普段うちにいてくれる書生くんも実家に帰っており、息子も今日はクラブ活動の社会奉仕の日であり(孤児院の子供たちとダサインを祝うらしい)、亭主も用事があり......ということで、私が留守番。この時期は空き巣が多く、出来る限り自宅には誰かいることが望ましい。
さて、ダサインでは、年長者から祝福のティカを授けてもらう。赤い顔料、米、ヨーグルト、水に、粘着材としてのヨーグルトを混ぜたもの(ティカ)を額につけてもらう。また、ダサイン初日に種を蒔いた大麦の新芽(ジャマラ)もいただく。ジャマラの「芽吹き」は、豊穣の「女神の力」の象徴でもある。

うちの亭主の母方の伯父から、ティカを受けるうちの息子。ティカとジャマラが、銀の「ダサイン盆」に乗っているのが見える。このあと、「ダチナ」というお年玉もいただく。
年長者からティカを受けるのは.....いつものことだが。
*-------*-------*-------**-------*-------*-------*
今年、私の兄の家でのこと。亭主の兄でなく、宗教儀式で兄と妹にしてもらい、結婚式も出してもらって、その後私のネパールにおける実家をずーーっと続けてくれている、得難い家族。私の方の兄。例年のごとく兄と兄嫁のティカをいただいた後、兄嫁が
「じゃあ次は、バイニ(妹)とジュワイ(婿=うちの亭主)が息子たちと嫁たちにティカをする番ね」
と、ニコニコしている。え゛え゛え゛え゛ーーーーーーっ!
この家の息子たち二人が、3ヶ月違いで結婚したはじめてのダサイン。当然、二人のかわいいお嫁ちゃんたちがいる。お゛お゛お゛お゛お゛〜っ!不肖我が夫婦が、嫁ちゃんたちにティカを授けるってかぁ?
今まではこちらがティカを受けるだけだったので、予想外の展開にうろたえる我が夫婦。嫁たちに渡すお年玉の準備をしてこなかった。兄嫁に封筒をもらい、こっそり、お金を入れて準備。ピン札を何枚か、財布に入れておいて良かった。

長男嫁ちゃん。とっても美人で、料理が上手。既に長男の嫁の風格漂い、頼りになるお嫁ちゃん。今の時代、こんなに立派な子がいたなんて!と、感心するほどのよい子です。

末っ子の方の嫁ちゃんと。この子の実家は、亭主の親友の親戚筋であり。嫁パパ・ママは、私にとっても長年知り合いの家から嫁いできた子。MBAを持つ才媛で、明るいよい子です。
こういう素晴らしいお嫁ちゃんたちに恵まれたのも、甥っ子たちが立派だし、うちの兄と兄嫁の人徳。で、これまでは兄一家とはざっくばらんな付き合いが続いてきたのだが......お嫁さんが来ると、結婚してすぐこちらもお祝いを渡すし、お嫁ちゃんからも「よろしく、おつきあいください」な儀礼がある。
が、ほぼ親子ほどの年の差がある私たちだから、こちらからのプレゼントは当然渡すが、向こうからの儀礼は、そこまでしなくていいよ。うちはガイジンだし。気を遣わずに、お金も使わず、気持ちだけでいいのよ。と、これまで逃げ回ってきたが......ティカの後、しずしずと、両方の嫁ちゃんから、きれいに包まれた贈り物が手渡された。パーティー用のサリーや、亭主には紳士服の布地だった。
真心こもった「見栄の張り合い」に、ついに、捕まってしまった。
今回は、嫁ちゃんたちの実家の名誉をかけた戦いに、最後に白旗!な我が夫婦。
こちらからのダチナ(お年玉)をケチらず、相場の数倍包んでいて良かった。そうでないと、恥をかくところだった。
嫁が来たら、甥っ子たちも一家を構えたと云うこと。近年、親戚づきあい、特に「姻族」との儀礼が華やかになっているカトマンズ。こりゃ、これからは、こちらも覚悟を決めないとならぬぞ。一生かかっても返せない恩のある兄と兄嫁の顔を立てるため、嫁ちゃんたちや、これから生まれてくる子供たちの通過儀礼には、それ相当のことをしないと.......
で、本来頼りになるべき亭主の方は(兄と同じカーストなのだが)、儀礼は簡素!な生き方のため、我々にとっては未体験ゾーン。こりゃ、折を見て、兄嫁にこっそり相談に行かなきゃ。
一度はじめたら、一生続く親戚づきあい。家の体面を保つため、ケチくさいことは絶対にしたくない。他の身内に対してはシンプルを押し通す我が家であるが、甥の嫁たちに対してだけは「別」だもん。兄と兄嫁に対する、ささやかな恩返しだね。
で、近い将来、うちの息子も結婚するだろうが。こちらの方は是非、背伸びしないライフスタイルでやりたいものだ。お願いしますよ、息子さん。涙目。
*-------*-------*-------**-------*-------*-------*
最後に、今年のダサインを象徴する一枚を。

うちの義母は三姉妹。三人とも連れ合いに先立たれたものの、息子や嫁、孫に囲まれ悠々自適である。普段は車で数時間ずつ離れた場所に住んでいるため、全員が出会える機会は限られている。
向かって右から、次女がうちの義母。慎ましい人で、歯を見せての笑顔は滅多に見せない(のに、満面の笑顔)。 真ん中が長女。我が家では「手乗りばあさん」と呼ばれているくらい小柄。80歳前後のはずなのに、今でもとても美人。いつもニコニコ。アニメのキャラクターのような、目をきょろっとさせた笑顔がたまらなくカワイイ!左は末っ子。バイタリティあふれるおばあちゃんで、発言も強烈。未だ、お肉が大好き。若い頃は、女性福祉の活動家だったそう。
三婆の笑顔に、ダサインの意味を深〜く感じ入る。のであった......