自分は決して村上春樹の熱心な読者というわけではないけど、彼がクラシック音楽について書いているものはいろいろ追っかけるようにしている。






少し前のことになるが(2015年)、期間限定サイト「村上さんのところ」でも、お気に入りの音楽が読者とのやりとりの中で挙げられていて、アーリーン・オジェー(Auger, 1939-93)が歌う「四つの最後の歌」がお気に入りとあった(テラーク盤で、バックはプレヴィン指揮/VPO)。この演奏は筆者も好きなので、読んでいて嬉しかった。


公開されている時には気付かなかったが、50年代から60年代のリヒテルに触れた部分があった。

リヒテルの演奏をよく聴きました。この『森の情景』はとても素晴らしいです。完璧な技術と、まっすぐに核心に踏み込んでいく洞察と、みずみずしいエモーション。50年代から60年代にかけてのリヒテルは、まさに魔法のような存在でした。


村上春樹『村上さんのところ』新潮文庫、2018年、282頁。



この演奏はCDがDGから出ていて、手に取られた方も多いと思うが、先日購入した独Profilレーベルの放送曲から音源復刻した「リヒテル/シューマン&ブラームスBOX」であらためて聴きなおした。


RICHTER PLAYS BRAHMS & SC


既にレコードやCDで発売されている音源だけでなく、初出のライブ(放送用音源)など、まさに50〜60年代のリヒテルの「生の」シューマンが収められていて、この「森の情景」に限らず、熱いパッションがぶつけられている部分や、美しい弱音がはかなく響く箇所など、本当に魔法のようなリヒテルを堪能できる。










セッション録音されてないライブでは、本当に自由に羽ばたいているように感じる。