ネパール山岳観光史上最悪の事故となった、今月のアンナプルナ暴風雪大量遭難。吹雪でルートを外れたトレッカーやガイド、ポーターたちの捜索は困難を極めた。この時、トレッカーの位置を追跡出来るGPSシステムがあれば...と云われたのだが。実は既に、システムはあった。

しかしこのトレッカー追跡システムに対し、トレッキングガイド組合が反対しているため、導入が遅れたとの現地報道が本日付で出ている。10月28日付ネパール語紙Nagarikより

ネパールにおける村落インターネットネットワーキングの先駆者、マハビール・プン氏と日本の専門家の協力により、トレッカーに小型デバイスを貸与・携行させることにより現在位置を追跡出来るシステムの使用テストが、アンナプルナ保全地域(ACAP)内で6ヶ月にわたり実行されてきた。

しかしトレッキングガイド組合はこのシステム普及により、ガイドを連れないトレッカーが増加することを懸念している。結果、ガイドたちの雇用の機会が減少する。という主張なのだ。

ACAPによれば、システムの使用テストが完了して3ヶ月が経過している。この間に、アンナプルナ地域での本格的運用が計画されていた。しかし労働者(ガイド)たちの反対により、計画が頓挫している。曰く
「ガイドは新しい技術に対し恐怖を抱いている。このシステムが雇用を奪うことはない。むしろ、手助けになる。自分たちの稼ぎの問題だけに注目し、(トレッキングに対する)安全性向上を顧みない」

Nepal Trekking Travel / Rafting / Airlines Workers' Union は、システム運用がガイドの雇用を脅かすと主張している。
「新技術に反対しているのではない。システム運用が雇用問題に悪影響を及ぼすことを懸念している。システム導入後もトレッカーに対し、ガイドを雇用することを義務づけることが必要である」

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以下、ブログの見解

アンナプルナ地域のトレッキングでは、ガイドやポーターを雇用せず、自分の荷物を担いでトレッキングを行う外国人が少なくない。追跡システムが導入されれば、更にガイド無しのトレッカーが増加する。ガイド組合の主張である。

では、このシステムはどのようなものなのか?既に今年1月、報道されていた。2014年1月4日付 Republica紙報道(英語)。トレッカーの現在地を把握するだけでなく、トレッカーからのSOSシグナル発出ボタンも備えている。ジャングルの中でルートを見失う。事故に遭う。野生動物に襲われる。盗賊に襲われる。という事例は発生しており、早急なレスキューに効力を発揮する。

e-tagと名付けられたシステムを使えばACAP管理だけでなく、トレッカーの家族や友人も、世界中から(ネットで)ログインすることにより、現在地を確認することが出来る。

トレッカーはACAPに携帯デバイスレンタル時1,000ルピー(約千円)をディポジットし、下山時にデバイスを返却することでディポジット金も返金される。という計画であった。

ガイドの組合...と云っても、ネパールのトレッキングガイド全てがこの意見に賛成しているとは思えない。特定の政治団体による労働組合である可能性もある。問題なのは、トレッキングやネパールの観光の安全性向上や、諸外国での評価。これによる観光客の増加よりも、目の前の、ネパール労働者の利益が重要視されている事だ。現在はガイド無しのトレッキングも黙認されているが、全てのトレッカーにガイド雇用を義務づけること。これこそが、安全システム導入より重要だ。という主張と感じられる。

ネパールの個々の旅行会社、個々のガイドさん、個々の地元の人たちの善意や献身を、身近に知っている。近年の気候変動の中、顧客の安全を第一に考えてくれるネパールの人たち。これに応えようとする外国人個人や組織、会社も数多い。ネパール人登山、トレッキングガイドさんたちの安全や、家族への補償を向上させようとする活動も継続している。

反面、政治的独善とエゴによる、観光業への介入には強い違和感を感じる。春のエベレスト。秋のアンナプルナ。ネパール政治屋の汚さが、ネパールの観光国としての価値を穢し続けている。ネパール人の善意を、穢している。