本日、LOVESICK PUPPIESが4周年をむかえるという事で、
日頃ご愛顧いただいている皆様に、ささやかながらお話をご用意しました。 

ほんとなんでもない1日を描いたものですので、
気楽に懐かしんでいただければ幸いです。

ツイッターで、未だにらぶぱぴのことで話しかけていただけたりするので、
有り難いやらなんやらで感謝感謝でございます。

それでは、前文はこのあたりにして、さっそくどうぞ。



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LOVESICK PUPPIES 
4周年記念番外編

-Usual days-
「こたつって害悪よね」

 三が日も過ぎた休日の昼、空小路がいきなりそんな事を言いだした。

「自分が出られないからって、物のせいにするなよ」
「そっちだって朝からずっとパズルやってるくせに――あ、端っこあったわよ」
「お、ありがとなー……まあ、一度入ると出るのに馬力がいるよな」
「まったくだわ……」

 ピースを嵌めながら空小路が次のを探し始める。

「あ、わたしもわかりますー。おこたには魔物が棲んでるって言いますよね。
 いちど足を掴まれると、抜け出せなくなっちゃいますよね」

 みかんを剥きながらまるなが笑う。
 みんなの分も剥いてるから手が真っ黄色である。

「しかし、こんな立派な炬燵(こたつ)があるとはすごいな。
 何人座れるんだ? さすが元寮だな」

 まるなからもらったみかんを裂きながら、姫里が歪な形をしたテーブルを眺める。
 そのとなりでソーニャが、机につっぷしながらまるなにみかんをベさせてもらいつつ――。

「――ごくん。ねーねーこたろー。これって1本の木から作ってるの? ――あむ」
「ああ、らしーぞ。昔、寮生の要望でこたつを導入する事になって、
 叔父さんがどっかからもらってきて、無理矢理改造したそうだ」
「へぇー、そーなんだ。でも、なんでパズルしてるの?」
「え、今更そこなのかよ」

 始めて1時間以上は経っているぞ……


「ああ、ウチの道場にパズル好きのご老人がいらっしゃってな。
 正月の暇つぶしに買ったはいいが、間違ってピース数が多いのを買ってしまって、
 処分に困っていたという事だったので頂いたのだ」
「はぁー、たしかに4000ピースは凄く多いですね……」
「ああ、おおよそ高さ1.5m、幅1mあるらしいからな」
「わたしより大きい……」
「あー、そうだね。まるなをジグソーパズルにしたら、ちょうどこんな大きさだね」
「誰が買うんですか……」
「3万までならお年玉で出せるな」
「い、勇さん?!」
「じゃあ、俺は夜も光るタイプで4万まで」
「こたろーさんまでっ?!」
「よかったー。まるな大人気だねー、あはははは」
「う、嬉しくないですよ……それにわたし、その、カラダとか特徴無いからすっごく難しいですよ…」

 そこで一同の視線が思わずまるなへ。

「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「無言!」
「まるな、冗談だ冗談」
「こたろーさんのフォローが雑です……」

 すまん。ちょっと納得しちゃったもんで……。

「ともかく、やろうにも結構場所を取るから困っていてな」
「んで、ニーシュでやろうってコトになったんだよねー。
 ほい、いーちゃん、イヌの部分できたからそっちでハメてー」
「ああ。わかった。
 それにしてもソーニャは早いな、私なんてまだ辰の顔しかできてないぞ」
「ぬふふふー、昔からこういうのは得意なのです。直感ですよ直感」
「ええと残りは、残る干支はウシ、イノシシ、ヒツジとトラと――
 あれ、織衣さん、なんで干支パズルなのにネコが居るんですか?」
「ああ、それはネコは干支を決めるレースに負けて入れなかったっていう、
 その話がモチーフだからじゃないかしら」
「え、え、なんですかその話」
「えっとそれは――ごめん、このピースが見つかってからでいい?」
「あ、や、気にしないでくださいっ。ハイ、待ちますっ、ごゆっくりですっ」
「んじゃ、わたしがかわりにしてあげましょー」

