団塊老人三田誠広 きょう20日は「敬老の日」―。
 
 作家・三田誠広氏の近著「団塊老人」(新潮新書)は、団塊世代のための老後の生き方読本です。間もなく定年を迎え年金生活の老人となる彼ら。「老後をいかに生きるか」は、切実な問題です。三田氏はこの本で、まるで教科書のようにわかりやすくその問いに答えています。 
  
 自らが団塊の世代である三田氏は、27年前の昭和52年(1977)、「僕って何」(現在・角川文庫)で第77回芥川賞を受賞しました。学生運動に自分を見出すことができず、セクトの先輩女性と母親の板ばさみのなかで、自立を模索する大学生の姿をユーモラスに描いた作品でした。

 主人公の「」は、未熟で軟弱な男として描かれ、三田氏自身のイメージとも重なる部分がありました。
 しかし、いま同世代に老後の生活のノウハウを伝授する三田氏は、それなりに人生経験を積んだ56歳の初老の男に変身。この本は彼の人生観への力強い《自信》に満ち溢れています。
 
 しかし、「団塊世代の行く手には、明るい未来が待ち受けている」というバラ色の結論にはいささか《甘さ》も感じます。生き方のポイントを整理して書いているのもいいのですが、「現実」というのは決して教科書通りにはいかないということを我々は知っているからです。
 
 あっ、こんなことを書いている私は三田氏より6歳年下の〔団塊の世代予備軍!〕です(念のため)。
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※三田誠広氏の写真は本書カバーより

◆◆ 「団塊老人」 ◆◆

このわかりやすさは何だろう?

 この本の最大の特長は、とてもわかりやすく書いてあるということです。
 文体も「ますです調」ですし(このBlogもそうですが…)、なによりも本全体がよく整理され、各章のテーマや見出しなども具体的です。

 ちなみに、各章のテーマや見出しからこの本を要約してみましょうか―。
 
 団塊の世代は「傲慢と不遜」が欠点ですが、独自の文化を持ち、「バブル経済を推進」させました。その彼らがいまリストラなどで「巨大なストレス集団」になっています。彼らの年金はいずれ破綻するので「税金の投入」が必要です。
 老後を行き抜くためには3つのポイントがあります(愉しく働く居場所の確保低コストで文化的趣味)。
 また「子供と親にはお金は使わない」こと。ただし「妻には嫌われない」ことが大切。これからは「肩書きを捨て、裸の人間」になって生きれば「団塊の世代の老後は明るい」―。

「現実」は、お気楽にはいかない

 この本から、昔、読んだD・カーネギーの「道は開ける」とか「話し方入門」などを思い出しました。アメリカカン・プラグマティズムの合理主義の極地みたいなこれらの本は、情緒的な文章を排してポイントを箇条書きで述べ、わかりやすく人生論やコミュニケーションのハウツーが書かれていました。そこにはプラグマティストの人生観の《自信》が満ち溢れていました。

 「団塊老人」もそんな系譜の本のようです。プラグマティストの人生観の《自信》も、三田氏の人生観の《自信》に通じるものがあるような気がします。
 しかし、こうしたハウツーものの欠点は、「現実」はそれほどまでにお気楽にいかないということです。たとえば、老後を行き抜くための3つのポイントにしても「そんなふうには、うまくいかないでしょう」という〔ため息〕ばかりがついて出ます…「やれやれ」(これはハルキでした!)。

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三田誠広氏のHP 三田氏個人の手作りのようです。素朴でマジメな三田氏の人柄が伝わってきます。