政府の一括支援基金(首相直轄災害救援基金)以外、外国から個別の震災救援資金はネパール国内銀行口座からの引き出しを凍結するというネ政府政策については、谷川先生の「ネパール評論」の記事が詳しい。

ネパール評論 Nepal Review 谷川昌幸先生 発行
震災救援の複雑な利害関係
 単一窓口政策と首相基金(1) 原文はクリックでリンク
 単一窓口政策と首相基金(2) 原文はクリックでリンク

ネパール政府の主張は、私なりに要約すると以下のようなものである。
 個別の資金による救援活動では、地域、メディア報道、諸外国、国内有力者との関係性において支援に格差や重複が生じる。支援基金をひとつにまとめ政府が管轄することで、全ての被災者に公平に救援が行き渡ることを可能にする。 

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震災以前からネパールで活動を続けてきた某団体に取材し、別の場所に書いた記事を以下、一部加筆修正して掲載する。プロのNGOがどのようにして対処したのか?この情報を分析することで、新規に救援・復興活動を行いたい日本人や団体にとっても参考になると思う。
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情報ソース: 20年前から活動を開始し、ネパール社会福祉協議会(SWC)に団体登録、事業登録共に行い、ネ政府許可の下活動。外国人駐在員常駐。震災以前から激震被災地を含む地域で開発援助事業を行ってきた外国NGO。
 

1.震災発生以前にSWC登録を完了し活動してきた団体については、外国送金資金のネパール国内銀行口座引き出し「可能」

 平時の活動と震災支援特別資金を会計上明確に区別するため、震災後、震災支援・復興支援に特化した新規銀行口座をネ国内銀行に開設した。
 ただし今後ネ政府の方針変更もあり得るため、新規時口座名に、震災復興や緊急支援という単語の使用は避けた。

※筆者脚注 事業口座2などと云う口座タイトルであると分析。
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2.震災復興・緊急支援活動についての事業承認をSWCに申請する

 SWC登録済みの団体による震災支援活動審査・合意締結について、SWCは迅速に行うとの態度を示している。様々な分野を担当する外国人専門家の中長期駐在が必要であるし、事業費の合法的運用も不可欠であるため、(現在継続中の通常プロジェクトは別に)新規プロジェクトとして計画、申請、許可を受ける。

※筆者脚注 ネ国内で活動する(ネ国内での年間事業費10万米ドル以上の)外国NGOはSWCと事業所登録(GA)を交わすだけでなく、各プロジェクトごとに事業合意(PA)をSWCと締結する必要がある。これにより事業費の海外送金の合法的受領と、外国人駐在員のNon Tourist Visa発給を受ける事が可能。
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3.震災復興支援に関する新規外国団体の、ネパール政府登録の可能性についての推測

 ネ政府の説明としては、震災直後の超緊急時の外国支援活動については緊急性に鑑みネ政府の承認を得るプロセスを省略することを認めた。しかし今後、長期にわたる支援(当該NGOは、1ヶ月以上の期間と判断)、家屋や学校の再建支援等について活動する団体については、ネパール政府への登録が必要であるとのこと。
 ただし当該NGOの予測として、復興支援を目的とする新規外国NGOのSWC登録が許可されるか否か?について、先行き不透明である。許可されない可能性がある。
 一方、震災救援・復興を目的としたネパールの国内NGO「新規」登録については、現状困難である可能性がある。
※筆者脚注 中長期的復興については、ネパール政府、各国ドナーによるマスタープランが策定される。特に地方の救援・復興についてはNGOが重要な一翼を担うと予想される。この場合は、震災復興関連新規NGO登録が認められる可能性はあると思う。しかし、今すぐではない。数ヶ月の時間が必要である。

※筆者脚注 復興マスタープラン策定後はネパール政府、各国ドナーだけでは手が足りず、開発コンサルタントの参入が推進される可能性が高い。建築、都市計画、プロジェクトコーディネーション等の専門分野がある場合、コンサルタントとしての復興支援参入が(将来的に)可能になると思う。

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どのような支援活動であれ、ネパール国内地方行政のコアとなる郡(District / ネパール語 ジッラ)単位で存在する「郡災害救援委員会 DDRC, District Disaster Relief Committee)」の許可が必要である。

ネパール国内NGOであったも、外国NGOの場合も(この時は業務にあたるネパール国内ローカルNGOが)、DDRCとの間に覚え書き(MOU)を締結することが必要。

郡レベルでの地方行政と合意無いままに活動を行うのは、地域内での不公平を助長する恐れあり。協力、援助のあるべき姿から逸脱する。

※筆者脚注 ネパール国内で活動する外国NGOは「直接」による協力活動は、ネ政府に認められない。必ず、ネ国内合法的に登録してあるローカルNGO(ネパール国内NGO)とパートナー関係を締結し、これを通じた現場支援を行う必要がある。

※筆者脚注 長年ネパールで協力支援活動に携わっているNGOの方々の考えに共通するのは、ネパール政府を全否定するべきではない。ネパールという国の中で活動するのであれば、ネパールの法律や行政の決まり事を尊重するべき。煩雑な手続きや、外国人の論理から見ると理不尽なこともあるが、ネパールの行政のルールを無視してはいけない。と云うこと。


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開発援助やNGOのプロでない善意の個人や団体が、ネパールの今後にどのようにして関わってゆけばよいのか?複雑な手続きに翻弄されている間に、被災地の人たちはどうなるんだ?という、じりじりとする想いを感じられるだろう。

しかしこれも現実。実績ある団体は既に乗り越えつつある。その力がない場合は、これまで何度も書いてきたが、「実現する力のある信頼できる団体」への募金という形で、善意は必ず届くのだ。

そしてカトマンズでは、復興と云う名の、国家と国際社会が巻き起こす強烈な嵐が吹き荒れる前の静けさであること。忘れてはならない。この嵐は、ネパールという国家を根本から変えていく「可能性」や「希望」と、同時に「恐ろしさ」を内在している。次回、この部分について考察を進めたい。

つづく...