舞監@日誌 since 2005

大阪在住、舞台監督・CQ塚本修(ツカモトオサム)の日記です。 観劇の感想や舞台用語の解説、たまに日々の出来事や劇団ガンダム情報も書いてます。 コメント・トラックバックは承認制ですので、すぐには反映されません。非公開希望の方はその旨お書き添え下さい。返信用アドレスも基本的には非公開にいたします。

2011年07月

【観】箕面東高校『門のない関所を越えて』

f85cd5a4.jpg箕面東高校
『門のない関所を越えて』
作/田中実知佳
演出/田中実知佳・有馬眞美
@シアトリカル應典院

HPF有終の美を飾るのは、すっかりアングラ劇団化した箕面東高校である。
良く書けた脚本である。
大人と子供の狭間にある彼彼女たちの考え方が描かれたお伽噺、この作品のテーマは「大人に伝えたいお伽噺」だと言う。
舞台中央には間口2間の高く組まれた櫓があり、2階部分には檻が設えられている。
高さ1間の櫓に続く階段が、上下の両側に据えられ、高さ半間の所に階段の踊場があり、おどろおどろしいシンメトリーの見事な舞台装置が造られている。
舞台美術、音響、照明、スタッフワークの連携、ミスの少なさとフォローの上手さ、どれも秀逸で完成度が高く、特に冒頭とラストの全員による群像シーンは、見事に胸躍る迫力ある場面を作り上げている。
劇中でも主人公二人の場面は切なく美しい。
ズルい大人と純真な子供の間に生きる自分たちの物語を、等身大の自分たち自身で描き出す狙いはとても良いのだが、各場面は短く煩雑で伝わり切らないのが残念である。
せっかくの門のない関所の意味するメタファーが伝わりにくく、そこを軸としてしっかり描かれる筈が散漫になってしまう。
スピーディーに展開するのはとても良いので、テンポを崩さずにもう少し深くまで場面を描いてはどうかと思う。
役者は総じて安定感があり、それぞれに味があって上手い。

【観】837B『ルパン』

38fd4645.jpg837B PRESENTS 第二回公演
『LUPIN ルパン』
作/ジン
演出/小藤めぐみ
@インディペンデントシアター1st

怪盗アルセーヌ・ルパンを題材に、ルパン亡き後の物語を、ルパン三世とは違ったパラレルワールドを描いたミステリコメディ。
登場人物もアルセーヌ・ルパンの小説からの引用で、音楽はアニメ「ルパン三世」から多用する。
怪盗アルセーヌ・ルパンが遺した秘薬「ルパンの薬」は、投げキッスをすると相手の身体に入り込みことが出来る不思議な薬である。
この設定により、変装をすることなく、どんどん他人に乗り変わっていくことが可能で、下手をすれば何でもありな詰まらない作品になる。
だが、そこはコメディだから許される。
役者は乗り移られた人格を、幾つも演じ分けることとなり、本来ならば今この役者が誰なのかを考える推理ドラマである筈なのだが、残念ながらそこまでは書き込めていない。
ミステリィとしてはいささかお粗末な作品だが、コメディとしては結構面白い。
ラストの「カリオストロの城」のパロディも秀逸で、良く出来ている。

【観】インディペンデントシアタープロデュース『インディペンデント:ジャパンツアー』2

e0293614.jpgインディペンデントシアタープロデュース
『インディペンデント:セカンドシーズンセレクションジャパンツアー』
総合プロデューサー/相内唯史
@インディペンデントシアター2nd

