090612_171936平成21年6月12日(金)に関東甲信越建築士会ブロック会青年協議会による埼玉大会を開催しました.最終的な参加登録数は,470名程度.今期は,私が会長を務めていたこともあり,振り返れば1年間,大会準備に追われる毎日でした.準備期間中,大会の開催の仕方について,文句も言ったし,言われもした.いずれにしろ,主催者側が,これでもか!これでもか!とぶつかっていかねば,決してよい大会にはならない.主催者側のお楽しみ会で終わってしまう.それだけは避けたかった.

P1010277そもそも私が建築士会活動に参加するようになったのは,中四国ブロックの大会に講師として招かれたことがきっかけです.こちら.中四国のブロック大会は,開催内容のクォリティーの高さに定評があり,私自身も中四国ブロック大会に参加した後,関東甲信越ブロック(関ブロ)の大会に参加した際,非常にガックリきた記憶がある.

建築士会は,全国組織である7つのブロックに分かれています.その1つが,東京,千葉,埼玉,神奈川,茨城,栃木,群馬,山梨,長野,新潟の1都9県で構成される関東甲信越ブロック(通称/関ブロ)となります.関ブロは,他ブロックと比較しても,規模も参加人数も予算も大きいのですが,大会の開催内容が形式化しつつある.そこで埼玉大会では,運営方法やPR方法について新たな試みを実践していきました.

大会では3つのイベントがほぼ同時進行で開催され,その1つである第三分科会は,私自身で担当.例年,建築士だけので閉じた大会になりがちなため,第三分科会は,建築士である我々実務者と,建築行政との開かれた意見交換の場にしようと,国土交通省の宿本企画専門官と,豊嶋課長補佐をお招きし,宿本さんからは「建築士制度見直しと建築士への期待」についての基調講演を,豊嶋さんからは10月1日より施行される瑕疵担保履行法の概要説明をお願いした.いずれも,説明が非常に分かりやすい.両氏とも法制度の施策に最前線で奮闘されているだけあり,趣旨・目的や現実的な問題点,我々実務者が知っておくべき注意事項,そして,今後の課題などについていずれも明快に解説して頂いた.

肝心なのは,法制度という手段よりも,趣旨・目的の達成にある.議論はこれからです.」という宿本さんの言葉に心が響いた.

直接話を聞いてつくづく感じましたが,国の考え方をメディアというフィルターを通してキャッチすると,どうしても話の趣旨・目的がぶれてしまう.場合によっては,制度批判することで販売部数を上げようとしているメディアもある.それよりも,こういった大会を通して,直接,国の考え方を聞いてしまった方がよいと感じた.宿本企画専門官からも,「なんでもかんでも法制度化して,がんじがらめにしたくない.建築士である実務者の皆さんとキャッチボールしながら,よりよい業界づくりを進めていきたい.」という話があった.

その後,私自身がコーディネーターとなり,設計者を代表して山岡さん(千葉),施工者を代表して金子さん(神奈川),それに建築行政の立場として豊嶋さんを加えたパネルディスカッション(通称/パネディス)を開催.結論としては,「よりよい業界の仕組づくり・ルールづくりのためには,必要最低限の内容のみを法制度で対応し,それ以外のものについては,極力,自主基準や,社会制度(法制度ではなくモラルやマナーのようなもの)で対応していこう.そのためにも,我々,実務者がこういった大会の場を使って開かれた協議を行い自主基準づくり・社会制度づくりを進めていこう.」という話でまとまりました.

このブログは,1000名を超える建築業界関係者の方達に閲覧して頂いてます.そこで,下記内容だけは,是非知っておいて下さい.

今,私達の建築業界はあまりに職域が細分化(専門分化)されている.意匠設計が専門といっても,木造住宅が得意であったり公共建築が得意であったり,商業建築が得意であったり,伝統工法が得意だったりと千差万別である.したがって,普段,建築士個人として携わっている職域の幅は,建築業界全体と比すると極めて狭い.そのため,一人の建築士から一方的に意見も貰うと,どうしても話が偏り,場合によっては居酒屋での酔いどれ議論のような形に陥る.

それに対し,建築行政の立場にある者は,法制度策定の際,建築業界全体の実態を把握しなければならない.その責務は想像を絶するほど重い.パネディスの中で,思い切って聞いてみた.「我々,実務者だって,把握しきれていない業界全体の実態をどのような手段で把握しているのか?」と.

すると,豊嶋さんから,
「特に,これといった手法はないんです.地道に全国を訪問して廻り,実態に関する意見を直接伺いながら,情報収集しています.」という回答が帰ってきた.地道に足を使って直接ヒアリングしていくことが最も効果的な手法だと言う.

これには,正直,驚いた.

法制度に頼らずに建築業界の健全化を目指そうとするならば,その役回りは,建築士会で担うべきだ.業界全体の実態把握は,建築学会でも,建築士事務所協会でも,建築家協会でも,建設業協会でもできない.設計,施工,さらにその他の業務など幅広い職域に携わる建築士によって構成される建築士会だからこそできる.

そのためにも,まずは,自らがどんな建築士であるのかを情報開示することから始めていきたい.一重に建築士といっても何を専門とする建築士なのか?普段,どんな職域に携わっているのか分からない.建築士会の仲間同士であってもよく分かり合ってない.であれば,一般消費者は,もっと分からないであろう.

昨今,悪い建築士を業界から排除するために一連の法改正をが進められたが,本来は,法制度に頼らずに,我々建築士自身で悪い建築士の業界排除運動を進めるべきであった.それこそが,消費者保護の真の姿でもある.ちなみに,悪質な弁護士は弁護士会に報告すれば,業務停止処分を受けるが,建築業界ではそういった苦情の受け入れ先がない.あっても,業務停止といった強制力はない.

では,どのような手法によって,悪質な建築士を業界から排除すればよいのか?その一手法が,建築士自らが情報開示を行っていくことにある.無論,自らの情報開示ではその内容が偽装される可能性があるため,開示内容を別々の建築士で相互認定しあう形をとっていく.そういったアクションが,しいては,悪質な建築士の業界からの退場を促していくように思える.

まだまだ,議論は始まったばかり.今後も,建築士と建築行政とが膝を突き合わせて,協議できる場を用意していきたい.そして,次のステップでは,さらに一般市民も交えてこれからの建築業界のあり方を考えていきたい.よりよい建築業界の創出には,一般市民と,建築士と,建築行政との連携が必要不可欠であると考えております.

PS
はじめて大会に参加されたエムキラさんのブログで,第三分科会の内容が記事として取り上げられています.こちら