 ソーニャはサクサクッと見つけたピースを嵌めながら――。

「昔ね、神様が動物たちにこう言ったの。
 『元旦の挨拶に来なさい。来た順に、その年の動物の大将にしてやるぞ☆』って」
「あ、だからレースなのか」

 姫里が感心したように頷き、みかんを頬張る。
 どうやら、辰とは一事休戦のようだ。

「でも、レースならウシが2着っておかしくないですか?
 トラとかイヌとか、ウシより早そうな動物はたくさんいるのに」
「そこはね、ウシも考えたんだよ。
 『自分はみんなより足が遅いから、1日早く出発しよう』って」
「……不正の匂いがするわね」
「昔話に野暮すぎるツッコミだな」

 ピースを嵌めた空小路がキメ顔で言ったので思わず反応してしまう。
 はい、どこにハメるか見失った。

「でね、それを聞いてたネズミは『これはいいぞ』と、ウシの頭に乗ったの。
 そして、元旦、ウシがゴールする直前で、ピョンとおりて一番になったの。
 そのあとに、ウシ、トラと続いて今の干支の順番になったんだって」
「なんだそれは、ズルくないか。ネズミは要領がいいというかなんというか――」
「あ、だから子・丑・寅っていう順番なんですね」
「そーそー、ネズミは不労所得で美味しいところだけもっていく支配階級だったのです」
「だから、昔話を一気に世知辛い話にするな。
 ていうか、ネコの話はどーしたんだよ」
「ああ、そうです。ネコです、ネコ」
「あー、ネコは寝てばっかり……寝る子と書いてネコと読むぐらい寝るのが好きでね。
 で、神様の話も寝ていて聞きそびれていたの。
 そこで、ネズミが一日後――ウソの日付を教えて、
 ネコはならまだ寝られると安心して眠りこけちゃったの」
「また不正……」
「空小路さん、おとぎ話よ」

 思わずおネエ言葉で雑に突っ込んでしまった。

「それで、ネコはレースに参加できなくて、干支に選ばれなかったのですか?」
「そうそう。で、そのことを恨んで、ネコは今もネズミを追いかけ回してるんだって」
「あ、それでですかー。はぇー、よくわかりました」

 言いながら、まるなが次のみかんをむき始める。
 その視線は、まだ半分もできていないパズルに注がれている。


 そのまま、しばらくみんなで黙ってパズルをしていると――。

「なんか、嫌な話ですよね」

 みかんを剥きながらぽつりともらしたまるなに、再びみんなの視線が集まる。

「ほえ、なんで? ネズミのこと?」
「あ、いえ……まあたしかにネズミもズルイとは思いますけど。
 それ以前に、13匹の中でネコだけが仲間はずれになったのが、です」
「仲間はずれ、か」

 姫里がその観点は無かったと頷く。
 騙されたとはいえ、勝負に負けたのだからそれは当然のことと思っていたのかもしれない。

「ネコはたしかに怠け者だったけど、騙されたんですよ?」

 見つめられた姫里が、うーんと腕を組んで考えてから――。

「たしかにそうだ、まるなの言う事もわかる。
 だが、寝ていてテスト範囲を聞き損ねて、赤点取るようなものだ。
 ネコの自業自得な面もある」
「でも、周りの誰かが教えてあげれば……!」
「でも、ネコはずっと寝てたんだよ?」
「あ――そうでした」

 ソーニャに突っ込まれ、まるなは頷く。
 ああ、モヤモヤしてるのか――。

「まあ、おとぎ話だから多少理不尽で、教訓めいたものが含まれていても――」
「つまり、ネコの他者とのコミュニケーション不足が招いた悲劇、ということね」
「空小路さん」

 なんでいちいちそんなガチな掘り返し方をする。
 というか、キミが言うと重いですよ? はい。

「運が悪かったと、それだけで何年も……一生そういう扱いをされ続けるのは可哀相です」
「つまり、政治家のように任期制にして、数年毎に干支を入れ替えるのね。
 12年に一度、干支シャッフル選挙が行われる訳ね」
「空小路さんがノリノリになってきた……!」
「でも、干支総選挙かー……いーちゃんの推しはどの子?」
「やはり、自分の干支だな。
 む……そう考えると、生まれながらにして派閥があるのか」
「生まれながらにしての格差――さすが有名なおとぎ話、社会問題や風刺を孕んでいるわね」
「おまえ、落語とかでもいちいち深いとか言うタイプだろ」
「な……なーっ!」

