けぇ がるね?日記

ネパールの首都、カトマンズから発信しています。

2014年10月

ガイド組合、トレッカー追跡ネットシステムに抗議?

ネパール山岳観光史上最悪の事故となった、今月のアンナプルナ暴風雪大量遭難。吹雪でルートを外れたトレッカーやガイド、ポーターたちの捜索は困難を極めた。この時、トレッカーの位置を追跡出来るGPSシステムがあれば...と云われたのだが。実は既に、システムはあった。

しかしこのトレッカー追跡システムに対し、トレッキングガイド組合が反対しているため、導入が遅れたとの現地報道が本日付で出ている。10月28日付ネパール語紙Nagarikより

ネパールにおける村落インターネットネットワーキングの先駆者、マハビール・プン氏と日本の専門家の協力により、トレッカーに小型デバイスを貸与・携行させることにより現在位置を追跡出来るシステムの使用テストが、アンナプルナ保全地域(ACAP)内で6ヶ月にわたり実行されてきた。

しかしトレッキングガイド組合はこのシステム普及により、ガイドを連れないトレッカーが増加することを懸念している。結果、ガイドたちの雇用の機会が減少する。という主張なのだ。

ACAPによれば、システムの使用テストが完了して3ヶ月が経過している。この間に、アンナプルナ地域での本格的運用が計画されていた。しかし労働者(ガイド)たちの反対により、計画が頓挫している。曰く
「ガイドは新しい技術に対し恐怖を抱いている。このシステムが雇用を奪うことはない。むしろ、手助けになる。自分たちの稼ぎの問題だけに注目し、(トレッキングに対する)安全性向上を顧みない」

Nepal Trekking Travel / Rafting / Airlines Workers' Union は、システム運用がガイドの雇用を脅かすと主張している。
「新技術に反対しているのではない。システム運用が雇用問題に悪影響を及ぼすことを懸念している。システム導入後もトレッカーに対し、ガイドを雇用することを義務づけることが必要である」

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以下、ブログの見解

アンナプルナ地域のトレッキングでは、ガイドやポーターを雇用せず、自分の荷物を担いでトレッキングを行う外国人が少なくない。追跡システムが導入されれば、更にガイド無しのトレッカーが増加する。ガイド組合の主張である。

では、このシステムはどのようなものなのか?既に今年1月、報道されていた。2014年1月4日付 Republica紙報道(英語)。トレッカーの現在地を把握するだけでなく、トレッカーからのSOSシグナル発出ボタンも備えている。ジャングルの中でルートを見失う。事故に遭う。野生動物に襲われる。盗賊に襲われる。という事例は発生しており、早急なレスキューに効力を発揮する。

e-tagと名付けられたシステムを使えばACAP管理だけでなく、トレッカーの家族や友人も、世界中から(ネットで)ログインすることにより、現在地を確認することが出来る。

トレッカーはACAPに携帯デバイスレンタル時1,000ルピー(約千円)をディポジットし、下山時にデバイスを返却することでディポジット金も返金される。という計画であった。

ガイドの組合...と云っても、ネパールのトレッキングガイド全てがこの意見に賛成しているとは思えない。特定の政治団体による労働組合である可能性もある。問題なのは、トレッキングやネパールの観光の安全性向上や、諸外国での評価。これによる観光客の増加よりも、目の前の、ネパール労働者の利益が重要視されている事だ。現在はガイド無しのトレッキングも黙認されているが、全てのトレッカーにガイド雇用を義務づけること。これこそが、安全システム導入より重要だ。という主張と感じられる。

ネパールの個々の旅行会社、個々のガイドさん、個々の地元の人たちの善意や献身を、身近に知っている。近年の気候変動の中、顧客の安全を第一に考えてくれるネパールの人たち。これに応えようとする外国人個人や組織、会社も数多い。ネパール人登山、トレッキングガイドさんたちの安全や、家族への補償を向上させようとする活動も継続している。

