかな笑顔で受け流し、彼女は続けて言います。

  「手紙の件ね、同じ話をうちのkazukiからも聞きました。で、」

パチン、と指を鳴らすSchaft。その背後から現れた2人の従者が、荷車に乗せて運んできたのは・・・

  「こんなもんでいいかしらね」

・・・先ほどペギソが浸かって悦に入っていた、黄金のバスタブ一杯分きっかりの量の金貨でした。

  「ちょ・・・こんなに・・・!」

ペギソをはじめとして、店に居合わせた全員が目を白黒させて金貨を眺める様子を見て、Schaft曰く。

  「皆さんの家にも、蛇口がございましょう?」
  「うむ」
  「ひねると、金貨が出てきますでしょう???」

・・・

今日もラジオを聴いたなら、商館に居た者は例外なく思い出すことでしょう。
そして、この物語を読んでしまったあなたにも、もちろんそれは聴こえることでしょう。
・・・毎晩金貨風呂に浸かるというSchaftの、その黄金にも似た艶やかな高笑いが。

・・・
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2009年01月27日

ペギソハット杯・最終日までのスケジュール&各賞のご案内(最終確定更新)

第一回ペギソハット杯麻雀大会絶賛開催中!!

  大会参加者様向け大会要綱こちらから!
  参加者募集締め切らせていただきました!
  大会7日目終了時点更新の順位や各種記録こちら
  豪華作家陣が様々な角度で見た本大会を描く小説シリーズも好評連載中じゃよ!


・・・

表彰式までのスケジュール

☆1月29日(木)・21時〜終了未定
  ・・・本戦8日目・最終日

☆1月30日(金)・22時半〜0時
  ・・・表彰式@ナポリ5番商館

なお、主催者の都合・当日の天候等により日時は変更になる可能性があります。

表彰式はナポリ5番商館にて行います。

規定試合数5試合完走の方で、当日ナポリ5番商館で行われる表彰式に参加して下さった方は
もれなく参加賞受賞となります。
また、記念撮影等も予定しておりますので、スポンサーの皆様・大会支援特別小説連載の作家の皆様・
完走ならずとも参加してくださった方・また大会を応援してくださった皆様、当日30日には是非
ナポリ5番商館までお越し下さい。

各賞のご案内

 ☆平均点での賞

   ・優勝:250M+副賞・ダイヤモンドの指輪
   ・二位:150M+服賞・バタデコーラ&コルト全色揃
   ・三位:100M+副賞・仕入発注書(カテゴリー3)200枚
   ・四位:50M+副賞・仕入発注書(カテゴリー4)200枚

   ・平均点DE賞…参加者人数÷2の順位の方:100M
    ※奇数人数の場合は前後の順位の2人受賞・50Mづつ

   ・ブービー賞…参加者中下位から二番目の方:30M+副賞・強欲商人の鉄鎖
   ・最下位:10M+副賞・戦利品10個

   ・ペギソハット賞…5位の方:50M+副賞・ナポリ5番商館無料お食事券
   ・七海生産者商会賞…7位の方:7M730k

   ・ナポリダイス賞…表彰式にて参加人数面数ダイスを振り、出た目の順位の方…100M

   ・最強商会賞・・・3人以上が参加している商会に権利発生・参加商会員全員の平均点で1位の商会
                :30M+商会の今後の繁栄を祈願するあの料理200皿+戦利品10個


 ☆参加賞

   ・最多試合参加賞:期間中最も多く試合数を消化した方に59M630k(ご苦労さん!)
   ・期間中半荘5回以上消化&表彰式参加の方全員:感謝を込めて1M+乾杯用ビール1杯
   ・原稿料:大会を支援する小説リンクに参加してくださった作家陣:1M+打ち上げ用ビール1杯


 ☆記録賞

   ・役満賞:役満を上がった方全員にフェリアのビンゴボンゴ一本
   ・最高得点賞:一試合での最高得点を叩き出した方に100M
   ・最低得点賞:一試合での最低得点を叩き出してしまった方に50M+勉強用ケルト語辞典
   ・最多勝利賞:大会期間中もっとも多く1位を取った方に100M

 ☆運営からの感謝賞

   ・大会MVP:今大会もっとも活躍したと運営が思う方に250M
   ・殊勲賞:重要な殊勲の星を挙げた打ち手だと運営が思う方に10M
   ・敢闘賞:敢闘精神溢れる麻雀を展開したと運営が思う方に10M
   ・技能賞:優れた技能を持っていると運営が思う方に10M


各賞ならびにその賞金額・副賞に関しては、これが最終決定・最終更新となります。
なお、賞金額等について、28日段階で各賞の兼ね合い等考えて調整を行っております。運営判断での
調整に不快感を持たれた方がおられましたら申し訳ありません。諸々の事情を考慮しての判断ですので、
よろしくお願い申し上げます。また、以後の変更等は予定しておりません。あしからずご了承ください。

un_jealous at 18:39|PermalinkComments(4)clip!大航海時代 

2009年01月24日

ペギソハット杯麻雀大会・運営からの大事なお知らせ

第一回ペギソハット杯麻雀大会絶賛開催中!!

