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2021年1月31日に京阪電気鉄道が実施するダイヤ改正、この改正では3000系での「プレミアムカー」運用開始が大きくアピールされていますがそのなかでは半世紀にわたって行われてきた「通勤ラッシュの名物列車」がひっそりとその役割を終えることになった。

【「可動式ホーム柵」の設置、それが意味するもの】

『可動式ホーム柵』


相次ぐ視覚障害者・泥酔者などの線路転落を防止するための手法として開発され、様々なタイプのものが設置されています。また、車体規格の違いにも容易に対応可能なタイプの個体も開発が進められており、ドア数・車体長・ドア位置のすべてが異なる阪神車両(19メートル3ドア)と近鉄車両(21メートル4ドア)の両方に対応した昇降ロープ式ホーム柵も近く神戸三宮駅(阪神)に整備される予定となっています。

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【画像】可動式ホーム柵(阪急神戸三宮駅:3番ホーム稼働開始前に撮影)

京阪電気鉄道でも2021年春から「可動式ホーム柵」の導入を開始する予定となっているのですが、この計画が進むことは半世紀にわたり行われている「朝ラッシュの名物」が終わるということを表してもいます。

【京阪朝ラッシュの名物 〜5ドア車5000系〜】
 
『多ドア車』 
 
「通勤型電車」の基本となる車両は、「20m級4ドアまたは3ドア」、「18m級3ドア」というのがJR・私鉄の大半で共通しており、実際に
・JR西日本の通勤型(20m級4ドア(例:207系・321系)、20m級3ドア(例:323系))
・JR九州の通勤型(20m級4ドア(例:305系)20m級3ドア(例:821系*))
・JR東日本首都圏エリアの通勤型(20m級4ドア(例:E235系・E233系))
・阪急電鉄および阪神電気鉄道の共通規格(19メートル級3ドア)
・京急電鉄および京成電鉄の共通規格(18メートル級3ドア)
など、事業者毎に決まった車両規格を有している。これらの統一した規格があるため、可動式ホーム柵の設置が容易に行えるという利点となっています。
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【画像:山陽3000系】
山陽電気鉄道の車両は阪神・阪急との相互乗り入れを考慮し両社と概ね共通の車両規格を採用している

京阪電気鉄道の基本的な車両規格(京阪系統)は「19メートル級3ドア」となっており、特急専用車である8000系、8000系および3000系「プレミアムカー」はドア数こそ違いますが基本的なドアの場所は通勤型とほぼ同一となっています。
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[京阪2600系]
京阪2000系(1959年)を直流1500V対応に改造し1978年にデビューした車両、京阪の車両規格の基本はこの形式で確立されたといってもいい。

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[京阪8000系]
初代3000系の置換えを目的に製造された6代目特急専用車、ドア数は3ドア車とは異なるものの乗車位置は両端ドア位置に近い。

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京阪2600系をはじめとする京阪本線・交野線・宇治線・鴨東線の普通・急行用車両(シティ・コミューター)の一般的なドアの配置はこのようになっています。この配置は18メートル・19メートル級の車体を持つ通勤型電車ではごく一般的なものです。

しかし、それとは大きく異なる規格を有する車両が京阪には1形式のみ(大津線系統を除く)存在しています。 

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 それがこちら、5000系です。一見普通の電車にも見えるのですが、実はこの車両は「側面構造」に大きな特徴を有しています。


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それがこちら。実はこの車両、7両ある1編成の全車両が『片側5ドア車』だけで構成されているのです。 
乗務員室ドアをあわせて片面51ドアという「ドアだらけ」な車両はここだけです。むしろ、明治大正期の車両以外でこんな構造となっているのは京阪5000系(全編成)と京王6000系(5両編成の一部)だけです。