上演作品ラインナップ
a「101人ねえちゃん」10年初演(大阪)
出演/大塚宣幸
脚本・演出/早川康介
b「マラソロ」09年初演(大阪)
出演/加藤智之
脚本/山崎彬
演出/伊藤拓
c「0141≒3088」10年初演(札幌)
出演/榮田佳子
脚本・演出/イトウワカナ
d「スクラップ・ベイビィ!」09年初演(大阪)
出演/Sun!!
脚本・演出/坂本見花
e「はやぶさ(MUSES-C)〜星に願いを」10年初演(大阪)
出演/谷屋俊輔
脚本・演出/美浜源八
f「いまさらキスシーン」08年初演(東京)
出演/玉置玲央
脚本・演出/中屋敷法仁
g「頼むから静かに聴いて。」07年初演(大阪)
出演/福山俊朗
脚本・演出/桂正樹子
h「赤猫ロック」09年初演(大阪)
出演/ヤマサキエリカ
脚本・演出/戒田竜治
i「或るめぐらの話」09年初演(青森・東京)
出演・構成・演出/山田百次
j「暗くなるまで待てない!」08年初演(大阪)
出演/横田江美
脚本・演出/土橋淳志

14:00〜[g][d][f]
16:30〜[b][h][a][j]
昨日に引き続き、残り5本を観劇。
以下、感想。
「頼むから静かに聴いて。」は裁判の証言台に立つ二人の証言から、真実を暴き出す法廷ミステリィ。
夫を刺してしまった女の裁判に証言をする幼なじみのオカマと近くの町工場で働く女の兄。
偶然にも事件現場に居合わせた二人の証言と、女との関わりから意外な真実が現れる。
一人三役ながら、完全二役で表現できたなら一人芝居の意味も表れ、より素晴らしい。
「いまさらキスシーン」は08年に見ているが、当時より更に上手くなった玉置玲央が演じるには、今となっては既に余裕すら窺える。
女子高生の3年間を描いた作品は、恋愛とクラブと大学受験を並行して器用にこなしていた筈の主人公が、卒業を迎える時にはそのどれもが中途半端で、東大受験に失敗し、クラブの仲間からリンチを受け、好きな先輩にはフラれてしまうバッドエンディングで、今までの頑張りやハイテンションとのギャップが切なくて強烈である。
「赤猫ロック」も大半はヤマサキエリカが走り続ける。
走りながら8拍子に乗せて、延々と台詞を吐く。
ほとんど救いのない物語である。
酷い父親だと思う。
その仕打ち以上に明るく前向きに生きる娘が気高く哀しい。
一人芝居の演り方としては珍しくて画期的なので、走ることに明白な意味付けが欲しい。
[赤猫]は[火付け]、[放火魔]の事で、劇中に登場する火事と、火葬場で母親の遺体を焼く炎が重なり、ラストの花嫁衣裳での焼身へと繋がらないのが本当に惜しい。
とても面白いので、改訂を猛烈に望む。
「101人ねえちゃん」も昨年観劇。
最高の女と付き合うために、現在付き合っている100人の女を次々と振って行く。
ありがちな別れのエピソードや、あり得ない別れのパターンを駆使し、複雑に絡み合う女性関係の人間模様はよく考えられている。
番付表に数字がどんどんカウントダウンされて行くのが心地良く、数字の仕掛けも面白い。
「暗くなるまで待てない!」は、08年にも観劇。
ヘップバーン主演の映画「暗くなるまで待って」の設定をリメイクした盲目サスペンスホラー。
主人公を盲目にすることで、一人芝居である必然性が活きてくる。
主人公以外の登場人物は見えない。
一人芝居たがら当たり前なのだが、この仕掛けがラストのオチを完全にカモフラージュする。
以前、室内だけの物語にリライトできるのではと、土橋くんに話したが、このままで良いと今は思う。
主人公を大阪弁に変更したと言われて気付いたが、作品がより自然になったと思う。

【観】インディペンデントシアタープロデュース『インディペンデント:ジャパンツアー』1

9ebb6d61.jpgインディペンデントシアタープロデュース
『インディペンデント:セカンドシーズンセレクションジャパンツアー』
総合プロデューサー/相内唯史
@インディペンデントシアター2nd