  大会参加者様向け大会要綱こちらから!
  参加者募集締め切らせていただきました!
  リアルタイム更新の順位や各種記録・運営ボランティアのビアンカ先生が地味に綴る連載
  「今日のぼやき」はこちら
  豪華作家陣が様々な角度で見た本大会を描く小説シリーズも好評連載中じゃよ!


・・・

主催者ペギソより、

参加者の皆さんに大事なお知らせがあるじゃよ!


それは、各賞の話。

本戦日終了時には毎回参加者の皆さんの平均得点・平均順位・試合数・最高得点などなど
色々なデータを取って、その中で各賞に該当しそうなものに関してはピックアップしてこちらの方で
発表しておるんだけども・・・この中に昨日まであった項目で、平均順位を削除させていただきました。
また、それに伴って、大会要綱のある「各賞のご案内」から、「平均順位での賞」を削除とさせて
いただきますじゃよ。

というのも理由があって、これは主催者として非常に喜ぶべきところなんだけども、当初の想定人数を
遥かに超える参加人数になったこと、またその参加者さんの多くが規定試合数である5試合を大きく超えて
まだまだ戦ってくれていることから、平均点数はともかく平均順位に関してはとてつもなく接戦・・・
というか、同じ数字でかなりの人数が並んでしまう事態になってしまったんじゃよ。
一試合あたりの得点での爆発力はないけども、地味に安定して高順位をキープしておる方が、規定試合数
5試合の今大会は平均点での受賞者とは別に出るんじゃないかな、と思って作った賞だったんだけども、
これは本当に運営サイド、嬉しい大誤算ってやつじゃよ!

なので、ほぼ大会期間が半分終了した本日の時点で、申し訳ありませんが平均順位での賞をなくすことに
しました。

代わりにと言ってはなんですが、シークレット賞の一部を公開&新設賞の発表をし、平均順位での各賞分の
賞金・賞品をここに上乗せしようと思います。

・・・

☆平均点での賞

 ・最強商会賞・・・3人以上が参加している商会に権利発生・参加商会員全員の平均点で1位の商会
         :30M+商会の今後の繁栄を祈願するあの料理100皿+戦利品10個

☆記録賞

 ・最低得点賞:一試合での最低得点を叩き出してしまった方に50M+勉強用ケルト語辞典

・・・

ちなみに今のところ、最強商会賞受賞の可能性がある(=3人以上が参加している商会)は次の商会。

  ・SoaviAngele(ナポリ5番):5名
  ・カモメ騎士商会(ヴェネツィア2番):13名
  ・キロ・メトロ・セロ(ナポリ6番):6名
 ・Partenopea(ナポリ7番):3名
 ・ガンジャ旅団(ナポリ8番):5名
  ・みよっこ(ロンドン12番):4名

大会折り返し地点まで過ぎましたが、もちろん後半戦からの参戦も大募集中じゃよ!
「なに!そんな賞があるならうちの商会からもう何人か・・・!」と思った方、・・・ククク・・・どんどん
新しい挑戦者を連れてくるといいじゃよ!お待ちしておるじゃよ!

また、最低得点賞は、これこそ誰にでもチャンスはある・・・と言えばある・・・。
しかし、狙って行くのは難しい賞だし、出来れば受賞したくない賞でもあるのう・・・。
当然、この賞をゲットしてしまった人には、なんらかの罰ゲーム的なものがあるかもしれんのう・・・ククク

・・・

さて、大会はちょうど折り返し地点。

二週間と長丁場の戦いも、もう半分が終わってしまいました。とはいえ、まだ半分残っておる
わけじゃけどw
運営も、予想以上の盛況っぷり(大会参加者だけでなく、ブログでのリンクやらじおなどの応援も含めて)に、
嬉しい悲鳴状態。

