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阪急5100系電車、同形式は阪急の鉄道車両で初めてとなる「下枠交差式パンタグラフ」を搭載した車両で、「3線共通設計」を取り入れた初の車両形式ともいうべき存在だ。今年デビュー50周年を迎えた同形式について今回の記事で解説する。
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【阪急5000系と5100系 〜「5」で始まるけれど〜】
阪急における『5000系列』は、Sミンデン式空気バネ台車である「FS369」系列の台車を装備した2ハンドル車(マスコンとブレーキが別となっている車両)全般を指しており、京都線でこれに相当する形式グループのひとつである3300系を含めると
阪急3300系(堺筋線乗り入れ対応車)
阪急5000系(神宝線発の1500V専用車)
阪急5100系(初の量産冷房車で3線共通設計)
阪急5200系(冷房装置のテストヘッド)
阪急5300系(阪急発の「電気指令式ブレーキ」装備車)
の合計5形式(制御装置:MM28C MM31A ES583 ES767)に分かれています。

〈5100系が登場した頃の車両事情〉
阪急神戸線・宝塚線の架線電圧が直流1500Vに昇圧されるのと時を同じくして、京阪電鉄が関西圏の私鉄用通勤型電車として初めてとなる冷房装置搭載車両「2400系(1969年)」 を新規に開発し導入した。阪急電鉄ではそれに触発されるかたちで「冷房装置」を搭載した車両の開発、既存車両(新性能電車)への冷房装置搭載が開始されることとなった。
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[参考画像]京阪5000系、京阪2400系と同時期に製造された車両で、多ドア車であることから開閉可能な側窓が少なく、1970年12月の製造当初より出力8000kcal/hのクーラー(PRU-2207A/PRU-2206H:集約分散式)を1両あたり5基搭載している。

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[参考画像]阪神7861系電車、1971年に冷房搭載改造を施工された際「MAU-13H(分散式:国鉄AU13形の同等品)」を1両あたり6〜7基搭載した。

阪急電鉄では京阪5000系での導入に先立つ1970年6月に5000系をベースとする冷房試作車として『5200系』を試作、5200系では「RPU-2202A(出力8000kcal/h)」を5基(パンタグラフ設置車両では4基)搭載、クーラーで冷やされた冷風を一旦天井裏のダクトを介して冷風吹き出し口から車内に送り込む『集約分散式』の機構を日本ではじめて搭載しました。
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[画像]RPU-2202A型クーラー 
5200編成での試験結果から4基搭載が標準とされ、同型クーラーを搭載して製造された5200系の増備編成(パンタグラフ非設置車両では5200編成にあわせてクーラーキセは5基搭載)・5100系・5300系(1974年製造分まで)、同型クーラーで冷房化された5000系・2800系(2800形はパンタグラフの位置の都合で3基搭載)でもこの方式が踏襲された。
一方、1975年以降に製造された5300系以降の車両、並びに5000系・2800系を除く車両の冷房化では出力10500kcal/hの「RPU-3003」を3基搭載する方式に変更、2800系でもRPU-2202Aを3基しか搭載できなかった2800形が3ドア化された際に2800形のみ「PRU-3003」に再換装されている。
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[参考画像]RPU-3003型クーラー 画像は能勢電鉄1700系(元阪急2000系)のもの。阪急の新性能電車のうち、1000系列の一部と2100系(2000系等への組込・編入車をのぞく)は冷房装置を搭載されないまま廃車された車両、能勢電鉄譲渡後に冷房搭載工事を施工された車両(2100系)も存在する。
 
5200系で得られた試験結果を基に、阪急電鉄の全線区で架線電圧が統一されたことから阪急京都線での運用も考慮した神宝線向けの車両として開発されたのが「5100系」という車両形式となります。

[5100系の特徴]
・制御装置
制御装置には「MM31A」とよばれる制御装置を搭載。この制御装置は従来から存在する「抵抗制御」方式ではあるもののICを多用した三重系倫理回路を使用しており、従来式のものと比較して保守作業の簡便化を図っている。また、従来の神宝線向け車両とは異なり、機器構成についても不燃化対策を行う上で有利となる阪急京都線と同じ方式に変更されている。
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[画像]MM31A主制御器がある5100形の側面 床下に主抵抗器は確認できない(主抵抗器は反対側の側面にある)なお、冷房装置は「PRU-3018(10500kcal/h)」4基搭載に換装されている。

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[参考画像]上記の画像を撮影したのと同じ場所で撮影した能勢電鉄1700系(阪急2001形)
上記2枚は同じ駅の同じホームで撮影したものだが、5000系以前の神宝線方式の場合は主制御器の設置場所が逆となっている。そのため、5100系で主制御器がある側には主抵抗器が並んでいる。

・パンタグラフ
それまで「菱形」パンタグラフを搭載していた阪急電鉄ですが、5100系とそれ以降(〜8000系・8300系中期車) の車両では『下枠交差式』とよばれる折り畳み時の屋根上占有面積の狭いタイプのパンタグラフを採用しました。これにより1972年〜1974年に導入された5100系の一部編成(5132編成〜5138編成・5146編成・5148編成)・5300系では「PRU-2202A型クーラー」を4基搭載したままパンタグラフを2基搭載、離線防止を図っています。また、c#5128とc#5120(c#5120は大規模更新施工時に電装品を撤去、パンタグラフはc#5140に移設)は阪神・淡路大震災以後の同形パンタグラフ予備品確保のため、シングルアーム式のパンタグラフに換装されています。

・2区分しか存在しない形式
5100系は前後の形式とは異なり「制御電動車5100形(Mc5100形・Mc5101形)」と「中間付随車5650形(T5650形)」の2種類だけが 製造区分として設定されており、下1桁の数字から搭載機器の違いを識別することができます。
 ・5100形(主制御器・パンタグラフを搭載)
 ・5101形(MG・CPを搭載)
 ・5650形(製造時MGを搭載)
 ・5651形(製造時MG未搭載)
また、製造後の電装解除(中間付随車化)を受けた車両は「5750形」「5751形」(T5650-1形・T5650形)とよばれるグループに区分されているほか、5000系に編入された車両グループは「5550形70番台(5570形:T5550-1/2形・T5550形)」と区別されています。

・本来「宝塚線」用に割り当てられるはずの形式区分に入ってしまった『三線共通』車
阪急における形式称号(4桁区分)の区分の割り当ては通常『百の位』を基に区別されており、
[1000系(初代)・2000系]
・0:神戸線
・1:宝塚線
・2:神宝線(機器流用)
・3:京都線(新造車)
・5:能勢電鉄割当(2100系種車)
・6:京都線(機器流用)
・7:能勢電鉄割当(2000系種車)
・8:京都線(竣工時2ドア:2000系列のみ)

[3000系・5000系]
・0、5:神戸線
・1、6:宝塚線
・2、7:冷房試作車
・3、4、8、9:京都線

[2200系と6000系]
・0、1、5、6:神宝線
・2、7:試作車
・3、4、8、9:京都線

[7000系以後]
・0、1、5、6、7:神宝線
・2:少数形式(8200系)または能勢電鉄割当(7200系)
・3、4、8、9:京都線

となっています。元々5100系は「宝塚線」用の番台区分ではなく6000系列以後の神宝線向けの番台区分に準じた新形式『6000系』を名乗る予定でした。その後運用範囲を「阪急全線」とする計画が出た際、先に製造された乗入れ車両の『60系(大阪市営地下鉄)』と先頭車の番号が重複するとして製造する形式名を変更、5000系と5200系の間をとって『5100系』と呼称されることになった。

次回は現存編成の傾向について解説します。
 
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