2010年08月

2010年08月27日

内視鏡治療について

*:._.:*大分市萩原 宇野内科医院から医療情報を提供しています*:._.:*by 副院長
http://unonaika.net

本日の天気は曇り、気温はまだまだ暑いですね。しかし早いもので甲子園も終わったし、気がつけば夏休みももう終わりで来週には9月になってしまいます。もうすぐ秋、といっても実感なく、まだ残暑は続きそうですね。
そういえば最近雨ほとんど降ってないですね〜、野菜を育てている患者さんから話を聞くと今年は猛暑のうえ雨が少なく野菜の出来が悪いとのことです。おかげで全国的にも野菜は高騰していますね。
大分では地の野菜が安いので、地物はまだよいですが、他県から持ってきたような葉物系(ホウレンソウなど)は高いですね!個人的には近いうちに郊外の野菜直売所や道の駅などにドカンと野菜買い出しにでも行こうかなと思っております。

さて今日は治療内視鏡の話をさせていただきます
2009年10月より宇野博之医師が診療を行うようになってから当院では胃カメラ、大腸カメラによる診断のみならず治療内視鏡にも力を入れて行っております。
最近治療内視鏡の施行件数も増えてきており、ここで当院で行っている治療手技に関しまして解りやすく解説してみようと思います。

ちょうど内視鏡メーカーのオリンパスのホームページと日本消化器学会のホームページに一般の方向けにわかりやすい解説がありましたのでそれを中心に説明させていただきます

1)ポリペクトミー(胃や大腸のポリープを切除)

ポリペクトミーとは良性腫瘍を含めた隆起(りゅうき)性病変を切除・治療する方法です。ポリペクトミーを行う腫瘍は通常、茎や起始部の径が10〜15ミリ以内の小さなものです。また形態は隆起状のものが多く、一部はあまり盛り上がりの無い表面型の病変もあります。

高周波スネアと呼ばれるワイヤーを投げなわのように隆起物の根元にかけ、焼き切る方法と、ワイヤーを閉めて根元を壊死(細胞が死滅)させて自然脱落させる方法があります。高周波スネアで切除したポリープは、回収して組織検査することで、良性・悪性の判断や悪性度の判断が可能になります。

より小さなポリープやくびれのないポリープの場合は、クリップ状のホットバイオプシ鉗子(かんし)でつまんで切除することもあります。この鉗子は切除と止血が同時にできます

画像入りのオリンパスのホームページはこちら

2)EMR(Endoscopic Mucosal Resection;内視鏡的粘膜切除術)

EMR(Endoscopic Mucosal Resection、内視鏡的粘膜切除術)は、内視鏡的に粘膜を毟りとる手技であり、消化管の腫瘍性病変の治療に主に用いられます。くびれたり茎を持ったものは、そのくびれや茎にワイヤを引っ掛けて高周波電流で焼き切ることができますが(ポリペクトミー)、平坦な(ひらべったい)ものや陥凹して(へこんで)いるものは、そのままではワイヤが引っ掛かりません。そこで生理食塩液などの液体を粘膜下層に注入しポリープ状に切除部位を持ち上げワイヤを引っ掛けて高周波電流で焼き切ります。

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3)ESD(Endoscopic Submucosal Dissection;内視鏡的粘膜下層剥離術)

ESD(Endoscopic Submucosal Dissection、内視鏡的粘膜下層剥離術)は、内視鏡的に使用可能な高周波メスを使って、粘膜下層のレベルで病変を剥がし取る手技であり、主に消化管腫瘍の治療に用いられます。EMRとの違いは、1.周囲粘膜の切れ込みを入れる点、2.粘膜下層の剥離操作を行う点です。これらが加わることで、切除範囲を思い通りに決める(狙った範囲を正確に切り取る)ことができ、切除できる大きさに制限がなくなり、潰瘍を伴っていて固有筋層に固着しているような病変も切除できるようになりました。一般的な治療対象病変は食道、胃、大腸で若干異なります

画像入りの消化器学会のホームページはこちら

4)消化管出血に対する止血術

出血を止める、これが止血です。内視鏡による止血には熱凝固による方法、クリップによる方法、薬剤による方法と大きくわけて3つの方法があります。出血の大きさ、出血量、出血部位などを考慮して、最適な方法を選択することで止血を行います。


熱凝固による方法:
高周波電流による止血法は、出血部に高周波凝固子をあて、高周波電流を流して、出血部位に集中して発生する熱により組織を凝固止血します。
クリップによる方法:
クリップ止血法は、直接出血している血管や粘膜をクリップで摘んで圧迫し、止血します。高周波やレーザーという熱を使わずに、機械的な操作だけで止血する、より安全性の高い方法です。クリップには回転機能がついているものがあり、目的の部位に合わせてクリップの開脚方向を回転させることも可能になっています。
薬剤による止血法・薬剤局所止血法:
薬剤局所注入法は、組織の固定や血管の収縮作用をおこす薬剤を、内視鏡下に出血部を確認しながら、注射して止血する方法です。
薬剤散布止血法は、出血粘膜表面に薬剤を塗布または散布して、その薬剤の薬理作用やコーティング作用によって止血します。