 【どうしてこうなった?】
このぶっ飛んだ構造を有する車両が登場したのは1970年台初頭、高度成長期における郊外居住人口の急増に伴い国鉄・大手私鉄各社では輸送力の増強を柱とする積極的な投資を行なってきた。なかでも大型車両・新型車両の導入は列車の増発・増結を行ううえで最も重要視され、関西では「錆びない鉄人」こと南海6000系や「人工頭脳電車」こと阪急2000系(現在の能勢電鉄1700系)、前述の京阪2000系(現在の京阪2600系)など高度成長期から現在も活躍を続ける車両たちが生まれたのもちょうどこの頃です。


[1960年代後半における京阪の車両事情]
京阪電気鉄道の車両は当時7両編成が最長であり、なおかつ架線電圧が600V(大阪市・京都市でそれぞれの市電と平面交差していた)のままだったため急増する需要を捌くことができず、直流1500Vへの昇圧を行おうにも設備・車両の準備に時間を要することや複々線区間の延伸を行うにも時間がかかるため、直流600V・7両編成で朝ラッシュの最混雑列車に投入可能な「切り札」として導入されたのがこの5000系でした。

5ドアのうち車両両端と中央のドアに挟まれた2ドアは「ラッシュ時専用ドア」となっており、最混雑列車で使用される際は乗降時間短縮を目的に5ドアで、それ以外の時間帯は着席確保を目的に3ドアとする運用を使い分けている。また、3ドア運用時にはラッシュ用ドアの上に仕込まれた座席が降りてくる「昇降式座席」を使用して着席定員を確保している。

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再度掲載しますが京阪5000系(先頭車の一例)のドア配置図です。ラッシュ時用のドアは上半分が無塗装になっているため容易に識別することができ、昇降式座席とともに同系列の際立つ特徴となっています。

この構造はラッシュ時の混雑緩和において重要な役割を示し、半世紀にわたりその実力を発揮し続けてきたが、他系列とは大きく異なる車体構造は可動式ホーム柵を設置するうえで重大な障害(ホーム柵の本体が設置できない)という問題があり、今回のホーム柵設置に合わせたダイヤ改正で5ドア運用を終了、設置工事の開始に合わせて引退・・・という流れになりそうです。

コメントを投稿される際は必ずご確認ください。
http://blog.livedoor.jp/uppi_natettyan/archives/22094005.html


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記事はまだ続きます。




 
【すでに引退・・・日本全国の「個性的な多ドア車たち」】

JR・大手私鉄で「多ドア車」を運用したのはJR東日本・東武・東急・京急・京王・京阪・東京メトロの7社。そのケースを一挙に紹介する。
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【JR東日本:6ドア車】
JR東日本は首都圏の最混雑区間を走る205系・209系・E231系に対し「6ドア」の車両を導入した。

[山手線]
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6ドア車の歴史は1990年、山手線205系の11両編成化に合わせて導入されたのが最初であり、山手線向けには試作車(サハ204-900番台)2両と量産車(サハ204-0番台)51両が近畿車輛で製造され7号車に連結された。6ドア車は「詰め込み」に特化した車両として配備されたもので座席は折畳式のものを設置、混雑時は着席不可能な構造となるように設計されている。
E231系500番台では編成中2両(7・10号車)に6ドア車(サハE230-500番台)が組み込まれた。山手線では2011年8月に山手線各駅への可動式ホーム柵設置(6ドア車の部分への設置)を行うため4ドア車に差し替えられた。

[横浜線]
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横浜線では1994年12月の8両編成運転開始に合わせて、増結車両としてサハ204-100番台(26両)が製造され、2005年までに山手線から移籍してきた0番台1両の計27両が配属された。この100番台は209系の製造開始後に製造された車両であり、台車は209系と同じTR246を使用している。
こちらは27両中4両が廃車後解体、0番台を含む22両がインドネシアへ廃車後輸出され、残った1両が鉄道総研に所属し広島県内で保管されています。