反面、政治的独善とエゴによる、観光業への介入には強い違和感を感じる。春のエベレスト。秋のアンナプルナ。ネパール政治屋の汚さが、ネパールの観光国としての価値を穢し続けている。ネパール人の善意を、穢している。

ACAP、トレッカーへの安全対策に着手

本日2014年10月22日付 The himalayan Times 記事より(原文記事リンク) ACAP、トレッキングルートに情報センターと避難シェルター設置へ 以下、抄訳

甚大なるブリザードと雪崩事故を受け、アンナプルナ保全地域プロジェクト(ACAP/国立公園に準じた保全活動を担う)はアンナプルナ地域に、情報センターと避難シェルターを設置する手続きを開始した。

43人の人命が失われ、500人以上が(降雪に)閉じ込められた原因として、情報センターと避難シェルターの欠如を指摘されたACAPは、これに対処するための手続きを開始している。ACAP責任者ラルプラサード・グルン氏によれば、
  • マナン村(マナン郡)
  • ムクチナート地域(ムスタン郡)
  • チョムロン村(カスキ郡)
に、情報センター(インフォメーションセンター)を開設するための組織内部の準備をはじめた。同時に、現在稼働している11ヶ所のチェック・ポイントに対しても
  • 3ヶ所のチェック・ポイントを新設し追加する
  • 現行チェック・ポイントの機能強化も図る
現存のチェック・ポイントに、情報センターの機能を付与することも計画されている。情報センターで提供されるものは
  • 天候に関する情報
  • トレッキングルートに関する情報
  • トレッキングに関連する国際情報
今回多くの犠牲者を出したトロンラ(トロン峠5,400m)にも、情報センターが新設される計画である。

今回の事故救助にあたった、ネパールトレッキング業組合TAANによれば、トロンラの峠を越えた後ムクチナートに下るルート上で最大の被害が出た。(トロンラ越え前日の一般的宿泊地である)トロンフェディからトロンラを経てムクチナートに至る1日の行程は徒歩8時間程であるが、途中悪天から避難する場所がなかったことが事故の原因と考えられている。

トロンラでの情報センター建設につき、TAANはACAPに協力を表明している。

アンナプルナヒマラヤ地域の5つの郡、その中の55の村。7,629平方キロメートルの地域の自然保護を管轄するACAPは、年間1億7千万ルピー(約1億7千万円強)の入域料収入をあげている。一方(TAANの財源である)トレッカー情報マネジメントシステムTIMS登録(観光ビザでトレッキングに行く外国人に不可欠)料金は、年間1億6千万ルピー(約1億6千万円強)をトレッカーから徴収している。

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以下、当ブログの見解。

トレッカー個人による適切な準備や、諸外国の旅行代理店やネパールのトレッキングエージェントによる情報収集、スタッフの資質向上はもちろん必要である。加えて、予算の限られた旅行を好む外国人の多いアンナプルナ地域においては、ガイドもポーターも雇わない外国人も多い。これを是とするか、今後、地元ガイド(ポーター)無しのトレッキングを禁止するのか?は別の問題として。

ネパール政府に頼らず、地域の環境保全当局やトレッキング業協会が対策に着手したことは、あるべき姿であると思う。今後の進捗を見守りたいし、実施後、安全に対する活動がきちんと継続されているかどうか?注視し続けるべきだ。

対策が遅きに失したことを指摘するだけでなく、検討されている対策が早急に実行、真剣に継続されていくことを、前向きに応援したいと思う。指摘したり批判することと、応援することは、コインの両面であるべきだ。


同日、同紙一面には、ネパール唯一の国際空港である【カトマンズ トリブバン国際空港、世界3番目の最悪空港に認定】のニュースもあった。トリブバン国際空港リシケシ・シャルマ空港長は取材に対して、コメントすることを拒否した。
のだ、そうだ...

