舞監@日誌 since 2005

大阪在住、舞台監督・CQ塚本修(ツカモトオサム)の日記です。 観劇の感想や舞台用語の解説、たまに日々の出来事や劇団ガンダム情報も書いてます。 コメント・トラックバックは承認制ですので、すぐには反映されません。非公開希望の方はその旨お書き添え下さい。返信用アドレスも基本的には非公開にいたします。

2013年08月

【観】おにぎり貿易『デイ・ルーム』8/22

1079711b.jpgおにぎり貿易 第二回公演
『デイ・ルーム』
作/ドン・デリーロ
演出/森本洋史
@海岸通ギャラリーCASO

最近、観劇ブログをお休みしている。
書かない代わりにほとんどの作品は、観劇後すぐに作家や演出家、或いは制作者に感想を述べている。
演劇人として、ほんの少しだけ先輩からの意見やアドバイスをお話し、今後の活動に活かして貰えたらと思う。
だが時として作品が難解であったり、チラシやパンフレットの解説が不十分で、観劇者が戸惑ったり、理解不能のまま帰途につく場合も多々あり、面白く刺激的な作品を解らない難しい作品と勘違いしたままで終わらせることも多いのではあるまいか?
本作もそんな作品の一つであろう。
だから少しだけ解説したい。

年間に大阪だけでも相当数の新作演劇が発表され、数多くの秀作が排出されるが、その脚本が非常に優れたものとして出版物となる戯曲は数本に限られ、そのような戯曲が年間に何冊かは出版されても、それが海外で翻訳され出版されることは本当に稀である。
つまり選りすぐりの戯曲の中でも、海外の舞台での鑑賞に堪える、特に優秀な戯曲だけが海外にまで排出される。
逆に言えば、海外の現代戯曲の内、選びに選ばれた戯曲のみが日本国内で翻訳され出版に至る訳だ。
ならば、その舞台作品のクオリティはともかく、戯曲自体が面白くない筈はない。
演劇人として、それらの貴重な戯曲を舞台作品として国内で発表することは非常にエキサイティングかつ重要なことで、観劇ファンとしても、これを見逃す手はない筈である。
おにぎり貿易の森本氏は、この面白さに若くして気付いた才人であり、その試みを大いに応援したい。
同様に海外戯曲や海外小説を舞台化する試みは、evkkやエイチエムピー・シアターカンパニー、若手ではトイ・ガーデンやピンク地底人が頻繁に公演しているが、evkkやエイチエムピーは非常に独創的な手法でスタイリッシュにまとめられ、芸術性と完成度の高い作品として発表されることが多く、トイ・ガーデンやピンク地底人では、若手らしいアバンギャルドな演出法で、戯曲自体を解体し、戯曲本来のテーマや作風から意図的に切り離した作品も多い。
おにぎり貿易の注目すべき点の一つは、まだ独自の演出法を確立していないのか、独創性な演出にこだわりを持たないのか、そこは定かでないのだが、戯曲を実直に舞台化し、本来の戯曲が持つ魅力を損なうことなく舞台に乗せることにある。
今後とも、是非注目して頂きたい集団なのだ。

本編の内容は、既に戯曲を読んだ感想文を掲示したブログがたくさんあるので参照頂きたいが、特に以下の2つをお勧めしておく。

とほ日記『白い部屋:デイルーム』ドン・デリーロ
http://biblon.blog98.fc2.com/?no=460

I wanna be killed by Curiosity!ドン・デリーロ『白い部屋 デイルーム』
http://secludedpond.blog45.fc2.com/blog-entry-171.html

難解な不条理劇と受け取ると内容を読み取れなくなるが、概念の何たるかを問いかける、他に類を見ない前衛的な作品と言える。
既成概念を徐々に破壊し、前半の1部では言葉に対する共通認識を曖昧にされ、言葉の概念自体を覆していくのだ。
後半の2部に至っては、1部の登場人物は誰も登場せず、全く違った人物として登場し、中でも役者の一人は人物としてではなく、テレビジョンとして舞台に在る。
役者の概念、劇場や場所の概念、ついには人と物の概念すら曖昧となってくる。
そして最後に登場するクラインによって、舞台は 冒頭のオープニングへと戻り、時間の概念すら破壊される。
ここで重要なのは、冒頭でベッドに寝ていた一人目の俳優のポジションに二人目の俳優(クライン)が入ることで、自分が自分であると言う意識や個性と言った概念まで破壊してしまうエンディングとなっていることだ。
クラインの壺のごとく、空間の概念をも覆してしまう。
人の世界は人間の共通概念によって成立している。
演劇は正にその縮図である。
当たり前のことながら、私たちはそれを疑うことも無かったし、明確に知ろうともしなかった。
改めてそれを認識し、確認させられる極めて刺激的な傑作であった。
おにぎり貿易、要チェックである。

