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【観閲行進】
観閲行進では、基本的に「音楽隊→北陸・中部県旗→近畿府県旗→中国県旗→四国県旗→中部方面警務隊→観閲部隊指揮官→普通科徒歩部隊(2連隊)→航空科→普通科車両部隊→即応機動連隊→偵察隊→野戦特科→高射特科→通信科→化学科→情報科→後方支援→衛生科→会計科→施設科→戦車部隊(2018年の場合)」 の順で実施され、年によっては高射特科の部隊に「航空自衛隊の高射部隊」が入っていたり、普通科徒歩部隊の対数が1隊だけになったり、部隊の行進順序が変動したりと必ずしも一定にはならない。

【徒歩行進】
[音楽隊]
音楽隊は方面隊直轄の「中部方面音楽隊」と師団・旅団隷下の音楽隊4隊の計5隊があり、中部方面隊創隊記念行事では中部方面音楽隊と「師団・旅団音楽隊から1隊」の2隊による合同音楽隊を編成して参加します。 音楽隊入場時に演奏されるのは「大空(中央音楽隊初代隊長:須磨洋溯作曲)」です。

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〈音楽隊(2018年)〉
中部方面音楽隊と第3音楽隊による合同音楽隊の行進です。音楽隊が着用しているのは「通常演奏服 第1種夏服」とよばれる演奏行事用の制服で、専用装飾を施された91式第1種夏服に・白色の夏服用演奏帽を装着しています。

[府県旗]
中部方面隊管轄地域である21府県の旗が「第10師団・第3師団・第13旅団・第14旅団」の順に行進します。旗手はその府県出身者である女性自衛官が担当し、車両も出来る限り所在地域にある部隊のものが使用されます。演奏されるのは「中部方面隊歌」。

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〈石川県旗(2019 年)〉
「石川」の文字を能登半島の形状に図案化したデザインが特徴

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〈滋賀県旗(2019年)〉
カタカナの「シガ」を円形に図案化、内円は琵琶湖を、翼は県の飛躍をそれぞれイメージした。

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〈上下が反転した岡山県旗(2019年)〉
『岡』の1字を円形に図案化、2019年の観閲行進では上下反転した状態で行進してしまうハプニングがあり、後日総監部が陳謝する事態にまで発展しました。

[警務隊]
2017年・2018年は府県旗の次に、2019年は車両部隊の先頭として中部方面警務隊が参加しました。 中部方面警務隊の車両は「隊長車(73式小型トラック:警務隊仕様)」「白バイ(ホンダCB400:警務隊仕様)」「覆面パトカー」の車列で参加する。警務隊・観閲部隊指揮官〜徒歩部隊の間に演奏されるのは「陸軍分列行進曲(シャルル・ルルー作曲)」となっています。

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〈中部方面警務隊(2017年)〉
警務隊の車両は白にまとめられているのが特徴ですが、緊急車両指定されていない車両は白以外の塗装になっているケースも存在しており、73式中型トラック(第131地区警務隊)は通常色の車両が使用されています。

[観閲部隊指揮官]
観閲部隊指揮官(第3師団副師団長)とその幕僚は82式指揮通信車3台に分乗して行進に参加します。2018年までの観閲部隊指揮官は大内田憲治陸将補(2018年まで:2018年12月退役)、関口勝則陸将補(2019年:現陸上自衛隊航空学校校長)、田中仁郎陸将補(2020年)と変遷しています。

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〈観閲部隊指揮官(2019年)〉
観閲部隊指揮官は82式指揮通信車で観閲行進に参加します。指揮官の乗車している車両には、自身の階級が「陸将補」であることを示す「赤地に桜花章2つの車両標識」を取り付けています。

[普通科徒歩部隊]
2017年と2018年は2個連隊、2019年は1個連隊が徒歩行進として参加しました。前半の部隊(2019年の徒歩行進部隊)は89式小銃と戦闘装着セットを装備しており、戦闘時における基本的な姿が表現されています。
後半の部隊(2019年は未登場)は夜間戦闘用の暗視装置を装着し、89式小銃と5.56ミリ軽機関銃ミニミを装備しています。また、2017年は列後半にパンツァーファウスト3を、2018年までの最後尾にはギリースーツを纏った狙撃手(M24対人狙撃銃)が並んでいる。

