本日10月17日の週刊英語新聞 Nepali Times の記事 After the Storm から抄訳し、内容をご紹介したい。


執筆者は、同紙編集長兼発行人であるKunda Dixt 氏。彼はネパールの気象、山岳、航空問題に深い造詣があり、これらの分野について他の日刊紙とは違う分析や切り口を毎回提供してくれている。

今週前半にアンナプルナ・ヒマラヤ地域で起こったトレッカー、登山者、地元住民の気象遭難事故について「季節外れの、予想外の大雪」としか紹介されていない現状に、一石を投じている。メディアのみなさんには、南アジアにおけるサイクロンの影響という、基本的気象知識を持ってもらいたい。そして過去にも、同様の原因で、似たような事故が定期的に発生している現実に気づいてほしい。以下、記事の抄訳である。

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今週アンナプルナ地域で発生した暴風雪(ブリザード)と雪崩事故は、ヒマラヤ地域に向かうトレッカーへの早期気象警告の必要性を、再度知らしめるものとなった。

この原稿を執筆している木曜日(発行日前日)現在、マナン/ムスタン地域だけで死者32人。85人と連絡が取れずにいる。火曜日(暴風雪当日)、隣接するマナスル周遊トレッキングのラルキャ峠(Larkya Pass)の通過を予定していた数十人規模のトレッカーについては全く情報がない。

近年のヒマラヤにおいて、同様の暴雨雪や雪崩事故が発生したのははじめてのことではない。雨期の終焉後に発生するベンガル湾の台風(サイクロン)は、非常に危険な存在であり続けている。
  • 1995年11月、ゴーキョにおいて13人の日本人と11人のネパール人が亡くなっている。
  • 2005年10月には、ネパールとフランスの登山者18人がマナンのカングルの雪崩で死亡している。
(雨期終了後の)秋は降雨に見舞われることは少ないが、一方、ベンガル湾ではサイクロンの発生シーズンである危険性を無視してはいけない。

気象分析専門家Ngamindra Dahal氏は
「携帯電話とインターネット接続が確保されているアンナプルナ周遊コースでは、天候だけを避難することは出来ない」 
「これは予想出来なかった悪天ではない。本質的問題は、何故事前に警告が出されなかったのか?である」
  • インドとネパールの気象局は、今回の巨大サイクロンHudhudがもたらす危険性について情報を発信していた。
  • 国際TV放送は、ネパール中部及び西部での豪雨について予告していた。
  • 嵐の2日前から、ネパールの報道では、降雨が稲刈りシーズンに及ぼす悪影響についても警告していた。
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情報はあったにも関わらず、ヒマラヤの高所で行動していたトレッカーに何故伝わらなかったのか?これこそが大きな問題である。

考えられる原因として、
  • 天気予報の信憑性が低く、今回も「狼少年」として軽く考えられていた。
  • 公式な、独立性のある早期警報システムが欠如していた。
アンナプルナ地域は日曜日(10/12)まで秋の快晴が続いていた。それが一夜にして劇変し、10月14日火曜日には高所での暴風雪となり、多くのトレッカーとガイドたちが閉じ込められてしまった。

トロン峠やラルキャ峠の通過は、(トレッキングと云うより)登山に近いものである。高所での長時間にわたる厳しい行動となり、同時に悪天候の影響が状況をより悪化させる。悪天候の中ではトロン峠越えを強行すべきでないし、ガイドたちもそれを許してはいけない。

政府関係者が来たり来る天候の悪化を認識するだけでは不充分だ。山岳地帯にいるトレッカーや観光客に、早急かつ効果的にこれを伝達することが肝要である。このため
  • 報道メディア
  • トレッキング業協会 TAAN
  • ネパール登山協会 NMA
  • ヒマラヤレスキュー協会 HRA
  • 携帯電話会社による一斉ショートメッセージSMS
  • 高所にあるロッジへの連絡
  • 5千メートルを超えるトレッキンググループの衛星電話携行の徹底
これら対策の必要性は明確なのにも関わらず、トレッキングだから...と軽く考えられている。

高所における天候は、急変するというのに...