【観】HPF金蘭会高校『ジャップ・ドール』

HPF2013
金蘭会高校
『ジャップ・ドール』
作/鄭義信
演出/羽室美佑・田原萌・川越結依
@ドーンセンター

金蘭会、HPF2回目の『ジャップ・ドール』である。
思えば金蘭会高校には、何回も驚かされてきた。
『半神』『火男の火』そして『ジャップ・ドール』。
胸は躍り、身体は奮え、知らず涙が流れた。
あの感動を、再び蘇らせられるものであろうか。
既成戯曲を選ぶ時、集団は戯曲を演じるだけの技能が必要となる。
集団の力に見合った戯曲を見誤った作品の悲惨な結末を、これまでに何度も目撃して来た。
集団と戯曲が見事に合致した時に生まれた作品には、観客を魅了してやまぬ不思議な力が宿る。
そしてこの作品もまた、圧倒的なパワーと溢れんばかりの魅力で、私の心を掴んでで離さなかった。

1991年、バブルの崩壊と共に新宿梁山泊が初演したこの作品は、見ての通り日本を憂いた作品である。
地の底から日のもとで暮らすことを夢見る地底人。
日の本に暮らしながら、日のもとで暮らしていることに気付かぬ日本人。
権力の人形となった日本人。
この普遍的なテーマは、20年以上経った現代でも全く衰えることはなく、ストリートに観客に届いて来る。
相変わらず金蘭会はコロスの使い方が上手い。
通常、黒服のコロスだが、金蘭のコロスは白く美しい。
ある時は主人公の魂の叫びを皆で見守り、傷付き打ち拉がれた者の背中をそっとさすってやる。
物言わぬコロスたちに何度も涙した。
天使のように寄り添い、慰め、励まし、死した仲間たちのように静かに見守ってくれる。
選曲の素晴らしさ、赤と青を基調とした照明の美しさ、衣裳、小道具に至るまで、あらゆるスタッフワークにそつがない。
カーテンコールの後、緞帳が閉まる刹那、舞台中央だけが照明で赤く染められ、舞台は日本の国旗となって幕を降ろすのだ。
最後までしっかりと演出されている。

【観】HPF咲くやこの花高校『現代社会における携帯依存』

HPF2013
咲くやこの花高校
『現代社会における携帯依存』
作/遠藤淳
演出/成尾南海
@ドーンセンター

真面目なタイトルはギャグで、思いっきりラブコメディだった。
脚本はオチまで良く考えて書かれている。
舞台は2階にある主人公の部屋。
部屋の奥の壁面の上は二重舞台の高台になっており、ここに擬人化した通信機器たちが集い、通信機器サミットが開かれる。
地明かりをベースに、前明かりを抑えた照明は上手く、ホリゾントではなく大黒を採用しているのが良い。
音楽の切り替えと照明変化のタイミングも良く、スタッフワークは充実している。
特に衣裳が鮮やかで、印象的であった。
二部構成の脚本なので、暗転は終盤の1回のみにして、途中の暗転板付きをカットした方が良い。
暗転や明転や登退場転換、照明のみで転換と、転換にバリエーションを付けたかったのかも知れないが、多用するとまとまりとテンポを悪くする。
転換はワンパターンに絞り、終盤に1回だけ暗転すればまとまりが良くなる。
依存度の高い通信機器の精(?)が見える設定に、もう一捻り納得しうるエピソードが欲しい。
役者は良く動き、台詞は明瞭で、非常に良い。

【観】HPF東百舌鳥高校『菩提樹の下で』

HPF2013
東百舌鳥高校
『菩提樹の下で』
原案/後藤那哉
作/藤田雅彦
演出/後藤那哉
@シアトリカル應典院

メインの舞台は喫茶「菩提樹」の店内、センター奥に店の出入り口、上手側にカウンター、下手側は店内で占いを営む占い師のスペースだ。
店内の装飾はパネルに全て描き込んだ書き割りである。
カウンター部分は平台を敷いて少し高くしてあるが、靴の音が響き足音が気になるので、パンチカーペットを敷いた方が良い。
音楽の音量は、スピーカーに最も近い座席でレベルを測らないと、台詞が聞こえなくなってしまう。
客席中央で音量を決めてはならない。
舞台前面を喫茶店前の道路に設定するのは良いが、基本舞台のシーリング(前明かり)と併用は出来ない。
いくら地明かりを消しても、シーリングを点灯すると舞台全体が見えてしまう。
SSだけでカバー出来てないので、別に前明かりを仕込むか、SSを足してエリアを確保したい。
また、別空間を舞台中央で演技するのにも、シーリングは使えないので、いっそのこと下手側を別空間として使用した方が、照明もプランしやすいだろう。
小道具で、パントマイムと実物を混在させるなら、明白なルールが必要である。
最低限、携帯や拳銃の持ち道具は準備したい。
役者は台詞も明白で、楽しんで演技しているのが非常に良い。

