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2013年12月26日

秘密保護法インタビュー (3)

 中谷元氏へのインタビュー.高知新聞の記事「問う,特定秘密保護法案」を転載しています.2013年12月22日の朝刊です.記事は今回で終りです.

 なお高知新聞は,中谷氏の地元である高知県の,代表的な地方紙です.地元高知県での取材ということで,中谷さんも心なしかリラックスしているように見えます.


(以下転載)

【法成立の過程 「推進役は警察官僚」】

 ―中谷さんが、秘密保護法制の研究に携わったのはいつからですか。

 「8年くらい前ですね。情報に関する国の体制をつくらねばと、自民党にインテリジェンスの機能強化に関するプロジェクトチーム(PT)ができ、秘密保持とインテリジェンス機能の強化を検討してきました」

 ―PTの始まりは、どういう形で?

 「内閣情報調査室(内調)の人とか限定メンバーで。外務大臣を経験した町村(信孝)さんが情報機能が足りてない、と。(最初10人くらいの)メンバーは、なかなか会に出て来ない。町村さんと私はできるだけ出ていました」

 ―その後は?

 「民主党の菅政権の時に情報保護の有識者会議ができ、報告書が野田内閣の時にできました。法案化の動きは野田内閣の時に始まったんですね」

 ―PTが頻繁になってきたのは?

 「国会でNSC(国家安全保障会議)法案と秘密保護法案をやらなきゃという時ですね。秘密保護法が検討され、原案なるものが持ち込まれました。(今年9月3日に)パブリックコメントの募集をかけましたが、その1カ月くらい前です」

 ―原案はどこが作成したのでしょうか。

 「それは政府提出だから。内閣から。内調でしょう」

 ―PTに対する説明役は内調のスタッフ?

 「そうです。10回くらいと思います」

 ―その時に警察庁出身で内調トップの北村滋さん(内閣情報官)はいましたか。

 「いましたよ」

 ―説明役だった?

 「そうでしょう」

 ―秘密保護法を中心的に担ったのは内調の中の警察庁組と言われています。中谷さんもそういう認識ですか。

 「そうです。やはり(情報は)警察が握るんだという考えもあって。本当にそれで大丈夫なのかという意識はあったね、最初は」

 ―警察が法成立の推進力になってることに違和感があった?

 「日本版NSCで各省庁の情報を活用する際、(警察庁にそれらの情報を)吸い上げられて本当に大丈夫かな、という意識はありましたけどね」

 ―警察官僚が情報を牛耳るのではないか、という懸念ですか?

 「そうじゃなくて、NSCとして判断する際に、情報コミュニティーから情報が本当にどんどん(NSCに)出て来るのかな、と。ただ彼ら(警察官僚)も法案を通さなきゃいけないんで、もう徹夜徹夜の連続で血眼でした。修正協議でどんどん修正点が出てきて、非常にバタバタしてました」

 ―警察が優越するのではないかという中谷さんの不安は解消されたのでしょうか?

 「まあ、そうですよね。やっぱり作っとかないといけないことなんで、形にしなきゃいけないという思いでやりました」

 ―この法は、既に秘密保持の法規定を持つ防衛省にはメリットがなく、警察の公安部門が力を増すように思えます。

 「単に警察が(情報を)独占するというより、各省庁が入った組織もでき、外部の識者もその報告を聞くことになりました。そういう面では情報の流れというのは良くなると思います」



【国会答弁 将来も守れるか】

 ―法律は、制定者の考え方や約束が将来も担保されるものでしょうか。制定者の考えを超えて運用されたり解釈されたりする例は、たくさんの実例があります。1999年制定の国旗国歌法は当時の小渕恵三首相が国会で「強制しない」と何度も明言しています。日の丸などへの賛否は別にして、首相の約束が守られていないと思いませんか。

 「その時の政府が答えたことが残っていますから。法律に基づく運用とか考え方は、残ると思いますよ」

 ―その関連で。中谷さんが防衛庁長官だった2002年、陸海空の調査隊を改編し、各自衛隊に情報保全隊をつくろうとしていました。「情報収集は民間人も対象になるのか」という国会質問に対し、中谷さんは「情報漏えい防止の一環としてつくる。あらかじめ防衛秘密を取り扱う者として指定をした関係者のみに(調査対象を)限定する」と答えていました。

