Ring Of Angels Ⅱ

2013年03月

「エミリーさん!」
 よろめくように自陣に戻り、待ちわびていたエミリーとタッチを交わす。リングに飛び込んだエミリーは小川をクローズラインで薙ぎ倒すと、次いで向かってきた真田もヨーロピアンアッパーで迎撃した。
「まだまだ!」
 ダウンしていた小川の片手を掴んで起き上がらせると、引っ張りながらショートレンジクローズラインを喰らわせる。つないだ手を放さずさらにもう一発。倒れたところをカバーするも、カウント2で返された。
「それなら!」
 エミリーは回復する間を与えずコーナーに上る。ダイビングヘッドバッドをお見舞いしようとコーナーを蹴るが、すかさず起き上がった小川は飛び込んできたエミリーの腕を取ると、高角度の脇固め――『クロウバー』を極めながらマットにねじ伏せた。
「終わりです!」
「ぐうっ…!」
 手練れのサブミッションは簡単には脱出させてくれない。危ういところで美沙がカットに入り、何とかギブアップを免れた。
「逃がしません!」
 なおも追撃しようとしてくる小川をミリタリープレスで頭上に打ち上げたエミリーは、落下してくる無防備なところにヨーロピアンアッパーをぶちかましてカウンターを喰らわせる。ダウンを奪うが追い打ちする気力はなく、コーナーに戻って美沙とタッチを交わした。
「任せるのです!」
 威勢よく飛び出す美沙。同じく交代した真田をスパインバスターで迎撃すると、頭もとに構え、右上の手袋を投げ捨てる。
「美沙の妙技を味わえなのです!」
 両手を交差させるとロープに走り、ピープルズエルボーをお見舞いする。だが、真田は間一髪転がってかわすと、ヒジをマットに打ち付け痛みでうずくまる美沙の顎を右ヒザで打ち抜いた。
「カバーっス!」
 エミリーのカットは間に合わない。決着かに見えたが、美沙は意地を見せて2.9カウントで肩を挙げた。
「しぶといっスね……!それなら!」
 狙いを定めた真田は、美沙の横をすり抜けコーナーに走る。そこから飛び掛かりざま、側頭部に蹴りをかませば必殺技の『斬馬迅』が完成するが、それだけはさせるかと後を追ったエミリーが、コーナーの頂点で真田を捉えた。
「ち、ちょっ…!?」
「でいやああぁぁっ!!」
 腰に手を回し、雪崩式のバックドロップで強引に投げ捨てる。激しくマットに叩きつけられ、ぐったりと横たわる真田を横目に、パートナーの小川を抑えにかかった。
「決めて!美沙!」
 絶好のお膳立てに、美沙は再びピープルズエルボーの構えに入る。今度は左腕の上袋を脱ぎ捨てると、ロープに走り、今度こそ真田の胸元にヒジを投下した。
「カバーなのです!」
 足を抱えながらレフェリーを呼び寄せる。
「ワン……ツー……ス…!」
 決着まであと0.1秒。だが、すんでのところでエミリーの手を抜け出した小川がカットに成功する。
「ごめん、美沙!」
 エミリーはミスを取り返そうと再び小川に組みかかり、ともに場外に転がり落ちる。すでに必殺技を2回も放っている美沙は決め手を欠き、見よう見まねで葛城のバズソーキックを試みた。
「喰らえ、なのです!」
 ヒザ立ちの真田にキックを放つが、付け焼刃の打撃は易々と見極められあっさりと回避されてしまう。体勢が崩れたところに真田のその場跳びヒザ蹴りを喰らい、フラフラと尻餅をついてしまった。
「まだまだっスよ!」
 意識朦朧で身体を起こしかけた美沙に狙いを定め、真田はランニングニースマッシュで顎をかち上げる。さらにコーナーを駆け上がると、ヒザの2連発を喰らい反失神状態の美沙目がけ、『斬馬迅』をお見舞いした。
 意図の切れた人形のように崩れ落ちる美沙。すかさず真田が足を抱えると、ほどなくして3カウントが数えられた。

