けぇ がるね?日記

ネパールの首都、カトマンズから発信しています。

2015年06月

震災復興の国際パワーゲーム

西暦の上で地震から2ヶ月となる今週木曜日、6月25日(ビクラム暦上の2ヶ月はアサール月12ガテ/6月27日)。カトマンズ(ソルティークラウンプラザ・ホテル)で、第1回ネパール震災復興援助国会議が41ヶ国参加の元、開催される。

先日発表されたPost Disaster Needs Assesment(PDNA)に基づく(筈の)震災復興計画について、各国政府と国際援助機関、そしてネパール政府が話し合う場となる。ネパールにとって非常に重要な会議になる...と、普通は考えられるのであるが。どうも、きな臭い。

震災直後の救援で大きな印象を残したインドと中国。その後の復興計画策定については、国連や世銀、アジ銀、日本や西欧各国が目立った中で、しばらくローキーでやり過ごしてきた様子であるが。ところがどっこい、深いところでネパール政界への根回しを続けていたと推測(邪推?)出来る現象が出始めている。

ネパール政府内の特定の勢力は、先進諸国や国際援助機関主導の復興ではなく、インドと中国の直接支援を復興の中心に据えようと画策していると見える。国際社会に親和性の高いマハト外相を復興支援から外そうという動きと同時に、南北の隣国とのつながり深いゴウタム内相の台頭が噂されている。

救援の段階でネパールが、英国の大型ヘリ・チヌークの投入を拒否した背景などが今になって、(整合性の取れた)噂として伝わってきたりもしている。本当であったとしたら、ネパール政界は国民よりも自己の利益を、大災害の中でも優先したと考えざるを得ない。

より良い復興(BBB)コンセプトを掲げて、災害に強い国造りを提唱している日本。そして国際援助機関にとって、見えない逆風が吹いていると考えたら、考え過ぎだろうか?

ネパール援助国会議、印中外相出席 The Himalayan Times
インドはスシュマ・スワラージ外相、中国は王毅外相が出席する模様である。

国際援助機関側も大幹部が出席する方向の模様であるが、西欧諸国からの閣僚はノルウェイ外相以外の情報を聞かない。日本は外務副大臣と、JICA理事長が出席されると聞く。特にJICA理事長については、震災1ヶ月目の国際セミナーにも出席され、短期間に2度目のご来訪となる。日本政府のネパール復興に対する強い意志を感じる。

ネパール政府は復興に必要な予算を66億ドル(8,100億円)と試算している。今年7月中旬で終了する今年度(ネパールの次年度会計年度は2015.7月中旬〜2016.7月中旬)国家予算にも匹敵する。ネパールとしては巨額の復興資金、言い換えれば利権を引き寄せようとしている。

透明性を含む西欧的論理を要求される西欧諸国や国際援助機関からの援助ではなく、ネパール政界・官界の伝統的論理と親和性の高いインドと中国からの直接援助を望む勢力が存在するようだ。印中にとっても、地政学的に重要なネパールでの政治・経済・社会的重要性を確保するために、利害が一致する部分少なくない。

地震災害防止については世界最高の英知と経験を持つ日本に、期待するネパール市民社会の声が低い訳ではない。印中と現在のネパール支配層の思惑に負けないで欲しいと、私も願っている。

印中に限らず、どの国や援助機関の支援も政治的利害は存在し、印中はダメで先進国なら全て良し!とも云えない。そんな中で日本の支援は、日本への見返りを求める事が少ない善良なポリシーがネパールでは広く認識されている。いやいや、今回については、日本と隣国の国際援助政策パワーゲームの代理戦争的側面があると指摘する声もあるが、それを声高にここで書いてしまうのは自粛したい。

日本の耐震技術が、民間への技術移転や助成金を使った普及。学校や病院等公共施設に対する無償資金協力でネパールに定着すれば、大きな視点から、ネパール国民の利益になる。ただ、このネパールの政界・官界の中で実現に結びつけていくのは簡単ではない。

極論を言うならば、どんな方法でも最後には容認するから、ネパールの被災者の方たちのことを忘れないで欲しい。ネパールの一部に対する利益が優先されないことを祈っている。