上演作品ラインナップ
a「101人ねえちゃん」10年初演(大阪)
出演/大塚宣幸
脚本・演出/早川康介
b「マラソロ」09年初演(大阪)
出演/加藤智之
脚本/山崎彬
演出/伊藤拓
c「0141≒3088」10年初演(札幌)
出演/榮田佳子
脚本・演出/イトウワカナ
d「スクラップ・ベイビィ!」09年初演(大阪)
出演/Sun!!
脚本・演出/坂本見花
e「はやぶさ(MUSES-C)〜星に願いを」10年初演(大阪)
出演/谷屋俊輔
脚本・演出/美浜源八
f「いまさらキスシーン」08年初演(東京)
出演/玉置玲央
脚本・演出/中屋敷法仁
g「頼むから静かに聴いて。」07年初演(大阪)
出演/福山俊朗
脚本・演出/桂正樹子
h「赤猫ロック」09年初演(大阪)
出演/ヤマサキエリカ
脚本・演出/戒田竜治
i「或るめぐらの話」09年初演(青森・東京)
出演・構成・演出/山田百次
j「暗くなるまで待てない!」08年初演(大阪)
出演/横田江美
脚本・演出/土橋淳志

2001年から毎年11月に開催して来たインディペンデントシアター主催企画「最強の一人芝居フェスティバル=INDEPENDENT」。
これまでに全国から延べ110人による一人芝居が催されたフェスティバルが、セカンドシーズンの06年から10年に上演された60作品から厳選した10作品のセレクションを再演し、日本全国7都市(大阪・東京・仙台・福岡・札幌・三重・沖縄)を縦断する。
本日は以下の5本を観劇。
18:30〜[i][d]
20:00〜[b][c][e]
簡単に感想を述べておく。
「或るめぐらの話」は、戦後に復員したもののメチルアルコールで全盲になった男が半生を語る。
全編が津軽弁で語られ、言葉は全て理解できずとも、次第に内容は理解できるように仕上げてある。
オーソドックスな一人語りで、観客に自分の半生を聞かせる構成である。
「スクラップ・ベイビィ!」は近未来の童話風ファンタジー。
路地裏で大道芸を生業に暮らす捨て子の二人組、オズとアズ。
外見はそっくりで性格のまるで違う二人を一人二役で演じ訳、ラストには驚きの結末が待つ。
一人芝居であることの意味がはっきりと明示されている。
「マラソロ」は作者の造語で、オナニーの意。
AV製作会社で働く童貞男の家に、隣の女子中学生が家出して来る。
普段、他人には絶対に見せることのない男女二人だけの羞恥的な会話や、一人切りだからこそ明かせる性癖を、あからさまに描く。
オナニーをスタイリッシュに描こうとするが、見るに堪えない者が居ることも否めない。
賛否両論は必至である。
「0141≒3088」は昨年末に見て記憶に新しい。
性欲を食欲に見立てたメタファー作品。
10作品中、最も好きな作品である。
舞台は白いコードが円形に敷かれた時計盤で、時間の経過に添って外周を歩く。
18時、仕事終わりに一人目とキス。
21時、二人目の男の部屋へ行くも既に男は恋人と一戦交えた後で軽く前戯を済ませて、その後は男の前で自慰。
0時、三人目の男の部屋へ行き、脂の乗った濃厚な性交。
2時、帰宅して同棲する男と味気なくお決まりの二発。
その後、違う男に電話を掛けてテレホンセックス翌日アポ。
以上、私見なので参考程度に!
「はやぶさ(MUSES-C)〜星に願いを」も昨年に観劇。
2003年5月に打ち上げられた小惑星探査機[はやぶさ]は、04年5月にイオンエンジンを併用した地球スイングバイを行い、05年9月に小惑星[イトカワ]とランデブー。
その後、小惑星の観測と表面の試験片を採集し、07年に地球へ帰還するはずが、05年12月に重大なトラブルが生じ、帰還は10年6月となる。
サンプル容器が収められていたカプセルがパラシュートにより地球へ着陸。
はやぶさの本体は大気中で燃え尽きたもののカプセルからは岩石質微粒子が認められた。
この[はやぶさ]の軌跡を擬人化による一人芝居で演じる。
膨大な台詞量と劇中の大半を走り続ける運動量は半端ではなく、役者を容赦なく痛めつける。
満身創痍の姿が、そのまま[はやぶさ]に重なるのだ。
ラストの映像は字幕のみで良い。
せっかく擬人化した作品を、ヴィジュアルで見せる必要はない。