 WARSの先陣を務めるのは真田。打撃を中心に気合の入ったファイトスタイルを身上とする中堅レスラーだ。WARSの中では下っ端に見られることが多いが、龍子に見込まれるほどの根性があり、時折目を見張るような爆発力を見せる。決して侮れない実力者だ。
 もっとも、それは美沙も承知している。ゴングが鳴っても得意の口撃は止まないが、真田の間合いに入らないように慎重に距離を測っていた。
「てやっ!!」
 真田が一歩踏み出して蹴りを繰り出してくるが、美沙は落ち着いて回避する。攻め急がずに再び構える美沙を見て、エミリーは一安心した。
(それでいいわ。今のはあっちもフェイントだった。迂闊に踏み込んでたら一発もらってたわよ)
 打撃なら葛城相手のスパーリングで嫌というほど経験している。美沙の驚異的な勘の良さも相まって、致命傷を受ける可能性は少ないだろう。
「ふふん、こんなものなのですか?WARSの鉄砲玉が聞いて呆れるのです!」
「な、なにを~!?」
 挑発も織り交ぜ、真田の冷静さを削っていく。無理に攻撃に来ようとした勢いを利用し懐に飛び込むと、ボディスラムで先制攻撃を浴びせた。
「どうだ!なのです!」
 団体最弱小レスラーの成長に沸き上がる会場。アウェーの雰囲気に真田は悔しげに顔をしかめると、小川とタッチを交わした。
「大人しそうに見えてずいぶんと痴女痴女しいコスチュームなのです。つかさといい勝負なのです」
 真田と同様に挑発してみるものの、常に冷静沈着な小川はつられない。逆に話す方に気を取られている隙にスルスルと詰め寄ると、片足タックルでテイクダウンを奪った。
「あうっ!」
 関節技も氷室に鍛えられてはいるが、どちらかというと原則的な氷室に対して、小川は正統派の技術を駆使する。いつもと這っての違う動きに戸惑った美沙はあっという間にキーロックを極められてしまった。
「いたたたたっ!?」
 今にもタップしてしまいそうな気配に、エミリーは慌ててカットに入る。いったんは技を解いた小川だったが美沙を自陣へと引きずりこむと、真田と交代した。
「美幸さん!」
「おうっス!」
 声をかけ合い、ダブルブレーンバスターで投げ捨てる。すかさずカバーに入るも、美沙は何とかカウント2で返した。
「よくも馬鹿にしてくれたっスね!」
 真田は倒れている美沙をチンロックで締め上げる。ロープブレイクで逃げられるもカウント4まで粘ってダメージを与えた。
「お返しっス!」
 引き起こすと、ボディスラムを喰らわせる。さらにもう一発。悲鳴を上げた美沙は転がって逃げ惑うも、首根っこを掴んで小川と交代した。
「せーっの!」
 今度は二人がかりのボディスラムを喰らわせる。フォーチュン勢の防戦に、会場からはブーイングが聞こえてきた。
「美沙、しっかり!」
 身を乗り出して檄を飛ばすエミリー。小川はエミリーに見せつけるようにサーフボードストレッチを極めると、戦意を確認するようレフェリーに求めた。
「ギブアップか?」
「の……ノーなのです…!」
 反応を確かめた小川はグラウンドのコブラストレッチに持ち込み、さらに痛めつけていく。エミリーがカットに入ろうとするも、今度は真田に妨害されてしまった。
「ギブアップしなさい。さもないと…」
 いっそうロックが強くなり、美沙は歯を食いしばって苦痛をこらえる。タップするわけにはいかない。この試合には、フォーチュンの名誉がかかっているのだ。
「ふ……ふん…!ぜんっぜんきかないのです。紫月さんの半分くらいなのです!」
「……っ」
 自信のあるサブミッションをけなされ、始めて小川が感情を見せる。ギブアップさせようと姿勢を崩したのを見計らい、美沙は強引に足を伸ばしてロープに触れた。
「ロープブレイク!」
 一杯喰わされたと悟った小川は悔しげに身体を離す。すぐさまサブミッションに行こうとするが、一瞬の隙を突いた美沙は自らの頭頂部に小川の顎をあてがったままその場で尻餅をつき、チンブリーカーで反撃に成功した。