[埼京線]
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埼京線では山手線から来た0番台・900番台の52両が2001年から順次導入(2・3号車)され、川越所属の埼京線編成のうち36編成がこの組成となった。これらのグループは2013年〜2014年にかけて順次廃車となりこのうち15編成分がインドネシアへと輸出され、900番台を含む残りは解体されている。

[京浜東北線]
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京浜東北線では209系の「サハ208-0番台」として78両が1995年よりそれまで4ドアのサハ209が連結されていた6号車を差し替えるかたちで導入された。実際に差し替えたのは1994年中までに導入された35編成であり、以後に導入された編成では営業運転に入った時点で6ドア車を連結している。なお、900番台・500番台には6ドア車が連結されていない。これらの車両はE233系1000番台の導入に伴い2010年に運用を終了したが、その際「MUE-Train」に転用されたサハ209-8(現:サヤ209-8)をのぞく浦和電車区のサハ209・サハ208は転用できる場所がなくすべて廃車解体された。

[中央・総武緩行線]
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中央・総武緩行線では「E231系0番台・900番台」の「サハE230-900番台・サハE230-0番台」として1998年から合計47両が導入され5号車に組成された。これらのグループは多線区と比べ長く運用されたものの、2020年3月のダイヤ改正をもって運行を終了しました。

【東急電鉄】
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東急では2003年から田園都市線の5000系電車で6ドア車を導入し5号車・8号車に連結した。また、2009年ごろからはさらに4号車も6ドア車に変更することとなり合計で45両(6ドア車3両組み込みで15編成)が製造され混雑緩和に貢献した。東急の6ドア車はもともといた4ドア車の車番をそのまま使用したため4ドア車と6ドア車が連番になる状態となっていましたが、東急での可動式ホーム柵整備にあわせて4ドア車に戻されることになったため2017年に運行を終了した。ちなみに、置き換えた4ドア車は6ドア車と同じ番号の車両を「新造」したため平成期の車両なのに『同一形式内の3代目』が誕生してしまっている。

【京王電鉄】
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京王では最混雑列車における乗降時間短縮を目的として6000系(20メートル級4ドア車)のバリエーションとして6720番台(6721編成〜6724編成)が1991年にオール5ドア車の5両編成として登場した。その後輸送力が増強されたことや着席定員の少なさ、ドア位置の不便性から6723編成・6724編成の2編成が4ドア車に改造されるという鉄道模型のような改造を受けた。残った2編成は区間運転(6721編成が6両で相模原線、6722編成が4両で動物園線)専用となり、6000系が引退した2011年に最後まで運用に入っていたのが5ドア車の6722編成(動物園線)でした。

【京急電鉄】
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京急では3ドア車両に対して乗降時間短縮を図るために4ドア車である700形が1967年に、後継車として800形が1978年に開発され京急本線における普通列車を中心に投入された。超多ドア車が両開きドアを採用しているにに対し京急の4ドア車は乗降時間短縮効果が薄いとして両形式とも片開きドアの車両となっている。700形は2005年まで営業運転で使用されたあと先頭車22両が高松琴平電気鉄道(ことでん)の1200形として譲渡され、800形は京急本線内における可動式ホーム柵整備に伴い2019年に現役を引退した。

【東武・東京メトロ】
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東武伊勢崎線と東急東横線では20メートル規格の車両が標準化されるなか、営団(東京メトロの前身)が2号線(日比谷線)の用地買収の都合から18メートル規格の車両にこだわったため18メートル規格の車両が導入され、営団03系・東武20000系列・東急1000系でもその規格が踏襲された。その際、03系20編成・20000系列8編成が1・2・7・8号車を5ドア車とする編成(03系09編成〜28編成・20050系)として竣工した。これらのグループは2020年春の日比谷線車両規格変更(20メートル級7両)に伴いオール3ドア車編成共々運行を終了した。03系の5ドア車は全車両が解体されたものの、20050系は20430型・20440型への改造種車として転用され、5ドア車を種車とする車両については第2・第4ドアを塞いで3ドア車化されている。
 


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