参加者の皆さん・小説連載執筆陣・ラジオDJさん・そして、今大会に暖かい支援を下さった
スポンサーの皆さん・有形無形で応援してくださる方々に、まずはありがとうございます。
そして、今大会をきっかけにして、そんな皆さんの間で楽しい事やいい友達、よい縁の輪が広がることを
改めて願います。





un_jealous at 21:16|PermalinkComments(4)clip!大航海時代 

2009年01月23日

「あの人に届けた挑戦状」〜大会スポンサー紹介特別編・3

ブーツ型の半島の、ちょうど足首あたりに位置する街、ナポリ。
さまざまな人が交錯するこの街に、一軒の料理店があります。

屋号、ペギソハット。ナポリの街の人々曰く、

  「街の山の手側のさ」
  「商館街のすみにある・・・ほら、あのペンギン印のレストラン」
  「なぜか不思議と人が集まるんだよね・・・」

今日もペギソハットには来客あり。
今まさに、慣れた様子で店に入って行ったその男、どうやらかなりの食通のようで・・・。

・・・

   「てんちょ」
   「なんじゃよ」
   「まさか前回のアレでわしの出番終わりじゃないだろな!」
   「・・・なんでばれたんじゃよ!!」

・・・

   (そういうわけにもいかんか、そうじゃよな)

ペギソは商館奥のテーブルに置いてある来客名簿を取り出して、ページを手繰りました。
あれは、・・・1月11日のことだったでしょうか。

・・・

   「とりあえず筆頭スポンサーの看板はもらっておこう」

そう言い放った穿鴬が来客用テーブルの上にどさり、と置いた皮袋の中には500万ドゥカート。
そして、それとは別に巨大な皮袋が2袋、商館の床に鎮座しています。一袋に5000万ドゥカート、
二袋でちょうど、1億ドゥカート・・・。この量になると、とてもテーブルの上には乗り切りません。
そして、その巨大な皮袋の後ろに、相当な重さだったであろう金貨を運んできた穿鴬の副官が2人。

   (あるところには、あるもんじゃなあ・・・)

もはや口から出るのはため息のみ。ペギソはじっと手を見て・・・そして、またため息。
この穿鴬という男、一体どれ程の財産を持っているのか。しかし、思い出してみればこの男。

   (確かに昔から、自分の好む物事には散財を惜しまぬ男であったのう)

・・・

北海出身の凄腕の収奪屋であり、また名の通った私掠軍人でもある穿鴬が、縁もゆかりもないナポリの、
そのまた片隅にある料理屋を知ることになったきっかけ。それはヴェネツィアの老舗商会である
カモメ騎士商会に在籍していた頃のある出来事。
同商会に所属するドレスメーカー・タント=カセーグに、ほつれた軍服の仕立て直しを依頼した穿鴬が
待ち合わせ場所として指定された場所、それがナポリ5番・ペギソハットだったのです。

・・・

世界を巡り船を仮の住まいとする日々の中で、穿鴬が何より飢えていたのは故郷の味でした。世間では
イングランドの料理は不味い不味いと言われていますが、穿鴬に言わせればそれは、まともなイングランド
料理を食べたことのない者の言う戯言に過ぎず、真のイングランド料理は美味しいもの。わしに言わせれば
むしろイタリアやフランスの料理の方が・・・と、しかし、そのように常々話し聞かせていた相手の一人である
ヴェネツィア人・タントが待ち合わせに指定したのは、行きつけだというナポリのレストラン。その前に
立った穿鴬は、中で供されるのであろう色とりどりのイタリア料理の事を思い、

   (どうにも南欧の料理はわしの口に合わんのだが)

かすかなぼやきを洩らしてから軍人らしく背筋を伸ばし、ナポリ5番のドアをノックしました。

   「ばんどど〜ん!」

入り口から一番近いテーブルの席に座って、すでにビール片手に待っていたタントが、いつもの調子で
明るく穿鴬を迎えます。にこにこと笑いながら給仕の女に「じゃあ頼むよ」と声をかけ、そして穿鴬に
同じテーブルにつくよう促しました。

   「頼まれてたマレシャルキュイラスは、後でいいかしら?」
   「おう」
   「まずは腹ごしらえから、・・・ととと、来た来た^^」

運ばれてきた皿に、眼鏡の奥の優しい目をさらに細めるタント。給仕の女が、片田舎のレストランに
似合わぬ流麗な所作で客二人の前にそっと皿を置きます。

   「これだろ?前々から穿が好物だと言ってたのは」

大きな白い皿に乗っていたのは、よく脂の乗った鮭のムニエル。穿鴬が故郷ロンドンの食堂で好んで
よく食べていた、まさにその通りの味の、鮭のムニエルでした。

   「いや、実はわっちも初めて食べるんだけども・・・確かに美味いな」

満足そうにムニエルを頬張るタント。その正面で、穿鴬もまた満足そうに頷きつつムニエルを口に
運びます。
そして供された皿の上の料理があらかた二人の胃袋に納まった頃、タントは自信ありげに言いました。

