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2010年02月28日

スポーツ観戦のマナー,のつづき

 スポーツ観戦のマナーについて書いています.

 日本のスポーツ放送は,アナウンサーや解説者の声のため臨場感が薄れてしまう.実際の競技場の中は,競技の進行につれて,時には静寂と緊張が,時には興奮と大歓声が支配する.日本式の実況放送では,こういう競技場の「息づかい」が伝わらない.
 英国のサッカーが日本でも放映されている.私はあまり見たことがないが,もしアナウンサーや解説者の声が入ってないのなら,音を大きくして聞いてみると良い.味方がボールを奪ったとき,競技場全体が「どっ」とどよめく.観客はボールや選手の動きをしっかり注視しているのだ.競技場全体が,ゲームの進行と共に呼吸をしているかのようだ.そういう雰囲気を楽しむのがスポーツ観戦の醍醐味だと私は思う.

 では日本のサポーターはどうか? ゲームの流れなどお構いなしに,最初から最後まで怒鳴りっぱなし.勝敗には異様に執着するけれど,ゲームそのものを楽しもうという姿勢があまり感じられない.そして,これは日本のスポーツ放送のあり方と大いに関係があると思う.
 とにかく,これでは選手もやってられないのではないか.緊張と弛緩のリズムを客席と共有できてこそ,選手は「この一瞬」に全力を集中できるのでないだろうか.ゲームの「息づかい」を共有することなく,何がどうでも「頑張れ頑張れ」などという応援は,まるで日本の学校教育そのまま.
 まあマナー違反とまで言うつもりはありません.しかし,あまり「品格」があるとも思えない.

 総じて日本や韓国の応援者は勝敗にこだわり過ぎる.気持ちはわかるが、私はタテマエの話をしている.スポーツ観戦では自分が応援する選手やチームだけでなく,相手方の選手もまた最高のプレーができるように配慮すること.そして敵であれ味方であれ,良いプレーには拍手を惜しまないこと.そういうタテマエを頭の片隅に置いておいたほうがよい.たとえば相手方の失敗を喜んだり拍手したりなどという行為は,やはりマナー違反でしょう.こういう「国際標準」的なマナーを,日本人や韓国人はとかく無視しがちである.
 もちろん相手方の失敗は味方のチャンスでもあるわけだから,場合によっては判断が難しい.しかし,たとえばテニスとか卓球では失敗がはっきり見えるケースもある.ビリヤード(これもスポーツです)なら味方の美技と相手のミスとはハッキリ区別できる.

 相手のミスに関し,すぐ思い出すのは,やはり4年前のトリノ・オリンピックである.フィギュアスケートの荒川静香さんと競っていたロシア?の選手が演技をしくじった.そのとき自民党のある政治家(たしか閣僚だった)は,<やったぞ> と思ったそうだ.これで勝てる,と喜んだそうだ.
 気持ちはわかる.誰しもそう思うかもしれない.しかし,マスコミを相手にそう公言することは,「私はスポーツ観戦のマナーを知りません」と宣伝しているようなものだ.こういう発言をしたのが一般人でなく,時には「腹芸」が要求される職業である政治家であったことに,まことに救いがたいものを感じる.正直な政治家を私は好きであるが,この人のは正直を通り越して「馬鹿」というべきだろう.
 少なくとも,あまり「品格」のある発言には聞こえない.

 そういうわけで,外国人横綱に「品格」などと難癖をつける前に,自分たちの「品格」について考察してみる必要があるのでないかとも思う.

uradowan at 15:33│Comments(3)TrackBack(5)

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この記事へのコメント

1. Posted by Ladybird   2010年03月03日 09:28
逝きし世の面影さん,トラバありがとうございます.
 清水選手の発言は短いですが本質をついていると思います.
 スポーツの日本での普及のしかた,マスコミのあり方,などの問題などにも関連しますね.
2. Posted by 逝きし世の面影   2010年03月08日 11:15
この『清水選手の発言』ですが、心配していたように
ヤッパリというか残念ながら引退を覚悟しての『最後の発言』であったようです。
日本の場合には、清水宏保のような世界記録を4度塗り替え、日本のスピードスケート史上初の金メダルを獲得した最高実力者であっても、現役を続けていきたければ『沈黙』するしかない。
少しでも競技連盟の上部に睨まれれば千葉すずの悲劇が再現される事は、25回優勝の成功実力者である朝青龍を石もておった大相撲を見れば誰の眼にも明らかです。
スポーツでなくとも、どんな社会であれ現実に働いている人々の発言権が全く無い封建的な社会は間違いなく硬直して衰退する。
ましてやスポーツの世界においては自明の理のはずなのですが、日本ではつまらない所に今でも儒教的な長幼の序が『スポーツ精神』よりも優先される不思議な伝統がある。
これでは駄目ですね。
3. Posted by Ladybird   2010年03月09日 11:04
>引退を覚悟しての『最後の発言』

 そのようですね.ただ,それでも橋本聖子は清水宏保をしっかり処遇しようとしているように見えました.

>競技連盟の上部に睨まれれば千葉すずの悲劇が再現される事は、25回優勝の成功実力者である朝青龍を石もておった大相撲を見れば誰の眼にも明らかです。

 そうなんです.マスコミの報道では見えづらい奥のほうを,もっと白日のもとにさらす必要があります.

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