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〈89式小銃・戦闘装着セットで行進する徒歩部隊(2019年)〉
第7普通科連隊(福知山)の行進です。

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〈夜間戦闘・対戦車・狙撃装備の徒歩部隊(2018年)〉

[中部方面混成団(2019年)] 
2019年は同年入隊の新人隊員のみで編成された部隊が行進に加わりました。携行装備は89式小銃、戦闘装着セットやスカーフは装着していませんが、その溌剌とした姿を目にする機会となった。教育部隊の指揮官が先導を務めたため、隊旗は白地に赤ラインの「新隊員教育中隊長(1等陸尉)」のものが使用される。
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〈中部方面混成団(2019年)〉
方面混成団の役割として「新隊員教育」があり、陸上自衛隊に入隊した隊員は全ての部隊で必要となる基礎的な教育を混成団教育隊で受ける。基礎教育修了後、配属先の部隊において職種に応じた専門教育を受けることになっています。2019年の観閲行進では第3師団・中部方面通信群に配属となった新隊員が参加した。

[航空科部隊]
中部方面航空隊・陸上自衛隊航空学校による合同飛行隊として参加しており、ヘリコプター(中部方面航空隊・航空学校の両方に固定翼機は配備されていない)で参加している。装備はUH-1J・AH-1S・UH-60AJ・CH-47J・AH-64D(AH-64Dは2017年まで、CH-47Jは2018年から)の5機種。昨年に観閲部隊指揮官を務めた関口勝則陸将補が現在航空学校長(兼明野駐屯地司令)を現在務めている。

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〈観閲飛行部隊(2018年)〉
手前から指揮官機(UH-1J)、対戦車ヘリコプター(AH-1S)・多用途ヘリコプター(UH-1J)・輸送ヘリコプター(CH-47)・多用途ヘリコプター(UH-60JA)の順で飛行しています。

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〈UH-60JA・AH-64D(2017年)〉
2017年限りの組み合わせとなったUH-60JAとAH-64Dの組み合わせ。中部方面航空隊には配備されていない機材であり、いずれも航空学校から派遣されてきた機材である。


次回からは車両部隊について解説していきます。 


▲もくじ▲


コメントを投稿される際は必ずご確認ください。
http://blog.livedoor.jp/uppi_natettyan/archives/22094005.html

 
 
【部隊解説】
[音楽隊]
2017年:中部方面音楽隊(伊丹)・第10音楽隊(守山)
2018年:中部方面音楽隊(伊丹)・第3音楽隊(千僧)
2019年:中部方面音楽隊(伊丹)・第13音楽隊(海田市)
2020年:中部方面音楽隊(伊丹)
音楽隊は記念式典における儀礼演奏、部隊の士気高揚・慰問、イベントにおける自衛隊のPR活動といった活動を担う部隊として様々な場面において演奏・広報活動をおこなっています。他国における軍楽隊と同様に吹奏楽の形式をとっており、本行事では式典演奏のほかに自由散策の時間帯を使用した演奏展示もおこなっています。

[警務隊]
2017年〜2020年:中部方面警務隊(伊丹)
中部方面警務隊は、中部方面隊管内における犯罪捜査・部隊の秩序維持・交通統制・主要幹部の警護を専門とする部隊で、犯罪捜査や部隊秩序の維持を専門に担う「地区警務隊」・地区警務隊の任務以外に警護なども担当する「保安警務中隊」に分けられます。配置される小型トラックは仕様こそ他部隊にある緊急車両使用の車両と同じですが、警務隊所属のパトカーであることが一目で分かるように白色塗装となっています。2019 年末ごろからは新型白バイとして「YAMAHA MT-03」をベースとする白バイの導入が開始された。