 かつてない大観衆に囲まれ、中森は満足そうに目を細める。今回の祭典は史上初めて、天井のない会場で行われる。普段はプロ野球も開催される5万人規模のこのドームは天井が開閉式になっており、中森はある理由から空が見える状態で行えるように希望していた。
 幸運にも晴天に恵まれ、リングの上には青空が広がっている。まるで古代ローマのコロッセオのような特別な光景に、観客の期待は早くも高まっていた。
「皆様、本日はよくお集まりいただきました。ただいまより『エンジェルスオデッセイ』を開幕します」
 待ちかねた観客たちが大声援で歓迎する。
「例年にも増して見逃せないカードが目白押しです。皆様、ぜひお見逃しのないよう」
 簡単な代表挨拶を終えると、中森はリングを降りる。続いて正装したリングアナが上がり、オープニングのカードを読み上げた。
「第一試合――フォーチュンvs.WARSの三番勝負第一線を行います。まずはエミリー・ネルソン&ウィッチ美沙の入場です!」
「みんな、盛り上がっていくのですよ!!」
 入場ゲートに躍り出るなり、威勢良く観客を煽る美沙。その後ろからエミリーが観客とハイタッチをしながら追いかける。リングに上がると、それぞれ対角線上のコーナーで歓声に応えた。
「続きまして、WARS――小川ひかる&真田美幸の入場です」
 冷静沈着な技巧派の小川と、直情的な真田。対照的なコンビだが、WARSへの忠誠心は変わらない。対抗戦ともなれば普段以上の実力を発揮することが予想された。
「へへっ、やってやるっスよ!」
「団体の名に懸けて、負けられません」
 並々ならぬ気迫を感じとり、エミリーは気を引き締める。一方の美沙は気づいているのかいないのか、普段以上にうるさかった。
「先鋒は美沙が務めるのです。エミリーさんは後ろでゆっくり見ているといいのです」
「……分かった。任せるわ」
 言われるがまま、出番を譲るエミリー。試合開始のゴングとともに飛び出す美沙を見つめながら、冷静に頭を廻らせた。
 美沙は人並み外れた観察眼と洞察力を持ち、それは驚異的な勘の良さとなってたびたび顔をのぞかせている。だが、悲しいかな美沙自身はそれを「魔力」のたまものだと思い込み、勘が当たった、外れたという「結果」だけにとらわれてしまっており、肝心の自身の能力については無頓着だった。
 才能を自覚し、利用できるようになれば美沙は一皮むける。葛城はそう信じ、彼女の才能を開花させようとしてきた。その成果もあって基礎的な技術は身についてきていたが、精鋭ぞろいのROA内ではまだまだ力が足りず、入団3年以上たつ今も試合で勝ったのは数えるほどだった。
 美沙に必要なのは勝利の味を知ることだ。このまま負け続ければ、練習しても無駄だとやる気を失ってしまうかもしれない。葛城の焦燥を知るエミリーはそれに一役買うつもりだった。
 ROAに復帰して1年とちょっと。引退場所を求めてWWCAから移籍してきたにしては長居し過ぎた。おそらく、来年の祭典に出ることはできないだろう。残されたレスラー人生は、盟友の葛城と氷室のために使いたかった。
 美沙を一人前にする。それが、最後の置き土産だ。
 目指すは対WARS3戦3勝。そのためにも、美沙には活躍してもらわなければいけない。

う~ん。もうチョイで時間できそうです。
とりあえず、トップの入場曲をプチ更新。
秋山のテーマの「Untouched」は辞書だと「感動しない、心を動かされない」なんて出てきますけど、
優香の裏切りを受けながら必死に彼女を救おうとする姿勢から、
「迷わない」という風な感じで選んでます。
歌ってるのが双子ってのも、秋山の優香を諦めきれない気持ちが出ていいかなと。
適当に歌詞と和訳でも。


I go ooh ooh, you go ah ah
(私は行く、あなたとともに)
lalalalalalalala

I can't lie lie lie lie lie lie
(ウソは吐けないわ)
I wanna wanna wanna get get get what I want
(私は自分の欲しいものを手に入れたいの)
Don't stop
(止めないで)
Give me give me give me what you got got
(あなたが持っているものを頂戴)
Cause I can't wait wait wait any more more more more
(だってこれ以上待っていられないから)
Don't even talk about the consequence
(これから先どうなるかなんて話さないで)
Cause right now you're the only thing that's making any sense to me
(この瞬間、私にとって意味があるのはあなただけなんだから)
And I don't give a damn what they say, what they think think
(他の人の言葉や考えなんてどうでもいい)
Cause you're the only one who's on my mind
(私の心の中にいるのはあなただけ)
I'll never ever let you leave me
(絶対に離さない)
I'll try to stop time for ever, never wanna hear you say goodbye (bye bye bye)
(時を止めてしまいたい。あなたの「サヨナラ」を聞かなくてすむように)

I feel so untouched
(私はもう迷わない)
And I want you so much
(心からあなたを求めているの)
That I just can't resist you
(抵抗なんてできない)
It's not enough to say that I miss you
(「あなたがいなくて寂しい」って言うだけじゃ我慢できないの)
I feel so untouched right now
(もうブレたりしない)
Need you so much somehow I can't forget you
(あなたが必要なの。どうやっても忘れることはできない)
Been going crazy from the moment I met you
(初めて会った時から、あなたに夢中になってしまったの)

いよいよ次回からエンジェルスオデッセイの幕開けとなるわけですが……、
すみません。超多忙で時間が取れず、またしばらくお休みいたします。
2週間後くらいからまた再開したいなと。


お茶濁しに、構想にはあったもののボツになったアングルなどを……

・南、再襲来
エイジ・オブ・ザ・フォールのリーダーとしてROAを掌握せんとする優香。
「私が史上最凶のレスラーだ!」。その宣言がある人物を呼び覚ます。
「私がいないうちにずいぶんと大きな顔してるわね。“最凶”の意味、教えてあげようか?」
毒蛇・南利美。新女を退団し、フリーとなったかつてのROAの象徴が、
混沌とするROAリングをさらに揺るがす。