【観】千里高校『ライン〜君に咲くサクラ〜』

96e1aa70.jpg千里高校
『ライン〜君に咲くサクラ〜』
作・演出/笠原英樹
@ウイングフィールド

とても良く描けている。
2時間近くの大作ながら、観客を飽きさせることなく、最後までしっかり作り込まれている。
いつも通りに簡素な舞台。
大黒を採用し、下手奥にテーブル、上手奥に椅子代わりになる四角い箱が2つ、並べてベンチ状に置かれて在る。
この箱は場面によって配置が変えられる。
舞台は基本的に高校の科学部の部室で、このドラマの本筋となる。
転校生が転入してして来て、再び転出するまでの2週間の物語を、数日間のスケッチとして描き、その合間にいくつかの劇中劇が挿入される。
全ての劇中劇はロケットを題材にした短編であり、本編ももちろんロケットを飛ばす科学部の話である。
そこに描かれるのは宇宙開発の難しさと、多くの悲惨な失敗と、心ならずも兵器利用されたロケット開発者の苦悩である。
1986年、発射して73秒後に爆発したスペースシャトル・チャレンジャー号の惨劇。
不名誉ながら世界唯一の航空特攻兵器として開発され、1945年に大日本帝国海軍が太平洋戦争に実戦投入した桜花 。
遠い未来の銀河の彼方で、地球から移民した地球人が最期の時を迎える星。
本編でも科学部の作ったペンシルロケットは、敢えなく空中分解してしまう。
このペンシルロケットは1955年に糸川英夫博士が飛ばした全長僅か23cmの小型ロケットをモデルに、転校生が設計するのだが、転校生の父親は2009年に東大阪宇宙開発協同組合がJAXAのH-Aロケットで打ち上げた人工衛星まいど1号の製作者の一人で、その後の資金難から運営の撤退、過労死と、1970年代当初から検討されながら、再三の計画変更の憂き目に遭い、ようやく1977年にアメリカから打ち上げられた実験用静止通信衛星「さくら」と同じく、作品の根底には受難続きの宇宙開発の姿がある。
まさにロケット尽くしの作品となっている。
各々の劇中劇では、開発する者と運用する者の関係性を横糸に、それぞれの時代を結ぶ運命の関係性を縦糸に、運命的な関係性のメタフィクションとして描かれる。
この運命の糸が線となり、タイトルの『ライン』に重なって来る。
この開発者と運用者を演じる上坂さんと駒井さんが実に良い。
十分に小劇場の舞台で活躍できるレベルで、この両名が全員を引っ張り、押し上げる形で、全体がバランス良く仕上がっている。
全般的にエンタメ色の強い演出も、ここ数年で気になっていた正面向きの芝居や、マイムと実在を混同した小道具の使い方等、自分たちなりの法則性が見えて来て、上手く整理されている。
特に最も重要な小道具である劇中に製作したロケットを、マイム処理したのは素晴らしく、観客の想像に委ねられたロケットが、はっきりと脳裏に浮かんでくる。
逆に部室の室内の広さや配置の想像を限定させぬよう、出入口を自由に設定しているのが面白い。
音楽は選曲のセンスが抜群に良く、短い場面の音楽が気になったが、きっかけのタイミングを修正すれば概ね不要な音楽もない。
照明も同じく、遊び心に溢れ、チャンスを逃さず照明変化させている。
本編と劇中劇は、明確にコントラストを変え、更にラストには出来る限り最高の照明プランが用意されている。
見事である。