[普通科徒歩部隊]
2017年:第37普通科連隊(信太山)・第33普通科連隊(久居)
2018年:第36普通科連隊(伊丹)・第14普通科連隊(金沢)
2019年:第7普通科連隊(福知山)
2020年:第37普通科連隊(信太山)
普通科部隊は、小銃や迫撃砲・機関銃を使用し近接戦闘・近接火力支援を専門に担う部隊となっています。陸上自衛隊の部隊の中でも大多数を占める部隊としてコア部隊(予備自衛官を主体とする混成団隷下の普通科部隊)をふくめて(各方面隊隷下)44個普通科連隊・2個対舟艇対戦車隊、(陸上総隊隷下)水陸機動団2個連隊・第1空挺団3個大隊、(富士学校隷下)1個普通科教導連隊から構成されています。徒歩行進に参加する部隊は普通科中隊であり、この観閲行進では原則として第3師団・第10師団の普通科連隊から各1個中隊(2019年・2020年は第3師団のみ)が徒歩行進に参加します。

[中部方面混成団(大津)] 
2019年:2019年3月入隊者(行進指揮官は中部方面混成団(大津・松山))
2020年:2020年3月入隊者(行進指揮官は第36普通科連隊(伊丹))
3月に入隊した新人自衛官(自衛官候補生・一般曹候補生)は、大津駐屯地・松山駐屯地に所在している「中部方面混成団教育大隊(女性一般曹候補生は朝霞駐屯地の「東部方面混成団女性自衛官教育隊」)」で陸上自衛官として職種に関係なく必要となる教育訓練(自衛隊候補生教育・一般曹前期教育)をおこなったあと、各地の部隊や職種学校で職種ごとに必要な専門知識・技能の教育(新隊員特技課程・一般曹後期教育)を受けて各地の部隊に正式配属されます。

[観閲飛行部隊]
2017年:中部方面航空隊(八尾・明野)・陸上自衛隊航空学校(明野)
2018年〜2020年:中部方面航空隊(八尾・明野・美保)・陸上自衛隊航空学校(明野)
2020年:海上自衛隊第23航空隊(舞鶴)
中部方面航空隊を中心とする観閲飛行部隊は通称「イコマ・フォーメーション」とよばれる編隊を組み、亀岡市・猪名川町方面から川西能勢口駅上空・伊丹駐屯地上空を通り南へと抜けていくルートで通過していきます。
中部方面航空隊は八尾駐屯地(UH-1J:本部および中部方面ヘリコプター隊)・明野駐屯地(AH-1J・OH-1:第5対戦車ヘリコプター隊)と美保分屯地(CH-47J:中部方面ヘリコプター隊第3飛行隊)に分散して所在する航空科の部隊であり、中部方面隊における対戦車ヘリコプター・輸送ヘリコプターの運用を担っている。
UH-60AJとAH-64Dは陸上自衛隊航空学校から派遣されてきた機体。航空学校(明野駐屯地に本校があるほか、関東地方各所に分校がある)では航空科部隊への配属を目指す隊員に対する教育訓練(固定翼機の実技は海上自衛隊小月教育航空群、航空管制要員は航空自衛隊第5術科学校で専門教育を受ける)を専門におこなっています。
※2020年ゲスト部隊(海上自衛隊)に関しては該当記事にて別途紹介しています。

【装備品:小火器・携行装備】
[89式小銃]
NATO諸国で導入されている5.56ミリ小銃弾への移行に合わせ、7.62ミリ弾を使用する64式小銃の置き換えを目的として1989年に制式化された陸上自衛隊の主力小銃。2020年に豊和工業製の「HOWA5.56」を『20式小銃』として導入を開始し、水陸機動団などの優先配備部隊への配備が終わり次第普通科部隊の89式小銃の置き換えが始まるものとみられている。

[5.56ミリ軽機関銃MINIMI]
FNハースタル社が開発した軽機関銃で、64式小銃と弾薬を共通化している62式機関銃・74式車載機関銃と同様に、MINIMIでは89式小銃の弾薬を共有するすることが可能。分隊支援火器として前線・後方問わずさまざまな部隊に配備されている。