ボツ理由:南さんが相手では、AOTFすら存在感が薄くなるかも……。
団体を二分する抗争でシンプルに行きたかったので、毒蛇には冬眠してもらいました。


・村上姉妹、ベビーターン
今日も今日とて小狡い手を積み重ねる村上姉妹。
それを見かねた伊達・みこと組との抗争が始まるが、
耳の痛くなるような正論を繰り返すみことより、次第に傍若無人な村上姉妹に声援が飛ぶように。
王座戦で歓声は完全に逆転。ムキになり、必要以上に相手を痛めつけるみことはヒールに。
村上姉妹は入団以来初めてベビーフェイスとなるのだった。

ボツ理由:一度やりたかったのがダブルターンと、村上姉妹がエディ的なずるしていただきで、
人気者になるという流れ。だが、みことがAOTF入りする展開に無茶があり、仕方なくボツに。


・IC王座設立
ROA王座、ROAタッグ王座に続く3つ目の王座が設立。
ベルトを争うトーナメントの末、内田が初代王者に。
これまで無冠だった内田だったが、この部門の主軸として、
防衛、奪還を重ねていく。

ボツ理由:テクニック、マイク、頭脳と全てを兼ね備えながら、突出するものがないだけに
中堅どころに甘んじてきた内田さんが輝ける場所が欲しいと思い、設立を考えたのですが、
20人いない団体でベルト4本ってどうなのよ、と思い、ストップ。
やっぱりベルトをめぐる抗争が盛り上がるわけで、内田さんだけでなくエミリーやスイとの
抗争も新鮮だったけど、ROA王座の価値を守るために不採用。


他にもいろいろありますが、とりあえずこんなとこで。
また思い出したら他にも書いていきます。

「ハァ……ハァ…」
 自らの荒い呼吸と、サンドバッグがきしむ音が延々と続く。鞭のようにしなる足を叩き込まれるたび、砂袋は弾かれたように舞い上がる。
 身体のキレ、蹴りの威力。全てが申し分なしだ。肩のケガを負って以来、ここまで絶好調になったことはない。龍子との大勝負に向けて最高のコンディションが整ったと言っていい。
――なのに、なぜ…。
「クソッ!」
 力任せに右ストレートでサンドバッグを殴りつける。負傷時には封印していた技も今は気兼ねなく打てる。だが、気分はまったく晴れなかった。
 一度休憩を入れ、汗だくの頭からタオルを被る。すぐに練習再開しようと思ったが気分が乗らず、床にしゃがみ込んだまま立ち上がれなかった。
『本当に団体を背負うっていうのがどういうことか、教えてやるよ』。龍子の声が頭の中で再生される。
――余計なお世話だ。2年間の休場はあったが、私は団体のエースを務めてきた。他団体のお前に教わることなんてない。
 そう返答したかったが、言葉が出てこなかった。
 龍子は歴戦の強者だ。WARSの象徴として幾多もの死闘を潜り抜け、女子プロレス界に確固たる地位を築き上げた。対する自分は、ベルトを腰に巻いたのは一度だけ。復帰以降は大一番で勝てず、ファンの期待を裏切り続けている。
 敗戦は自分だけの問題ではない。シングル戦で所属レスラーが龍子に全敗となれば、ROAはWARSに劣るとみられる可能性がある。団体の威信を懸けた一戦だと重々承知していたはずが、今更になって不安がこみ上げてきた。
 トレーニングに没頭して重圧を跳ね返したかった。その心中をエミリー見抜かれ、美沙に悟られないように気遣われたのも情けなかった。
「リーダー失格だな…」
 自嘲気味に呟くが、思いのほか心が沈んでしまう。気合の入らないまま練習をしていては故障を招く恐れがある。他の連中も帰った頃だろうしそろそろ引き上げようかと振り返ったところで、トレーニングルームの入り口に人影があるのに気が付いた。
「……紫月?」
 見間違えるはずのないパートナーの姿に思わず動揺するも、何とか表には出さずに呼びかける。氷室は相変わらずぼんやりした表情で、何も言わずにこちらを見つめていた。
「何してるんだ?帰れって言ったろ」
 ついきつい口調になってしまうが、氷室は気にしていないようだ。つかつかと歩み寄ってくると、後頭部に手を回して強引に身体を近づけてくる。
「な……し、紫月!?」
 頭を胸に抱えられ、無理やり抱きしめられるような格好にさせられる。いきなり何をするのかと振りほどこうとするが、耳元で氷室の囁きが聞こえた。
「………聴いて」
「な、何言って…!」
「………聴いて」
 再び繰り返す氷室。彼女の頑固さはよく知っている。諦めた葛城は抵抗を止めると、言われるがまま耳を傾ける。てっきり何か話すのかと思ったが、氷室は無言のままだった。
「紫月?」
「しっ……」
 意図が分からず、身体を離そうとする。その時、かすかな音が聞こえてきた。
――トクン、トクン。
 氷室の心音だった。1秒間に1拍ほどだろうか。穏やかで落ち着いた音色だ。それに引きずられるように、自分の鼓動も大人しくなるのを感じる。氷室の胸に抱かれたまま、葛城はそっと目を閉じた。一定のリズムが心地よく、無防備に身体を預ける。ここまで無警戒になれるのは氷室だけだった。
 心を見透かしていたのはエミリーだけではなかった。氷室もまた、様子を機に懸けてくれていたのだろう。
「……悪いな。頼りなくて」
「………ううん」
「不安なんだ。龍子に勝てるのか。負けたら団体はなんて言われるのか。色々なことを考えちまう。考えてみれば、サンダー龍子はいつもこんなプレッシャーを負いながら戦ってたんだな」
 こちらから見れば侵略者の龍子も、返り討ちにされればWARSの名は地に落ちるというリスクを背負っていた。それでも武藤らトップ選手と対決し、白星を積み重ねてきたのだ。
 真のトップレスラーの境地。そのステージに自分は足を踏み入れていた。勝てば「無敵の龍」を下したレスラーとして名が売れる。だが破れれば、団体の看板を怪我した者として後ろ指を指されることになる。これまでで最大のリターンとリスクだ。
 重圧に苛まれていると聞いて、氷室はどう思うだろうか。しばらく待っているとパートナーが口を開いた。
「………大丈夫だよ……早苗ちゃんは一人じゃないから……」
「……あぁ」
「………わたしがいる……エミリーと美沙も……みんな、早苗ちゃんの味方だから……」
 一人で背負い過ぎるな。氷室はそう伝えたいのだろう。そうだ、自分には彼女たちがいる。「フォーチュン」の名につながれた、心強い仲間たちが。
「ありがとうな」
 礼を言うと、氷室は返答代わりに優しく頭を撫でてくれた。

