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2021年2月18日、運輸安全委員会は2019年9月に京急本線神奈川新町駅で発生した踏切障害・列車脱線事故についての事故調査報告書を公表した。

[事故の概要] 
2019年9月5日11時43分ごろ、京急本線(京浜急行電鉄)神奈川新町駅で構内にある「神奈川新町第1踏切」内に進入した貨物自動車と下り快特1088SH列車(京成本線青砥駅発都営浅草線・京急本線・京急久里浜線経由三崎口駅行き)が衝突し快特電車の前3両が脱線、貨物自動車が大破炎上し貨物自動車の運転手が死亡、快特電車の乗務員2名を含む77名(乗客総数約500名・重傷者15名・軽傷者62名)を出した。
※この事故に関しては運輸安全委員会のほか、事業用自動車事故調査委員会でも「特別重要調査対象事故」として調査を行なっている。

[事故の原因]
この事故が発生し、被害が拡大した要因は次の2つと推定される。
・貨物自動車が踏切内に進入し、踏切を通過する前に踏切の遮断が完了してしまった
・踏切特殊発光信号機動作時のブレーキ取扱規則の不備と特殊発光信号機の視認不良

①貨物自動車の踏切内進入
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※運輸安全委員会「事故調査報告書」より
(貨物自動車が踏切に来た理由)
事故を起こした貨物自動車は横浜市内の事業所から千葉県成田市の卸先へと向かう途中で、なんらかの理由で迂回を試みようとしていたものと考えられる(実際、当日は首都高速子安入口が閉鎖されていた)ものの、現場につながる道路を通過した理由は不明(運転手死亡のため)であった。

(現場における貨物自動車の挙動)
貨物自動車が通過しようとしたルート上線路と並行に通る市道(幅員3.7m)から踏切とは逆方向(左折)を試みたものの、左折出来なかったため踏切内に入るルートへの進入(右折)を試みた。貨物自動車が踏切に進入した後で踏切警報機の動作が開始され、踏切から後退して脱出することが困難なために前進して踏切から脱出しようとしたところで下り本線を支障し、そこに電車が進入してきたものと考えられる。
※上記の行動をおこなった原因については運転手が死亡しているため特定できなかったとのことである。

②ブレーキ取扱・特殊発光信号機
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※運輸安全委員会「事故調査報告書 説明資料」より
(踏切の状態)
この踏切にある踏切障害物検知システムは正常に動作しており、事故発生の44秒前には踏切障害物検知システムによる特殊発光信号機の停止現示が動作している。

(特殊発光信号機の位置と視認状況)
電車運転士が踏切から一番遠い特殊発光信号機を視認できるのは踏切の手前572メートル付近であり、この付近では架線柱などにより断続的に該当の特殊発光信号機が見えなくなるポイントがある。

(特殊発光信号機動作時の対応)
また、特殊発光信号機の動作を確認した場合には「速やかに停止する」と規定されており、停止に使用するブレーキの操作方法は乗務員が状況を見て判断することとしている。

(ブレーキ操作の状況と事故回避の可能性)
運転士は信号の視認から4秒後(ここまでで140m走行)『常用ブレーキ』を、そこから6秒後(踏切まで244m)に『非常ブレーキ』を操作している。事故を回避するためには時速120km/hで走行中の場合、視認後1.5秒以内に「非常ブレーキ」を操作しなければならないため、「はじめから『非常ブレーキ』」を操作しても事故を回避することができなかったものと思われる一方、「最初に『常用ブレーキ』」ではなく「はじめから『非常ブレーキ』」を操作していれば被害がここまで大きくはならなかったと考えられる。


[事故後の対応] 
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※運輸安全委員会「事故調査報告書」より
京急では事故後、特殊発光信号機の動作時にとるべき運転操作について『直ちに非常ブレーキを使用して停車する』と改定し、「常用ブレーキ」が使用できる条件として『徐行運転を行なっている場合・最も現場に近い特殊発光信号機の外方で確実に停車できる場合』に限定することとした。また、現場踏切を含め特殊発光信号機の設置位置についても見直し、より遠くからでも特殊発光信号機の現示が視認できるよう特殊発光信号機の増設をおこなった。
道路側についても大型車両が現場道路(線路に並行している市道)に進入するのを抑制するため標識・迂回ルートの案内を設置するなどの対策を実施した。

事故調査報告書:http://www.mlit.go.jp/jtsb/railway/rep-acci/RA2021-1-2.pdf
事故調査報告書 説明資料:http://www.mlit.go.jp/jtsb/railway/p-pdf/RA2021-1-2-p.pdf

同日公表の「横浜シーサイドライン新杉田駅逆走事故」につきましてはこちらの記事をご確認ください。



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