B00018D396A New Reality
Frankie Knuckles
Definity 2004-04-20

by G-Tools

一つの音楽のジャンルがある限り、それを生み出した人物もやはり存在する。よく縮めて「ハウス」と呼ばれるハウスミュージック(House music)は、フランキー・ナックルズ(Knuckles, 1955- )によってシカゴのクラブ・ウェアハウス(Warehouse)で生み出された。名称もそのディスコに由来している。

ハウス・ミュージックの説明はもっと詳しい方に任せるとして、ナックルズのアルバムに楽曲を提供している日本人の事を書きたいと思う。

藍川大輔(Aikawa, 1976- )は単身渡米し、ナックルズのアルバム「A New Reality」(2004)に楽曲「Emotional Energy」を提供した。彼のマイスペース内のページから試聴できます。

藍川大輔(マイスペース)

「Emotional Energy(心の力)」は、たゆまなく続く情緒の動きのように、何物にも強制されず穏やかにではあるが、自律した展開を見せる。それはあくまで内部の論理によって統制された動きである。彼の手が譜面に書いていた瞬間は、藍川自身の論理だったろうが、手を離れた瞬間から、曲は匿名性を帯びてそれ自体が持つ論理で響いている。

芸術作品の持つ匿名性は、しばしば芸術家を困惑させてきた。作品は、書いた彼にも、ピアノに向かって弾いている彼にも、完全には制御できないものとして存在している。20世紀後半の多くのピアニスト達が、それまでの多くの先達と違ってコンポーザー=ピアニスト(作曲もするピアノ奏者)とならなかったのも、それまでに偉大な作品が多く存在したからというような手軽な理由ではなく、この匿名性に恐れおののいたからではないのか。

例えば、学生時代に書いた嬰ハ短調のプレリュード(Op.3 No.2)を終生弾くように求められ苛まれ続けたラフマニノフのように、偉大な作品であればあるほど、作品は作曲者の手からするりと逃げ出し、創造の神の元に渡ってしまう。そして、永遠の生を得るのだ。



藍川は東京音楽大学ピアノ演奏家コースを卒業し、現在多方面で音楽活動を行っている。




なんか昔読んだハンナ・アーレントの文章みたいになってしまったような・・・あれは何の本だったかな。