 祭典前、最後の通常興行のメインを飾ったのは、葛城、氷室、エミリー、美沙vs.龍子、石川、小川、真田の8人タッグマッチ。フォーチュンとWARSの全面対抗戦を前に、全選手が顔を揃えた。
 リーダーである葛城と龍子は積極的には参戦せず、互いの出方を探っている間に試合は終盤に。ホームの歓声に押されたフォーチュンが次第に優勢になり、WARS勢を圧倒し始める。
「フィニッシュ!」
 決着を感じ取ったエミリーが右手の人差し指を天に突き上げて叫ぶ。フラフラの真田の背後を取ると、片足をロックしたバックドロップホールド――必殺の「リーガルプレックス」で豪快に沈めた。
「ワン……ツー……スリー!」
「イエスッ!!」
 渾身のガッツポーズを作るエミリー。前哨戦を制したのはフォーチュンだった。
「大丈夫か、真田」
 最年少メンバーをいたわる龍子。大歓声を上げる観客を面白くなさそうに眺めると、リングアナからマイクを受け取った。
「お前らの勝ちだな。おめでとう。だが、今日の結果など大した意味はない」
 負け惜しみではない。よく理解している葛城は勝利にもニコリともせず、龍子と相対する。
「分かってるさ。本当の勝負は祭典だ。だが、その日も今日と同じ結果になるだろうさ」
 物怖じすることなく、葛城は龍子を睨む。
「こいつらは負けない。フォーチュンの看板を背負っているからな。それに、私もお前に負けるわけにはいかない。私が勝たなきゃ、お前はシングル戦無敗のまま団体を去ることになる。それだけはさせるわけにはいかない」
 葛城の言葉に賛同の拍手が沸き起こる。
「このリングは私の父と母が作り上げたものだ。2人の名に懸けて、私は勝つ。フォーチュンとROAを守ってみせる」
「威勢がいいな。嫌いなタイプじゃない、が――私たちを甘く見過ぎだ」
 冷酷に瞳を光らせる龍子。
「負けられないだと?それはこっちも同じだ。自慢じゃないが、WARSはお前らの団体みたいに大規模じゃない。私が負ければこいつらの食い扶持が無くなる。そんな戦いを常に続けてきたんだ」
 その言葉ははったりではない。世界でも有数の実力を持ちながらメジャー団体を主戦場とはせず、自らの道を歩み続けてきた龍子への敬意からか、罵声を浴びせる観客はいなかった。
「本当に団体を背負うっていうのがどういうことか、教えてやるよ。せいぜいビビらずに試合に臨めよ」
 そう言い残すと、仲間に目配せしてリングを降りる。
「フン、勝手に言っているといいのですよ!祭典でも勝つのはこっちなのです!」
 舌を出し、挑発する美沙。葛城は歓声に応えながらも、どこか落ち着かないでいた。