【観】北摂つばさ高校『SchoolAid〜今、学校は病んでいる〜』

8bba4ff2.jpg北摂つばさ高校
『SchoolAid〜今、学校は病んでいる〜』
作/西沢周市
演出/草地樹里
@ウイングフィールド

かなり強引な脚本だとは思うが、それを演じる役者たちが実に良い。
大黒を開いて白壁をそのまま保健室の室内にしている。
上手に保健室のデスクや椅子、棚類をコンパクトにまとめ、2/3以上を広いアクティングエリアとして用いる。
一見バランスが悪そうに見えるが、これは正解だと思う。
保健室に来訪者が訪れた時、思い切りよく動き回れるからだ。
様々な問題を抱える生徒たちと、学内の事件に翻弄される教師たちが、代わる代わる保健室にやって来る。
最後には校長が自ら職員室に放火する、とんでもない物語だ。
生徒だけでなく教師も疲れ病んでいるのだ。
脚本のベースは会話劇なので、音響や照明の効果は自由度が高く、本作ではふんだんに照明変化と音楽を使用する。
冒頭、机に向かう保健教師のサスから始まるのは雰囲気を作り出すのに大変有効だが、前半に来訪者が帰る度に上手サスに戻すのは不要。
照明のクロスもカット気味なので注意したい。
音楽も選曲は悪くないが、短い場面に十数秒流すだけなら違和感が強いのでカットした方が良い。
また、音響と照明のきっかけがアンバランスで、いきなり照明変化したあとから音楽が挿入されたり、音楽がフェードアウトしてから照明変化したりと、相互の連携が取れていない。
単純に場面に合った音楽や、シーンに合わせた照明変化をするのではなく、総合的に場面を演出する目が必要である。
しかしそれを補っても余りあるくらい、役者たちが生き生きと動くのだ。
モノローグで正面を向く以外は、しっかりと共演者を意識した会話劇が成立しており、尚且つ全員が自然体で楽しんで演技をしているのが良く伝わって来る。
演出と主演を兼ねた草地さんが、高校生離れした実力ある演技で、ぐいぐいと全員を引っ張って、見事にこのハチャメチャな芝居を成立させている。
火事の中、逃げ惑い倒れていく生徒たち、職場を放棄して逃げ出す教師、全てを知りながら保健室から醒めた目で一部始終を眺める保健教師も、自ら精神安定剤を飲まねばならないほど、学校中が病んでいる。
大いなる問題を提起して、解決策のないままに物語は終了する。
この病に生徒と教師はどう立ち向かうべきなのか。
この作品が色褪せないのは、未だにその答えが見いだせないからはなかろうか。

追記
劇中の小道具は、マイム処理と実物を混同させる場合、しっかりと意味付けをしなければならない。
特に腕時計のような身に付ける小道具は、実際に身に付けないと観客に違和感を与えるので注意したい。

【観】金蘭会高校『ザ・キャラクター』

e5b8a524.jpg金蘭会高校
『ザ・キャラクター』
作/野田秀樹
演出/福島愛・山口喜響・山田萌夏
@吹田メイシアター中ホール

野田地図の芝居は、ほとんど金蘭会高校の演劇で見ている。
今年は昨年上演された作品を、早くも舞台化する。
しかもこの作品はかなり難しく重く痛ましい。
オウム真理教の一連の事件を扱った本作は、如何に16年前の事とは言え、実に生々しく、切実に胸に迫って来る。
「紙」を「神」と掛け合わせ、教団を書道教室に喩え、ギリシア神話を引用し、オウム事件を文字通りなぞって行く。
いつも通りの野田秀樹氏お得意の言葉遊びの応酬が続く。
「人」偏尽くしから始まる言葉遊びは、「俤(おもかげ)」と「儚(はかなさ)」から始まる。
俤の中にいる弟、儚さの中にあるのは夢。
やがて人の言葉(「信」)に惑わされ、言われるがままに動きだす信者たち。
「救」いの中には「求」めがあり、救われたい「魂」の中に「鬼」は棲む。
言葉巧みに物語は展開し、やがて仲間殺し、坂本弁護士一家殺害、地下鉄サリン事件を思わせる事件へと発展して行く。
痛ましい事件が起こり、たくさんの人々が亡くなり、残された者たちは何のために祈るのか。
忘れるために祈るのか、忘れないために祈るのか。
その答えを野田秀樹はこうまとめている。
忘れるために祈るのだと、それでも忘れきれないものが残るから、そのことを忘れないために祈るのだと。
本当に救いのない、痛々しい物語である。
これに挑戦した金蘭会高校を誉めてあげたい。
舞台には間口いっぱいに三段の黒い雛壇。
雛壇の奥には半紙を思わせる大きな白いパネルが、一定の間隔を空けて建てられる。
バックはもちろんホリゾントだ。
場面による役者のフォーメーションは素晴らしく、重要な場面では適切な配置を押さえている。
衣裳も低予算で簡素ながら上下関係が解りやすく、良く整理されている。
小道具は書道用具でまとめられたならばベストである。
硯(すずり)から集めた墨汁を袋詰めするシーンが欲しかった。
それを地下鉄で、傘で刺すのではなく、はやり筆で刺すのが望ましい。
それでこそ、信者たちは筆一本で空(=天=神)に大きな穴(「突」)を突き刺すことが出来ると盲信した筈である。
またこの作品には、ジャーナリズム(=ペン=筆)に対する風刺が多分に含まれているので、小道具は書道用具にとことんこだわりたい。
音響、照明、共に申し分はない。
センス、タイミング、操作、スタッフはそれぞれに良く応えている。
役者は舞台の立ち方がもちろん、主要なキャストの発声方法が素晴らしく、高校生の域を超えている。
金蘭会高校はコロスの使い方が抜群に上手いのだが、今回は雛壇舞台が邪魔をしたのか、コロスの移動が美しくない。
特にシルエット転換時のコロスの移動には、細心の演出を施したい。
転換中に整然と動くコロスの美しさは、予想以上に観客の心を掴むものである。