嵐のあと...Nepali Times記事抄訳

本日10月17日の週刊英語新聞 Nepali Times の記事 After the Storm から抄訳し、内容をご紹介したい。


執筆者は、同紙編集長兼発行人であるKunda Dixt 氏。彼はネパールの気象、山岳、航空問題に深い造詣があり、これらの分野について他の日刊紙とは違う分析や切り口を毎回提供してくれている。

今週前半にアンナプルナ・ヒマラヤ地域で起こったトレッカー、登山者、地元住民の気象遭難事故について「季節外れの、予想外の大雪」としか紹介されていない現状に、一石を投じている。メディアのみなさんには、南アジアにおけるサイクロンの影響という、基本的気象知識を持ってもらいたい。そして過去にも、同様の原因で、似たような事故が定期的に発生している現実に気づいてほしい。以下、記事の抄訳である。

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今週アンナプルナ地域で発生した暴風雪(ブリザード)と雪崩事故は、ヒマラヤ地域に向かうトレッカーへの早期気象警告の必要性を、再度知らしめるものとなった。

この原稿を執筆している木曜日(発行日前日)現在、マナン/ムスタン地域だけで死者32人。85人と連絡が取れずにいる。火曜日(暴風雪当日)、隣接するマナスル周遊トレッキングのラルキャ峠(Larkya Pass)の通過を予定していた数十人規模のトレッカーについては全く情報がない。

近年のヒマラヤにおいて、同様の暴雨雪や雪崩事故が発生したのははじめてのことではない。雨期の終焉後に発生するベンガル湾の台風(サイクロン)は、非常に危険な存在であり続けている。
  • 1995年11月、ゴーキョにおいて13人の日本人と11人のネパール人が亡くなっている。
  • 2005年10月には、ネパールとフランスの登山者18人がマナンのカングルの雪崩で死亡している。
(雨期終了後の)秋は降雨に見舞われることは少ないが、一方、ベンガル湾ではサイクロンの発生シーズンである危険性を無視してはいけない。

気象分析専門家Ngamindra Dahal氏は
「携帯電話とインターネット接続が確保されているアンナプルナ周遊コースでは、天候だけを避難することは出来ない」 
「これは予想出来なかった悪天ではない。本質的問題は、何故事前に警告が出されなかったのか?である」
  • インドとネパールの気象局は、今回の巨大サイクロンHudhudがもたらす危険性について情報を発信していた。
  • 国際TV放送は、ネパール中部及び西部での豪雨について予告していた。
  • 嵐の2日前から、ネパールの報道では、降雨が稲刈りシーズンに及ぼす悪影響についても警告していた。
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情報はあったにも関わらず、ヒマラヤの高所で行動していたトレッカーに何故伝わらなかったのか?これこそが大きな問題である。

考えられる原因として、
  • 天気予報の信憑性が低く、今回も「狼少年」として軽く考えられていた。
  • 公式な、独立性のある早期警報システムが欠如していた。
アンナプルナ地域は日曜日(10/12)まで秋の快晴が続いていた。それが一夜にして劇変し、10月14日火曜日には高所での暴風雪となり、多くのトレッカーとガイドたちが閉じ込められてしまった。

トロン峠やラルキャ峠の通過は、(トレッキングと云うより)登山に近いものである。高所での長時間にわたる厳しい行動となり、同時に悪天候の影響が状況をより悪化させる。悪天候の中ではトロン峠越えを強行すべきでないし、ガイドたちもそれを許してはいけない。

政府関係者が来たり来る天候の悪化を認識するだけでは不充分だ。山岳地帯にいるトレッカーや観光客に、早急かつ効果的にこれを伝達することが肝要である。このため
  • 報道メディア
  • トレッキング業協会 TAAN
  • ネパール登山協会 NMA
  • ヒマラヤレスキュー協会 HRA
  • 携帯電話会社による一斉ショートメッセージSMS
  • 高所にあるロッジへの連絡
  • 5千メートルを超えるトレッキンググループの衛星電話携行の徹底
これら対策の必要性は明確なのにも関わらず、トレッキングだから...と軽く考えられている。

高所における天候は、急変するというのに... 