 試合後の取材を終え、レスラーたちは帰路につき始める。通常興行最終戦を勝利で飾ったフォーチュンたちも私服に着替えるが、葛城だけはリングコスチュームのままだった。
「あれ、どうしたのですか?帰らないのですか?」
 首を傾げる美沙。葛城は肩をすくめ、タオル片手に応えた。
「もう少し残って練習していく。私のことは気にしなくていいから、先に帰れ」
「え……でも…」
 先輩の練習に付き合うべきなのでは。戸惑う美沙の背中をエミリーが押した。
「じゃあ帰ろっか。早苗に付き合ってたら日付が変わっちゃうわよ」
 言いつつ、美沙を連れて強引に歩いていく。と、さりげなくウインクされ、葛城はフイと横を向いた。
(お見通しってわけか)
 内心毒づきながら、立呆けている氷室に目をやる。
「紫月も帰れよ」
「………うん」
 相変わらず反応の薄い返答を聞きながら、葛城はトレーニングルームへと向かった。

 その後、ミーティングは滞りなく無事に進んだ。そう、不気味なくらい平穏に。
(めぐみ…)
 落ち着かない足取りで会場の廊下を駆けまわるディアナ。探しているのは、もちろん武藤の姿だった。中森に試合順の変更を却下された後、武藤は始終仏頂面で、ミーティングが終わると同時にどこかに行ってしまった。ただならぬ彼女の振る舞いに不安を覚え、こうして見回っているのだ。
 武藤の性格からして、メインに出場できなければ祭典をボイコットするなどとも言い出しかねない。ブラジルでのプロモ撮影や祭典に向けての取材が重なり、ここ数週間はまともに顔を合わせることもできなかった。王座戦の対戦相手と言葉を交わすなど、武藤は嫌がるかもしれないが、試合前に一度話をしておきたかった。
――めぐみの行きそうな場所…。
 闇雲に走り回っていてもらちが明かない。ディアナはフウと息を吐くと、落ち着いて頭を廻らせた。
 ふと思い当たり、リングを設営中の会場に入る。客席を見渡すと……いた。組み立てられるリングに視線を投げながら、武藤はぼんやり考え事をしているようだった。
 何となく声をかけるのもはばかられ、ディアナはそばまで歩いていくと何も言わずに隣に腰掛ける。どちらとも何もしゃべらず、スタッフの慌ただしい喧騒に耳を傾けていた。
「見たわよ、プロモ」ぽつりと武藤が呟く。「私のこと持ち上げすぎ。私は、誰かの力になることなんてできない。ただ自分のために戦ってるだけ」
「そんなこと……ありませン。あの時話したことは、ワタシの本心ですかラ」
 再びの沈黙。今度もまた、先に口を開いたのは武藤だった。
「あの子たち、来るの?」
 弟妹のことだろう。ディアナは首を横に振る。
「イイエ、残念ながら、都合が合わなかったのデ」
「……そう」
 落ち着いているようだが、もしかしたらすでにボイコットを決めてしまったからかもしれない。不安がぶり返し、ディアナは恐る恐る尋ねた。
「あの……試合順のことですけド…」
「ああ、もういいわよ。どうせ何やっても変えてくれないだろうし」
 思わず声を失うディアナを、武藤は横目で睨む。
「何?まさか、ストライキでも起こすと思ってた?」
「そ、そんなことハ…」
 たどたどしい返答に、武藤はフッと笑う。これまで見たことのない穏やかな表情に、心臓がドキンと高鳴るのを、ディアナは感じた。
「大丈夫。あなたとの試合を台無しにするようなことはしない。それに、あの試合順のおかげで、新しい目標ができたから」
「目標……ですカ?」
「そう。ある意味、中森GMに対する最高の嫌がらせになるわ」
 不思議そうなディアナを見やり、武藤は観客席から立ち上がった。
「私たちの試合を、祭典のハイライトにするの。メインまで喰ってしまうような、今までで最高の試合に。GMがROA王座戦をメインにしなかったことを後悔させてやるって」
 ともすれば祭典を台無しにするという宣言でもあるが、咎めようという気は起こらなかった。それどころか、抑えきれない高揚感がこみ上げてくる。
 祭典史上最高の試合をする。それも、無二の親友とともに。それが実現できればどれほど素敵なことだろうか。
「めぐみ…」
 知らず知らずのうちに、ディアナは武藤の手を握りしめていた。武藤はまったく居やがす素振りを見せず、大胆不敵に微笑んでいる。
「やりましょウ、めぐみ。ワタシとあなたどんなことだってできル。それを証明しましょウ!」
 自分でも驚きだった。以前なら他のカードを気遣い、武藤を止めていたかもしれない。だが、この気持ちをごまかすことなどできなかった。彼女と最高の王座戦をする。それ以上に幸せな出来事などないのだから。
「ねえディアナ。試合が終わるまで、お互いに接触はなしにしよう。それで、祭典ではどっちが勝っても恨みっこなし。去年はエイジ・オブ・ザ・フォールとの抗争でドロドロした試合しかできなかったから、最後くらいスッキリ締めくくりたいの」
「分かりましタ。次に会う時は、リングの上で」
 こつんとこぶしを合わせ、ディアナは立ち上がる。武藤はまだ考え事を続けたいのか、観客席に座ったままだった。
 思わずほころんでしまいそうになる表情を引き締め、ディアナは改めて闘志を燃やしていた。