 顔真っ赤だよ。図星かよ、論破が容易すぎるぞチョロ小路さん。

「んー、みんなどったの? なんか盛り上がってるみたいだけど」
「あ、有希ー♪ 遅いよー!」
「やーやー、ゴメン。連絡もらったんだけど、寝ちゃっててさー。
 あー、とりあえずおコタ入らせてー、外さっむくてさ!」

 荷物を置き、コートを脱いで保科がまるなの隣に座る。

「寝てた……有希さんっ」
「え、なになに? なんで抱きついてくるの? あ、温めてくれるとか?」
「有希さんは、仲間ハズレにしませんからねっ」
「はえー? あの、なんですかね、コレ」
「干支でネコが選ばれなかった昔話をしてたんだよ」
「はー、はーはーはー、そういうのでこういう感じ、ですか」
「今ので伝わるんだ……」

 お陰で楽ですねー。はい。

「まあ、私は仲間外れでもいーと思うけどね」
「え――なんでですか?」
「だって、こうしてスキ焼きの材料を買ってこられたからですっ!」
「す、すき焼き――!」

 先ほど保科が置いた材料をみて一部が色めき立つ。

「いーね! 有希、早く用意しよう! わたし、すっごくお腹ぺこぺこなのっ!」
「えー、ちょっと待ってー、もうちょっと温まらせてよぅー」
「よし、まるな、こうなったらふたりで先に用意してようっ! いーちゃんも!」
「え、私もか?! いや、私は料理は――なあ、空小路」
「料理の特訓したいって言ってたし、ちょうどいいんじゃないかしら」
「なら、空小路も!」
「あ、織衣はダメ」
「…………」
「ソーニャの即答はともかく、まるなの無言が堪えるわ……」
「とゆーわけで、いくよいーちゃん」
「そーです、特訓です、勇さん!」
「あ、ちょ、待って――ああ、引っ張るなソーニャ、まるなまでっ!」
「あーあ、連れてかれちゃったねぇ」

 中で手を揉み温めながら保科が笑って3人を見送る。
 空小路は余ったみかんを保科に分けながら――

「でも、どうして突然すき焼きだなんて……?」
「ねえ崇村、もしかしてみんなに知らせてなかったの?」
「ああ、サプライズになるかなーって」
「ったく、自分が食べたかっただけでしょーに」
「うっせーな、いいだろ別に。姫里も来ることになったし、お前もどうせ午後から暇だっただろ」
「ま、ねー」
「ははぁ、なるほど」
「なんだよ空小路……気持ち悪い顔でこっち見て」
「崇村、最近暇だってずっと言ってたものね」
「は、はい?」
「あー、なるほどなるほど、寂しかったんでちゅねー?
 それならそうとママに言ってくれればいいのにぃー」
「心底お前を呼んだ事を後悔してる」
「じゃあ、帰るね。牛肉と一緒に」
「すみませんでしたっ! 保科様っ!」
「謝るの早っ、ていうか肉強っ!」
「ふふふ、まぁ冗談はさておき、せっかくだからみんな呼んだら?」
「呼ぶって……」
「志穂さんや彩乃ちゃんはもちろん、室長――揚木さんとか」
「まあ、そうだな……めぼしいヤツには声掛けるか」
「お、忙しくなるね。んじゃ、もうちょっと具材買い足さなきゃね。空小路さん、行こっか」
「あ、待って、もう? 準備するから待って――」
「んじゃ、行ってくるねー」
「おう、PDA(財布)、キッチンのテーブルにあるから」
「わかったー。借りてくねー」

 保科が空小路を引き連れてドタバタと去って行く。
 それをぬくもりながら見送り――。

「ったく、慌ただしいなぁ……」

 思わず微笑んでいた。



 ――その夜は、前室長や前会長、棗なんかを呼んでちょっとした大騒ぎになったのだが、
 まあ、それはまた別のお話である……。



*****


「おい、マイブラザー虎太郎さんよぉ。
 このDJレンジ、すき焼きパーティーとか聞いてないんですけど……」
「あ」


 この出来事を期に、ハスがトラを恨んだのは言うまでもない……。



-END-