2010年06月30日
脳波測定の希望
セルシネ・エイム研究所代表・和田知浩氏が主催されるファイン・ブレイン研究会から、私が所属する武道団体「躾道館」の師範・会員の脳波測定の要請を受けました。
5月30日の日曜日、中野区の施設にて、代表師範・小林直樹先生をはじめとする躾道館会員の脳波を測定しました。
昨今ポピュラーになってきた脳波測定ですが、測定機材の進歩によって正確な数値を測ることができるようになりました。
ファイン・ブレイン研究会は、脳波測定機の老舗であるフューテックエレクロニクス株式会社の協賛によって、最新の測定機による計測を行っています。
「なぜ脳波測定を行うのか?」
脳波測定によって、私たちが各分野で能力を発揮している状態(心身の無意識下で起こる生理的反応)を時系列で数値的に確認し、「良い状態」「悪い状態」を把握することができます。
一般的に能力を発揮している時には、アルファ波が出ていると言われます。
事を行う時、アルファ波が出ている瞬間を確認し、その時の状態を再現するようトレーニングすることで、いつでも「能力を発揮」できるようになることが期待できます。
これをバイオフィードバックトレーニングと言います。
現在、ファイン・ブレイン研究会では、“達人”と呼ばれる人たちの脳波を集めています。
達人と呼ばれる人達の脳波を再現するようトレーニングすることで、各自のフィールドで望む結果を出しやすくなることが期待されます。
様々な分野の達人のデータを収集する上で、今回は「武道家の脳波」というカテゴリーでの測定でした。
測定では、「教科書通りに“良い”と言われる脳波を出そうと努力をせず、いつも通りの稽古へ集中している瞬間の脳波を測定する」という条件の元で行われました。
測定結果によっては、「能力を発揮している時の脳波は、実は教科書通りではなかった」というようなことがあったとしても、それはそれで新たな事実の発見となるかもしれません。
また、仮にそのようなデータが検出され、さらに教科書通りの脳波に近づけるように集中した場合には、さらに能力があがることも予測されるからです。
まずは、全く準備をしないままに閉眼時の脳波測定を行いました。
その後、通常通りの稽古を行い、その途中途中で脳波測定を行いました。
「立禅」という、その場に立ったまま内功を錬る鍛錬時の測定の後、「使用法」の稽古時の測定を行いました。
「使用法」というのは、攻撃しようと構える相手に対して自然体で待ち、相手の攻撃に対して技を決めていくものです。
自然体から技を繰り出す動作を数回行ったとき、私の脳波に特異な数値(6.5ヘルツのファストシーター波)が検出されました。
「今、何か変わったことはありませんでしたか?」
和田代表の問いかけに、攻撃を仕掛けた相手が先に答えました。
「無意識に出しました」
私は、「特に変わりません」と答えました。
この時私は、意図的に動きの変化をつけたわけではないので
「特に変わったことをしたわけではない」という意味でそのように答えました。
ただ、この時、私の内側(主観的なことなので表現が難しいのですが)では、意図したわけではないままに頭の中で何かがスパークした感覚を覚えました。
私が意図的に何かをしたわけではなく、自然とそうなったのです。
特異な脳波は、この一度だけでしたが、私の内側で起こった反応は以下のようではないかと推測します。
「使用法」という約束組み手という状況においても、攻撃のタイミングはアトランダムに行います。
通常は、“相手の攻撃の後から反応するものの、自分の技を先に決める『後の先』”のタイミングで技を繰り出しますが、これが自由攻防ともなると、相手の攻撃の機先を制する『先の先』のタイミングで技を繰り出す場面も多々あります。
それで、「使用法」の稽古の中にも、相手の“モーション”や“攻撃意志”に反応する場合や、“あえてギリギリまで待つ”ように、バリエーションを変えながら稽古を行う場合があります。
相手が攻撃しようとする時、その動きの初動(モーション)が見えますが、それは「攻撃しよう」という“意志が発令”するものです。
場合によっては、初動(モーション)以前に、この「攻撃意志」が感じられる場合もあります。
「攻撃意志」の感受とは、相手の動きが攻撃の初動となる以前の小さな筋緊張だけでなく、その他数値化することが困難な情報も含まれていると考えられます。
感受する情報量によって、それに反応して繰り出す技の完成度は変化します。
この時、もしも無意識のうちに行われた攻撃の場合にはどうなるでしょうか。
「攻撃しよう」という意志が無いままに繰り出される攻撃は、「攻撃しよう」という発令から攻撃の初動に至るまでの小さな筋緊張や、その他数値化出来ない情報も限りなく少なくなると推測されます。
哲学者で弓道家のオリゲン・ヘイゲルの言う
「射るという意志ではなく、“それ”が射る」状態
に近いのかもしれません。
このように放たれる、「ノーモーション以上に、意志というモーションが見えない攻撃」に対して反応するには、極度の集中力が必要となります。
この為、瞬間的な集中力の高まりが、私の内側で「何かがスパークした感覚」として感じられたのかもしれません。
「ノーモーション以上に、意志というモーションが見えない攻撃」への反応は、自分自身も限りなく「反応して技を決めるという意志」から離れていくと考えられます。
つまり、私自身も限りなく“無意識”に近く、「それが射る」状態‥変性意識状態から無意識が技を紡ぎだしたのではないかと推測されます。
「相手が無意識のうちに出した攻撃か否か」については定かではないものの、それに反応する時、以前からこのような“内的反応”は度々あり、私の中で「無意識(潜在意識)が紡ぎだす反応」として重要視し、アップマープの中でも、これを重要な要素として体系付けています。
今回の脳波測定によって、「極度の集中時における内的反応の瞬間が、イコール特異な脳波として検出される」のであれば、脳波の側面から逆再現を試みることで、潜在意識から溢れる情報の受け取りがより強化されると思います。
脳波測定におけるバイオフィードバックトレーニングの可能性を大きく感じる測定会でした。
和田代表に感謝致します。