   「どうだ、穿。ここの料理はなかなかだろ?」
   「うむ、美味い・・・てーか、これはロンドン港前食堂そのままの味だ。一体どういう・・・」

   「それはじゃな」

二人の会話に割ってはいるようにしてカウンターの奥から聞こえてきた女の声に、穿鴬は思わず
振り向きました。そこにいたのは、一見お世辞にも客商売に向いているとは思えない程きつい目つきの、
一人の女。しかしよく見ると女の目は、確かにきついながらも不思議と親しみを感じさせるものでした。

   「あなたが店主と見たが、一体どういうことなんだ」
   「ククク・・・なに、秘密・・・という程のことでもない、簡単なことじゃよ」
   「ほう?」
   「このペギソ、実はロンドン出身でのう。昔、港前食堂で修行しておった時期があるんじゃよ」

・・・

その一件から今に至るまでの間に、穿鴬は地中海に来る用事があればナポリに立ち寄り、そしてその度
ペギソハットに顔を出して食事を楽しむ常連客の一人となり、さらに店長であるペギソの個人的な友人にも
なっていたのでした。

・・・

   (もう案外と長い付き合いになるが、いやはや・・・相変わらず豪気よのう・・・)

ナポリではご禁制の遊びである麻雀も、欧州を離れ遠くはチャイナの極々近くにまで遠征することが
多い穿鴬にとっては、麻雀発祥の地に近い現地の船乗りと腕を競い慣れ親しんだ遊びの一つ。
夜のペギソハットでこっそり常連客を集めて遊んでいた席にも、時間さえ合えば必ずと言っていい程
顔を出していたのが穿鴬だったのです。
その穿鴬が、人を集めて麻雀大会を・・・などという話を聞いて、黙っているわけはありませんでした。
その流れで、大会用の賞金に付くスポンサーの話も自然と気楽に頼むことが出来たペギソですが・・・

   「しかし出せるとしても、5億ぽっちしか出せんぞ」

この返答には、さすがのペギソも茫然自失。「どうせ優勝すれば全額戻ってくるんだろ?」と豪快に
笑いながら、「ちょっと銀行行って5億おろして来い」などと副官に指示を出す穿鴬を見て、

    「ちょちょちょちょちょ・・・ちょっと待った!待ったじゃよ!」
    「まあ、さすがにそりゃ冗談だw」

安心したような、残念なような。複雑な表情を浮かべるペギソに、さらに穿鴬が問いかけます。

    「・・・で、いくらだ。言い値を出そう」

・・・

    (あるところには、あるもんじゃよなあ・・・)

今日何度目かのため息を吐き出しつつ、つい先ほどのことを思い出しつつ、じっと手を見るペギソ。
結局、すっかり腰の引けたペギソが穿鴬に提示した言い値は一億と五百万ドゥカート。腰が引けたにしては
十分に無茶を吹っかけた額ですが、「これで筆頭スポンサーじゃよ!」の一言が効いたかどうか。豪快に
「よかろう」と笑って副官に今度こそ本当にと指示を出した穿鴬は・・・これはもうよほどの馬鹿者か、それとも
粋な遊び人なのか。

    「まあ・・・両方か・・・」
    「ん?なにか言ったか」
    「いや、なんでもないじゃよ。なんでもないじゃよ・・・」
    「しかしなんだな、てんちょの口車なら」
    「んむ?」
    「賞金総額十億いけるだろ」
    「ちょwwwおまwwwwwwwねーよwwwwwwwwww」
    「ゆけ!てんちょ!!」

・・・究極の粋な馬鹿者・穿鴬が、おそらくはほんの冗談で放ったその一言。
それがまさか3日後に現実のものとなるとは・・・その時点では、誰も思ってもみなかったのでした。

・・・

次回予告!

副店長ビアンカです。

一昨日、店長に命令されて、自分も新連載を持つことになってしまいました。
そうでなくても仕事が多いというのに、もう本当にいい加減にして欲しいです。
もう一人の副店長セルゲイもそう言っています。

さて次回は

   「タント堂、強請られる」
   「ラゴス、揺さぶられる」
   「クワ!カモメ騎士から13人!?」

の3本です。

次回もまた読んでくださいね。クワ!グア!


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