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2020年3月14日に施行されたJR東日本のダイヤ改正では、中央・総武緩行線(三鷹〜千葉)に最後まで残っていた『6ドア車』が営業運転を終了し首都圏から「6ドア車」が姿を消すことになった。一方で関西でも現役最後の「オール多ドア車」である京阪5000系や東武20050系も廃車・3ドア化が進んでおり、通勤ラッシュ対策の切り札として導入された「多ドア車」は今や風前の灯と化しつつある。

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[そもそも、「多ドア車」とは]
通勤形・近郊形電車の標準的なドア数は標準的に3ドアまたは4ドア(大阪・東京都市圏の通勤形が中心)であり、事業者や運用路線の実情に合わせて使い分けられている。これは全国の通勤形電車で共通しており、北はJR北海道が札幌都市圏で導入している733系から、南は鹿児島県で使われている817系に至るまで概ね同じである(117系や213系・123系・125系のような例外もあるが)。
「多ドア車」というのはこの標準ドア数の基準を逸脱した車両の中でも特にドア数の多い車両のことで、3ドアが標準ドア数の事業者では4ドアや5ドアの車両が、4ドアが標準ドア数の事業者では5ドアや6ドアの車両がこれにあてはまる。

[多ドア車の導入目的]
多ドア車が導入されるきっかけの一つが「混雑への対応」である。今でこそ通勤形電車の標準スタイルとして確立されている「20メートル4ドア」も元はと言えば戦時中の通勤ラッシュ対策として導入された63系と戦後になって改良された72系に源流があるのはいうまでもない。高度成長期には大都市圏の沿線人口が急増し列車の方も増発・増結が繰り返されたが、そのような対策を講じてもなお設備の都合上輸送力増強の限界に達していた一部の事業者は乗降時間の短縮を目的として『更にドアを増やす』という対応に踏み切ったのである。
京急700形と京阪5000系・京王6000系の最末期製造車は全車多ドア車として製作された代表例であり、いずれも当時の混雑緩和対策では頭打ちとなりつつあった状態を打破するために開発された。 
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京急では18メートル3ドアが標準的なところに4ドア車を導入した。

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京阪では19メートル3ドアが標準的なところに5ドア車を導入、京阪では架線電圧が低かった当時「増結」の選択肢が使えなくなったことを受けて通常は3ドア、ラッシュ時になると5ドアで使用でき、3ドアモードでは使わないドアの部分に昇降式座席を配置して通常時の着席定員を確保するという前衛的なコンセプトを持つ車両が登場した。

国鉄分割民営化後のJR東日本や東急、営団、東武は編成全部を多ドアにするのではなく「一部を多ドア車にする」方式を導入することで多ドア車が使用されるようになった。
20メートル4ドア規格の車両であるJR東日本の205系・209系・E231系・東急5000系では中間車に6ドア車を導入、最混雑時には座席を全て収納し完全立席とする詰め込み仕様の車両が導入された。
18メートル3ドア規格の営団日比谷線と東武では相互直通運転用の車両である営団03系と東武20000系の一部で編成の前後各2両づつを5ドアにした編成が導入された。


[多ドアの終焉]
多ドア車は混雑緩和の切り札として重宝された車両であったが、その特殊さゆえに姿を消している。


ホームドア設置の障害となる
都市圏のJR在来線・私鉄線ではホームからの旅客転落が原因で発生する人身事故対策として「可動式ホーム柵」と呼ばれるホームドア設備の設置が進められている。この設備を導入する際に弊害となるのが『ドア位置が違う車両』の存在だ。3ドア・4ドアの両方が標準ドア数として定着しているJR神戸線やJR京都線では昇降式のロープ柵を導入することで問題を解決させているが、他社では標準ドア数や標準ドア位置(18・19メートル規格では3ドア、20メートル規格では4ドア)に統一した上でホームドア設備を導入している。今回のケースはこの類型にあたるものと推定される。
例:山手線のホーム柵設置工事は2段階の工程で行われており、山手線では4ドア車用のホーム柵を4ドア車停車部分に先行設置した上で6ドア車を順次4ドア車へ置き換え、6ドア車の置き換え終了後にホーム柵未設置部分へのホーム柵設置が行われた。
例:東京メトロ日比谷線では、使用車両の規格を20メートル4ドアに変更するため、3ドア・5ドアに関係なく18メートル規格の全車両が置き換え対象となった。このうち東武の5ドア車は3ドア化改造を施行されている。
※ホームドア設備の設置を理由とする類型は標準ドア数・標準ドア位置の異なる車両があるケース全般で確認されている。

・使い勝手が悪い
京王のケースでは、5ドア車が4編成しか用意されなかったこともあるのだが、5ドア車は他の4ドア車と比較して座席数が少ないこと、京阪・営団のように乗車位置が合わせられない(5ドア車の両端と中央のドアの乗車位置が3ドア車の乗車位置と互換性がある)ことを理由に5ドア車は無理やり4ドア車に改造され短期間で姿を消した。また、多ドア車を導入した事業者でも設備の増強によって増結・増発が可能となったり車両性能の向上による定員増加等で混雑が緩和された結果混雑に拍車がかかりやすい2ドア車と同様に使い勝手が悪くなったケースも存在する。


[残る多ドア車の今後]
日本国内の多ドア車は2020年度中に全ての車両が引退する予定で、京阪5000系も東武20050系も先は長くない。日本の鉄道車両史でも重要な1ページを刻んできた車両であるだけに、しっかりとしたかたちで保存されるのか、将来に語り継がれるかどうか注目したいところだ。

鉄道コム

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