4
【車両行進-2】
[偵察隊]
偵察隊は、威力偵察に使用され戦闘能力の高い「偵察警戒車」や小型で隠密偵察・交通寸断地域での活動に適した「偵察オートバイ」による敵情解明・情報収集を担う『偵察』部隊と移動式地上レーダー装置による敵位置・船舶位置の情報を収集する『電子偵察』部隊から構成されています。第4師団では戦車隊の機能(74式戦車→16式機動戦闘車)を吸収して威力偵察・火力支援をより強化した『偵察戦闘大隊』が発足しており、2021年3月に第3師団でも第4師団同様の再編が行われる予定となっています。

EB5612FF-5921-42BA-BEF6-33F95A3263B6
〈第3偵察隊(2019年)〉
第3偵察隊は威力偵察で使用される機関砲搭載型の87式偵察警戒車・隠密偵察で使用される小型の偵察オートバイを有し偵察活動・地上レーダーによる電子偵察を専門に行います。同隊と第3戦車大隊の統合により新設される「第3偵察戦闘大隊」ではここに16式機動戦闘車が加わることになります。そのほか、中部方面隊管内には第10偵察隊(春日井)、第13偵察隊(出雲)、第14偵察隊(善通寺)と4つの偵察部隊が配備されています。

3FFA1676-9E6D-4767-926E-AB937D631A86
〈第3偵察隊の軽装甲機動車(2018年)〉
普通科部隊でも使用されている軽装甲機動車は、87式偵察警戒車よりも小型・軽量で被空輸性にも優れるため偵察活動でも使用される場合がある。

[野戦特科]
中部方面隊の野戦特科部隊は、連隊編成(3個大隊:6個射撃中隊)をとる第10師団(豊川)、 隊編成をとる第3師団(4個射撃中隊:姫路)・第13旅団(3個射撃中隊:日本原)・方面隊直轄隊(旧第14特科隊を基幹とする3個射撃中隊:松山)に分かれており、そのいずれでも155ミリ榴弾砲「FH-70」・対砲レーダーシステム「JTPS-P16」を主要な装備として保有している。一方で旧式火砲である105ミリ榴弾砲も少数が存在しており、こちらは訓練展示で敵の砲兵が使用する榴弾砲として登場することがある。

9A9EA0C7-FA44-4F8C-8B8A-7722C9FDC2B8
3B8D4D2A-1D8A-4B46-8E51-0780B885C1F6
〈第13特科隊(2018年)・第3特科隊(2019年)〉
FH-70の牽引に使用される中砲牽引車は三菱「スーパーグレート」をベースとする車両を使用しています。第13特科隊で使用している車両には走行速度を表す3連ライトがあり、第3特科隊の車両にはその表示灯がないなど、牽引車の納入時期ごとに細かな差異が存在するのも汎用車をベースとする車両特有の特徴といえる。

5FE01EDE-782C-4336-B081-84861E6B4E91
〈対砲レーダー(2019年)〉
対砲レーダーは敵の発射した砲弾の発射位置を特定するために用いるレーダーである。敵を目視できない位置から攻撃する際には対砲レーダーがその目標を探すためにキーパーソンとなります。基本的には偵察活動に従事する「情報中隊」が保有・運用にあたります。

[高射特科]
敵航空機・ミサイルから味方部隊を援護するために編成されているのが高射特科部隊で、陸上自衛隊では中・近距離防空を、航空自衛隊が長距離防空をそれぞれ担っています。2018年の観閲行進では航空自衛隊からPAC-3、陸上自衛隊から中SAM・短SAM・近SAMがそれぞれ参加し主要な防空ミサイルが伊丹駐屯地に集結する結果となった。

1130B8E7-8B41-4D70-9CBC-221A39B30EAC
〈対空レーダー(2018年)〉
03式中距離地対空誘導弾を構成する部品の一つである対空レーダーは、遠距離を飛ぶ航空機やミサイルを捕捉、地対空誘導弾の飛翔経路や発車方向・高度を算定し確実に目標を撃墜するための諸元を導き出すために使用されます。

43324E76-5EAE-44DD-AD8F-6D18369460FF
〈03式中距離地対空誘導弾(2017年)〉
方面隊隷下の高射特科部隊に装備されている6連装式の中距離対空装備。その射程は60キロを超えるとされ、1台でかなり広い範囲をカバーすることができます。

D952BA77-6E04-48F7-8AF0-6D0CA79788F5
〈93式近距離地対空誘導弾(2017年)〉
師団・旅団・即応機動連隊隷下の高射特科に配備されている高機動車搭載型の地対空誘導弾。携帯式の「91式携帯式地対空誘導弾」と同一のミサイル8発が1台の車両に収められており、照準器自体が車両に内蔵されているためレーダー誘導が無くてもこの車両単独で運用することが可能となっています。

50741E22-1B20-4779-B0A8-96B7FCEEC815
〈81式短距離地対空誘導弾(2017年)〉
師団・旅団高射特科部隊や航空自衛隊の基地防空用に配備されている地対空誘導弾、通常は付属する射撃管制レーダーによって発射されたミサイルが誘導される仕組みとなっていますが、目視照準器を取り付けることにより必要に応じて目視照準での運用も可能となります。