【観】山田高校『10年目の交霊会』

2bb8d6a3.jpg山田高校
『10年目の交霊会』
作/竹村直久
演出/臼井良介
@ウイングフィールド

最低限の舞台装置で地下室の小部屋を作っている。
舞台中央に白いクロスを掛けた丸テーブル、周りには折りたたみ椅子が5脚、上手に地上階に繋がる鉄製のドアがあり、舞台奥に白のカラーボックスを配し、ラジカセやローソク台、グラス等、交霊会の雰囲気を作り出す小物類が並ぶ。
ここは出入口が一つしかない密室なのだ。
集まったメンバーは10年振りに再会する高校の部活の同級生5人。
演劇部に居た5人が、当時学校の屋上から誤って落ちて亡くなった顧問の男性教師を降霊術により呼び出すのである。
オカルト作品かと思いきや、10年前の教師の死因を巡って、真犯人を探り出す密室ミステリーである。
劇中の挿入曲は冒頭とラストのみで、劇中にはラジカセから流す音楽1曲のみを繰り返し利用する。
他に雷や鉄のドアの重々しい開閉音、階下へ向かう足音、銃声等、効果音が足される。
足音は特定の人物だけに用いると違和感があるので不要である。
銃声だけでなく跳弾の音も挿入すれば、より臨場感が出る。
スイッチを押す等の役者の動きに合わせた所作きっかけは、オペレーターが見落とし勝ちになり、前に居る役者がブロックになってきっかけが見えなかったりすることがあるので、出来るだけ台詞きっかけに変更するのが無難となる。
またMDを使うなら、録音時の白味を必ず編集すること。
電灯を点けるまでのブルー場は、少し明る過ぎるので、フィルターを濃くするか、光量を落とすべきだろう。
ローソクを持ち登場する場面でも、どちらのサスも光量が強く、エッジが出過ぎているので、フォーカスを甘くした方が雰囲気が出る。
自動開閉するドアや、落ちる壁の絵の仕掛けは、工夫を凝らして居る。
壁の肖像画は、2点吊りなので、片側だけを落として傾けるだけでも良い。
脚本のベースが会話劇なので、観客向きの正面芝居を多用すると違和感が強くなるので、可能な限り普通の会話劇にした方が見やすいのではなかろうか?
また、上手奥にドアを設えたので、上手の前舞台をほとんど使用せず、中央にテーブルを置いたので、劇中劇のためのアクティングエリアがあまりにも狭く、とても窮屈な芝居になってしまったのが非常に惜しい。
ドアを更に上手側に寄せて上手奥に斜めに配し、間口全体を室内とするくらいアクティングエリアを広げると良い。

