Wikipedia
かつて日本語URLについて私見を書いたが、それを持っているウィキペディア(Wikipedia)について考えてみたい。


参考にしようと、ウィキペディアについて書かれたブログを探してみたが、不思議とあまり参考になるようなものが見付からなかった。皆、よく使っていると思うのだが。


1 ウィキペディアは「もうひとつの地球」である

なぜウィキペディアがSEO上高く評価され、グーグルの検索結果でいつも上位に表示されているのか。その理由は、何も日本語URLや「被リンク数が多い」からというだけでなく、ウィキペディアそれ自体の構造――ウィキペディアそれ自体が持っている、膨大な数のリンクで一つ一つの言葉が繋がって出来る壮大な「リンク体系」の構造――にあるのではないかと私は考えている。

ウィキペディアは言うまでもなく、インターネット上の百科辞典である。一つ一つの項目に、それぞれ一ページが割り当てられ、例えば、「横浜駅」というページは、「横浜駅」という項目の説明になっている。「ミナミマグロ」も同様である。項目の説明とは、すなわち項目となっている言葉の説明であり、定義である。


----------[項目=表題]---------
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|   項目の定義、説明       |
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ウィキペディアの一ページ


ウィキペディアはそうした言葉の定義(記事と呼ばれる)が、日本語版で今日現在約五十万本収められている(記事を数える単位は本)。その数十万もの項目の一つ一つが相互に密接に結び合わされて、ウィキペディアの「構造」は成り立っている。


[定義]-------------------[定義]
      ↑定義どうしの定義



[一つ一つのページ]--------------------[他のページ]
(=「その言葉の定義」)  ↑   (=「その言葉の定義」)  

     「定義」と「定義」の間のこの関係が、
     二つの言葉の関係を定義し、相互の言葉にも影響する


ウィキペディアの本質とは、「言葉の定義同士」の定義である。
つまり、定義の定義である。


例えば、鉄道の東海道本線の駅を例にとって見てみよう。一つ一つの駅について一ページずつ項目が作られ、順に、東京駅、新橋駅、品川駅、川崎駅、横浜駅と路線にそって並べられ、横浜駅のページには前の駅「川崎」と、次の駅「戸塚」がリンクされて繋げられ、最終的に「東海道本線」のページに纏められる。
同じように「山手線」や「中央本線」も纏められ、やがて「東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)」、「日本の鉄道会社」に括られる。
さらに、一つ一つのページは他の言語でも作られ、それらは相互にリンクで繋がり、各国語版のウィキペディアが系統樹の森を形作る。




そうして、ウィキペディア自体が多言語の「もうひとつの地球」となっている。



梅田望夫は、「ウェブ時代をゆく」の中で、ネット空間の事を「知と情報」の面では、「もうひとつの地球」であると言及した。私はネット空間自体もさることながら、ウィキペディアの方を「もうひとつの地球」と呼んでみたい。

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書 687)



2 ネット上の説明体系のあるべき姿


ウィキペディア自体が小さな「ネット世界そのもの」に擬せられていると言ってもいい。

それゆえ、ウィキペディアだけでなく同じような世界を模した構造体系を持つポータルも高く評価されているのも同じ理由ではないかと考えられる。

もし、ウィキペディア内に蜘蛛の巣のように張り巡らされた網が、グーグルからそのままウェブ上のあるべき姿に近いと判定されているのだと仮定すれば、別にグーグルから特別に評価されなくてもウィキペディアは自然と検索結果の上位に浮かび上がってくるであろう。



     「定義のネットワーク」 「蜘蛛の巣」
ページ-----------------(リンク)-------------------ページ



ウィキペディアに限らず、通常ウェブ上のページはどれでもハイパーリンクによって
他のページと繋がって存在している。ハイパーリンクに使われたテキストと、テキストが指し示すもの(ページ)との関係は、現実社会における「言葉」と「それが指し示すもの(ページ)」との関係に似ている。そして、ウェブ空間に広がる前者の関係を判定する判断材料があるとすれば、それは現実空間に広がる「言葉」と「言葉が指し示すもの」との関係に合致するか否かという点になる。



《ネット上》  [テキスト]-----ハイパーリンク-----→[テキストが指し示すページ]   

 ↑        ↑         ↑             ↑
対応関係    対応関係    対応関係        対応関係
 ↓        ↓         ↓             ↓

《現実社会》   [言葉]-------------------------→[言葉が指し示すもの]





3 ウィキペディアがこの世の情報を整理し直す


普段ウェブ上で情報を探している時、企業のトップページなどに入ってしまうと装飾過多なページばかりで、なかなか求める情報に辿り着かないといった経験を誰でも持っているのではないか。
例えば、ある会社の正式な名称や沿革・従業員数を素早く調べたいのにフラッシュの映像に阻まれて「早くしてくれ!」とイライラしてしまう。こういった場合には百科事典として基本事項のみが整理されたウィキペディアが役立つ。

この世の情報を整理し尽くすことを究極の目標に掲げているグーグルは、この「整理された」ウィキペディアを無視することは出来ない。