【観】HPF箕面東高校『飛翔』

HPF2013
箕面東高校
『飛翔』
作/木村千里
演出/木村千里・大黒淳穂
@ドーンセンター

箕面東らしい大掛かりな舞台装置は、高さと広さを生かし、自由度の高い舞台美術を設えている。
しかし中央に建てた大きなパネルが舞台の奥行きを見えなくしてしまい、客席下手側からは奥の鳥カゴの障害物となっている。
結果的にせっかくの奥行きを、ほとんど使えない演出にしてしまっている。
また、頻繁に変わる場面のための抽象舞台と、奥に設えた巨大な鳥カゴの具象美術の取り合わせが悪い。
鳥カゴを出すなら、割れる仕掛けを施して、舞台中央のバトンから吊しすのが良いだろう。
暗転なしで一気に見せるスタッフワークはさすがなのだが、頻繁に音楽と照明変化を多用させるので、観客の目が変化に慣れてしまい、本当に見せたい場面での音楽や照明変化が、他のシーンと同様にしか見えなくなってしまう。
場面に適した音楽や照明プランも、本当にそれが必要かどうか、他の大切な場面の邪魔にならないかをよく考えてプランニングしたい。
物語は、「自由」に対する主人公の思いが、今ひとつ伝わってこない。
役者は生き生きと良く動き、台詞も良く伝わって来る。
だから説明台詞や回想シーンはいらない。
思いを伝えることをしっかりと演らねばならない。

【観】HPF鶴見商業高校『ROCK U!』

HPF2013
鶴見商業高校
『ROCK U!』
作/趙清香
演出/難波優華
@メイシアター中ホール

本作は前年度の近畿大会の最優秀作品で、この夏に長崎で催される全国大会に出場する。
これまでのHPFでも、高校演劇の及第点を難無く越えている鶴商だが、この会場に於いてはいささか広さ負けしている。
幕開け冒頭とラストにクイーンの「We Will Rock You」が大音量で流れ、この曲に挟まれた構成で物語は進む。
とても良い構成だ。
曲中に使った床置きの照明効果も、劇中の地明かりとの対比が良く、それだけにアクセントで劇中に1回だけ挿入したギャグシーンの照明変化は蛇足に思える。
終盤の挿入曲も、同じ曲にするか、オープニングとエンディングだけに音楽と照明変化をする構成にすれば、音楽のシーンがより際立って生きてくる。
前半、会話劇ベースで進行させながら、後半から正面芝居になるのも不自然なので、どちらかに統一すべきではと思う。
中ホールでは、横向きや後ろ向きの発声が客席まで届かず、前半は聞こえない台詞が多かったので、正面芝居をベースにした演出を心掛けたい。
もっともフリースタイルの正面を気にしない演技が鶴商の持ち味でもあるので、会話劇のスタイルを崩さずに、台詞を吐く役者に上手く正面を向かせる演出を施したい。

【観】HPF箕面高校『CHIN!〜Aが盗まれた★〜』

HPF2013
箕面高校
『CHIN!〜Aが盗まれた★〜』
作/上西秋穂とみのえんゆかいな仲間たち
演出/上西秋穂
@ウイングフィールド

今年のHPFはドーンセンターが増えて4会場、13日間29作品になり、暑い夏を高校演児たちが更に熱くする。
箕面高校は毎年着実に力を付けている。
ミステリー仕立てのドタバタコメディだが、特に謎と言うほどの謎はない。
オチの、部活名(カイトウ部)を勘違いだけで全編を引っ張るには無理があるが、それを役者のパワーと勢いで強引に押し切る強さがある。
高校演劇では、この「勢い」がとても重要なのだ。
内容が乏しくとも、スタッフワークがムチャクチャでも、役者に勢いがあれば観客は楽しんで見ることが出来る。
この作品のことを言っている訳ではない。
スタッフワークも悪くないし、照明変化や音響効果は要所を心得ている。
プランもよく考えられている。
しかし、あと一歩上を目指すなら、不要な場面や台詞を切り落とし、本当に必要な場面のみに照明変化や音楽を挿入し、作品に磨きをかける余地はまだまだある。
役者の勢いを失わず、作品をブラッシュアップすることだ。
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