画像入りの消化器学会のホームページはこちら



宇野内科医院からのお知らせ!
1)休診のお知らせ
院長外来のみ9月21日(火曜)午前・午後とも出張のため休診となります。
その間副院長の外来は通常通り行います
2)大分FMに出演します
9月20日(月曜)午後7時から大分FM「ハイカラ食堂」の医療コーナーに出演予定です。今回は祝日なのでLIVEではなく、収録になるかもしれません。放送内容に関してはまだ未定です。お時間のある方は是非聴いてみてください。
3)新館工事の進行状況
今のことろほぼ予定通り進行しています。基礎工事は今月末ごろには終了予定で  す。

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unonaika_oita at 16:49|Permalink 胃カメラ、大腸カメラ | 消化器

2010年08月20日

近未来の糖尿病薬

*:._.:*大分市萩原 宇野内科医院から医療情報を提供しています*:._.:*by 副院長
http://unonaika.net

今日の天気は朝から快晴、しかし暑い、冷房が効かないくらい暑いです。先日日本で一番気温が高かったのは大分の玖珠だったそうです。何と気温は38.3度だそうです。体温を完全に上回っていますね。ということは放熱による冷却効果は全く期待できない状態、異常な高さです。
熱中症の患者さんも増えているようです。体調の悪い方は無理しないで、ちょっとおかしいなと感じたらすぐに涼しいところで休憩しましょう!十分な水分摂取と適度な塩分摂取も重要です!

先週当院はお盆休みのため休診となっておりまして、ブログの方も1週間お休みさせていただきました。また今週から張り切って診療しておりますので宜しくお願い致します。

さて今日の健康の話題は、第70回米国糖尿病学会(ADA2010)からのダイジェストを読んでいて面白いと感じた内容を取り上げます。その記事には、近未来に日本でも発売されるかもしれない興味ある薬の話題がありましたので紹介します。

1)ナトリウム/グルコース共輸送体(SGLT)2阻害薬
次世代の糖尿病薬として期待される薬剤、現在各国で発売に備えた臨床試験が進められている。2型糖尿病におけるメトホルミンへの追加投与で良好な結果が得られている。

作用機序>血中のグルコースは糸球体で濾過されるが、濾過されたグルコースの大部分は、おもに腎ネフロンの近位尿細管起始部(S1)に存在するSGLT2を介して再吸収される。この薬剤はSGLT2を選択的に阻害し、再吸収を抑制することで、尿中のグルコースの排せつを促進する。
ちょっと難しいのでまとめるとこの薬剤は血液中の糖を尿に排泄させることにより血液中の糖を下げるという今までに無い効果をもった薬剤である
この薬、体重を増やさずに血糖値を下げることができそうですね!


2)週1回タイプのGLP-1アナログ製剤
日本でも先日発売になったGLP-1注射薬、ただ、この薬剤は1日1回注射しなければならないが、現在世界では週1回の注射で済むGLP-1アナログ製剤taspoglutideが開発段階にあります。まずはGLP-1について解説します、GLP-1は、食事をとって血糖値が上がると、小腸にあるL細胞から分泌され、すい臓のβ細胞表面にあるGLP-1の鍵穴(受容体)にくっつき、β細胞内からインスリンを分泌させます。GLP-1は、血糖値が高い場合にのみインスリンを分泌させる特徴があります。それ以外にも中枢に作用し、食欲中枢を抑制したり、心保護や心拍出量を増加するなどの効果も報告されています。

さてこのお薬の効果ですが、インスリン注射に比較しても遜色無く、しかも低血糖の副作用は少なく、さらに体重も増えないという、結果だけからみると驚くべきものがあります。そのことを示した試験結果を紹介します

対象は1、HbA1c7-10 2、メトホルミンとSU剤を安定量で12週以上使用 3、BMI25〜 4、少なくとも12週間の体重増減が5%以内と安定 これらを満たす1049例をGLP-1アナログ製剤のtaspoglutide10mg(367例)同20mg(350例)、そして比較対象の1日1回タイプの長期作用型インスリン(332例)に分けて効果を検討した。結果は24週後HbA1c7.0%未満達成率はtaspoglutide10mgで34%、taspoglutide20mgで41%、インスリンでは28%、注目すべきは体重です。インスリン群では治療開始前より平均0.4kg減 taspoglutide10mg群では平均3.3kg減 taspoglutideでは平均4.1kg減 大変素晴らしい魅力的な結果です。


3)週三回注射でも十分な血糖降下作用を持つインスリン
現在日本では1日1回タイプのインスリン製剤が使用されていますが、現在週3回の投与で十分な血糖降下作用の得られる超長時間作用型のインスリン製剤(Degludec)が開発されております。臨床試験の結果ではDegludecの1日1回投与および週3回投与の血糖改善効果が、1日1回タイプの長期作用型インスリンと同等であるという報告がありました。少しでも注射の回数が減るのはよい事ですが、週三回は微妙で打ち忘れなどもありそうですね。