ネパール、1,000ルピー札の都市伝説

本日2014年10月16日、ネパール日刊英文紙 The Himalayan Times 記事を抜粋紹介する()カッコ内文章は当ブログによる注釈。 題して
「1,000ルピー紙幣に描かれた象の画像、野生動物専門家さえも困惑」

名称未設定 2
The Himalayan Times 元記事(英文)リンク

ネパールにおける紙幣流通は、1945年より始まった(それ以前はコインのみであった筈)。現在に至るまで最高額紙幣である1,000ルピー札は、1969年12月にはじめて紙幣印刷された。この時の図柄は、表は当時のマヘンドラ国王肖像。裏面はアンナプルナ連山と山村風景であった。 / リンク元ページ

その後1974年12月からは裏面の画像が長い牙を持つ象に変更され、現在まで継続されている(表面は歴代国王、共和制樹立後はエベレストと変遷)。
ネパール紙幣の変遷ページ(一部記事と齟齬する年代表示あり)。

ネパール・ラストラ銀行(ネパール中央銀行、日本で云うなら日銀)発行のネパール紙幣・コイン一覧によると、この図柄は「雄のアジア象」と説明されている。しかし、(野生動物)専門家は疑問を持っている。

図版の象は、アジア象とアフリカ象両方の特徴を有している。
象の専門家ナレンドラ・プラダン氏はThe Himalayan Times取材に対し証言した。

頭頂部にふたつの突起があるところはアジア象の特徴である。
しかし、身体と耳の大きさは、アフリカ象の特徴を示している。
肩の高さが頭部より上であるのも、アフリカ象的である。

一方、世界自然保護基金WWFネパール事務所に勤務する別の専門家は、異なった見解を表明した。
図版の象をアジア象ではない、と断定することは出来ない(アジア象と仮定することが出来る)

耳の大きさは、アフリカ象ほど大きくはない。
身体の形はアジア象に似ている。
しかし、この図柄は(アジア象の)自然な姿を描いてはおらず、美的に再構築されたものと考えられる。

アフリカ象とアジア象の比較 一般論

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(紙幣発行の当事者である)ネパール・ラストラ銀行は、図版の由来についての認識を示す事が出来ない。曰く、

かなり以前に採用された図版であるため、誰がこれを採用したのか?どこから抜粋/引用した図柄なのか?我々は知らない。
しかしながら、美術作品ではない。

同時に、ラストラ銀行担当者は以下のようにも証言した。
紙幣に描かれた全ての動物図版を、ネパール国内で生息するものに変更することを予定している。

予定通りに進めば、1,000ルピーの動物図版は近々に、チトワン国立公園で誕生した双子の赤ちゃん象とその母親に変更される。


紙幣にまつわる不思議が、40年間も放置されてきた。過去千ルピーは超高額で一般的に流通していなかったとしても、少なくともここ10年は日常でも目にする、手にする、使用する紙幣として身近である。
信じるか信じないかは、あなた次第です(キッパリ指さし)。
やりすぎ都市伝説かいな?ハローバイバイ、関暁夫〜

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以下、当ブログの見解。

現行1,000ルピーの象は、チトワンなどで観光客を乗せている「人に飼われているアジア象」とは違う印象だと思う。しかし、私自身が2002年、バルディヤ国立公園でカルナリ河の中州で「野生の雄象」と遭遇し、気づかれて威嚇され、恐怖で逃げ惑った時...威風堂々とした象の姿。長い牙。現実はどうあれ、私の頭の中ではこの図版そっくりなものとして記憶 されている。

こちらに突進してくるかのごとく、象は1歩、歩み寄ってきた。その時の恐怖。踏み殺されると感じた。野生の象がどんだけ恐いか。ふと、その時、象に気づかれる直前に撮った写真を探してみた。

DSCN1411

あれ?牙短い。え゛っ?記憶では1メートル以上、うにょ〜んと突き出ていたと思ったのに。記憶って、アテにならな〜い!!

最後に、ネパールの象さん、典型的なイメージ。

DSCN2463

ジャングルサファリで人を乗せる象さんたちの過酷な飼育環境とか、象の結核蔓延など悲しいお話しもあるが、それはいつか、別の機会に...
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