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ウィーン わが夢の町
  • アンネット・カズエ・ストゥルナート
  • 新潮社
  • 1470円
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livedoor BOOKS
書評/ルポルタージュ


読み終わりました。著者の凄まじい半生に声が出ません。とても私のような意志の弱い人間には真似ができない。これから読む方のためにも、粗筋は書かないことにしますが、恐らくは、読めば著者の生き様に圧倒されるでしょう。戦乱の中国で生死の境を彷徨うのは、様々な物語で読んでいますが、平和な日本でも、ソ連でも、アメリカでも、音楽の都ウィーンでも事件と苦難の連続です。そのうち「スペシャルドラマ」になるのではないでしょうか。それとも昼ドラか?

なぜ、こんなに苦しまなければならないか。歌いたいという「夢」のためである。夢は断じて甘いものではない。それどころか、平気で人を絶望の淵に追いやり、自殺までさせようとする。




私がアンネットさんに会ったのは、2000年の9月だった。音楽に関係の無い出会いだったが、最後に「今日はこれからどうなさるんですか?」と尋ねられたので、
「夜はオペラを観ます」と私が答えたら、
「シュターツオパー(国立歌劇場)ですか? だったら、私が出ますよ」
「えっ、本当ですか?」
「えぇ、探してみてください」

その時、私は本当に驚いていた。確かにアンネットさんは声がいいので、只者でない雰囲気は感じ取っていたが、まさか国立歌劇場の歌手だったとは!(それまで間近で見た歌手といえば冠二郎さんだけだった)

「ウィーンはいつもウィーン」という曲があるが、やはりウィーンという街は、ウィーンなのだ。音楽家を探さずとも、普通にこんな出会いがあるのだ。その夜の演目は確かプッチーニの「ラ・ボエーム」だったように思う。偶然、再び「本が好き」でアンネットさんのお写真を見て、その思い出が蘇ってきた(蛇足だが表紙の写真の撮影者はカメラータ東京の井阪紘社長・・・CDが出るのかな?)。

カラヤンとのエピソードは暖かく、微笑ましい。帝王と呼ばれたカラヤンも若い頃は随分と苦労したという話を読んだことがある。確かディスコグラフィーに関する本で読んだと思ったが、駅や鉄道はいつもカラヤンにとって売り込み時代の(移動の)苦労を連想させるものだったらしい。遠くから来たアンネットさんを見て、その頃の自分と重ね合せたのかもしれない。

専門的な音楽の話はそれほど出てこないので、初心者でも臆することなく読めるだろう。また驚くべきことは、大事件であっても淡々とした筆致で書かれていることだ。自分なら何十ページも使って、おどろおどろしく書くと思うが、著者は何事もなかったかのようにサラリと書く。

六十代に差し掛かった現在の彼女は後進の育成という大きな使命を全うしようとしている。それは「歌いたかった」自分を支えてくれた多くの人々への恩返しであり、自分をここまで導いてくれた「歌」に対する恩返しでもあるのだろう。

夢を見ることは苦しい。実現までの道のりが険しいのだから。でも、夢を見なくとも、生きていくのは辛い。だとしたら、夢を見ずしてどうやって世の中を耐え忍んでいけるのか。この本を読み終えて、そう思った。

人生は実際に生きるよりも夢見ていた方がずっといい。とはいえ、人生を生きるという事は、それを夢のように見る事ではあるのだが。(プルースト)

こんなに残酷であっても、それでもやはり夢は美しいものなのかもしれない。


特にこの本をお薦めしたいのは、アンネットさんと同世代の女性。ただ、ハンカチが手放せなくなって、家事も手に付かなくなるかも。悩み多き若い女性は、読めば勇気を貰えるはず。

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《参考》
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