古くから『ニーベルンゲンの歌』に歌われ、ワーグナーが「ニーベルングの指環」に翻案したジークフリートの物語は、日本のヤマトタケルの物語とよく似ているような気がする。

勿論、神話や英雄譚は世界中どこでも同じような展開を辿るのだろうけど、ジークフリートは龍を殺し、ヤマトタケルも龍の尾から出てきた剣を身に付けて旅に出た。





炎に身を投じたブリュンヒルデと海に身を投じた弟橘媛の二つの自己犠牲。木更津の吾妻神社や、東京の吾妻橋(墨田区立花にある吾嬬神社へ続く参道だった)など、弟橘媛にちなんだ旧跡は東京湾岸沿いに多いが、相模湾を望む神奈川の二宮町にも吾妻山と吾妻神社がある。若い頃、そこから三浦半島と、その先にかすかに見える房総半島を見て、遠い神話の時代へ思いを馳せたものだった。ヤマトタケルが本当にこの山に登ったかはともかく、遥か遠くに房総半島が見えることから、昔の人々が弟橘媛の物語をこの山と結びつけたのは間違いないだろう。



そして、どちらの英雄も最後には不慮の死に近い亡くなり方をする。

ジークフリートが死に、ヴァルハラの城は炎上して神々の時代が終わる。草薙剣を熱田に置いたままにして伊吹山の神と対決したヤマトタケルは敗れ、病をおして伊勢神宮を目指したが息絶え、生まれ育った大和の国を想いながら白鳥になって天をめざして飛んでいった。


二つの物語が似ていると感じたのは、ニーベルンゲンの神話も実際の史実をある程度もとにしていると聞いてからだった。ヤマトタケルの物語だって、やはり少なからず史実をもとにしているだろう。おそらく東国で人々の記憶に残る活躍をした英雄の死と、大和王権から東国平定のため派遣された王子の死の記憶が合わさって出来ているのだと、個人的には考えている。




Dame Gweneth Jones Sings Wagner