【観】金光藤蔭高校『小林家の一族』

ec64faf4.jpg金光藤蔭高校
『小林家の一族』
〜平成21年度北海道然別高等学校十勝支部演劇発表大会参加作品より〜
作/井出英次
演出/上田天海
@ウイングフィールド

昨年度、宮崎で行われた高校演劇全国大会で、北海道代表の鹿追高校が口蹄疫の影響でやむなく宮崎大会に参加できなくなり、DVD上演を決めた同校は劇場を借りて本番を行い、上演作品を上映したと言う痛ましい事件があり、本作はその脚本の上演作品である。
何たることか、その内容は、コンクール当日に食中毒で出場を危ぶまれる演劇部が、残った二人の部員と、病院を抜け出して会場に戻った部員、その記事を取材に来た新聞部員の4人で、何とか本番を乗り越えるバックステージものであった。
そしてその状況は、一時期廃部の危機を乗り越えた金光藤蔭演劇部に、そのままオーバーラップして行くのだ。
技術的にはまだまだ訓練すべきところはたくさんある。
しかし、高校演劇は技術で見せるものではなく、彼彼女らなりの素直で自然体の自分自身を、如何に舞台上で表現し観客に伝えるかと言うことが大切かを、再確認させられる作品となった。
冒頭の公演中止の挨拶は少し芝居じみていて、無理な演技にも見受けられたが、中盤よりどんどん自然な演技が内部から湧き出して、高校演劇らしいストレートで生き生きとした作品を見せてくれた。
内容自体は初歩的なメタフィクションなので、観客にも解りやすく、好感が持てる。
舞台は完全素舞台で、部員二人が土下座して観客に謝る場面より始まる。
劇中の音響はラストに1曲音楽を用いるのみで、あとは効果音のみ。
緞帳の昇降音や袖中の作業音は非常にリアルである。
最後の曲はもっと大音量でも良い。
照明は緞帳を降ろす時に、前明かりを絞って行くとより効果的になる。
緞帳内の照明は劇中劇の間も変化はしない方が雰囲気が出て、ラストの無言劇のみ照明変化した方が活きてくる。
緞帳前の挨拶はサスを強めて、舞台上を少し暗くすると良い。
緞帳が開いて劇中劇の始まりに合わせて大黒が開く演出はとても良い。
この場面では前明かりを落とし、ホリゾントをブルーに染めるとより美しいシーンが出来上がる。
大黒に合わせて、緞帳も昇降ではなく引割り緞帳の設定にすれば、より大黒を開く演出が活きて来る。
舞台上での座り芝居や寝転び芝居は、客席最前列の観客が壁となって、後ろの観客からは見えなくなってしまうので、出来るだけアクティングエリアを舞台奥に設定した方が無難である。

【観】劇団ぺーさん's13『昆虫王国ムシキングダム』

ba72a19c.jpg劇団ぺーさん's13
『昆虫王国ムシキングダム〜スーパー・ファーブル・ヒーローズ〜』
脚本/北山貴靖
演出/伊藤由樹
@インディペンデントシアター2nd

ここまで多種多様なお子様ジャンルと、小劇場のエンタメ手法を混ぜ込んで一本の作品を作る才能は凄い。
真面目な男肉 du Soleilとでも言うべきか、出演者も被るので、似てくることは否めない。
西本卓也の舞台美術が良い。
見事にジャングルを舞台化している。
80年代以降、小劇場のエンタメ作品で培われた数々の手法を駆使している。
照明変化による場面転換、出番のない役者によるモブキャラクター、マイムと台詞による状況説明、ワンアイデアによる小道具の流用、スクリーンへの映像による背景とエフェクト、ムービングマシンによる照明、等々のエンタメ30年史を見るようである。
あとは仕掛けと特殊効果を加えれば、見事にエンタメ30年史が出来上がる。
タイトルからも分かるように、内容も概ねゲームとコミックとアニメから出来ており、パロディと言うか、オマージュと言うか、パクリと言うか、ごちゃ混ぜ具合も絶妙で、毒喰らわば皿までと、とことん作品にぶち込んでいる様はいっそ清々しい。
初見なので楽しめたが、毎回同じことをしているならば残念に思うかも知れない。
「ムシキング」に始まり、「ファーブル昆虫記」をヒントに、「聖戦士星矢」を経て「ジョジョ」張りのスタンドが登場し、「ドラゴンボール」みたくなって「進撃の巨人」みたく人間と虫が闘う。
つまりジャンプ芝居だ(
「進撃の巨人」は違うが…)。
劇中に使用する小道具も、ジャンプ傘だ、きっと。
オーラやコスモの高まりを表現する映像がそれっぽく、人間が攻めて来る映像は「進撃の巨人」みたいで、それなりに面白い。