【報道】ネ政府、NGO活動指針を策定

ネパール震災復興に参加するローカル/国際NGOと個人に対する政府方針が策定された。とする、6月1日付e-Kantipur(Kantipur紙電子版)の報道。原文クリック(英語)。

以下抄訳...
ネパール政府は震災復興支援に参加する団体と個人に対し、政府との間に協定を結ぶ必要があるとの閣議決定を行った。ネ財務省外国援助課によれば、この措置は閣議決定が為された先週から今後6ヶ月間有効となる。

政府筋は、「震災支援のために集められた巨額の資金がどのように、如何にして使用されたのか明らかにするための措置である」と主張している。

ネパール内閣によって採択された “Directives on Mobilising Assistance of National and International Non-Government Organisations-2015” は、NGO/INGO、企業や個人はネパール政府と取り交わした協定(契約)に基づき、被害を受けた教育、医療、住居に関するインフラ再建に対し独自資金を運用することが出来ると規定している。資金はまず首相直轄救援基金への入金が推奨される。独自に資金運用を望む場合は、プロジェクト終了後建設されたインフラを政府に引き渡すことが条件となる。

物品による支援の場合も、同様な協定を政府と結ぶものとする。

政府以外の団体や個人がインフラ再建を行う場合、政府が策定した手続き、基準、デザインに準拠すべきであり、Post Disaster Needs Assesment (PDNA 6月15日発表予定)との整合性も必要である。政府が建設するインフラと、NGO等が建設するものの同一性を持つことで、公平な援助を目指す。
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一方NGO/INGO側は、この種の政府規定は常によい結果をもたらすと限らないと警鐘を発している。 

「方針の考え方はよいが、ネパール官僚機構の手続きにより復興が妨害される恐れがある。NGO/INGOは、政府による資金凍結の可能性を抱えている。政府はもっと実際的な対処をすべきである」
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政府規定によれば、政府との協定締結後は募金活動は行えない。また、協定に反する事実があった場合、許可は無効となる。NGO/INGOは協定締結後一週間以内に活動を開始し、決められた期間内に活動を終了する。その後はプロジェクト(注 建設したインフラ)を政府に引き渡す。

建設において出来る限り、ネパールの人材と資材を使用する。外国人の雇用については別途許可を取る。建設されたインフラに、ドナー側の宗教、文化、商標をつけることは出来ない。

このような措置により、ネパール国内で行われる協力活動の追跡ができる。

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ここからはネパールの空の下による...

この規定は震災「以降」、ネパールでの協力支援活動に新規参入する団体と個人に向けてであると推測できる。震災以前からネパール政府に登録した団体については、それぞれ中央/地方政府と協議・認可の下活動を継続している。震災支援についても同様である。

NGO/INGO側が主張するように、政府の言い分は正しいことを云っているのであるが、官僚機構の中での運用がスムーズに為されるかどうかが鍵となるだろう。「6ヶ月で完了させて出ていって下さい」という政府の主張であるが、ネパール役所仕事で数ヶ月止まってしまう事はあり得る。支援の足かせになる恐れは大きい。

同時に、中央や地方政府や行政、地域住民との摺り合わせなしに行われる支援については、問題点が多いことをNGO側からも聞く。独善や政治的野心に基づく支援は無駄と支援重複を生みやすい。

ネパール政府側の姿勢もあまりに上から目線であるし、一方、支援をする側に問題がない訳でもない。

政府も支援者も、被災者の立場を考えなくてはならない。そこをどうやって上手く合法的に、効果的に立ち回るのか?プロに任せるのが一番迷惑をかけない。そうでなく、自分たちで飛び込むのであれば、余程覚悟して賢く、自分の目の前にない状況や人たちのことを考える力。自国とは全く違う文化や価値観であるネパールを洞察する力が不可欠だ。

自分がやっていることは常に正しい...とは、考えないことをお願いしたい。自省を込めてである。

ネパール政府に対しても云いたいことは山ほどある。然るべき外側からのロビーイングを継続して、政府を動かしていかなくてはならない。しかし同時に、ネパール政府の主張には必然性があることがある。問題は、行政の現場での運用に支障あることを紙の上で提唱してしまうこと。これまでいくつもの閣議決定が、結局有名無実化して運用されなかった。

震災という未曾有の事態である。政治をお願いしたい。政治屋による政治ショーは勘弁してほしい。 
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