「………」
 去っていく背中を見送り、武藤は大きなため息を吐いて背もたれに身体を預ける。結局、打ち明けられないままだった。
 自分の心は決まっている。別に賛同して欲しいわけでもないし、彼女が異を唱えたところで結果は変わらない。ただ、どう思うか確かめてみたい気持ちもあった。
 ディアナは怒るだろうか。それとも、許してくれるのか。
 試合後に彼女はどんな反応を示すのか。試合への高揚とは真逆に、“そのこと”を考えると心が沈んでしまう。
 考えていても仕方ない。結局は、足を前に踏み出すしかないのだから。

 祭典に参加するレスラーのうち、WARS、鏡、そして優香を除く全員が集まった。全員がすでに祭典には参加済みで、大会までの流れも分かっている。中森はもったいぶらずに話を進めてしまうことにした。
「さて、祭典が近づいてきました。今日は皆さんに正式な試合順をお知らせします。今回はファンへの発表は行わず、当日までのシークレットとなります。絶対に、他言はしないでください。それでは…」
 突き刺さるような視線を感じる。それに気付かないふりをして、手元のプリントに視線を落とした。
「第1試合、『エミリー・ネルソン&ウィッチ美沙vs.小川ひかる&真田美幸』。第2試合、『氷室紫月vs.石川涼美』」
 フォーチュンとWARSの対抗戦をオープニングマッチとした。年齢的にこれが最後の祭典になるかもしれないエミリーを開幕戦に持ってくるのは気が引けたが、彼女なら納得してくれるだろう。人気レスラーで元ROA王者の氷室が第2試合というのももったいないが、そうせざるを得ないほど充実しているということだ。
「第3試合、『スイレン草薙vs.フレイア鏡』」
 ある意味、今大会で最も不安な試合だ。顔に傷をつけられた恨みから鏡は以前のような余裕な態度が消え、復讐を果たすべくさらに冷酷になっている。今更スイの実力を疑うわけではないが、経験の浅い彼女に、怨念に憑りつかれた銀狼を止められるのか。
「第4試合、ROAタッグ王座イリミネーション戦――『伊達遥&草薙みことvs.村上千春&村上千秋vs.ラッキー内田&小早川志保』」
 大会初の王座戦は、王者組の希望によりイリミネーションルールに変更になった。1チームを下しても試合は続き、真の勝者がベルトを手にする。果たして、この変更は王者に有利と働くのか――いや、みこと達はそんな計算はしていないだろう。ただ2チームを下して王座を防衛する。彼女たちの目標はそれだけだった。
「ここでいったん休憩を挟み、後半戦に突入します。第5試合は――」
 残すはトリプルメインイベントのみ。その口火を切るのは。
「葛城早苗vs.サンダー龍子」
 フォーチュンとWARSの決着戦――というより、ROAとWARSの看板を懸けた試合と言ったほうが正しいかもしれない。右肩の負傷から復帰した葛城が久しぶりの祭典参戦とあって注目度はかなり高かったが、万が一彼女が敗れた場合、他団体の龍子が大会を締めることになってしまう。そういった危惧もあって休憩明け第一試合に持ってきたのだが、葛城は特に気にした様子はなかった。
「分かりました」
 いつもと変わらぬ淡々とした口調で返事をする。彼女にとっては試合順よりも、勝敗の方がよほど気がかりなのだろう。
 ホッと胸をなでおろす中森だったが、問題はこの後。セミメインとメインだった。
「それでは、最後の2試合を。まず第6試合は……ROA王座戦、『武藤めぐみvs.ディアナ・ライアル』。そしてメインはノーDQマッチ、『秋山美姫vs.優香』。以上7試合が今回のエンジェルスオデッセイの――」
 荒々しくイスから立ち上がる音が響き、口上が中断させられてしまう。勢いに任せてこのまま終わってしまいたかったが、そう理想通りには進んでくれないようだ。
 怒りを漲らせ、周囲の注目を集めているのは武藤めぐみ。ROA王者は臆することなく中森を睨むと、押し殺した低い声で話した。
「カード順に不満があります。どうして、ROA王座戦がメインじゃないんですか?これまで、すべての大会でROA王者がメインを張ったじゃないですか」
「『ROA王座戦を必ずメイン戦にしなければいけない』という規定はありません。これまでに前例がないだけで…」
「私とディアナの試合が、今までのメインに劣るとでも?」
 畳み掛けてくる武藤。彼女が噛みついてくることは予想できていたため、答えに窮することはなかった。
「そういうわけではありません。あなた達の一戦は、祭典史に残る戦いとなることでしょう。しかし、興行全体の進行を踏まえ、最善と思える編成にしました」
「納得いかないわ」
 なおも諦めない武藤。葛城は興味なさ気にそっぽを向き、ブラジルでのプロモ撮影から帰国したディアナはオロオロと成り行きを見守っている。
「祭典はこの一年の総決算でしょ。なのに、半年以上休場していた秋山さんがどうしてメインに立てるんですか?エイジ・オブ・ザ・フォールと戦っていたのは、私やディアナ、葛城さんとか……とにかく、秋山さんはいないも同然だった。それなのに、なぜ!?」
 詰問に、秋山は視線を落とす。まさか、メインイベントに抜擢されるとは思っていなかった。ただ、優香と真っ向から対戦したい。そして、彼女を救い出したい。それだけ果たせれば、試合順はどこでもよかった。
 それに、武藤の意見はもっともだ。誰もが目指す祭典のメイン戦は、1年間通して団体に貢献したレスラーが立つべきだ。優香に襲撃されて半年以上欠場し、復帰後もこれといった活躍のない自分が上がるべきではない。
――断るべきだ。そう思い、腰を浮かしかけるが、それを察した中森に横目で制された。
「祭典はあなたのためにあるわけではありません。会場で、あるいはテレビで観戦してくれるファンのために開催するものです。その中で、ファンに最も注目されているカードをメインイベントとしたまでです」
「ROA王座戦より、元タッグ王者の仲違いの方が興味持たれているってわけ?」
「経営者としては、そう言わざるを得ません。言っておきますが、これは決定事項です。どのような不満があろうとも、カード順には反映させられません」
 抗議を跳ね除けられた武藤は悔しげに唇を噛み締めると、どっかと荒々しくイスに座り込む。その様子を、ディアナが心配そうにちらりと盗み見ていた。

