ジャー副大統領が、ネパール語でなくヒンディー語で就任の宣誓を行ったことに対する憲法判断。ネパール最高裁は、今週末までに、ネパール語で再度宣誓せよとの判断を下している。
これに対しジャー氏は、自分の母語はヒンディーであり、ネパール語は出来ない(と、本人がネパール語で答えている不思議)、ネパール語での宣誓はやりたくない!と拒否の姿勢を示している。過去の醜聞ある御仁だが、ネパール最高裁判事まで勤め上げた法律の専門家である。 最高度のネパール語レトリックを駆使していたはずである。ネパール語が出来ないはずはない。
一方、首相の宣誓については、何の疑問も提示されていない。マオ派ダハール前首相は、「神の名において」という宣誓文を「民衆の名において」と変えて宣誓したし、ネパール現首相はこの部分を疑問詞に置き換えて無視した宣誓を行っている。両名とも、彼らの母語であり国の公用語たるネパール語での宣誓であったためか、今に至るまで問題にされていない。
これまた、不思議な話。
ジャー氏の場合は、インド国境に近く、文化的・経済的・人的交流もカトマンズよりインドに近い「マデシ」という集団を代表している。ネパールにおいてはインドの影響を連想させるヒンディー語を、ネパールの公用語のひとつに認めさせようという勢力が彼の、政治的支持基盤でもある。 この後ろには、インド共和国の覇権が見え隠れする。
これらしがらみのため、ジャー氏はネパール語で宣誓するくらいなら、副大統領を辞任するとの見解さえ示しているのだ。
同じタライと云っても、東西に広がる地域では、マイティリー語、ボジプリ語など、印欧語族ではあるが異なった地域言語があり、それ以外にもタルー語など、様々な言語のモザイクがある。だから、「インドの影響力の大きさから普及したヒンディー語が、タライ地域の共通コミュニケーション言語なのだ」との主張がある。1960年代から国策で全国に普及させられたネパール語も広く通用するのではあるが、ネパール語を母語とするカトマンズの中央政界と、ネパール語という土俵で論理相撲をする場合、タライには不利だ。それなら、ネパール語よりヒンディー語の方が、中央政界を論破できる可能性が高い。ということもあるだろう。
しかし、カトマンズを中心とするネパール語勢力の目から見ると、インドの傀儡による言語闘争と感じられるのは、長年の、国力が違いすぎる隣国ネ・印関係から避けられない現実でもある。
元はどこの出身であっても、どんな政治基盤があっても 、ネパール全国民のための副大統領になったのだから、ネパール全国で普及しているネパール語で宣誓した方がよい...という、素直な国民感情。と、筆を進めてしまうのは、私が、ネパール語を母語とするネパール人と暮らしているからかもしれない。
いずれにせよ。今週末までには何らかの決着が見られるだろう。
これに対しジャー氏は、自分の母語はヒンディーであり、ネパール語は出来ない(と、本人がネパール語で答えている不思議)、ネパール語での宣誓はやりたくない!と拒否の姿勢を示している。過去の醜聞ある御仁だが、ネパール最高裁判事まで勤め上げた法律の専門家である。 最高度のネパール語レトリックを駆使していたはずである。ネパール語が出来ないはずはない。
一方、首相の宣誓については、何の疑問も提示されていない。マオ派ダハール前首相は、「神の名において」という宣誓文を「民衆の名において」と変えて宣誓したし、ネパール現首相はこの部分を疑問詞に置き換えて無視した宣誓を行っている。両名とも、彼らの母語であり国の公用語たるネパール語での宣誓であったためか、今に至るまで問題にされていない。
これまた、不思議な話。
ジャー氏の場合は、インド国境に近く、文化的・経済的・人的交流もカトマンズよりインドに近い「マデシ」という集団を代表している。ネパールにおいてはインドの影響を連想させるヒンディー語を、ネパールの公用語のひとつに認めさせようという勢力が彼の、政治的支持基盤でもある。 この後ろには、インド共和国の覇権が見え隠れする。
これらしがらみのため、ジャー氏はネパール語で宣誓するくらいなら、副大統領を辞任するとの見解さえ示しているのだ。
同じタライと云っても、東西に広がる地域では、マイティリー語、ボジプリ語など、印欧語族ではあるが異なった地域言語があり、それ以外にもタルー語など、様々な言語のモザイクがある。だから、「インドの影響力の大きさから普及したヒンディー語が、タライ地域の共通コミュニケーション言語なのだ」との主張がある。1960年代から国策で全国に普及させられたネパール語も広く通用するのではあるが、ネパール語を母語とするカトマンズの中央政界と、ネパール語という土俵で論理相撲をする場合、タライには不利だ。それなら、ネパール語よりヒンディー語の方が、中央政界を論破できる可能性が高い。ということもあるだろう。
しかし、カトマンズを中心とするネパール語勢力の目から見ると、インドの傀儡による言語闘争と感じられるのは、長年の、国力が違いすぎる隣国ネ・印関係から避けられない現実でもある。
元はどこの出身であっても、どんな政治基盤があっても 、ネパール全国民のための副大統領になったのだから、ネパール全国で普及しているネパール語で宣誓した方がよい...という、素直な国民感情。と、筆を進めてしまうのは、私が、ネパール語を母語とするネパール人と暮らしているからかもしれない。
いずれにせよ。今週末までには何らかの決着が見られるだろう。