2018年11月02日

【建築】多用性と画一性

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建築のデザインは,「画一性(合理性)」と「多様性」を振り子のようにいったり,きたりを繰り返してきた.ゴシックとバロック(コチラ),モダニズムとポストモダニズム(コチラ)といったように.

「画一性」,「多様性」のいずれのデザインも様々な名作建築をこの世に誕生させてきた.

「画一性」のデザイン(=合理的でシンプルな美しさ)が盛り上がる時,時代は画一化へと向かう.社会は経済が活性化し,人口集中による大都市化が進み,国家的プロジェクトも数多く生まれ,建物は巨大化していく.

逆に,「多様性」のデザイン(=演出的で感性に響く美しさ)が盛り上がる時,時代は多様化する.経済は停滞し,地方回帰が進み,地域性が尊重されるようになる.今の日本社会がまさにこの状況ではないだろうか.


日本の「多様性」デザインの代表作の一つが,象設計集団が設計した「宮代町立笠原小学校」だろう.1970年代の高度経済成長がひと段落し,日本経済が低迷しだした1980年代初頭にこの建築は誕生する.一級建築士学科試験問題としても出題されている.コチラ

この校舎の主動線(廊下)は町の軸線に合わせる形で計画されている他,藤棚や稲の乾燥にも使える2階の手摺など,「多用性」の代名詞とも言われる「地域性」がふんだんに建築計画へ取り込まれている.淡いピンクの顔料を予め混ぜて打設されたRC躯体は,校舎全体を包み込む,周辺の木々の緑と相まって,生命の息吹を肌で感じる.教室群ごとにアプローチでき(アプローチを1ヶ所に集中させない),校舎内を子ども達は裸足で歩き回る.

内部空間は自然の中に分散配置され,外壁が多くなるがその分,外部の自然との繋がりが濃い.自然の森の中に,教室等をポンポンと置かれたような感覚だ.学校建築特有の閉鎖感が全くない.どこにいても常に自然(外部)へ開かれているのだ.

子ども達は,森の中を上下左右に動きまわりながら,自然と向き合いながら学校生活を過ごす.暑い,寒いよりもこの解放感にこそ価値がある.どこにいても「多様性」に満ち溢れ,死界がない.内と外が何かしらの形で繋がっていて,そして,必ず,どこかに何かがある.この学校の卒業生たちは,地域の「稼ぐ力」を引き出せる人材へと成長しやすいだろう.空と音,風と空気の調和が本当に心地いい.世界中の子ども達に体感して欲しい空間だ.
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ura410 at 06:37│ │日本建築史 | 西洋建築史