E679AC78-577F-4C98-86F9-1BAA0CCAE906
〈航空自衛隊PAC-3長距離地対空誘導弾(2018年)〉
陸上自衛隊の長距離防空用地対空誘導弾で、海上自衛隊のイージス艦(こんごう型・みょうこう型・まや型)やアメリカ海軍のミサイル駆逐艦とともに弾道ミサイルに対する終末防衛の中心として運用される。北朝鮮が絡む弾道ミサイル事案では沖縄・八重山諸島方面や防衛省本庁のある市ヶ谷にも展開することもあり、弾道ミサイルやその部品の破片が降ってきた場合に備えています。


[通信科]
中部方面隊管内における無線・有線通信設備の構築・維持や電子戦といった部隊間の情報交換に関わる任務を担当する「通信科」部隊は、中部方面通信群(方面隊直轄)と師団・旅団隷下の通信大隊・通信隊から構成されています。観閲行進では野外通信システムの「アクセスノード装置」、移動式無線通信・衛星通信局装置を積載した73式中型トラックが参加します。
3FB17312-D5B2-4CE2-A2E9-684A9CFF65DF
〈野外通信システム「アクセスノード」(2019年)〉
各地に配置されている部隊間で情報をやり取りするために用いられる移動式の基地局車両。大規模な部隊派遣が行われる際には多数のアクセスノードを中心とした情報伝達ネットワークが構築され、部隊間・後方との情報共有においてその威力を発揮することができます。

4B1E365D-EACB-460F-BEDC-2D742899B998
〈JMRC-C4(2019年)〉
いわゆる衛生通信基地局。地上レーダーや小型の近距離防空用対空レーダーにも似ており間違えることもしばしば。通信衛星と接続し、有線回線が遮断された環境下でも衛星通信を使用することで画像・映像などの情報を遠方の司令部などと共有することができます。


[化学科]
NBC災害が発生した現場において安全を確保しつつ危険物の排除や汚染状況の調査・分析を専門に行う部隊が「化学科」部隊であり、 N・C災害に対応可能な「化学防護隊」とNBC災害全てに対応できる「特殊武器防護隊」に大別されます。行進にはNBC偵察車と除染車が参加し、NBC偵察車は緊急車両モード(赤色灯使用)での更新となっています。
773091D3-2BDF-43E0-8FAB-D2C7EB14ABD6
〈NBC偵察車(2019年)〉
汚染地域での偵察・情報収集・検体採取等でその威力を発揮する装甲偵察車。車体後部に検体採取用のグローブがあり、汚染物質の暴露被害を最小限に抑えながら汚染物質のサンプル収集・分析を行うことができます。また、情報処理システムも搭載されているため得られたデータは速やかに司令部と共有することができ、危険度マップの作成や除染作業の実施計画を立案するための時間を抑えることが可能となっています。

26FADC73-1618-4DEB-B65E-24D48B7515CA
〈除染車(2019年)〉
水や中和薬剤を散布することにより汚染物質を洗い落とすために使用される車両。ホースからの散布だけで無く車体のノズルを使用した線・面的な散布作業にも対応しており、水害や動物伝染病に関する災害派遣では道路清掃や防疫活動の主力として、原子力災害では汚染地域から戻ってきた車両や装備品の除染活動において使用されます。

[情報科]
情報科部隊は、無人偵察機や地上レーダーによる偵察・情報分析により得られた情報を配置された各部隊に提供・重要情報の保全管理を主任務としています。観閲行進では今津駐屯地に所在している沿岸船舶監視用レーダー・無人偵察用ドローン(ヘリコプター型)関連設備・通信設備が参加することになっています。
 
0F86A850-7B3B-405E-8D6C-21590580ACC7
〈地上レーダー1号改(2019年)〉
地上にいる人や車両、洋上の船舶を捕捉・動向を監視するために使用される地上配備型の移動式レーダーシステム。通常は情報隊(移動監視隊)や沿岸監視隊、偵察隊(電子偵察部隊)に配備され、電子的な偵察活動の中心的な装備として運用される。

E45F5D3A-E0F2-4EFA-8945-B681C0B805BC
〈新無人機偵察システム(偵察ヘリコプター:2019年)〉
偵察用の小型ドローン(ヘリコプタータイプ)を運用する「無人偵察機隊」で運用されており、これまでにヘリコプター本体・統制装置が参加した。この無人ヘリコプターには可視光・赤外光を検知するカメラが搭載されており、昼夜を問わず偵察人員の派遣が難しい現場で活躍することになります。

2384D5D0-77E5-46F1-A1BE-AA8DD20F2DF8
〈新無人機偵察システム(統制装置:2018年)〉
新無人機偵察システムは偵察用ドローンだけでは成り立たず、得られた情報を処理して指揮中枢に送るための機能・飛行ルートを決めそれをプログラムとして入力する機構・手動操縦を行う際の操作システムなどが別に準備されています。
 