ということで近い未来に日本でも認可されるかもしれない薬剤を紹介させていただきました。

新館の工事の進捗状況です。やや予定より遅れ気味と聞いておりますが、想定範囲内とのことです。打ち合わせなども順調に進んでおります。
↓の写真は今日現在の状況です。基礎だいぶ出来てきました。
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unonaika_oita at 17:03|Permalink 糖尿病 | 生活習慣病

2010年08月06日

睡眠時間と生活習慣病

*:._.:*大分市萩原 宇野内科医院から医療情報を提供しています*:._.:*by 副院長
http://unonaika.net

今日の大分地方は晴天!空が青くてスカーっとした真夏の天気です。暑いです!
外では朝から蝉の鳴き声が凄いですが、今年は院内から聞こえる蝉の鳴き声は少し静かになりました。というのも昨年までは診察室のすぐ外側に木があって、その木にはたくさんの蝉が止まっていたのか、この時期いつも大合唱でした。新館工事に伴い木は無くなってしまいましたからね〜。時間とともに色々変わっていきますね!新館工事も凄いスピードで進んでいて基礎工事も8月末には終わるそうです。順調です!


本日市内は七夕祭りの始まりですね。今日は府内戦紙(ぱっちん)ですね!


先日ブログをカテゴリ別に分類したのですが、少し見やすくなったのではないかと思いますがいかがですか?自分も見直すのは楽になりました。


さて今日の話題は「睡眠と生活習慣病について」です。

みなさんどのくらい睡眠を取っていますか?自分は比較的ロングスリーパーで7時間〜8時間も寝ます。みんなにはよく寝るね〜と言われますが、睡眠が元気の源です!現代社会では夜遅くまで店が開いていたり、TVなども遅くまでやってますし、PCなどいじっているとすぐに夜更かしになってしまいますよね。よってショートスリーパーの方が多い、これって健康上どうなのでしょう?

最近製薬会社の方にいただいた睡眠に関するパンフレットに面白い研究データが掲載されていたので紹介します

ますは高血圧と睡眠
・高血圧症を発症していない32〜86歳の4810名を対象に平均睡眠時間と高血圧発症リスクを検討→結果は32-59歳の中高年で平均睡眠時間が5時間以下になると、平均睡眠時間7-8時間の群に比して有意に高血圧発症リスクが高いという報告がある
・他の研究では5474名を対象に不眠と高血圧症の関連を検討し、高血圧症をもつ群はもたない群に比べて不眠の割合が高く、不眠の経験がある群は経験のない群に比べて高血圧症の有病率が高いことを示した

糖尿病と睡眠
・1486名を対象にし平均睡眠時間と糖尿病の関連性を検討し、糖尿病有病率は平均睡眠時間7-8時間を基準として、6時間では1.66倍、5時間以下では2.51倍まで上昇するという報告がある
・2型糖尿病患者161名のHbA1cと睡眠不足の関係を検討し、睡眠時間が不足するほどHbA1cが高くなるという報告もある

脂質代謝異常症と睡眠
・2003年の国民健康・栄養調査の結果から、男性1666名、女性2329名の平均睡眠時間と脂質代謝の関連を検討し、平均睡眠時間6-7時間を最良のデータとして男性においてはLDL-Cの値との間にU字相関、女性においては中性脂肪値との間にU字相関、HDL-Cとの間に逆U字相関があることが報告されている→脂質代謝に関しては6-7時間睡眠が最もよい傾向が示された。

肥満と睡眠
・日本人男性約2万名を対象に、1999年と2006年の健康診断データから、平均睡眠時間と肥満の新規発症について検討し、1999年と2006年のいずれにおいても平均睡眠時間が5時間未満になると肥満になりやすいという報告がある
・健康な男性12名の睡眠時間と食欲の関連を検討し、睡眠時間が短くなると食欲抑制ホルモンであるレプチンの血中濃度は低下し、食欲増進ホルモンであるグレリンの血中濃度は上昇することを確認したという報告もある

では睡眠時間と脳の働きや作業効率などについてはどうだろう?

ペンシルバニア大学の研究チームの実験では、2週間にわたって被験者の睡眠を1日6時間未満に制限した。ところが被験者たちは、以前に比べてそれほど強い眠気を感じることは無く、自分は比較的正常に活動できていると思っていた。これはあくまでも自己判断であって、きちんとテストを行ったところ、2週間の調査期間中、被験者の認知能力と反応速度はどんどん落ちていった。調査期間の最後には48時間起き続けている人と同程度までテストの成績が低下したという報告があります。

睡眠大事ですね!TVやインターネット、ゲームに音楽、夜の誘惑に負けず睡眠時間を確保するのは健康上よいことだと思います。人によって至適睡眠時間は多少異なると思いますが、5時間前後の平均睡眠時間の方で、なんか作業効率上がらないとか、最近なんか体調が悪いと感じている方には一度睡眠時間を1サイクル(1.5時間)ぐらい延ばして7時間前後寝てみることをお勧めします。






unonaika_oita at 17:47|Permalink 生活習慣病 | 糖尿病