【観】鶴見商業高校『Believing in heart』

90f05be7.jpg鶴見商業高校
『Believing in heart』
作/伊藤瑞理と鶴商演劇ツルドレン
演出/河中彩加
@シアトリカル應典院

本当に何年も鶴商の演劇部を見続けている。
今年も鶴商らしい自然体の演技と、鶴商らしいテーマの芝居を、自分たちが出せる限りのアイデアとパワーで、目一杯楽しんでいる。
現実を受け入れる強さと、手を差しのべる勇気を持って、自分らしく生きること。
誰にも共通するテーマを、決して重苦しくは描かず、笑いとシリアスをバランス良く散りばめ、ストレートに描いて行く。
舞台は段差のある二重舞台、バックは大黒で、裏通りにあるちょっとした広場である。
冒頭の導入部から、ダンスによる場面転換、そこに偶然集まった同世代の仲間たちの、ささやかな友情と兄弟愛の物語である。
基本的に本筋に回想シーンを時々挿入した構成は、オーソドックスながら観客を飽きさせない。
選曲や音楽を挿入するタイミングも良く、アナウンスや効果音等、音響効果は様々な工夫が見られる。
照明もプランだけでなく、変化させるタイミングも上手い。
回想シーンの照明バリエーションは、たくさん作り過ぎると目が慣れてしまうので、取って置きのプランを活かせるために極力バリエーションを付けない方が効果的となる。
ラスト付近のブルー場に赤の煽り明かりは秀逸なので、際立たせるためにも他の回想シーンでブルーを使わないようにしたい。
横長の應典院の舞台は、全員登場すると横一列に並んでしまい、つっ立ちの芝居に陥りやすいのだが、見事な演出の交通整理で、上手く役者を配置換えし、動きのある作品に演出されている。
脚本、役者、演出、スタッフワーク、それぞれがバランス良く、好感の持てるとても良い作品に仕上がった。

【観】吹田高校『恋人としては無理』

吹田高校
『恋人としては無理』
作/中屋敷法仁
演出/市瀬大樹
@ウイングフィールド

「柿喰う客」の2009年作品を早くもHPFにて上演する。
本家より随分解りやすい。
実に王道的な高校生らしいアプローチで、「柿喰う客」上演時に高速かつ複雑に構成された演出を、一つ一つ丁寧に拾い集め、正攻法の演出でまとめ上げている。
今更ながら気付かされるのは脚本が実に良く出来ていることだ。
全員が幾つかの配役とモブキャラクターを演じながら描く群像劇ながら、主となる配役にはワンポイントの衣裳や小道具を与え、整理しやすいよう構成している。
舞台は完全なる素舞台で、衣裳も普段の稽古着であり、音響も一切使用しない。
元々、音響効果のない作品なのだが、照明変化を多用するなら、音響も使用した方がバランスが良い。
逆に照明変化を抑えて、地明かりの明暗と一灯のサス明かりだけで構成した方が、作品には馴染むだろうと思われる。
照明変化のタイミングも、場面変化とモノローグだけに絞るのが良く、照明変化に意味付けが欲しい。
暗転も同様で、暗転する意味合いが必要となる。
照明プラン自体は悪くないが、音響を使わないなら出来るだけシンプルな方が良い。
稽古場風の味わいが際立つ筈である。
数人が立ち話をする場面では、全員が立ち往生し勝ちなので、もう少し動きたい。
シンプルな内容とシンプルなテーマを、シンプルな演出によりシンプルに描くことで、非常に明快な潔い作品を描くことに成功している。
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