[対人狙撃銃]
米軍で使用されているボルトアクション式対人狙撃銃「M24 SWS」を日本初の狙撃専用銃として導入した。従来品である64式小銃改造型の狙撃銃と比べて命中精度・射程の大幅な向上を図っている。

[パンツァーファウスト3]
ダイナマイト・ノーベルによ開発された携帯式対戦車兵器であり、実態としてはロケットブースター付き無反動砲。作戦行動でパンツァーファウストを扱う隊員はこの装備+89式小銃という相当な重装備を扱うことになる。日本での製造メーカーや調達価格から「空飛ぶ日産マーチ」という愛称が付けられている。

[M24 SWS]
レミントン・アームスが開発した対人狙撃用のボルトアクション式ライフル。陸上自衛隊では長らく専用の狙撃銃を保有してこなかった(旧陸軍・陸上自衛隊共に小銃改造の狙撃銃を使用していたため、狙撃専用に開発されたものは用意されていなかった)ため、この装備の調達開始に合わせて同装備を専門的に運用するチームが創設された。

[戦闘装着セット]
防弾チョッキや88式鉄帽など戦闘行動時に着用する個人装備一式の総称。暗視装置は夜間戦闘を行う際の必需品。

[ギリースーツ]
狙撃手・狙撃観測手が着用する隠密行動用の迷彩服。落ち葉や草に近い材質・色彩を用い、地面と同化することにより敵に発見されにくくなる特徴を有している。

【装備品:航空機】
[UH-1J]
ベル・ヘリコプター社の多用途ヘリコプター『UH-1』をベースとして富士重工業(SUBARU)が改良を行ったモデル、後継機として近く「ベル412EPI」をベースとする多用途ヘリコプター『UH-2』の導入が開始される予定。
[AH-1S:コブラ]
UH-1をベースに開発された世界初の攻撃ヘリコプターであり、陸上自衛隊の対戦車ヘリコプターでは最大勢力を誇る。後継機はAH-64D「アパッチ・ロングボウ」だが、本格的な置換えには至っていない。
[UH-60AJ]
海上自衛隊・航空自衛隊の救難ヘリコプター「UH-60J」の陸上自衛隊用モデル。救難仕様に特化した「UH-60J」と比較して航続距離・自衛戦闘能力を強化し、多用途での使用が可能となっている。こちらも陸上自衛隊航空学校からのゲスト参加。
[CH-47J]
西側諸国で広く使用されている大型輸送ヘリコプターであり、中部方面航空隊では美保分屯地(米子駐屯地の分屯地であり、航空自衛隊美保基地・米子鬼太郎空港の敷地内にある)に新設(2018年)された「中部方面ヘリコプター隊第3飛行隊」に配備されている。
[AH-64D:アパッチ・ロングボウ]
AH-1S「コブラ」の後継として導入されている戦闘ヘリコプターではあるが、事故喪失機をのぞいて12機しかいないため「AH-1S」の置き換えには至っていない。中部方面隊には配備されておらず、航空学校で使用されている機体が参加。(2017年)
※2020年のゲスト機材(SH-60K)については該当記事にて別途紹介しています。

【行進曲】
[大空(須磨洋溯作曲)]
陸上自衛隊の発足時に製作された公式行進曲で、中部方面隊創隊記念行事では音楽隊の行進時に、中央観閲式(内閣総理大臣を観閲官として3年おきに開催される陸上自衛隊最大規模の観閲式)では女性自衛官部隊の行進において演奏される。

[陸軍分列行進曲(シャルル・ルルー作曲)]
明治初期に製作された軍歌「扶桑歌」と西南戦争において活躍した警察官を題材とした軍歌「抜刀隊」を組み合わせて製作された(ベース曲は2曲ともシャルル・ルルー作曲)旧陸軍・陸上自衛隊の公式行進曲。「抜刀隊」が警察官主体の部隊だったこともあり警察の観閲式でも徒歩行進で使用している本部(例:警視庁機動隊視閲式)がある。