 「そうでしょうね」

 ―ところが07年、国会答弁をほごにする事実が明らかになっています。陸自情報保全隊(03年改編)が、自衛隊のイラク派遣に反対する市民集会やジャーナリストや文化人の動向など一般市民も情報収集の対象にしていました。

 「一般的な情報収集ではないですか? 情報収集としては許される範囲だと思います」

 ―情報保全隊は、集会で参加者の写真を撮るなどしていました。

 「反対してる人の意見も傾聴に値するものもたくさんありますからね」

 ―当初の国会答弁と運用が変わったということじゃないですか。

 「そうは思いませんね」

 ―国会答弁で言ったことは何の約束にもならないということですか。秘密保護法についてもそれを懸念しています。国会答弁の内容が後に拡大されたり、違う解釈がされたり。

 「(問題の情報収集は)通常の業務で許されると思いますね」

 ―この問題では調査された側の市民が慰謝料を求めて提訴し、12年3月に仙台地裁で判決が出ています。人格権侵害に当たるとして国は敗訴しました。

 「それなりの正当性は(国も訴訟で)主張してると思いますね」

 ―国会答弁と違う内容の仕事が行われたわけです。答弁内容が担保されていません。

 「そうでしょうかね。本来業務は答弁した通りなんですけど、開かれた場所で話された内容を集める。(市民からの)情報収集も許されると思います」

 ―許されると思っているのに、当初は「調査対象は自衛隊関係者のみに限定」と答えたんですか。秘密保護法に関する答弁もどこまで担保されるのか。だからこういう曖昧な法律はまずい、と多くの法学者や弁護士たちが懸念しています。秘密保護の仕組みは必要だという人でも、この法律はまずいでしょ、と言っています。

 「(市民対象の情報収集は防衛省側が)知ってどうかしたという話じゃないんでしょ? こんな話がありましたという話でしょ?」

 ―市民の動向を、反自衛隊活動と分類しています。

 「分類の仕方は知りません。チェックというか、そういう方々の意見を聞いて、自分の考え方とかの参考にしますけどね」

 ―監視していたんです。

 「そこまでやってないと思いますけど…」

 ―やっていたと、訴訟で明らかになりました。

 「03年に調査隊を廃止し、情報保全隊をつくりました。組織が変わって、多少任務は広がっている部分がある。もともと『調査隊』ですから、情報を調べる任務はあったと思うんです。それに『保全』の任務が入ってきた。そういうことだと思いますけどね」



【丁寧な政治 できているか】

 ―法の成立後、安倍首相は会見で「反省をしている」と述べました。一国の総理が一本の法律を通した直後に反省する。極めて異例と思いませんか。

 「この法の真意、内容を十分に伝えることができなくて、懸念とか国会の運びとかに、国民のご意見があると。そういう意味で言われたと思います。でも私は現場として、衆議院は国会の論戦の中で非常に濃密な内容で答弁もし、修正も行った。衆議院段階で43時間、しっかり議論ができたと思います」

 ―憲法学者、弁護士、作家、俳優、いろんな人たちが反対しました。どうして反対したとお考えですか。

 「非常に拡張された(条文の)解釈によって、とんでもないことになるということだと思いますが、思想信条は自由ですから。自由がなくなるとか、暗い世の中になるとか思っておられると」

 ―日弁連も何度も反対声明を出しています。それも思い込みだと?

 「ま、思い込みというか、そういう論者としてやってると思います。臆測とか推測でそう思われるのは自由なんですが、そうならないようにします」

 ―法成立後の世論調査では国民の結構な割合が懸念を示しています。

 「法律の真意が伝わっていないんです。伝える側がしっかり伝えてほしいと思う」

 ―おかしいことを指摘し続けることは健全だと思いませんか。

 「そうですけど、懸念がないように精いっぱい努力をしてきた。そういうことも伝えてほしいと思います」

 ―中谷さんはこれまで、憲法については無理のある解釈改憲ではなく、手続きを踏んで改正すべきだとし、安倍さんらへの批判も口にしておられた。「政治は丁寧にしなければならない。私は党内で歯止め役になる」とも言っていた。

 「憲法については実際に改憲案を出し、どうでしょうかと国民の意見を聞きながらやってます。きちんと手続きを踏んでやっているつもりです。今回の秘密法も、自分の信条に反してやってるつもりはないです。歯止めというか、必要性があるからやってるという認識です」


(おわり)

uradowan at 21:14│Comments(0)TrackBack(4)

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