ポカラから車で1時間半、カトマンズに向かう国道上の宿場町ドゥムレから山道を更に30分。中世、バクタプルから移住したネワール族が築いたバザールが掌の上のような尾根の上に続く小さな街、バンディプル。

中山道木曽馬籠宿のネパール版というと、イメージが浮かぶと思う。

かつてはマナンを経由してチベットに至り、南はインドとの徒歩による陸上交易路の拠点として栄えた。カトマンズとポカラを結ぶ車道であるプリトビ国道が1974年に完成し、尾根の上にあるバンディプルは国道から外れてしまった。タナフ郡の中核の地位は、低地の国道沿いにある街、ダマウリに移っていった。賑わいを奪わたバンディプルでは、豪商が競って建てた立派な町家に住む人もなく打ち棄てられていたと云う。住民の多くは車両交通の要所であるナラヤンガートなどに移住してしまっていたとも聞く。

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コンクリートによる開発から取り残された古い街並みは、2000年頃、復古調の古民家ホテルとして再利用されるようになった。カトマンズの観光開発業者が地元のオーナーと共同でホテルに改築し、バザール筋にだけは車両が乗り入れられないように両端にブロックを作った。

2008年に訪れたときには、古民家ホテルの先駆となったOld Innに滞在した。今回は隣の家にその後出来たGaun Ghar(村のおうち)に宿を取った。カトマンズやチトワンでホテルや伝統料理レストランを手広く展開するカトマンズの観光企業と地元の合弁である。

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他に泊まり客いない村のおうちは静かでゆったりとしていた。伝統的土壁の家は自然素材の厚い壁が天然の断熱材となる。夏涼しく、冬暖かい。鉄筋コンクリートの家とは違い、家全体も呼吸しているような感じがした。

私も友人も、部屋に入るなり眠気が来て、そのまま深い午睡に落ちていった。その後も、何時間寝てもまだ眠れる。心と身体が心底リラックスできる、不思議な感覚だった。今回の地震で、より良く復興するためには村でも鉄筋コンクリート建築を!と提唱する声があるのも当然だが、伝統工法の家がこんなにも人間に優しいこと。深く感動してしまった。

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部屋の窓からは、絵本の世界のような景色が見える。2008年に来た時より、村の中に建物が増えている。鉄筋コンクリートの建物が建設中であるのも見える。

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午後、学校帰りの子供たち。普通の村とは違い、ぱりっとアイロンの効いた制服に身を包み垢抜けている。

バンディプルには1980年代より、京都ノートルダム学院のシスターたちが開いた立派な学校がある。バンディプルの子供たちだけでなく、周辺の村々から、より良い教育を求める子供たちが集まってきている。村にいくつもある寄宿舎に入る子供もいれば、お父さんは海外に出稼ぎして送金。周辺部の村々から子どもとお母さんだけはバンディプルに部屋を借りて下宿。子どもをノートルダム学院に通わせる例も少なくないと聞いた。

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制服から着替えると、やっぱりやんちゃ。雨上がりのバザールの石畳で、クリケットに興じていた。

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車の走らない道は、観光客にも子供たちにも安心だ。クラクションの音もない。

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日が暮れ始めた。

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優しい光が、バザールを包む。

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村のおうちの玄関先には、灯明が灯される。

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カトマンズ資本のホテルだけでなく、地元の人たちも宿やカフェを開いている。今から30年くらい前、ポカラのレイクサイドにあったような、素朴で土の香りがするような施設も多い。

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村のおうちの夕食は、やっぱり、ネパールの国民食ダルバートだ。ネワール族伝統の蒸留酒も振る舞われる。素焼きの杯に高いところから注ぎ、星のような泡を立たせることで酒の純度が高いことを示す。

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バンディプルの夜はほのかに明るく、そして暗い。

バザール周辺の、一軒一軒が離れて建つ民家には地震被害も出ているそうだ。しかし、家が隣接して続くバザール筋では被害無かった。全ての家が揺れから支え合っていたのではないか?とのことだ。

秋と春の観光シーズン中は、夜遅くまで騒がしいほどに欧米人観光客が押し寄せるそうだ。今はとても静だが「秋の予約は快調ですよ。心配ないです」と、宿の人曰く。静かな滞在を望むならオフシーズンの雨期か、欧米人が自国に帰ってしまう12月1月あたりがおすすめかもしれない。