 
▲もくじ▲
【部隊解説】
[偵察隊]
2017年〜2020年:第3偵察隊(千僧)
「偵察隊」は、軽快性に優れた装備である『偵察用オートバイ』や『87式偵察警戒車』を主装備として敵の勢力圏内における偵察活動・偵察用オートバイのもつ不整地走破性を生かして自動車の進入困難地域における情報収集活動に従事します。第4師団・第3師団(2021年〜)では機動戦闘車を保有する「偵察戦闘大隊」として増強されており、普通科部隊に対する火力支援に素早く展開する能力を有するようになっています。

〈コラム:『GATE 自衛隊 彼の地にて斯く戦えり』に登場する「偵察隊」〉
2020年の方面隊創隊記念行事でコラボレーションをおこなった「GATE 自衛隊 彼の地にて斯く戦えり」にも『第3偵察隊』が登場しています。しかしながら、この『第3偵察隊』というのは現実に存在する『第3偵察隊』とは編成・運用目的等で大きく異なる点が存在しています。

[野戦特科]
2017年:第10特科連隊(豊川)
2018年:第13特科隊(日本原)
2019年・2020年:第3特科隊 (姫路)
遠距離からの火力支援を担う野戦特科部隊(中部方面隊管内所在)の主力となるのは「FH-70 155ミリ榴弾砲」と後継装備である「19式装輪自走155ミリ榴弾砲(現在は特科教導隊で試験中)」、FH-70は補助エンジンによる自走での移動が可能であり、長距離の移動や観閲行進では専用の中砲牽引車に牽引され、訓練展示では自力走行を行う状態で使用されます。今後量産化されるものとみられる装輪自走榴弾砲は、中砲牽引車と榴弾砲が一体化した構造になることで射撃準備・陣地展開の迅速化を図ることが可能となる。

〈コラム:FH-70・19式・75式の違い〉
同じ野戦特科部隊が使用する155ミリ榴弾砲でも、FH-70・19式・75式の3種はその構造・運用方法で全く異なる性質を持っています。

[高射特科]
2017年〜2020年:第8高射特科群(青野原)・第3高射特科大隊(姫路)
2018年:航空自衛隊第4高射群第13高射隊(岐阜)
陸上自衛隊の高射特科部隊は、戦闘機では対処できないほどに接近してきた敵航空機を迎撃することによって味方地上部隊の支援を担う部隊として近距離〜中距離の防空を、航空自衛隊の高射部隊は海上自衛隊・在日アメリカ海軍の艦船と連携して長距離防空・対弾道ミサイル防空をそれぞれ担当しています。そのほか、自衛隊では部隊の自衛・基地防空用として携帯式の近距離地対空誘導弾を普通科(陸上自衛隊)などに配備させています。

(部隊:第13高射隊)
航空自衛隊岐阜基地(飛行開発実験団や川崎重工の航空機工場などが所在)に所在している航空自衛隊中部航空方面隊隷下の高射部隊。PAC-3による長距離防空を担当する。

[通信科]
2017年〜2020年:中部方面通信群(伊丹)
「通信科」は、指揮中枢となる部隊と現場にいる部隊との間で映像・音声・画像・文字情報などのやり取りを担う各種通信手段の構築・維持・電子戦を担います。部隊間の通信に使用される「野外通信システム」は、広帯域無線機(末端端末)・アクセスノード(移動基地局)によるネットワークを構築することで広い範囲に展開する各部隊間、部隊・指揮中枢間での情報共有・指示伝達を容易化しています。

[化学科]
2017年:第3特殊武器防護隊(千僧)
2018年:第3・10特殊武器防護隊(千僧・守山)
2019年・2020年:第3特殊武器防護隊(千僧)
「化学科」部隊は核兵器・化学兵器・生物兵器に対する知識、防護装備・技術を保有しており原子力災害や化学兵器によって汚染された地域の偵察・除染・被曝者治療(衛生科部隊とともに)などに携わります。多数の原子力発電所が所在している福井県若狭湾地域を抱えている中部方面隊では、原発災害の発生時に住民の安全確保・除染活動・事態対処の中核を担う最寄りの化学科部隊として展開・活動を行います。

[情報科]
2017年〜2020年:中部方面情報隊(伊丹・今津)
地上レーダーによる船舶・艦船等の動向調査(特に第13偵察隊と連携して日本海方面の監視を担当)を担う「移動監視隊」、ヘリコプター型の無人偵察機を運用して遠距離偵察を担う「無人偵察機隊」、各所から集められた情報を分析し指揮中枢に伝達する役割をもつ「情報隊本部」に分かれています。

〈「情報」と名の付く情報科以外の部隊〉
ちなみに、普通科連隊などにある「情報小隊」や「情報中隊(野戦特科:第3特科隊の場合)」、「指揮情報中隊(高射特科:第3高射特科大隊の場合)」は偵察・現場での攻撃目標探知を担当しているため『情報科』には当てはまらない。