 GM室で一人、中森は頭を抱えていた。タッグ王座戦も決まり、これで全所属選手の祭典でのカードが決定。あとは、試合順を決めるだけ。
 そう、決めるだけなのだが…。
「はぁ…」
 何度目かの溜息を吐く。GMになって初めて迎えるエンジェルスオデッセイ。注目カードを並べることに成功し、これで一息つけるかと思いきや、思わぬ難題が待ち構えていた。
 それはカードが豪華すぎるゆえの弊害――つまり、どれをメインイベントに据えるべきかということだった。
 例年なら、ROA王座戦で興行を締めくくるのが習わしだった。ROA王者は団体最高のレスラーが持つべきものだし、となれば、その選手以外に一年で最大の舞台に立つにふさわしい者はいない。
 だが、今年は話が違う。もちろん、武藤とディアナの王座戦の注目度が低いというわけではない。しかし、トリプルメインイベントと銘打った他の2戦――葛城早苗vs.サンダー龍子、そして秋山美姫vs.優香もそれに負けず劣らずの注目カードだった。
 葛城と龍子の一戦は、ROAとWARSの対抗戦でもあり、両団体の象徴同志との真っ向勝負で、さらに史上初めての顔合わせでもある。ROAファンのみならず話題に上がるマッチングだった。
 秋山と優香は、史上最強のタッグ王者たちの遺恨対決のみならず、1年前に始まったエイジ・オブ・ザ・フォールの反乱のクライマックスとなる対決だ。エンジェルスオデッセイは1年間のストーリーが集結し、そして新たな物語が生まれる場でもある。そう考えると、数ヵ月前に対戦の決まった武藤とディアナよりも、メインに相応しいのではないかとも思う。
 選手として出場している時は、当時のGMだった霧子がこれほどのように頭を悩ましているものだとは想像できなかった。
 祭典のメインに上がるのはレスラーとしての名誉だ。団体に最も評価されているレスラーだと、内外に知らしめることにもなるのだから。
 裏を返せば、メインに相応しいと思いながらも外れてしまう選手がいれば、大会に臨むモチベーションにも響くことになるかもしれない。
 あちらを立てればこちらが立たず。いっそのこと、ファン投票に任せようかとも思ったが、それは責任を放棄しているだけだ。GMとして、最高の大会にするためのカード順を決める義務があった。
 メイン戦が決まらないことには、他のカードの動かしようもない。この3試合の中からどれを大会の締めくくりにするのか。その決定が最優先だった。
(……仕方ありませんね)
 どんな並びにしても、万人を納得させるのは不可能だ。それならば、自分が最適だと思う試合編成を貫くしかない。不満は避けられないだろうが、妥協して大会のクオリティを下げるわけにはいかない。
 意を決して編成に取り掛かる中森。程なくして完成した試合表を何度も見返しようやく納得すると、全所属選手に祭典前のミーティングを行うと連絡した。

このページのトップヘ